ラウラが軍隊をクビになった場合の話   作:赤いUFO

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これ書きながら考えた追加設定。
1話でのラウラは常に目からハイライトがありません。(今更)

正直、クロエの口調がよくわからない。
心の中の独白や千冬とサシで話していた時は淡々とした喋りだし、一夏から離れる時は敬語だったし。



世界にひとつだけの花

「ラウラさん、勝負です!」

 

 先日行われたテストが全て返却された後の休み時間にクラスメイトの少女――――アデーレが意気込んできた。

 それも毎回のことなのでラウラは苦笑しながらも分かったと頷いた。

 

 互いのテスト見せ合った結果、合計点が20点程開いてラウラの勝ちとなった。

 悔しそうに体を震わせているアデーレにラウラに後ろから抱きついていたモニカがポツリと呟く。

 

「いつも通りの結果だね」

 

「うぐっ!?」

 

 モニカの言葉にアデーレが涙目になって口をわなわなと動かす。

 このアデーレという少女。ラウラが居なければ学年首席に立っていた筈の少女である。

 入学当初、自分が1番だと確信した矢先に首席の座に就いたラウラに対抗心を燃やし、こうして事あるごとに勝負を申し込んでくる。

 今のところ全敗という結果だが。

 

「次こそは……!次こそは負けませんから!」

 

 ビシッと指をさして去っていくアデーレ。

 それにモニカが疑問を口にする。

 

「次勝ってもあんまり勝ち星に差はないよね」

 

「追い打ちをかけるのはやめろ」

 

 抱きついている腕を払ってラウラは立ち上がる。

 

「それにしてもいつも勝負を断らないけど、ラウラってアデーレのこと意外に好き?」

 

「そうだな。アデーレは対抗心や敵意はあるが、悪意はない。いつも真っ向から物申してくる彼女を嫌いになる理由はないさ」

 

 それも決して加減されることを好まず、正々堂々としたアデーレは純粋に格好良いと思う。ラウラが言っても嫌味にしか聞こえないだろうが。

 

「ふーん、そっか」

 

 どこか嬉しそうにするモニカはラウラの手を引く。

 

「ねぇ。帰りにいつもの喫茶店行こう!あそこのケーキ食べたい!」

 

「わかったわかった。しかし、少し前に太ったと騒いでいたが、いいのか?」

 

「あぁ、あれ?実はお腹とかは全然増えてなくてまた胸がおっきくなってただけだった!」

 

「それは羨ましい限りだ」

 

 半眼で呆れながらラウラは引かれた手に抗わずに歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニンジンの形をした冗談のようなラボで、ひとりの少女が自分に良く似た銀の髪を持つ少女をモニター越しに観ていた。

 その少女はアルバイトのレジ打ちをしているというどうということもない映像。

 

(ラウラ・ボーデヴィッヒ……私が成れなかった完成形()()()少女)

 

 そんな彼女が只人へと堕とされ、埋没していく姿に彼女は違和感と疑問を抱いていた。

 

(遥か高みから落とされた貴女は、何故そうも幸せそうに生きている?)

 

 数年前に観たラウラはいつも表情に陰りがあった。

 しかし今はその頃に比べれば年相応の少女のように感情が表情に表れていた。

 それは諦めか忘却か。それとも他の――――。

 そこまで考えていると.。

 

「クーちゃん!何観てるの?」

 

「束様……」

 

 後ろから抱きついて来た主である世界最高の頭脳を持つ天災。篠ノ之束だった。

 彼女が映像を確認していると質問して来た。

 

「最近この子のことよく見てるけど、気になるのかな?」

 

「いえ、そのようなことは……」

 

 曖昧な答えに束はふむふむと小さく頷く。

 

「気になるならさ、会いに行っちゃえば?」

 

「え?」

 

「この子のことが気になるんでしょ?モニター越しで観てたって答えなんかでないし。直接会った方が手っ取り早いんじゃないかな?」

 

「それは……」

 

 言っていることは理解するが、会って何を話せば良いのか。

 しかし束のテンションを上げて自身に拍手する。

 

「さっすが束さん!的確なアドバイスだね!それじゃあさっそく行こうか!」

 

「あ、あの……束様?」

 

 束に抱きかかえられると丸形のポッドに乗せられる。

 それは、某龍の球を探す摩訶不思議アドベンチャーに出てくる一人用の宇宙船に似ていた。

 

「疑問を持ったらさっさと解消した方が良いよ!じゃあクーちゃん!行ってらっしゃい!」

 

 ポチッとボタンを押すとポッドが作動し、ラボから球体がひとつ飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(と、いうわけでドイツまで飛ばされたわけだけど)

 

 しかも目的の人物が暮らしている町にピンポイントでだ。

 ここまでくると予め準備していたのではないかと疑ってしまうが主ならそれくらい数秒で準備設定出来そうだとも思う。

 

(どんな顔して自身の疑問を口にすれば……?)

 

 今まで、直接接点があった訳でもない相手だ。どのように会って話すべきか。

 乗り気でないのならさっさと帰ればいいのだが、これは主である束が用意した機会だ。何もせずに帰りましたと報告するのはあまりにも心苦しい。

 どうしたものかと考えていると不意に後ろから衝撃が走った。

 

「ラーウラッ!」

 

 後ろから顔だけは知っている栗色の顔の少女が抱きついてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にごめんなさいっ!」

 

 頭を下げる時は90度と言わんばかりにモニカは直角に腰を折った。

 見慣れた銀の髪に親友と勘違いして後ろから抱きついてしまい、人違いだと判って慌てて謝罪する。

 それは向こうがベンチに腰かけていたことで身長差が判り辛かったこともあった。

 

「いえ、お気になさらずに」

 

 相手は気にした様子もなく手をひらひらとさせていた。

 目を閉じていて杖を持っていることから恐らく盲目であることを察して。なおも罪悪感が募る。実際は違うのだが。

 

「と、友達があなたに似た髪の色だから勘違いしちゃって。でも考えてみればあの子は今、アルバイトの時間だったし。うう……」

 

 自分の落ち度に恥ずかしがっているモニカに銀の少女は不思議そうに質問した。

 

「そんなに似ていたのですか?」

 

「あ、はい。髪もそうですけどなんていうか雰囲気が、ですね。」

 

「そう」

 

 どこか考え込むような仕草をする年上の少女にモニカは問いかける。

 

「えっと、その……気になるんですか?」

 

「えぇ。少し……」

 

 淡々とした口調の彼女にモニカが提案した。

 

「もし良かったら会って行きます?今はアルバイトの時間ですし――――なんちゃって!」

 

 さすがに何を言ってるんだと思い直し、モニカ誤魔化すように両手を振るった。

 しかし相手からの返答は意外なモノだった。

 

「そう、ね。お願いできますか?」

 

 口元を僅かに上げて薄く笑う少女に引っ込みがつかなくなったモニカはこっちですと杖を持っていない手を握る。

 

「あ、あたし、モニカ・ペーツって言います。お姐さんは」

 

「私は、クロエ。クロエ・クロニクル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、連れて来ちゃった☆」

 

「なにをやっているんだお前は……」

 

 テヘペロと言った感じに舌を出して誤魔化そうとする親友に溜息を吐いてラウラはクロエと向き合う。

 

「私の友人が申し訳ないことをした」

 

「いえ。頼んだのは私ですから」

 

 何故か目を閉ざしたままにラウラを観察している少女にどこか気まずい思いをしていると。店の奥から店長が出て来た。

 

「ごめんなさい、ラウラちゃん。ちょっと奥の在庫整理を手伝って――――」

 

 店長が現れ、話していた3人を見ると硬直する。

 

「そ、そそそそそそ、その子は?」

 

「クロエ・クロニクルと申します」

 

 小さく頭を下げるクロエ。

 そこでモニカが敬礼のポーズを取って適当に関係をでっちあげる。

 

「ついさっきそこで友達になりました!」

 

「え?」

 

「おい」

 

 銀の少女2人からツッコまれるが店長の耳に入っていない。

 店長はクロエの両手をガチッと掴むと息を荒くして初対面とは思えないことを聞いて来た。

 

「クロエちゃんね。貴女、可愛い洋服を着てるわね。そういう服が趣味なの?もし良かったらうちの服も着て行かない?」

 

「店長」

 

 ラウラが止めに入るが雇われ人の性か強くは止められない。

 

「まさかラウラちゃんと同じくらい素敵な娘がこの店を訪れるなんて!おかげで急激に創作意欲が滾ってきたわ!」

 

「え……あの……」

 

 戸惑っているクロエにモニカがあちゃーしまったという顔をする。

 

「ごめんクロエさん。ちょっと被害が出来るかも」

 

「ねえ、クロエちゃん。ちょっと着替えて、お写真とか撮らせてもらえないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Eわぁ!カワEわぁ!!2人並ぶと2倍どころか二乗してしまうわっ!?」

 

 カシャカシャとスイッチを押しているカメラのフィルターに写っている先には着替えさせられたラウラとクロエはシーツの引いた床に座らされ、くっ付くか付かないかの距離で顔を近づけて視線だけ斜めにカメラを見るような視線で果物を持たされて撮影されている。

 2人は秋用のドレスに着替えさせられており、ラウラがオレンジ。クロエが水色のを着ていた。

 

 最初はクロエだけ何枚か撮っていたのだが、ラウラも一緒に入るように頼むと渋々一緒に写真を撮ることになった。

 というか店長は興奮しすぎて鼻血が出ている。

 

 粗方撮って気が済んだのか店長はクロエにお礼を言った。

 

「いきなりごめんなさいね、クロエちゃん。でも良い画を提供して貰えたわ。これで100着は服が縫えそうよ!あ、今回着てもらったドレスはそのままあげるから。今回のお礼とお詫びに」

 

「は、はぁ……」

 

 店長のテンションに曖昧な返事を返すクロエ。

 そこでレジ打ちの方に回っていたモニカから呼び出しを受けてそちらに行ってしまう。ついでにもう着替える許可を貰えた。

 

 予期せず2人っきりになってクロエはラウラを呼んだ。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

 不意に呼ばれて驚いたラウラが若干の警戒を見せた

 

「なんで……お前がその名前を?」

 

 彼女にはリットナーの姓でしか名乗っていない。

 この近くでボーデヴィッヒの姓を知るのはそう多くない。

 しかしクロエはそれに答えずにラウラに質問する。

 

「貴女は本来、軍での栄光が約束されていた筈の存在。その為に貴女は造られた。でも、只人の身に堕とされ、完成されたボーデヴィッヒではなくなって、貴女は幸福になれたのですか?」

 

 ラウラはもしかしたら目の前の少女は軍の関係者なのかと思い至ったが今更接触してくる理由が思い至らない。

 しかし閉じた目で真っ直ぐ自分を見据える少女にラウラは自然と質問に答えていた。

 

「あぁ。私は、幸福だ。嘘偽りなく」

 

「それは、どうして?もう、軍に戻れないから?」

 

「それは違う。私は自分からあの場所を出たんだ」

 

 ラウラの答えにクロエが少しだけ驚いた表情をする。

 

「優しい人に出会った。その人に色々なことを教わって。軍が期待したラウラ・ボーデヴィッヒとは大きく外れてしまったが。私はそれで良かったと思っている。今の私は、軍が誇れるラウラ・ボーデヴィッヒではなく、あの人が誇れるラウラ・リットナーで在りたいと願っているんだ」

 

 一度大きく息を吸って自分の想いを口にする。

 

「もう、ISに乗るのも戦いに身を投じるつもりはない。私はここで、あの人の孫娘として生きていく。そう決めたんだ。私自身の意志で」

 

 ラウラの言葉をどう受け取ったのか。彼女はあることを思い出していた。

 それはいま彼女自身が仕える主のこと。

 

『君は今日からこの束さんの娘だよ!よろしくね』

 

 突然現れて自分を娘にすると言い出した予測不可能な行動をする主。

 初めて自分に手を差しだして、引っ張ってくれた女性。

 

『う~ん。名前がないのは不便だなぁ。そうだ!君は今日からクロエ・クロニクルだよ!いい名前でしょ、クーちゃん!』

 

 それが自分を利用するために傍に置いているのか。それともただの気まぐれなのかは未だに判らないが、自分を拾い上げてくれたのは間違いなくあの人で。

 この少女も、同じなのか。

 

「そう。貴女は、私にとっての束様を見つけたのですね」

 

 納得したようにクロエは微笑んだ。

 なら、もうここに用はない。早々に引き払うとしよう。

 

「さようなら、ラウラ・リットナー。どうかもう私たちの人生(みち)が交わらないことを願ってます」

 

 平穏に生きようと決めた彼女に、自分のような異物が交ってはいけない。

 一度だけ、ラウラの頭を撫でて着替え終えたクロエはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました、束様」

 

「おかえりークーちゃん!どうだった?」

 

「とても有意義な時間を過ごさせていただきました」

 

「そうかそうかー!それは良かったね!」

 

 ラボの機械を動かしながら嬉しそうに笑う。

 そこでクロエが束に袋を渡す。

 

「おみやげ?束さんに?」

 

「差し出がましいと思いましたが、今回のお礼にと」

 

 ふむふむと束が袋の中身を取り出すとそこには白いドレスが1着入っていた。

 それは、撮影の時にクロエが着ていたドレスの色違いだった。

 

「その……束様のご趣味に合うか分かりませんが――――」

 

「ひゃっほぉおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 ドレスを掲げていきなり奇声を発した束がクロエを両手で掴んでたかいたかいし始める。

 

「ありがとう、クーちゃん!うちの娘は世界一ぃいいいいいいいっ!!」

 

 そんな破天荒な主を見て困惑しながらも、クロエは思う。

 確かに自分の主は世間から見れば善人ではないだろう。

 

 それでも、初めて手を差しだして家族になってくれた女性で。

 自分は、この人が、大好きなんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの、ラウラ。何か考え事?」

 

「いや、そういう訳ではないのだが……」

 

 今日アルバイトであった年上の少女、クロエ・クロニクル。彼女は一体何者だったのか。

 考えても答えは出ないのだが、やはり気になってしまう。

 だがすぐに思考を振り払った。

 

「おばあちゃん。私は、貴女と出会ってから変われただろうか?」

 

「もちろんよ。1年半前からしたら想像できないくらい変わった。いえ、成長したという方が正確かしら」

 

「そう、だろうか……」

 

 やはりそういうのは自分では実感しづらいのか、ラウラは首を傾げる。

 そんなラウラに微笑んで義祖母は遠くを見つめる。

 

「これからラウラはどんどん成長するのでしょうね。学生を卒業して。仕事をして。好きな人が出来て結婚や、出産。そう考えると私もまだまだ頑張らないといけないわ」

 

 頑張らないと。その言葉にラウラは僅かな不安を覚えた。

 去年、まだラウラがボーデヴィッヒだった時。義祖母は一度倒れた。

 彼女はもう高齢だ。知らないうちに風邪を引いてそのまま、という可能性は充分にある。

 先程の彼女の想像はラウラからしたらまだまだ先のことのように思えるからこそ不安になる。

 

 ラウラは義祖母に擦り寄った。

 

「なぁ、おばあちゃん」

 

 この生命は、誰かの都合で造られた歪な生命なのかもしれないけど。

 軍の期待に応えられなかった。出来損ないのレッテルを張られた。そんな未熟な存在だけど。

 そんな自分が貴女に出会えて、育ててもらって。自信を持って言えること。

 

 それはきっと、大輪で凜とした花ではなく、小さく楚々とした花。

 

「私は――――生まれてきて、よかった」

 

 その花が、確かに咲い(わらっ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品は一旦置きます。思いついたら何か書くかもしれませんが、今は全くアイディアがないので。
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