ポケ×ぎじ 蒼鋼少女   作:緋枝路 オシエ

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Segment・octa――∞との再会

もう七月と同じ服装では過ごせない。

 

 ヴィヴィと出逢って、三ヶ月も経過していた。

 

 かつてチョンチーであった、メコンを助け出し、後日トレーナー免許を取得。

 

 正式に『ポケモントレーナー』の肩書きを名乗れる様になったジック。

 

 始めの仲間は1匹だけでも、仲間を増やして次の街へ……上手く行く保証など無いから、ポケモンとの生活は面白い。

 

 ホウエン以外の地方へ旅立ち、オニスズメの爽羽佳をナナシマで、ニューラのネリ、コジョンドのインフィス、ミノムッチのかたくりをこシンオウでゲットした。

 

 みんな一期一会、人生でたった一度きりの大切な出逢い。

 

 それでいて会者定離、素晴らしく運命的な出逢いを果たしても、別れは等しく訪れてしまう。

 

「…………………………」

 

 今は考えたくないけれど――

 

(ヴィヴィ?)

 

(…………んっ…………♪)

 

 無機質な表情をする方が少なくなってしまった、胸に情性を宿す様になったメタグロス、ヴィヴィがジックのアウターと擦れ合う感覚、2㎝の距離をハジツゲからずっ~~~と維持し続けている。

 

 ここが「特等席」と言わんばかり、手を伸ばし肌を接触させる事はしない。

 

 が、限りなく接近して尚且つ、りゅうせいのたきに続く密林地帯を歩くメコ・そわ・ネリ・ミノの愉快な手持ち達に、真意を悟られぬ為『念話で先程のバトルの反省会をしている』と、自己弁護し勘違いされる対策を打っておいた。

 

 本当は違う、反省会も確かに大事だけれど、『マスターの隣を歩きたい』その想いが一番だった。

 

(わたしはマスターが居なければ、アビリティの全てを発揮出来ません。他の方がわたしの〝マスター〟であったのなら……当時は考えもしなかったですが――――)

 

 殆どの人工光が消え、頼れるとは言い辛い月明かりが導を射す、22時過ぎ。

 

 夜目の利くネリを先頭に、『反省会』と言う名目でコミュニケーション中のジックとヴィヴィ。

 

 その後ろで夜のアウトドアに欠かせぬライト、彼女の種族の特色である発光器官を、あまり野生のポケモンの迷惑にならない、光量に設定し足下を照らすメコン。

 

 秋冬用の裏生地が気に入ったのか、爽羽佳のライダースーツの胸元で、鼻ちょうちん膨らませては、フーセンガム割っているかたくりこ。すぐ横に居るのがネリ。

 

 114ばんどうろの北は、田んぼや農場が所有・経営されており、ホウエン各地での野菜流通6割がハジツゲを占めている。

 

 ――りゅうせいのたき――

 

 遥か昔に大量の隕石が飛来し、天体に関連するポケモンが住み着き、流れ落ちた軌跡が竜を描いた影響から、ドラゴンタイプの戦闘力が増大するので、ドラゴン使いの修行の場となっている。

 

 その洞窟までの道のりは、大小様々な起伏が自然の段差を形成しており、障害物などをスルー出来る飛行や、浮遊能力を備えたポケモンを所有していなければ、洞窟へのアクセスが厄介なので時間はそこそこ掛かる。

 

(マスター…………)

 

 二日に一回、お昼ご飯か晩ご飯のどちらかはメコンではなく、ヴィヴィが作った物をジックに食べて貰う様に話合って決定した。

 

 昨日はジャンバラヤ――炒めた野菜やお肉やエビの入った炊き込みご飯――を作ってくれた。朝早くから起きて何回も失敗し、いざ本番でも焦がしてしまったけれど絶妙なカレー粉の焦げが、濃い味付けを好むジックには好評だったので結果オーライ。

 

 もしかしたら「少し失敗しよう」と思って作った方が、逆にジック好みになるのではともう一度同じ物を作ったら今度は火力が増しすぎて、野菜が全て黒炭になってしまい大失敗してしまった。レシピの手順通りに作っても何処かしら上手く行かないし……料理の適性が無いと判断を下すのは簡単だけど。

 

(他の人がマスターだったなら……ここまで頑張りたいと思うのでしょうか?…………それは……無い……ですっ……わたしのマスターはジックさん以外に考えられません……救出してくださったのも必然の出逢いだった……今ならそう…………――)

 

 彼にマッサージをされてから二人だけの時間が増えた。その場でなら甘え下手で不可解な感情に葛藤しながらだけど少し…………本当にコンマな目盛り程度の物だけど素直になれる……なっている気がした。

 

 自分はメタグロスなので強い姿を見せなければならない、激レア高種族値ポケモン故のプライドと、マスターと認めたジックには思いっきり*****…………されたい気持ち、どちらを優先させればいいものなのか。

 

 数ヶ月前のヴィヴィなら考えるまでも無く前者であった。人肌に触れ言葉を交わすよりも実践、実践、そちらの方が力の結晶として身に収束されている実感があったから。

 

(でも………………ぬくもり…………マスターのあったかい体温……知ってしまったから……んっ……ぅ……)

 

 何気なく彼の顔を覗こうとする回数も増えている。

 

「…………!」

 

「!?ッ………………むッ……!」

 

 視線を感じた彼にニコッと笑いかけられても、手持ちの皆が居るので焦って下を向いてやり過ごしてしまう。

 

 ジックもそれが「ヴィヴィは怒っているのかなぁ」とか「今のセクハラだと思われたかなぁ」とびくびく心配する事はない。コミュニケーションを重ねて『今のヴィヴィは大丈夫』と分かる様になっているから。

 

(……………………♪)

 

 ほらっ、蒼髪の先っぽを弄りながら一文字だった唇が、Uの字になっているのだから。

 

「おっ……今の風はキタなぁ……場所が違えば落ち葉が綺麗だったかもね」

 

 秋の味覚を楽しめる10月。寒空に備えた衣替えとして長袖にブルゾンダウンのジャケットをクローゼットから取り出したジック。

 

 爽羽佳の秋冬装備は先述した通りだが、他の面子はと言うと…………

 

 ネリ→寒さに強いポケモンなのでビキニのまんま

 

 メコン→深海の水温に耐える水タイプなので変更無し

 

 ヴィヴィ→気温の変化に殆ど影響されない鋼タイプなので無し

 

 かたくりこ→ミノの中はあったけぇらしい

 

 ……メコンは肩とおっぱいの谷間くらいしか肌が露出してないので兎も角、超ミニスカートと水着と変わりない三角ビキニは見てるコッチのが寒くなってしまう。

 

 依頼は数日間に分けて遂行させる予定だ。りゅうせいのたき内部のマップは借りているけど、依頼の内容が『全てのフロアの砂を集めてきて欲しい』なのでマップで最短ルートを辿っても、結構な時間が必要となるからだ。

 

 ハジツゲに自分だけのラボを所有する、地球外物質科学研究者が依頼主であの滝は隕石が落下した事で作られた、ならば砂には成分も隕石に関する成分が含まれているハズだ!…………との見解らしい。

 

 しかし彼はポケモンを捕まえた事が無いので、誰かに頼まなくては精々入り口の砂しか集められないだろう。そこでジックに白羽の矢が立ったのだ。

 

楽な依頼じゃないけど、りゅうせいのたきは探索して見たかったしあの場所はドラゴン使いの修行の場となっているから、強いドラゴンを従えるトレーナーとバトル出来るかもしれない。

 

 

 

「海での一件以来だな、皆!」

 

 ――放浪と修行の旅に出ていた、無明の武芸家。

 

カイナシティで再会し、ヴィヴィと一戦火花を散らしてから再び離脱してしまっていたが――

 

「ししょ~~~! さっきのバトル樹木の影から見てたの気がついてたニャ~~!(だから相性苦手な虫タイプ相手に、挙手したんニャけど♪)」

 

 道中バトルは二回行った。一戦目はドラゴン使いなので、ヴィヴィが出る幕も無く2タテしたが、ヘラクロスとカイロスを操る昆虫マニアは、均整の取れたチームプレーでヴィヴィをも大分苦戦させたが、つるぎのまいによる能力値上昇を逆手にとって、きあいのタスキを消耗したネリが暗闇から、おしおきで奇襲。

 

 夜目が利くので、夜間戦闘はヴィヴィと並んで得意分野。12年間も劣悪な視界に混ざって窃盗行為を働いていたのだから。

 

「やたら出たがってたのは、そういう理由だったのか……おかえり、インフィス! 暫くホウエンに残ってくれるって!」

 

 索敵機器に優れているヴィヴィだけは薄ら存在を感知出来ていた。

 

 ジック含めて他の四名は主を抱きしめながら、武術には邪魔でしか無いであろう、ダブルFを細マッチョな胸板に擦らせるインフィスの気配は、察せられなかった。本来であれば洞窟の入り口で待ち合わせる予定だったのだから。

 

 バトル中でもインフィスが、どんな表情で伺っているのだろう……反応を探る二匹が特例である。

 

「私も主が受け持った依頼の、助太刀をさせて貰おう。募集を停止するまでの知名度になったのだな」

 

 今度はネリと深くハグを交わす。第三者トレーナーからすれば、マニューラ絶体絶命である!

 

 悪玉と闘玉がわちゃわちゃする、反作用を引き起こしながら収束するDとFには、性少年もフィージョンしたくって危険顧みず、ドラゴンダイブしたいだろう……

 

 こうしてジックメンバーは、数ヶ月ぶりにフルとなった。相変わらずかたくりこは、バトルをしたがらないけど、インフィスの香りでも嗅ぎ取ったのか、見つけ次第胸元へ潜りミノごと回転させる所業。天然のおっぱいレーダーである。

 

 


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