ラウラが軍隊をクビになった場合の話   作:赤いUFO

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あれー?全然早く投稿出来てない。



とらべる とぅ じゃぱん【3】

「何でお兄まで付いてくるの?」

 

「……この女に囲まれている状況で男が一夏1人だけだとかわいそうだろ?」

 

 女7人に男は一夏1人。

 鈍感な一夏といえどこれは居心地が悪かろうと言うもの。

 邪険に扱ってくる妹に大きく息を吐くと前を歩いている鈴音を含めた何人かがヒソヒソと話している。

 

「いい? 今回は一夏にアタシ達がどれだけ優秀で魅力的な女子かアピールするわよ!」

 

「分かっておりますわ! これまでの私達とは一味違うことを証明して差し上げます!」

 

「私達がいつも手を出してばかりだという認識を覆すのだ!」

 

「それじゃあ、先ずは何処に行こうか?」

 

 ヒソヒソと内緒話をする同級生らに一夏は不安そうな顔をした。

 友人達がやる気を出せば出すほどに不安でお腹が痛くなる。

 そんな一夏の様子をラウラが心配そうな顔で話しかけた。

 

「大丈夫か、一夏。何やら顔色が悪そうだが……」

 

「あぁ、うん。大丈夫だ。ちょっと人が多くなって眩暈がしただけ……」

 

 彼女達がどんな問題を起こすのか怖くてお腹が痛いとは言えずに誤魔化す。

 それは、ラウラに気を遣ってというよりも、前を歩いている友人達の陰口を言うのが憚れたからだ。

 基本彼は仲の良い友人を貶めるのは苦手なのである。

 そんな一夏の心配を察してか、ラウラは笑みを浮かべた。

 

「心配するな、一夏。彼女達も悪意が有るわけじゃないだろう?」

 

「それは……そう、だけどさ……」

 

 一度箍が外れると何をするのか分からない。

 正確には、どういう行動を取るのかは分かっても、対処出来る気がしない。

 

(せめて、ISを起動させないでくれよ……)

 

 それならまだどうにかなるし、被害も自分だけで済むだろう。

 本来ならこんな公道でISとかあり得ないのだが、これまでの経験から絶対に無いと言い切れないのが辛いところだ。

 何度目かの溜め息を吐く一夏。

 そんな友人に苦笑しつつもラウラは一夏の背中をバンバンと叩いた。

 

「ほら、そんな思い詰めた顔をしてないで、シャキッとしろ。今日はあの子達と一緒に案内してくれるのだろう?」

 

「あ、あぁ。そうだな……」

 

 ラウラの激励に一夏は苦笑混じりでも意気を取り戻す。

 そうこう話をしていると、前を歩いていた女性陣から声をかけられる

 

「こら、一夏! その女とベタベタするんじゃない!」

 

「どう見たらそう見えるんだよ……」

 

 一夏としては別にベタベタしているつもりはない。

 苛立ちの表情をする箒に疲れたような態度で返す一夏。

 それに鈴音が腰に手を当てて話す。

 

「さっきも言ったけど、ここら辺って観光地じゃないから、あんまり外国旅行者に案内できる場所って無いのよ。だから、取り敢えず、アタシらがいつも遊んでる所を回ることになるけど、いい?」

 

「あぁ。よろしく頼む」

 

「それじゃあ、行きますわよ!」

 

 意気込みように前を歩くセシリア達。

 何故か痛む腹を押さえている一夏に弾が話しかける。

 

「顔色が悪いが、大丈夫か?」

 

「あぁ。俺は、みんなを信じる……」

 

(いや、なんでたかだか観光案内でそんな悲壮な覚悟を決める表情(かお)になってんだよ)

 

 青くなっている親友の顔色を心配する弾。

 その様子に気付いたラウラも一夏の手を取り、穏やかな声で話しかける。

 

「あまり暗い表情をするな。彼女達なら大丈夫だ」

 

「お、おう……!」

 

 自分よりも小さな手に握られて、何故か胸の鼓動が速くなった気がした。

 それを見ていたクラスメイト達が声を上げる。

 

「ちょっとっ!? なに一夏と手を繋いでるわけ!」

 

「一夏! お前もデレデレするんじゃない!!」

 

 その他の面々にも焦りと不満の声が出る。

 彼女達の反応にラウラは分かった、と苦笑して一夏から手を離した。

 離れた手を惜しそうに見ている一夏を弾が近づく。

 

「いや、何でもないさ」

 

 赤の他人が見ればなんて事のない反応だが長い付き合いの弾には一夏の感情の揺らぎのような物を察した。

 考えるように顎に手を当てた。

 

「マジでひょっとするかもなー」

 

 親友がようやく表面程度でも恋愛に目を向けてくれるかもしれないと期待する。

 隣を歩く妹が不機嫌そうだが、それは仕方ない。

 世の中、全て上手くいく事などそうそう無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏さん! どうですか、わたくしの水着は!」

 

「あ、あぁ。似合ってるよ」

 

 思わず口に出た言葉だが嘘は言ってない。

 男子高校生にはやや過激に見える青と白のビキニタイプの水着。

 それでもIS学園で2年半近く一緒に過ごせばそれなりに慣れる。

 他のクラスメイトの少女達も、それぞれ新しい服やら水着姿やらを試着して感想を求めてくる。

 向こうでは、箒とラウラが話している。

 

「それじゃあ、箒の実家は神社なのか?」

 

「あぁ、そうだ。夏休みだし、近々小さな祭りも行われる」

 

 祭りの日程を聞いて、それが帰国する前日だと判明する。

 

「もし良ければ、遊びに行っても構わないか?」

 

「……祭りだからな。お客が来る来ないは自由だろう」

 

 素っ気ない返答をする箒の態度に気分を害した様子もなく、楽しみだな、と笑みを浮かべた。

 彼女達が今回立てた計画。それは、ラウラをなるべく一夏から引き離しつつも一夏に自分達の魅力を再確認させる事だ。

 誰かが一夏の相手をしている間は別の者がラウラの相手をする。

 恋敵(ライバル)が増えぬよう。そして現在の恋敵(ライバル)が平等にアピールチャンスを獲得するローテーションで。

 

 3人が話していると、本音が会話に混じってくる。

 

「じゃーさー。お祭りの日にはLさん浴衣着てみないー? 家に余ってるから貸してあげるよー?」

 

「浴衣か……着てみたい気持ちもあるが、似合わないのではないだろうか?」

 

「そんな事ないよー。今では外国人さんも着てる人は少なくないし、Lさんならきっと似合うよー」

 

「あ。それ私も思います。髪の色に合わせて水色とか薄めの生地が良さそう」

 

 蘭の発言に本音が楽しそうに盛り上がる。

 それを遠目に見ていた一夏は取り敢えずラウラが楽しそうにしている事にホッとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美少女8人と男子2人という珍しい組み合わせだ。

 周囲からは男2人が複数の女にこき使われているのではないかと同情の視線を向けられたり、可愛らしい女の子を見て目の保養にしたりと良くも悪くも目立っていた。

 そんな中で2人の男性の視線がラウラに向けられていた。

 

「なぁ、あの子」

 

「あぁ、間違いない」

 

 ヒソヒソと話す2人。

 持っている携帯端末の中には、ラウラ・リットナーの画像が収められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 服や小物やその他の買い物。

 それとたい焼きなどの小腹を満たす食べ歩きをした後に休憩がてらに公園のベンチに辿り着く。

 他の皆はトイレや飲み物を買ったりと少しだけ別行動。

 

(どうしたものか……)

 

 日本に着いたラウラにとって意外だったのは、一夏の友人達が自分に敵意を持っている事だった。

 敵意が有ると言ってもそれは小さな物で、此方に危害を加える意思は無さそうだが、一夏と接触するのを何故か嫌っているようだ。

 

(あの()での彼女達の印象に引っ張られて、此方の彼女達を見ようとしなかった私のミスか)

 

 考えてみればそれも失礼な話だったのかもしれない。

 例え同一人物でも、彼方と此方の彼女達は違うのだ。

 リットナー()ボーデヴィッヒ(もう1人の自分)が違うように。

 そう結論付けると、隣に居る本音が少しだけ申し訳無さそうに話しかけてくる。

 

「え、と……ごめんねー? みんながピリピリしてて。普段はかんちゃん達も優しいんだけどねー」

 

 どうやら本音は簪達の態度が気にかかっていたらしい。

 

「気にする事じゃない。話してみて、彼女達が悪い人間ではないことは判っている。今は少しだけ感情に振り回されてるようだが」

 

「うん! ありがとー!」

 

 そうして2人で笑っていると、近づく足音があった。

 

「あの、すみません」

 

 話しかけてきたのは2人の男性だった。

 大学生か。それとも新社会人くらいに見える男性。

 ラウラは悟られない程度に身構えた。

 それは、相手が見知らぬ男性というのもあるが、1番の理由はその視線だ。

 ラウラに向けてくるその視線がある人を思い出させる。

 

(嫌だな……先輩を思い起こす)

 

 何が良いのか自分にストーカー行為をした同性の先輩。

 以前捕まった時に見せたあの視線と重なった。

 

「もしかして、Lさんですよね。この雑誌に載った」

 

 携帯端末に表情されたのは、アルバイトの一環で載ったファッション雑誌の頁だ。

 

「俺達、この雑誌を見てからLさんのファンで、良かったらこれからお茶でも、と」

 

「……確かにここに写ってるのは私ですが、此方は本物(プロ)のモデルなどではないのでお断りします。それと今は友人達と遊びに来ていますので」

 

 丁重に断ってみたが、意外にも相手はしつこかった。

 

「それなら後日……いや、何処に泊まっているのかだけ!」

 

「そんな義務はありません!」

 

 しつこい相手に少し強めの口調で拒絶する。

 それでも相手はラウラに会えた事での興奮か、引かずに腕を掴んできた。

 

「おい!」

 

「大丈夫。そこの店でお茶をして、数枚写真を撮らせてくれればそれで────」

 

 流石にここまで強引に迫って来るとは思わず視線を細めた。

 本音はこの状況に少し混乱しているようだ。

 

(仕方がない。少しばかり手荒な方法を……)

 

 暴力には頼りたくなかったが、ラウラも元軍人である。

 目の前の男を無力化するくらいは簡単な事だった。

 しかし、動こうとする瞬間に別の手が割って入り、ラウラの腕を無理やり外させた。

 

「かんちゃん!」

 

「何してるの?」

 

 静かな、だけど確かな怒りを宿して簪はラウラと男達の間に入る。

 というか、いつの間に戻って来ていたのか、他の面々も男達を囲うような位置にいる。

 

「はぁ……誰か付け回してると思ったけどね。その気のない女の子を無理矢理連れていこうとするのは感心しないよ?」

 

 シャルロットが呆れと軽蔑の表情で話すと鈴音が続く。

 

「あんまりこういう事は言いたくないんだけどさ。もしこの場であたしらが大声を上げたら、アンタ達の人生終わるわよ」

 

 脅しでそう口にする。

 今の世論は良くも悪くも女尊男卑。

 多少おかしなところは有れど、女性側の言い分は今の社会通りやすい。

 何よりもラウラの腕を掴んだところはバッチリ撮らせて貰っている。

 

「今消えるならこの事は忘れて上げる。それともネットに晒されるか、警察のお世話になりたい?」

 

「……つっ! おい行くぞ!」

 

「クソッ! もう少しでっ!」

 

 逃げるようにその場を去る男達。

 それを嫌なものを見たとセシリアが髪を掻き上げた。

 

「情けない人達ですわね! 紳士ではありませんわ!」

 

「そう言うな。相手が小心者だったから大事にならずに済んだのだ」

 

「そうですね」

 

 セシリアの不満を箒が宥め、蘭も同意する。

 そこで弾が冗談めかして明るい口調で話す。

 

「それにしても、意外だったなー! 鈴とかいきなり飛び蹴りくらい喰らわせるかと思ったぜ」

 

「失礼ね! あたしだってそこまで乱暴者じゃないわよ!」

 

 喧嘩っ早いのは自覚してるが、あの場面でいきなり暴力に訴える程血の気が多いわけではない。

 これが、1、2年前なら分からなかったが。

 タイミング良く助けが入った事に目を丸くしていると、シャルロットが説明する。

 

「ごめんね? 途中誰かから尾行されてる感じだったから。ボク達の誰が狙いか分からなくて。一旦バラバラになって相手を誘き出す事にしたんだ」

 

 素人で良かったと言うシャルロット。

 この場にいる殆んどが各国の代表候補生。

 一夏に至っては世界で唯一の男性操縦者だ。

 確率的高かったのは一夏。次に箒で次に代表候補生の誰か。

 正直に言えば一般人のラウラが狙われる可能性は低いと誰もが思っていた。

 

「恐い思いさせてごめんね」

 

 そう言って謝るシャルロット達にラウラは素直に礼を言う。

 

「助けてくれたんだ。此方がお礼を言う理由にはなっても、謝られる理由は無いさ」

 

「それも有るんだけど……ほら、あたしら、アンタに対して態度が悪かったでしょう? せっかくの観光なのに、嫌な思いさせちゃったかなぁって」

 

 高揚感というか、一度冷静になると自分達の事ばかりで観光に来たラウラを邪魔者扱いしていた行動が恥ずかしくなった。

 それだけ彼女達が一夏に対して必死だったという事だが。

 

「私は気にしてない。助けてもらったんだ。ありがとう」

 

 笑みを浮かべて礼を言うラウラ。

 

「なぁ。もう暗くなってきたし、一旦家に戻らないか? どうせなら夕飯は皆で食べようぜ」

 

 一夏の提案に彼に好意を持つ少女達の頬が緩む。

 

「良いわね! どうせなら皆で夕飯を作りましょうか!」

 

「そうですね! なら材料を買って帰って────」

 

 ワイワイとラウラも含めて中の良い様子で歩いていく。

 何処かホッとした様子を見せる一夏に弾が話しかける。

 

「どうした、一夏?」

 

「いや。皆もやっぱり、もう高校3年生なんだなーって」

 

「誰目線で言ってんだ、それ?」

 

 何だかんだで彼女達も成長しているのだ。

 そう思うと心なしか嬉しくなる。

 動こうとしない男子2人に早く来いと言われる。

 もう、お腹は痛くなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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