結婚式で書いた過程とはもしかしたらかなり食い違うかもしれません。
男は走っていた。
何年も行方をくらませて、遠ざけていた女が乗っている船に向かって。
自分が生きていると知り、辺境の田舎にまで会いに来てくれた純粋な
なのに自分はその彼女と顔すら合わせずに酷い言葉を投げつけて追い返した。
そんな女を今自分は未練がましく追いかけている。
既に発ってしまった船に向かって女の名前を叫んだ。
「────っ!!」
行ってしまう。
もう決して自分の手の届かない都へと。
こんな後悔をするなら、あんな言葉など吐かなければ良かった。
そんな身勝手な後悔に顔を歪める。
無力感に苛まれていると、船から誰かが落ち────いや、飛び降りた。
それが誰なのか遠目からでも分かり、男は海に膝まで浸かっているのもお構い無しに走る。
相手も泳ぐのに向いている格好でもないのに、自分を呼びながら戻ってくる。
服の重さで溺れそうになった彼女の手を取って引き上げる。
今の自分は彼女に相応しくない。
満足な生活だってさせられない。
きっとこの手を放して帰らせる方が彼女はの為になる。
判っている。
そんな男に対して女は涙でくしゃくしゃな顔で、嗚咽混じりに言う。
────一緒に居たい、と。
そう伝えてくる女を男も泣いて歪んだ顔で抱き締めて……。
「あー面白かったぁ!」
映画館を出た3人はモニカは満足そうに余韻に浸っている。
ラウラとモニカとアデーレ。もうこの3人で行動するのが当たり前になっていた。
今日は3人とも特に用事も無かったので、巷で人気の映画を観ようという話になったのだ。
モニカが爛々とした目でラウラに迫る。
「ラウラはどうだった?」
「ん。面白かったぞ。喧嘩してた子供が周りの力を借りて仲直りしたところとか」
「そこも良かったけど〜!」
モニカとしては主人公の恋愛の方に注目して欲しかったのだ。
本筋とは関係のない部分を評価していてちょっと不満。
「ラウラはさ、ああいう映画観て自分も彼氏欲しいって思わないの?」
「特には。今は進路のことで頭がいっぱいだしな」
彼女らもそろそろ進路を考えなければいけない時期になっていた。
しかしモニカな視線を泳がせながら指を絡めている。
「ま、まだ……進路とか考えなくてもいいんじゃないかなー?」
悠長な事を言っているモニカにアデーレが眉間にしわを寄せた。
「なにを言ってるのですか! もう皆さん、とっくに志望の大学を決めて、受験対策に大忙しなんですよ!」
以前はテストなどでラウラと張り合っていたアデーレだが、今は将来の展望がまったくないモニカを心配して口酸っぱく忠告する事が増えた。
モニカが話を逸らす為にラウラへと矛先を向ける。
「ラ、ラウラは看護系の学校に志望だっけ?」
「あぁ。第一志望はそうだな」
「もったいないですね。ラウラさんなら医大でも合格出来そうですが……」
そんな風に話していると3人の傍に車が停車する。
車の中からアデーレの兄であるクルトが顔を出す。
「アデーレ、迎えに来たぞ」
「兄さん。わざわざ迎えになんて来なくても……」
家族が迎えに来たのが少し恥ずかしくて思わず反発してしまう。
「最近はなにかと物騒だからだよ。お前も誘拐とかされたくないだろ?」
「……その件は本当に申し訳ない」
「いや、別に嫌味言ってる訳じゃなくてな?」
1年くらい前にラウラ関係のとばっちりでクルトは誘拐された事があった。
犯人は既に捕まっているが、正直アデーレも含めてこの兄妹と今でも変わらぬ関係を保ててるのが不思議だ。
「君達も乗ってけよ。家まで送るから」
「いいんですか! やった!」
交通費が浮いて喜ぶアデーレ。
しかしラウラの断りの姿勢を見せる。
「いや、私は遠慮する。遠回りなってしまうだろうし」
ここからだとアデーレの家の方が近いし、ラウラの家まで行くとかなり遠回りになる。
「そんなことは気にするな。それにもうすぐ暗くなって危ないだろう」
「そうですよ。ある意味ラウラさんが1番心配なんですから」
1度誘拐された事のあるラウラが1番心配されている。
兄妹とモニカに説得されてラウラはじゃあお言葉に甘えてと送って貰う事にした。
アデーレが助手席。
ラウラとモニカが後部座席に座る。
「そういえば、ラウラは運転免許持ってたよね?」
「あぁ。一発合格だったぞ」
軍に居た頃は車の運転も仕込まれていたので、ほぼミスも無くスムーズに合格出来た。
問題はラウラの背丈から取得可能な年齢だと疑われた事くらいか。
「ならさ、そのうち3人で旅行に行かない? 車で行けるちょっと遠出をしてみたい!」
モニカの提案に一拍置いてからラウラとアデーレが言う。
「モニカ(さん)が卒業出来るなら」
「ハモった!?」
1番進路が心配なのはモニカだ。
それが決まらずに旅行の予定など立てられない。
「進学するにしろ就職するにせよ、先の見通しをもう少し立ててほしい」
「えぇ本当に……」
2人が心底心配だと言わんばかりに溜息が重なる。
そんな友人の態度にモニカは言い返したいが言い返す言葉がなく悔しそうな表情をする。
その会話にクルトが苦笑するが会話に入ろうとはしなかった。
先ずはモニカの家に着き、次にフランツ兄妹の家。
そこからラウラ徒歩で帰ろうと思ったが、2人が頑なに駄目だと言う。
「どうか送らせてください。この時間に女性が1人なのは危険です」
「そういう理由だから家まで送るよ。またなにか遭っても嫌だしさ」
「なら、よろしく頼む」
頭を下げて家まで送って貰う事にした。
流石にアデーレが居ないと彼とは特に会話がない。
外の景色を眺めていると、クルトから話しかけてきた。
「もし良かったらだけど、今度2人で食事にでも行かないか?」
「は?」
いきなりの提案にラウラは面食らって思考が停止した。
「いや。君から見た
「なるほど……」
家族として妹がどんな学校生活を送っているのか興味もあるだろう。
「分かった。あまり知られたく無さそうな内容以外で良いなら」
「あぁ、構わない。日時はそっちに合わせて調整するから……と、着いたな」
そこでラウラの家に着く。
車から降りてお礼を言う。
「送ってくれてありがとう、クルト」
「あぁ、それじゃあ」
そう言ってクルトは車で来た道を引き返して行った。
突然結婚式とか書いて前から消化不良だったので、恋愛の取っ掛かりくらいは補完しようかなと。(今更)
本編のキャラがラウラ(ほぼオリ主)しか出ないのも書こうか迷っていた理由のひとつです。
半年くらい前にお気に入りユーザー限定でラウラの初夜書いてから手を付けるか悩んでました。
ちょっと他作品