ヴィヴィ達、ジックの手持ちポケモンは、怒りの感情を浮き上がらせる。
自分が低個体値と蔑まされる……それだけならいい、本当の事だから。
「…………わたしのマスターへの謝罪を要求します。貴女の数々の言動、侮辱行為とみなします……他の皆さんへもですっ」
感情を宿さなかった少女は、特にマスターであるジックへの不当な発言、仕打ちには敏感だ。
「侮辱と見なしたらどうなるのかしら? フンッ、地面弱点の分際で……アンタが私らと手を組むのなら話は別だったけど、その気が無いのならもういいわ。文句あるならヤッてあげるわよ?」
「……………………」
高位種族と高位種族。ヴィヴィとレイカは弱点を補い合えるタイプなので、タッグとなれば無敵に近い。一貫する水や地面に強い3匹目を控えておくのが、プロトレーナーの常識だ。一般トレーナーはどちらかを手に入れることすら、困難であるので……
「…………はぁ、止めましょうレイカ。こんなトレーナーが育てたポケモンとなんて、いくら個体値が6Vでも戦うに値しないわ。時間の無駄……よね? 最奥部にはシエラは居なかったのだから、さっさと別の場所へ向かうわよ」
「…………そうね、私達が全力を出す相手は、一人だけだものね。命拾いしたわねメタグロス、下等種共」
ライバルと認めた少女が、20年捜索したって見つからないイラつきを、ジックらにぶつけてやる予定であった。わざと煽る様な口調でレイカを差し向けてやったが、興が削がれたので呼び戻す。
ミノリだってジックがどんな存在か知っている。あらゆる依頼を完遂させて来た、将来有望の少年であると。
(シエラ……何処かでその名前、聞いた筈なんだけどな――)
一色触発ムードも、砂鮫であるレイカがあなをほるで脱出したので、散乱していった。
「シエラ……と言う方を探していたそうですね。わたしは戦っても良かったのですけど……」
(マスターを侮辱して……頭にきてましたし……これは内緒……です)
誰だって〝おや〟を馬鹿にされて、良い気分にはならない。
やや短気な爽羽佳や、ジックの事となれば熱くなりやすいヴィヴィが、良く堪えてくれた物だ。心の中では全然穏やかではなかったが……
ネリだってあれ以上仲間や、ご主人に下手な口をレイカが叩いていれば、後ろから氷の手裏剣をぶん投げてやっただろう。そう思っていても行動には移さないのが盗賊時代。
彼女はおやを持つポケモンとなったのだから、度を超えた侮辱はタブー。おやが居なければ怒りよりも逃走を優先させていた。
(ネリちゃんも誰かの為に、怒れるポケモンになったんニャーね。卵から孵化されて、個体値が気に入らニャいから、逃がされたであろうネリちゃんが……ニャ……!)
だとすれば、ヴィヴィは?
6Vのメタグロスを逃がす、如何なるトレーナーでもありえない行為だ。
それではないとすれば、ジックの推測通りあの電脳空間でヴィヴィは生まれた。
生まれた時からメタグロス? ダンバルから生まれるのが普通なのだが。
(考えてもしょうがない……か。ヴィヴィは大切な子に違いないんだから……)
ハプニングはあったが、砂を譲り渡せばミッション完了。
紅い瞳が何かを言いたそうにしていたので、少しだけ念話にアクセスしてみたら、『隣』の単語だけ返ってきてすぐにロックされてしまった。
家に帰るまで紅い瞳の隣が固定席となってしまった。
翌日の午後14時。117番道路。
「我が社のアフターサービスをご利用下さり、誠にありがとうございます」
シダケ~118番道路間は、育て屋さんと横になが~い直線路の存在から、孵化ロードと呼称されており卵から厳選する、トレーナーは料金を支払いじてんしゃに最大5個までの卵を取り付け、走る事を許可されている。
デボンコーポレーションの商品を購入した老人宅。アフターサービスは商品を所有している限り、無料で永遠に受けられるので、アフター部門も本社に存在するのだとか。
一礼しキンセツシティの駅へと歩く女性、デボンのスタッフでも特に優秀な頭脳を持ち、現在ラインナップされる殆どの商品開発に関わっている。
「……………………」
フレームレス眼鏡に地味な色合いの服装。
冬でも夏でも変わらず、着込んでいる理由は誰も知らない女性、レオネ。
彼女の隣で浮遊しているのは、性別不明のポケモン。ポリゴン2のトロメイン。
彼女はトロメイン以外のポケモンを所有しておらず、バトルをしている姿も見られない。あくまでも研究開発の補佐として、傍に居るらしいのだが…………
「よぉーし! 生まれたぁ! いい個体来てくれよなー! …………ちぇ、2Vとかイラネー! 俺は4V以上の強いポケモンを手に入れるんだ! ボックスに預けてすぐ逃がしてっと……面倒くせーな……」
猛烈な速度で走るマッハじてんしゃが、レオネの横を通り過ぎる。
その言葉を耳にし、彼女は無表情のまま、落胆する少年が育て屋の扉をノックするまで、瞬きもせず視線を動かさなかった。
「…………………………………………」
そんな彼女を心配するトロメイン。人化していないので言語は発せ無いが、手持ちが何を言いたいか彼女には分かるのだろう。
「行きましょうトロメイン…………私達のやるべき事、そうでしょう? 昔の私を見ているようだったわ…………」
別のじてんしゃが通り過ぎる度に、レオネは一瞬動きを止めてしまう。
もうすぐ孵りそうな卵へ対し、彼女は何を想うのだろうか。