ラウラが軍隊をクビになった場合の話   作:赤いUFO

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ふわーはっはっはっ!!エタッたと思ったかぁー!

はいすみません、ごめんなさい、謝ります。エタッてました。
ISヒロイン達の扱いに四苦八苦してます。
今回も目標の場面まで行かず、3話では終わらないと判断しました。



とらべる とぅ じゃぱん【2】

「完璧ね……」

 

 朝方。7人が集まるには狭すぎる室内。

 その部屋の中で、ノートに書き連ねた作戦に満足した様子で大きく息を吐いた。

 

「えぇ! 正しく隙の無い作戦ですわ。これだけの作戦立案能力が学園入学当初から有ったらと思わずにはいられません!」

 

 集まった少女たちは目に隈があり、徹夜して作戦会議を重ねた。

 全てはこれ以上ライバルを増やさない為に。

 学年も3年に上がり、高校生活最後の夏休み。

 その貴重な時間を想い人と。出来れば2人きりで過ごしたいと思うのはごく当たり前の感情で。

 その権利に急な横槍を入れた相手に好印象は持てなかった。

 ならば、こちらが横槍を入れるのは当然の権利ではないだろうか? 

 

「ふふ……一夏め、他の女に現を抜かすなど……見ておれよ」

 

 そんな危険な思考に囚われた彼女逹は、本来なら馬鹿な考えと切り捨てる為のブレーキがかからない。

 

「目にもの見せる……」

 

 女性達の心をここまで惹きつける一夏が悪いのか。それとも、恋心に感情が振り回されている彼女達が悪いのか。

 

「ふふふ……楽しみだなぁ……」

 

 危険な光を眼に宿した先輩達のテンションに付いていけず、蘭は眠そうに欠伸をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛行機から降りるとラウラは自分の荷物を受け取り、待ち合わせの人物を探していた。

 しかし、ラウラが見つける前に向こうの方からラウラを見つけてくれた。

 

「ラウラ!」

 

 手を振ってこっちに来るように指示する一夏を見て、ラウラはホッとしてそちらへと向かう。

 

「出迎え、ありがとう一夏。しかし、よくすぐに見つけられたな」

 

「あぁ、ほら。ラウラは目立つし」

 

「む」

 

 低身長で銀髪オッドアイというラウラの容姿はそれなりに目立つ。

 現に今も彼女の事を見ている人がチラホラと。

 それに気付くと誤魔化すように質問した。

 

「一夏、眼鏡をかけているようだが視力が落ちたのか?」

 

 ラウラに指摘されて気付いたように眼鏡に触れる。

 

「いや、これは最近パソコンをよく使うから目が疲れないようにブルーライトカットの眼鏡を勧められたんだ。最近付けっぱなしだったから」

 

 照れて頬を掻く一夏。

 

「似合っているよ。うん、理知的で頼もしく見える」

 

「それって普段はマヌケで頼りなくみえるのかな……?」

 

「む。そういうつもりで言ったのではなかったのだが……」

 

「分かってるよ」

 

 2人で笑っていると千冬がやって来た。

 

「お前達、そんなところで立ったままでいるな。他の人達の邪魔になるだろう」

 

「あぁ。そうだな、千冬姉」

 

「今回は、私のわがままを聞いていただき、ありがとうございます、織斑千冬さん……」

 

 ペコリと頭を下げるラウラに千冬が苦笑する。

 

「気にするな。先ずは私達の家に向かい、荷物を置いてもらう。そこからは一夏に案内してもらえ。私は仕事があるからすぐに学園に戻らなければならないからな」

 

「はい。お世話になります」

 

 ペコリと頭を下げるラウラの頭を軽く撫でてから車へと乗り込んだ。

 千冬の運転で移動していると話す。

 

「そういえば一夏。お前は運転免許を取らないのか?」

 

「今年は生徒会の方で手一杯だったからさ。来年にお金を貯めてから合宿にでも行こうかなって」

 

「費用は私が出す。運転免許くらいは持っていた方が良いからな。変な遠慮をするな」

 

「うーん。でもなぁ……」

 

 一夏も来年には大学生だ。

 運転免許の取得くらいは自分でお金を貯めてどうにかしたい。

 

 ちなみにラウラは運転自体は出来るが軍を除隊した時に免許も使えなくなった為、再び取得しなければならない。

 

(そういえば、来年誰か免許を取得したらドライブを兼ねた旅行に行こうという提案があったな)

 

 女友達3人でドライブ旅行。

 それも楽しそうだと思い、もう少し想像に耽ってみる。

 やはりラウラ自身が運転するか。もしくは何かとしっかりしてるアデーレか。

 モニカは、免許の取得に手間取りそうだと考える。

 そんな事を考えていると運転をしている千冬が話しかけてきた。

 

「そういえば、リットナーは進路を決めているのか? まだ先の事かもしれないが」

 

 教師として気になるのか、質問する千冬にラウラは少し躊躇いつつも答える。

 

「はい。まだ本決まりという訳では無いのですが、看護学部を志望しようかと」

 

「ほう?」

 

 千冬の目蓋が上がった。

 彼女の経歴を僅かばかり知っている千冬にはその選択がやや意外に思えたのだ。

 

「そうか。IS学園を卒業すれば無条件に就職出来ると考えているお気楽なガキどもに見倣わせたいものだ」

 

 世界に1つしかないIS専門高校。

 それに卒業すればISに関わる企業に無条件に就職出きるかと言われればそんな事はない。

 単純にISコアの数が絶対的に足りないのだ。

 操縦者になれるのは国家代表の候補生か、企業のテストパイロット。

 大抵はオペレーターかメカニック。

 もしくはISを知るが故の営業か教官など。

 好成績を残して企業に操縦者としてスカウトされる例ももちろんあるが、はっきり言って稀である。

 悲しい哉。それがIS学園生の進路の現状だ。

 だから、卒業後にISとは関係の無い大学に進む者も少なくない。

 

 それからも色々な雑談を交わしながら織斑家に到着する。

 

「部屋はそこの空き部屋を使ってくれ。掃除はしてあるから、埃とかはないぞ」

 

「掃除したのは俺なんだけどな。何で千冬姉が自慢気?」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあ、私は学園に戻る」

 

 最低限説明を終えて車に戻る千冬。

 その後ろ姿を見送っていると一夏が話しかける。

 

「どうした、ラウラ?」

 

「ん、いや。凛としていて格好良いと思ってな」

 

「まぁ、格好良い事は認めるけど……」

 

 最近弟の目からして、そろそろ家事を人並みに、とか。

 そうでなくても、結婚するなら家事が得意な旦那を見つけて欲しいと考えてしまう。

 本人に言ったら子供が余計な心配をするなと頭を叩かれそうだが。

 苦笑いを浮かべる一夏にラウラは首を傾げた。

 

「ちょっと遅いけど昼食にするか? あ、でも時差とかで食事したばかりとか?」

 

 もうすぐ3時になろうとしているが時差の関係で食べたばかりなのかと心配する

 

「いや。飛行機の中では軽食を摂っただけで、あまり食べてない。だから実はお腹は空いている」

 

 お腹を撫でるラウラを見てホッとする。

 家の中の物で何か作るのもいいが、せっかくの旅行だし外で食べた方が良いだろう。

 ならどこが良いかと考えて、真っ先に一夏が頭に思い浮かんだのは────。

 

「この近くに俺の友達の家族がやってる定食屋があるんだけど、そこでいいかな? 味は保証する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で? うちに連れてきたと?」

 

「あぁ。ここの飯は美味いからさ!」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけどさぁ……」

 

 曇りなく答える親友(一夏)に五反田弾は額を押さえて溜め息を吐く。

 一夏の横に座る小柄な銀髪少女。

 注文した定食を待っている間にこちらと視線が合い、軽く会釈された。

 既に互いの自己紹介を終えている。

 人目を引く容姿ではあるが、特にそれを鼻にかける様子もなく、また昨今の女尊男卑を笠に着た振る舞いも見られない。

 まぁ、そんな相手なら一夏が態々案内を請け負う訳もないが。

 それよりも気になるのは────。

 

「厳さんの料理は本当に何でも美味いんだ。それに安くて、俺も子供の頃から世話になってる」

 

「そうか。うん、楽しみだ」

 

 何となくラウラと話す一夏が浮かれているように感じる。

 昔の恩人という話だが、それにしても、だ。

 織斑一夏はイケメンである。

 あの織斑千冬の弟で顔立ちも似ている事から街で誰もが注目する程、ではないが、良く見れば整った顔立ちだと判る。

 もちろん好みはあるだろうが。

 その上ほぼ女子校であるIS学園に通っているのだ。

 もう高校3年。恋人の1人も出来そうなモノだが、そうした話は一切聞いた事がない。

 その原因は一夏の恋愛感情の希薄さというか、鈍感さからだ。

 他人の機微には人並みかそれよりも少し鋭いくせに、恋愛が絡むと途端に反応が鈍重になるのだ。

 もう態とそうしているのではないかと疑う程に。

 そんな一夏が、高揚した様子で客人の少女と話している。

 

(こりゃ、ひょっとするか?)

 

 とうとう朴念人代表の親友が色恋沙汰に目覚めたのかと感慨深い思いが湧く。

 

(当面の問題は蘭や鈴の奴か? 変なちょっかい出さないといいが……)

 

 そんな不安に囚われていると、祖父である厳がラウラが注文した天婦羅定食を出してきた。

 

「ほら。揚げたてだから熱いぞ。気を付けろよ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 初見の客に対するモノとは思えない態度で定食をカウンターに出す。

 しかしラウラも気にした様子はなく割り箸を割り、いただきますと慣れた様子で箸を扱い先ずはカボチャの天婦羅を食べようと────。

 

「あーっ!? 見つけたわよ一夏っ!!」

 

 店に入ってきた鈴音がビシッと指差すと同時に頭部へおたまが飛んできた。

 

「いったぁっ!?」

 

「店の中に大声で入ってくるんじゃねぇ!!」

 

 厳の怒声が飛んで鈴音はおたまが当たった部分を擦る。

 すると後ろには弾の妹の蘭と他、一夏の同学年がぞろぞろと入ってきた。

 いきなり団体で押し掛けてきた彼女達に一夏は珍しく目尻がつり上がる。

 嫌な予感しかしないのだからそれも仕方ない。

 

「……どうしたんだ?」

 

 一夏の質問に鈴音が代表してふふんと得意気に答える。

 

「えぇ! ドイツから一夏の友達が来てるんでしょ? だからあたし達も案内に協力してあげようって訳よ!」

 

 自信満々に言う鈴音に対して一夏はなに言ってんだコイツ、という感じの視線を向けた。

 後ろに居たシャルロットが説明を追加する。

 

「えーとね? 一夏じゃ洋服屋さんとか、女の子が行く場所を案内出来ないと思って。それで力になれたらなぁって思ったんだけど」

 

「……」

 

 確かに一夏では女子が喜びそうな場所と言われても数が少ない。

 頼れる物なら頼りたい気持ちもある。

 

(この大人数に夏休み前のこともあるからなぁ)

 

 理由はいまいち分からないが、彼女達がラウラに好意的だとは思えない。

 たぶんないと思うが万が一彼女らが危害を加えるような事態になったら目も当てられない。

 友人に対してここまで猜疑心を抱くのもどうかと思うが、何故か嫌な予感がするのだ。

 その様子を見かねて弾が口を挟む。

 

「事情はよくわからないけど、一夏の客人だぞ。お前らもちょっとは遠慮を────」

 

「お兄は黙っててください」

 

 妹にピシャリと言い放たれて目を細めて両手を上げて降参する。

 家族内でのヒエラルキーの低さは染み付いているのだ。

 

「いやほら。ラウラだっていきなりこんな大人数で行動させられても困るだろ。な」

 

「ん? どうした? 美味いぞ」

 

 ラウラの方を向くと、彼女は食事に夢中な様子で最後のエビ天を食べ終えると箸を置く。

 

「母国でも日本食を扱う店で天ぷらを食べたことはあったが、ここまでの物ではなかった。感動した、ありがとう」

 

 ラウラに料理をべた褒めされて厳や蓮が照れるような仕草をする。

 そして一夏が、学友達が付いていきたいと言っていることを説明すると以外にもすぐに了承した。

 

「あぁ、かまわない。彼女達は一夏の友人なのだろう?」

 

 ラウラがあっさりと了承したのにはある特殊な理由があるのだが、それは説明できないし、するべきではないと思う。

 ただ、こちらでの彼女達とも会いたいと思っていたのでちょうど良かったというのが本心だった。

 ラウラは立ち上がって1番近かったシャルロットに手を差し出した。

 

「右も左も分からない身だが、どうかよろしく頼む」

 

「え!? う、うん……こっちこそ?」

 

 あまりにも友好的な態度に呆気を取られると、堪忍袋の緒が切れた厳から圧のある声が飛ぶ。

 

 

「おい小娘ども! 店の入り口を塞いでんじゃねぇ!! 何も食わないなら出ていけ!」

 

 

『す、すみません!!』

 

 平謝りする少女達。

 それを見て一夏は自然と胃の部分に手を当てて、弾は俺も付いていった方がいいな、と外に出る準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後2話で終わる予定。

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