神無月の季節、仲秋にはアウターやインナー、1枚多く重ねても「もう1枚あった方が良かった!」と、予告も無しに吹き抜ける突風へ恨み言を連なりながら両手を擦れば、先月では無色透明だった吐息が、新雪色にフライングする。
――――ネリに引き続きまして、今回は爽羽佳のバイト風景を窺う!――――
運び屋、その情調からダイナマイトやら、麻薬やら大麻などを密輸・取引する、ヤベェ裏職…………ではなくっ、空の経路を担当する宅配便である。
陸地ではトラックやバイクでも、まだ代替出来るのだが空中は一件ごとにヘリコプターだのを使うのはコストや騒音やスペース的な問題があるので、信号を始めとした進行を阻む物が陸地と比べて、格段に少ないので飛行や浮遊能力を持つポケモンが、面接に来ればそれだけで「明日から来れる?」と声がけされるのは珍しくは無い。需要があるのだ。
天候の影響を陸地よりも受けやすかったり、メリットだらけでは無いけれど、オニドリル種は大昔から存在と生息が確認されており、人間との距離が近いポケモンの1匹。
図鑑の説明文章は言い伝えそのまま、スタミナを活かし一日中運搬作業の手伝いをしていた。
「だからオニドリルな私にゃ、天職だろーなと思ってさ~♪ ホイッ、と~~ちゃくでっす!」
萌えコンテストを境にどの依頼から受諾しようか……?
メコンが明朝カーテンを開ける度、メッセージボックスには確認してるだけで昼食間際となってしまう量が送られて来るので、最初は迷惑メールかと思ってしまった。が、どれも彼の実力や手持ちの実力――――あと可愛さとか色々――――ひっくるめて求められているのだ。
とっても嬉しいのだが、返信対応がとても追いつかないので、暫くは依頼受注を中止せざるを得なくなった。
ホームページを立ち上げ当時は、どんな小さい頼み事でも来て欲しいと、寝る前にお祈りしていたくらいなのに!
もうネリや爽羽佳がバイトをしなくても、余裕で養っていける収入源を作れてしまったが、彼女らはタダ寝食いするつもりなし。
人化すれば絶対働く、そんな労働法は無い。
けれど本来の姿だろうか、人化しようが、宅配した住居人から感謝の言葉を贈られた際に、しみじみと……ちょっと潤っと……右眼は隠れたままだから誤魔化しながら『仕事していて良かったな!』と『ありがとうございます!』と返答出来る人化ならではの悦びを感じたのだ。
バトル時ではない日常での飛行法、ゆったり羽を動かしながら降下したのは、120番道路と121番道路の中軸。
小高な丘には特殊なマグマから『王』が創りあげた人形、または分身の1匹とされる〝くろがねポケモン〟が眠る…………とは古の書物には残されているが…………
周辺を毎日バターになるって程、グルグル散策している遺跡マニアのおじさんは。虫眼鏡を使って埃も逃してないけど「それにしては遺跡への入り口が見当たらない」と、近頃は諦めムード。
「今日は雨降ってないや。この辺りは天候変化が激しいからなぁ」
意味深なまでの配置、6つの巨石に囲まれているこだいづか。
目録の様な文字列を刻んだ石碑が、埋め込まれており一応解読には成功しているが、研究者が刻まれた内容を実行しても、何も変化が見られなかった。
なので愉快犯の悪戯として収束されてしまった。
爽羽佳の両腕には、肩幅サイズの立方体、トークバラエティ番組で転がされているデカいサイコロと似た形。
この箱に入った荷物を、こだいづか――――の後方に作られた洞窟へと配達するのが受け持ったお仕事。
運搬出来る重さは『大きい土煙が上がらないくらいまで』
「イヨヨカのじっちゃ~ん! 運び屋でーす! 大丈夫? 倒れてな~い? 吐血してな~い? ギックリ腰の調子は?」
「おぉ、爽羽佳ちゃん、重たい荷物をわざわざありがとグベボァァ…………!!…………大丈夫じゃ、今朝食べたチュペ・デ・カマロネス(唐辛子・エビ・ご飯を入れて煮込んだチャウダー)が胃袋に残っていたんじゃゲボハァァ!…………はぁ、はぁ……これは本当の血じゃ…………いやぁ、歳を取るとサイコパワーも上手く使えなくなってのぉ……」
ライダースーツ寒くないの?
そんな質問されるけど、この時期になったら防寒対策として保温性に優れ体幹を守り、携帯カイロを内側ポケットに仕込めるバリアインナーを、スーツ下に採用しなければ機動力は激減しストーブを抱きしめながらじゃないと、一日中休み無く飛び続けるなど叶いやしない。
単純に『ヘソ付近までジッパー下ろすのやめりゃいい』だけであるが、それでは彼女が納得しないのでジックが、爽羽佳用にフルオーダーメイド、それが仕事着としても着用済みのコレだ!
(こんな事思うのは失礼だけど、毎日が命のクライマックス状態だからなぁじっちゃん…………〝おくりのいずみに片羽突っ込んでる〟って言ってたけどさ…………)
太陽の動きの変化から地球の自転変化を見極め、未来予知をするポケモンであるが、未来の変化を望まないので何もしない。
ハイライトの光らない、空虚で真理すらその目で判別してしまえる瞳。先住民の紋章の様な刺繍が入った羽織り物――――ちゃんちゃんこ――――の腹部には、第三、第四の瞳を浮かび上がらせた腹巻きを着けている老身は、常に、小刻みに、プルプルプルプル…………
寒いのではなくて、臨界点を達し続けているパロメーター。
毎秒『ご臨終してもおかしくない』200歳まで数えたけど、現在の年齢は忘れてしまった。
せいれいポケモンのネイティオ、ニックネーム――――昔におやが居たのか、自ら付けたのかも忘れた――――《イヨヨカ》
「じっちゃん、杖忘れてるよ、玄関口に置きっぱなし」
「そうじゃったわい、何か手が震えていると思っていたんじゃ…………よっこぃせぇ」
杖を持てば手の震えは収まるけど両脚の震えは現在進行形で累加してしまっている。あんまり意味が無いのでは…………
能力値が控えめなのは、常に過去と未来を視続けているからで、『視る』のを止めればエスパー随一、それこそ伝説に肩を並べられる力を発揮できるのかもしれないと、学問的考察を持ち寄られる事がある。
「悪いのぉ爽羽佳ちゃん、家の中まで運んでくれてのぉ。身体も衰えればサイコパワーまで衰える、長寿でも老いはある、それが早いか遅いか、自然理じゃよ」
彼は周辺に住む子供達の、遊び相手になってあげており、子共達のポケモンでは勝てない野生が飛び出して来たら、化石ポケモンに近いベクトルで残存している枯体を、スイープビンタし、10匹だろうが30匹だろうが、草むらごと空間転移させてしまう強烈な超能力、その一端を使用し助け出す…………のであるが、力を使えば必ず『ギックリ腰になってしまう』
一回技を使用するのが限界、常にPPが1でわるあがきの代わりにギックリ腰。
「技が使えなくなったら、いよいよワシも冥府の神の元へ流れ逝くんじゃろうなグボハァァァ!!!…………はぁ、はぁ、いっ、今のは血……と見せかけて絵の具じゃ! ビックリしたかの?」
「ちょっとォ!? そういう笑えないジョークは止めてよじっちゃん!! この間絵の具を配達したけど、こんなのに使う為だったのぉーー!? まったくもーー! おちゃめーー!」
「のほほっ、余裕があるって事じゃ! 昨日は冥府が『視えた』んじゃがのぉ、朝起きたら遠ざかってたわい。まるでワシに来られるのが嫌な…………グプッッ、あっ、これは本当の血じゃ……」
洞窟内の何ヶ所かには『吐血した跡の血池』が在ったりするから、ホラー映画のポスター背景として無修正のまま採用出来る。初見では何事かと、口元が血だらけの彼を見て料金を受け取らず飛び逃げしてしまったけど、じっちゃんは、正常なコンディションです、HPは満タンです、メビウスの輪です。
「c0txy byia0 qhfe3lt@s4b@x@ejr d@Za‘yjqs:zdqk?」 *1
*お使いの画面は正常です
ヒュッ、トンッ、爽羽佳が現住所に入っていく後ろ姿を見つけ、サイケデリックかつディープトーン、勁烈に主張を示すカラフルな翼は、樹状に分裂したと連想してしまう細々さ。
そんな翼…………? で飛べるのか、不安になってしまいそうだが、彼女はこの洞窟に住み着いてから毎日、ホウエンの何処かで占い師として活動しており、その翼……? こそが交通手段だ。
とりもどきポケモン、彼女が喋れる日本語はたったの2つだけ、その1つが自分の名である――――
「0qdkuj5f《トロン》w@r t@/ykj5knuxj 6-@5wh;qo4;dew@r♪」*2
通称『トロン語』を操るこの褐色肌の少女、遠くの地方から迷い込んできたとは、古代語を翻訳・解読出来るイヨヨカのじっちゃんでも、思案と解読に暮れ、最終的に身振り素振りに、情緒などを『フィーリングで察するしか無い』と、解読者としては匙投げな回答になってしまったのだが。
(トロンの言葉はワシにもぜ~んぜん解き明かせないんじゃ。シンボラーとネイティオって、雰囲気とか色彩が似ているじゃろ? だから他の者よりかは通じ合えている……気がする、それだけじゃ)
5\thsgqe^yc4(エロ書くとき大変そう)