ポロック食べてみたいなぁ...
傷は癒えたが制服は破けたまま、戦闘には差し支えないらしいのでラウンド二の開幕だ。
(今のわたしは弱いです……ですが戦わなければ経験値が入りません、演算と実践では何十ものズレ、ブレが生じてしまうのだとメコンさん、ネリさんとの戦闘で理解しました。…………今度は負けません)
(なんかめっちゃやる気満々だしぃ~! こりゃ全力で行かないと覆されちゃうかもねぇ)
表情こそ取り繕ったままだが、脇を締めて拳を構えるファイティングポーズの少女は、どこか鼻息が荒くなっているというか負けられない意思が今までより強い。
鼻息を荒げようがフンスッ……! キュートでロリな雰囲気なのも変わりなし。
メタグロス種だからと下に見ていたランターンにマニューラ。立て続けにノーダメ敗北し自分は弱いと余計なバイアスを掛けず素直に認めて、格付けを組み替え直したのだろう。
赤い鶏冠を下ろして右目を完全に覆い隠す「メカクレ」属性を新たに所持したオニドリルの少女、爽羽佳だって〝普通に考えたら〟自分の圧勝のハズ。
だがその考えは通じないだろう、マスターの前に半分と付いてしまうけど、自分を預かって強くすると約束したジックの手持ちなのだから、自分の方が勝ち目は薄いくらいだ。今回こそ秘めたる力を発揮させて勝利を手にしてみたい。
「オッシ! 準備完了~! かたくりこ~お願い~!」
明るい明度を持つ茶色、仄かに黄色かかった象牙色、二色の翼を広げながらイヤホンを耳に差し込む。
「ミノノノミノ? ミ~ノ!」
多分『合意とみていい? ヨーイドン!』
……なフィーリングなのだろう。かたくりこがジャンプからの着地した瞬間、バトルスタート。
「飛行タイプの利点は地面技を無効に出来る、だけじゃないって教えてあげる!」
(上空から攻撃を仕掛けてくるぞ、メタグロス、キミが覚えている技の中に…………があったけど出来そうか?)
火蓋を切って落とされて早々、飛翔した爽羽佳はメタグロスの攻撃範囲から離脱。
公平を期す為にジックからは、メタグロスの所持技を教えて貰っていないが、獲物は近距離にしか届かない手甲であり、彼女が使用した技も近接に関連する物ばかりだ。
メコンとネリのバトルを観戦していたから、今まで使用した技どれが出て来ても、何とかしてやれる自信はある。相手の攻撃を食らわない空の領域は、地べたの面積の影響を受けない飛行タイプが持つメリットだ。
「卑怯じゃないかんねー! 飛行タイプの戦い方ってこんな感じだかんね!」
急降下、造波抵抗や摩擦抵抗で身体が熱くならないライダースーツに付属する、蹄を意識させていたライディングブーツが目にも止まらぬ早さで、微妙に湾曲しつつ細長く、先端が尖ったシャムシールやショテルにも似ている形状に変化していた。
「グロスちゃんが拳なら私は蹴りだよ! ドリルくちばし!」
「……ふッ!」
本来の姿の嘴に見立てた鋭利なブーツを軸として右回転、遠心力を利用し螺旋状に生まれ変わった爽羽佳が、メタグロスの少女目掛けて後方から低空突撃。
(いい動き、サイコパワーを駆使して軌道を読まれた? んんっ、彼女はエスパー技覚えているけど使わなかっただけなのかな? ネリは悪タイプだし)
どうやらサイコキネシスの件は、直に食らった本人と指示を与えていたジックにしか分からないらしい。
エスパー技が使えたとすれば厄介だ、射程外からの一撃離脱で削る以外に自分が勝つのは厳しい。
射程を選ばずに攻撃が可能ならば、飛行手段が意味を成さなくなり旨味が消える。
「…………」
「おぉっと、逃げさせて貰うよ! こうそくいどう」
地上に降り立った隙に少女が、拳を振り上げる……前に羽をカーテンのように撒き散らしながら上空へと向かい出す。
身体の力を抜いて身も心も軽く、素早さがぐーんと上昇するだけでなく、緊急待避にも使える技は専用のビデオカメラでなければその姿を捉えきれない。
公式大会などではあまりにも高速で飛び回るので、停止しているようにしか見えないテッカニンですら視聴者の肉眼に収めることが出来る、大変金の掛かった大経口・大解像度のカメラが必要なのだ。不正を暴くためにもしっかり記録に残すのは重要なのだ。
「…………こうそくいどう」
「ぬ゙ぁべぇッ!?」
次の攻撃に移る為に上空へ留まっている爽羽佳の真下から、ジェット戦闘機のエンジン音が聞こえて思わず、美少女が発してはならぬ色気無縁な妙ちくりんボイスが素で飛び出た。
(あの子のステータスを調べてみたら。野生とは思えないくらい技が豊富だった。上手く発動出来たらしいな!)
ボリューミーなツインテールを絞る形で装着されている、六角形のブルークリアリングから毛先に掛けて、少女が爽羽佳と同じ技を呟けば蒼白い光りが噴射し、飛行タイプと互角に渡り合える推進力を手にするロケットブースターに変化していた。
メタングの時点で地球との磁力反発を利用し宙に浮かび上がり、最高時速百km/hの空中疾走が可能である。
メタグロスである彼女はより高速に、磁場が発生する空間であればそれを燃料に変換、推力を発生させて超能力を使わずとも遠く離れた相手へ瞬時に接近でき、何処へ逃げようが彼女の攻撃範囲にもなる。
「かみなり……パンチ」
まるでイッシュ地方の「白陽伝説」に語られるレシラムの尻尾、蒼き炎を思わせながら光沢感もある粒子を纏わせ跳躍した彼女は、自身が彗星になったかの如く絢爛なるラインを曇り無き海空へ射す。
「また私が見てない技ぁ!? ひゃあっ!」
「れいとうパンチ」
「のわぁ゙ぁ゙あっとぉ!! なんで私の弱点ばっかり使ってくるのぉ~!」
「…………今までのバトルでは使う機会が無かっただけですので……弱点を突くのは極めて効率的で論理的だと思いますが」
自分と同じ技を使われて後方から迫るメタグロスは、電撃を込めたパンチを右腕から、冷気を込めたパンチを左腕から繰り出す。
飛行タイプとその他のタイプが、飛翔、または浮遊する際の違い。
飛行タイプは特別に技を使わずとも、生まれながらに備わっている翼を使えば重力から解き放たれて、自由を手にすることが出来る。
願っても願っても、飛行手段を所持出来ない者からすれば、飛行タイプと言う時点で恵まれているのだ。
おおぞらは おまえのもの
まいあがれ そらたかく
いまこそ かぜつかむとき
昔、爽羽佳が好きだった絵本で、特に印象的なセリフはずっと忘れない。
そのセリフに憧れていたから狭っちい田舎などで、一生を過ごすくらいなら焼き鳥にされた方がマシだった。
無理を承知の上で我武者羅に突撃、そのトレーナーが……
「って! 回想してる暇は無いんですケドー!!」
「かみなりパンチ、れいとうパンチ、かみなりパンチ、れいとうパンチ、かみパン、れいパン、かみP、れいP…………」
几帳面なまでに交互の属性パンチに潜り込むようにして、耳をつんざく爆音がメタグロスの後頭部から生じて、消えて、また生じる。
彼女は翼を持たずに飛行手段を手にした種族。
しかし生粋の飛行タイプである爽羽佳が、技を使わずともフライト出来てしまうのに対して、メタグロスは「常に技を使わなければ飛行出来ない」
ポケモンは余程のイレギュラーを除き、何らかの技を繰り出している最中に別の技は使用できない。
なので、攻撃技を使用する際には、飛行手段となっているこうそくいどうを自己キャンセルしなければ攻撃には移れないのだ。
(アヂ゙ッ!? 弱点とは言えカスっただけで……)
まさか空の領域まで侵入出来ないだろう。
爽羽佳の思惑を呆気なく裏切ってくれた少女は、見事に飛行手段を手に入れたが如何せん初使用なので、ピッチやロールなどのコントロールにまだ課題はある。
それに加えて爽羽佳に追いついても、飛行手段を解除しなければ空中での攻撃が不可能なので、まさに落ちながら攻撃するしかない。
メタグロスは悪条件の中で、姿勢制御の感覚を迅速にメモリに記録させフィードバック、素早いが種族柄ネリ並のスピードは無い爽羽佳の動きに付いていけるようになってきた。
「ほォ……りゃァァッ! せぇっ! りゃァ! そう易々と食らって、あげない! よ゙ッ!」
「…………!」
パンチを繰り出される度に練度が上昇していく。
初撃こそ驚いてしまいギリギリで避けたけど、別段勢いが無く二撃目のれいとうパンチでも、また私の弱点技だよと喫驚こそしたが、氷塊が掌に集まっていると察せたので予め回避の動作は作れていた。なので見た目と逆に内面ではクールに対応できていたのだ。
(キミの肘や掌を蹴り、及び突くことで攻撃を逸らせて来る。だが爽羽佳には少しずつダメージが通っているぞ。直撃した訳じゃ無く纏わせていた冷気や電撃が、通り過ぎただけで……キミの攻撃力って本当に凄いんだね……)
(…………早く指示を)
褒め言葉のつもりだったのだが。
ジト目で合図する少女は、目の前のオニドリルを倒して勝利という揺るぎの無い結果を得て、メタグロスたるプライドを取り戻し――後は、何かがあったハズなのだけど……
(なぜ、わたしは、強さに拘っているのでしょう……?)
四つものブレインが内蔵されている少女は、自分が求めている物へのルーツを探りつつ、爪先が嘴に可変したブーツによる、みだれづきをジックの指示に大人しく従って、装甲で全てを受け止めた。
カンッ、カンッ、カンッ、カンッ、カキンッ
五回当たったが、鳥だけにダメージなど雀の涙。無いよりはマシ程度。
「メッチャ硬いし~! 相性最悪なのは分かってたしぃ~! 諦めんなぁ~もういっちょうッ!」
ノーマル・ひこう。
どちらも鋼を大の苦手とするタイプ、メタグロスが例えばメコンと戦った時と同等の戦闘力しか持ち得ていなければ、どうとでもなったけど……
「…………っ、ハアッ……!」
今の彼女は明らかに強くなっている!
たった二戦を終えただけで、見違えるほど冷徹なる戦闘マシンと比喩されるポテンシャルを引き出しながら、場数では圧倒的に上である爽羽佳を押している。
「やっぱダメぇ! 一点に集中して穴を開けるのは無理だこりゃ! ご主人どーすんの? 私に勝ち目ナッシン……?」
後方へ振り返ると同時に、後ろ蹴りの要領でみだれづき。
落下するメタグロスに飛びかかる勢いで繰り出すも、手甲を横へと払われ突きが弾かれる。
地上へと激突する一メートル手前で、再びこうそくいどうを使用して、ツインテブースター(ネリが勝手に名付けた)も作動、上昇する爽羽佳に一歩も引かぬ速度で追われる側が、追う側に。
(これで、こうそくいどうのPPが切れてしまった……次の手はネリとのバトルで無意識に繰り出していた――)
ポケモンは無限に技が使える訳では無い。
どんな技にも「使用制限回数」があり、強力な技ほど消耗が激しい。
休息すれば次第に回復していくが、バトル中にPPの回復は出来ないので、何としてでも全てのPPが切れるまでに決着を付けなくてはならない。
わるあがき、な~んてしているポケモンの姿は、誰も見たくないからだ。
「…………ハッ、ハッ……ハァ……」
「ぜー……ぜー……ちょぉ……マジ、シンド……はぁー……」
メタグロスのこうそくいどうが、使えなくなったと同時に、箱庭フィールドへ降り立った爽羽佳も息を切らしており、今にも立ちくらみを起こしそうに鶏冠で隠れた、右目付近を手で押さえている。
ちなみに胸はほっとんど揺れず、ジッパーの隙間から東半球と西半球がコンニチハする事も無い。
メタグロスも疲労はあるが、高速で滑空しまくった影響からであり、ステータスチェッカーに記されている体力ゲージは、まだまだ全然余裕だ。
ちなみに胸は深く呼吸をする度に、「攻撃力とはこういう物だ」と、ロリでありながらグラマラスボディ、五百五十㌧級おっぱいを上下へと揺さぶらせている。地震が使えるだけに震源地……ココ二在リ。
(鋼……ズルい……タイプ相性……修正して……)
どのパーティにも一匹は欲しい、それが最大の耐性数を持つ鋼タイプ。
ズルいとオニドリルだけに、嘴ってしまう爽羽佳の気持ちに共感する者は多いだろう。
打開策は増えたけど持たないポケモンは、本当にどうしようも無くなり所謂「詰み」に陥る。
(あるっ! 爽羽佳には一つだけ鋼に有効な技が!)
彼は二人の少女に指示を与え、二人の少女を勝たせるつもりで案を練る。
優位ではあるが笑みは浮かべない、そもそもが無表情であるが……
スピードでは爽羽佳に分があるので指示を待つまでもなく、選択する技は決めているが――
(……………………)
ネリ戦であんな事になったので……このバトルではジックが命を下すまでは何もしない。
バトルでは独断で動かずに、大人しく彼に従った方が最短距離を辿って、強さに直結するだろうと合理的な演算処理の結果をブレインコンピューターで、導いたから。
強さを見て、強さを知り、強さを盗めばいい、それまでの辛抱であると言い聞かせて。
(サイコキネシス!)
天翔る二道の翼を撃墜するっ、血の気の通わぬ少女が鮮血よりも深紅の瞳を煌めかせ、少女の意思により組み立てられた不可視の超念力。
「キャァ! これってサイキネッ!? あ゙ぁ゙ッ――――ゔぐッ!」
上空二十メートル地点の爽羽佳に命中!
片側の羽を丸め身体を覆う防御姿勢を作る――のをジックからの指示が飛んできた瞬間に取り止め、キーとなる攻撃への布石〝とある技〟を使う為に、タイプが一致したエスパーの最メジャー技をド直球に受けてしまい、墜落。
(爽羽佳っ!)
(い゙ッ…………たいっ……しぃ……けど、しゃ~なしっ! 私がメタ子ちゃんに勝つ方法って、ソレしか無いんだもんっ!)
かなりのダメージを受けたけどまだまだァ……
オニドリル最大の持ち味は、一度飛び立つと丸一日降りなくても平気なスタミナ。
瞬発性はネリやムクホークにオオスバメなど、やたら強く恵まれた才能を持った後輩共には譲ってあげるけど、逆境にも屈しない気合い! 気合い! 気合い! の三K!
これだきゃ~譲れない!
スポ根論だけど耐えられないハズの攻撃ですら、見た目を裏切る持久力から変換したミリ耐え、リアルタスキ状態で踏みとどまって何度も逆転してきた。
「サイコキネシス……」
(見えない念波へ飛び込めッ!)
エスパーや極一部のポケモン以外は、視認不可能な波打つ念力空間が届く前に――
「自ら技の中へ……」
ヒット&アウェイ、一撃離脱が主な戦法だけど
や め た
「今の私ァ、すてみムクホークよりも〝すてみ〟だかんねェ! サイコキネシスで引き寄せてくれるんなら好都合だよっ!」
「…………!」
爽羽佳を超能力で強制的に、接近戦の間合いに入れ込みまだPPの残る、かみなりかれいとうか、何れかのパンチで決める。彼女とジックが描く勝利ビジョンだった。
負けを悟って自滅したのではなく、能力値が特別優れないオニドリルは時に一か八か、九十九無理でも一に賭ける苛烈な神風戦法へと切り替えなければ、それこそ敗北を待つだけになってしまう。
「くゥ……らああえぇ゙! ドォリル……ラァイナァァーー!」
ドリルくちばしとは逆回転、爪先を軸に左回転しながら物理法則と概念さえ操作しているメタグロスへと最終突撃。
この一撃に全てを賭ける、ダメだったら……そン時はそン時だ!
純粋な速度上昇に重なるのは、重力の働く方向を変化させている少女のサイコキネシス。
離れた物体を加速させ、動かす概念操作術を利用して、一発限りのミサイルは火花の代わりに二色の羽を舞い散らしながら、対象を貫かん。
近い場所まで運んでくれるんだから、地に吸い寄せられ吸い上げられる地面属性付与の技が命中する。
地面から力を借りる爽羽佳のドリルライナーは、対象が地に脚を付けていなければ効果が無い。
なので相手が空中に居ては発動したくても出来なかった。
まずメタグロスのこうそくいどうが使えなくなるまで耐える、飛行手段を失ったならば自分次第だ!
「…………!?」
避ける事は出来ない。サイコキネシスから次の攻撃へ移るまでにはラグが生じる。
キャンセルし、胸の前で両肘を重ねて防御の姿勢をジックの指示に従い、先読みの如く早さで作り上げた。
爽羽佳にこの手甲を砕く事が出来るのか。
いや、彼女の外装甲は傷一つ付かなくてもいい、一発逆転の狙いは――
「――ッ゙――これっ、ば――」
内面への干渉だ。
「ッ゙――ああああ゙あ゙ぁ!あああッ゛ーー!!」
きゅうしょに あたった!
空中へと突き出された少女は、動力コアに亀裂が走ったとまで思わせる痛みが内側へ走り、受け身も取れぬまま仰向け姿勢で落下した。
一方、爽羽佳は起死回生の一撃がキマって、鋼の重鎮を赤ゲージまで減らせた(ルール上の勝ち)高揚感で頬を緩ませながら、あざといまでにギャルギャルしいまでにハングルース!
そして三点着地……するも、上体が倒れかけてしまい、羽を羽ばたかせて女の全財産である顔面を、地べたにキスさせるのは避けたけどボロボロだ。
「きぃ……わどいけど私の勝ちィ! ご主人を信じていれば不可能も可能となるのだ!……あっ、も、ダメ……横にさせて……オウフッ……」
メタグロスと並列する形で仰向けに倒れ込む。 彼女の言葉通り、ルールでは爽羽佳の勝ちであるがギリッギリ。
雀の涙であったみだれづき、つつく。
僅かながらでもダメージを稼げていて良かった……アレが無ければドリルライナーを急所に当てても確定で耐えられていただろう。
「…………カハッ、かひゅ……ッ! 「運が良かった」……の、一言だけでは片付けられませんでしたね……立派な戦略……ですっ……」
急所に当ててしまえば、鋼の要塞であるメタグロスでさえ、外壁を貫通されて内側へとダイレクトに軽減不可ダメージが入ってしまう。
チタニウム合金を遥かに上回る材質によって、積層構造となっている手甲、及び全身防護ですら無力! 鋼タイプだって内側に大ダメージをぶつけられたら、痛いじゃ済まないのだ。
「打ち落とされたのは、きあいだめを使っていたからなんだ。気合いを溜める事によって急所に当てる確率を上げる技。そして爽羽佳の特性は通常の、するどいめじゃない……急所時のダメージ大幅増加のスナイパー」
メタグロスの少女は、生まれてから三戦目のバトルである爽羽佳戦で、ジックも「彼女は頭が良いから、実践データを反映させて自己能力を覚醒させている」だけでは説明が付かない程に、突然の強さを手にして爽羽佳を押していた。
タイプ相性? それもあるが技の出が実にスムーズでメコン戦、ネリ戦で少なからず感じていた不安感が何も無かった。
初の電磁高速移動も最初こそ、ぎこちなさが残り攻撃を当てられなかったが徐々に、修正していき超短期間内で攻撃を掠らせ、飛行タイプと互角な空中戦闘力を魅せつけてくれた。
メタグロスが突如として強くなった理由は――――――――なのだが、今は本人もジックも気がつかない。
「なる……ほど、所有しているアイテムは……ピントレンズ、ですね……」
「そだよっー……きあいだめや私の特性と……相乗効果になるんだってさぁ……」
下地が整えられた〝運の良さ〟
単純にドリルライナーで突撃しただけでは、いくら弱点と言えど呆気なく耐えられて返り討ちにされていた。
極限まで威力を高めるには、急所に当たりやすい技とアイテム、急所に当てればダメージが跳ね上がる特性をシナジーさせるしかなかった。
それでも耐えられたら潔く、貴女の方が強いと賞賛の言葉を掛けるくらいは、ジックや皆と旅をしてきた爽羽佳にとって難しい事じゃない。
「キミが正式な手持ちじゃないからって、俺は贔屓してないからな? どっちも勝たせたかったんだから」
「…………ハイ、ですがわたしの負けと言う結果は変わりません……」
まんたんのくすりは高価、ピーピーエイダーは非売品であるが惜しみなく少女の回復に役立てているジック。
回復アイテムは消費期限が非常に長持ちするので、溜めるだけ溜めておいている。
それでも少女が戦い終わる度に、体力回復系の薬は兎も角として、PP回復系のアイテムを使っていたら予想よりも早く枯渇してしまうかも……ヒメリのみも同様で、大量に所持しているけど有限では無いし。
ネリにお使いとして、木の実夫婦から購入して貰おう。
「でもさっ、得るものはあったでしょ? 負けは恥じる事じゃない、何かを得られるのが重要なんだ。結果は大事だけどそれ以上に中身の方が重要さ、得るものが無い勝利は空しいものだよ、得るものがある敗北の方が価値はある、学べることがある……俺はそう思ってるよ!」
「……………………」
得た物……たくさんある。
磁力を利用したブースター使用による飛行。
段々と攻撃が当てられるようになった。
覚えている技の一覧には表示されていなかったサイコキネシスを、境地に立たされた本能からか覚醒させた。
理由は不明だけど……自信を持って戦う事が出来た事。
「…………その言葉、わたしのメモリに記憶させて頂きます。負けと言う結果に関しては、あまり良い気持ちにはなれませんが」
ジト目でいぶかしげな語調だが、一理くらいはあると認めている。
負けはした、それは覆せぬ事実で掌から磁力を暴れさせて、表情変化の代わりに気持ちを表現させているが――次にメコンやネリと戦えば善戦、もしくは勝利できるかも知れない――とすら思えるようになっていた。
「さっ、今日の練習はこれで終わりだ! おやつじゃないんだけど、お~いかたくりこ~!」
「ミノッ! ミノミノォ~…………ホッホッホォ~♪」
歩いているだけで、つらりと汗が流れてくる気温の中で激しいバトルを繰り返し、動き回った身体からはドっと汗が吹き出ている。
冷蔵庫で冷やしていたポロックケース、ポフィンケースを突起に乗っけながら、器用に跳ねているゴクリンフェイス。
焦がさず零さず、ポフィン作りの達人に短期間だが弟子入りして相当扱かれた、過去の経験値からレベルを高めつつ、滑らかなポフィン製作が出来るようになったジックだが、最大四人までポフィン作りに参加出来る為、一人だとどれだけ頑張ろうと四人で適当に製作したポフィンの方が美味しかったりする……
「ご主人ったら気が利くぅ~♪ すっぱいのいっただきぃ~!」
「マニュハハハ! ネリちゃん嫌いな食べ物はニャいけど、冷たいお菓子は見逃せないニャんね! からしぶは大人の舌触りにゃし♪」
「私は……こ、こってりしたあまいポフィンを貰います……一つだけ、一つだけならいいですよね?……///」
「ミノホッホォ~! ミノミノォ♪」
各自が好む味と形のポフィンを手に取り、ポフィン仲間と試行錯誤の末に生み出された、オリジナルブレンドのレシピ。
チイラやリュガなど、幻とさせ呼ばれている希少種を惜しみなく使った物。
低予算で誰でも手に入れられる、売り物の木の実だけでも「こんなに美味しく作れます」と、PR出来る完成度を誇る物。
くどいくらいに甘ったるい物、食べた瞬間かえんほうしゃする辛い物、ゴンベもビビるすっぱ~い物……美容と健康を最優先した物まで様々な種類を揃えている。
ちなみに……各ポケモンのせいかくは
メコン←おっとり
爽羽佳←ようき
ネリ←ようき
かたくりこ←のうてんき
メタグロス←れいせい
であるが、必ずしも対応する味が一番好きになるわけではない。
例を挙げれば、メコンは渋い味を持つポフィンやポロックが好きなせいかくと、一般では知られているおっとりだが、どちらかと言えば渋いのは苦手で甘い味が大好きである。
「メタグロス、キミも食べないか?」
「わたしはいりません、摂取する必要性がありませんので」
『俺は疲れてないけど、ポロックも頂くぜ!』
あの口でどうやって噛み砕いているのやら、子供だからいっぱい食べるのはお仕事のような物。
アグアグしてるかたくりこは、食べ過ぎだが……一切手を付けず体育座りしている少女へ、ケースごと持って行くが無愛想な表情で、ひんやりポフィンよりも冷めた発言を投げられてしまった。
「稼働エネルギーは一日三食の食事で事足ります。過剰な摂取量となりますので口にはしません……シャワールームを借ります、その後はバルコニーでシミュレートを繰り返しますので……では」
味や形どうこうではなく、必要が無いから食べないだけ。
少女らしい合理的な理由だけども……バトルが終わってしまえば協調性に乏しい、ロボットよりも感情が通らない少女へと戻ってしまう。
「……わかった、お疲れ様メタグロス」
労いの言葉にも無反応なのは、流石のジックもおいおいと腕を組んでしまう。
非共存的とまでは行かないが、コミュニケーションを自ら取ろうとしない。必要のある物だけ、必要なシチュエーションでのみ、最低限を交わす。
ジックや皆は彼女をもっと知りたいのだけど、その瞳に心は鉄壁ガードされてしまって、笑顔どころか会話のやり取りを続けるのすら難しい。彼女と出会ってから喜びの感情が浮かんだ時がない。
(まぁ……まだ一日足らずだしな、俺の指示を聞いてバトルしてくれただけ上出来、と思うようにするか)
少女が答えを出すまで、一度でいいから喜ばせてみたい――案外、早くその時が来るとは思わなかったが――
(あのぉ、ジックさん……あの子のそのっ、スカート……覗いてないですよね///)
(ないっ! アルセウス様に誓って! スカートの中身は見えなかったし見てません!)
午後にミナモデパートへお買い物しに出かけるまで、メタグロスの少女は【つけてない はいてない】
こうそくいどうで空中を飛び回れば、そりゃあ簡単にミニスカートの中身なんて拝めてしまうかもしれない……が、不思議な力が働いて【ツインテールが都合良く局部を隠した】ので、成人向けの描写は回避した。
バトル真っ最中の爽羽佳はそれどころじゃない、ジックは最新の注意を払っていたが、ツインテガードで事なきを得て(こうそくいどうの指示を下して暫くしてから「やべぇ!」と気がついた……)
メコンは はいてない 少女を禄に見れず俯きながら赤くなり、ネリとかたくりこは少女の姿を追う内に「そういえば、はいてなかった」事を思いだした。
肝心の本人に関しては、そもそも下着の必要性を全く理解していないので、痴女も顔面オニゴーリとなる清々しいまでの風通しの良さである。
オニドリルだからこそ「脚」を使ってみるスタイル! そのまんま嘴でも良かったんですが...格好良さそうだったので!
ちょいエロテイストは忘れず!
おっぱいに関する描写も必ず!がコンセプトです!(何)