第1話
物を拾った。
親戚や友達からの貰い物、誕生日、はたまた大好きな家族からのプレゼントなどで幼い子供が大切に胸に抱いていそうな、可愛いらしい微笑みを浮かべた淡いブラウンのテディベアだ。
ふわふわとした触り心地の良い布地についた砂利や埃などの汚れを撫でるように指の腹で払う。取れかけてしまっている片目は下手に動かせば今にも取れてしまいそうで、弱く眉を寄せながら、はみ出た綿を指先で優しく入れ込んでいく。
酷く閑寂な一帯。
立ち入り禁止、と書かれた標識が頼りなく風に揺れた。
路上にひっくり返っていたり衝突した状態で歩道に突っ込み静止したままの車は所有者を失い文字通り既に廃車と化していた。
お世辞にも住みたい・・・と言うより近寄りたくないと思ってしまうくらい、街であるのに街でない場所の人気は、別世界のように清々しいほどに皆無だった。
バサバサと鳩が飛び去る。
足元で乱雑に散らばるガラスの破片に映った気味の悪い大きな目玉へ反射的に銃口だけ向けて引き金を引く。
白色の硬質な異形が振り上げた刃は、がら空きだった背中に届くことは無かった。
壊れた乳母車
片っぽの靴
捩じ曲がった自転車
中途半端に崩れた建物
瓦礫の山
千切れて拉げた花
それらを目に映しつつ、角張った豆腐の如き超絶巨大な物体を背に、ノイズの入った通信機に指を添える。
───直後、異常を報せる警報が鳴り響き渡った。
「うおッ、マジか・・!!」
遠くで佇んでいた青年の肩が警報の回数に驚いてビクリと跳ねた。前髪をカチューシャで後ろに流した髪を片手で無造作に掻きながら、“おいおい今日は忙しいな”と面倒そうに溢す。
「こちら白縫衣。現在地から北北西の方向にて
《こちら本部、了解。・・・ただでさえ連戦なんだから、必要なら応援を要請するように。いいわね?》
「本当にヤバそうなら、迷わずそうさせて頂きますと──も!」
地を蹴って高く跳躍。
(・・・目視でギリ警戒区域内ってとこですかね)
もう一度、足のサイズの二分の一程度の小ささにまで縮小させた足場を強く踏み、自らを弾丸に見立てるかの如く、斜め下方へ身を踊らせる。
「──オプトリ、
刹那、遥か遠方に飛び去った少女。
その体躯から噴射したと思われるトリオンエネルギー。
きらきらとしたコバルトグリーンの微粒子の軌跡は、遠目からでも充分に確認出来た。
「うーーわ。元から小せぇのにあっという間に更に小っちゃくなっていきやがった・・・空飛ぶとか女版ア●ムかっての。チートリオンにしか成せねぇ
両手に装備した散弾銃の銃口を眼下に群れる白色の異形へ向けて、撃つ。
今日だけでもその動作が何度目かなんていちいち数えちゃいない。
連射性に優れた物に改造が成された銃口より放たれた黒色の弾丸は、引き金が引かれた分だけの数かと思った次の瞬間には数百発近くまでに分散していた。
しかし
──グオオォォォォォッッ!!
誘導の不足を“視線”で補われた隙の無い射撃。
全弾をまともに食らった異形の群れにのみ、その至る各所に漆黒の花が咲いた。当然、その重みに耐えられるわけも無く。
(連戦?それがなんですか。活きが良くて結構!それでこそ
咆哮と砂埃を上げて地に釘付けとなった
(アイビスはさすがにあれだけれど、チカ子の鉛弾ライトニングの弾速は約束されているみたいで。うちの子はそんな彼女を(トリオン的な意味で)上回ってしまっているのでその辺はお察し。
のちの【ホニャホニャ主人公設定】では既に部隊に配属後の時点の物を載せていますが、プロローグから暫くは配属『前』のお話となります。少々ややこしくて申し訳無いですが、何卒よろしくお願い致します。)