ラウラが軍隊をクビになった場合の話   作:赤いUFO

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調べたらドイツの学校って日本とカリキュラムが全然違うんですね。この作品では日本と同じってことで勘弁してください。



セガサターンのエヴァ2ndの主題歌である【君が、君に生まれた理由】もしくはフルーツバスケットのOP【Forフルーツバスケット】を聴きながら後編も執筆中。

知ってる人いるのかな?(特に前)



決別~私が帰るべき場所~【前編】

 ラウラはこの現状をどうしようか考えていた。

 

「我々は!歪み切った女尊男卑の思想に染まった社会に問いを投げかける者である!」

 

 20~50代程の男たちが銃器を手にして自分たちを人質に立て籠っている。

 動きから見ても素人の集まりだが銃を持っているため迂闊に動くことが出来ない。

 その上ラウラは今日面倒を見る筈のあの施設の子供たち3人を抱えており、万が一のことが事があっては院長に顔向けできない。

 子供たちが脅えた様子でラウラの服を掴んだり腕に抱きついたりしている。

 殺気立っている男たちを観察しながら気づかれないように息を吐く。

 

(本当に、どうしてこんなことになったのか……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラウラちゃん、ちょっと良いかい?」

 

「え?はい」

 

 施設に遊びに行った際に院長に声をかけられた。

 

「三日後って時間空いてないかな?ちょっとお願いしたいことがあるんだけど」

 

「私に、ですか?えーとアルバイトは休みですけど」

 

 ラウラが疑問を隠さずにいると院長がうん、頷いた。

 

「今度この辺りでISの空中機動の催しがあるのは知ってる?その観賞席のチケットをこの間当ててさ。子供たちの中でくじ引きで行く子を決めたんだけど、僕はこの施設を離れる訳に行かないし。誰か面倒を見てくれる人を探してたんだけど。ラウラちゃん、ISに興味あったら付いて行ってもらえないかなって」

 

「IS、ですか……」

 

 妙なところで縁が出来るなと思いながらどうしようかラウラは考える。

 この町は軍の、それもISを保有する施設が近いため年に2回ほどこうしたパフォーマンスが行われる。

 

(正直、あまり行きたくないな……)

 

 偶然昔の同僚に会ったからといて今更何かあるとは思わないが、出来れば軍の施設に近づきたくないのが本音だった。

 申し訳ないが断ろうかと考えているとラウラの服を引っ張る感触がする。

 引っ張っていたのは顔に傷のある、ラウラが以前気にかけた少女、アニータだった。

 

「あたしも、行くんだけど。おねえちゃんイヤ?」

 

 不安そうに自分を見上げる少女を見て、ラウラはその申し出を断ることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こんなことになるなら、ついて来て正解だったかもしれないな)

 

 人質として隔離された部屋でそう思うことにする。

 自分にしがみつきながら不安そうにする子供たちに微笑みかける。

 

「大丈夫だ。軍の人たちがすぐに助けてくれる。だから、ここでおとなしく助けを待とう」

 

 それは慰め半分であり、確信半分だった。

 テロ紛いな行動をしている男たちはどう見ても訓練を受けた者の動きではない。ISなど使わずとも事態は解決するだろう。しかしラウラが気になるのは。

 

(やけに持っている装備の質がいい。どう見ても玩具(モデルガン)を改造した物ではなく、本物だ。それに催し物で人の出入りがあるとはいえ軍の施設内にどうやってアレほどの装備を持ち込んだ?)

 

 少なくともこの人数を素人が揃えられる代物ではない。

 揃えられたとしても銃を持っている者を内部に通すことはない筈だが。

 気にはなったがラウラはすぐにその思考を棄てる。

 今自分が優先しなければならないのは子供たちの安全なのだから。

 

(彼等の鎮圧が可能だからと言って、人質が全員無事救出されるとは限らないからな)

 

 素人が武器を持って気を大きくし、撃って来ないとも限らない。

 人質になっている者の大半は彼等が憎む女性なのだから。

 

(幾らなんでも子供に銃を向けるとは思わないが。誤射で、という可能性もあるからな)

 

 今日ここでISの機動演習を見てはしゃいでいた3人の子供。それを恐怖に変えた者たちに怒りを覚えない訳ではないが、余計なことをして此方に矛先が向くのを避けたい。

 

 今ラウラたちが居るのはISの整備や調整を行う3階と地下1階がある建物だった。

 そこの1階の隅に集められている。

 演習を観終わった後にここでISに関する説明を受けていたのだ。

 その際に彼らが牙を向いた。

 

 テロリストのリーダーと思しき男が電話越しになにやら喚き散らしている。

 その怒声が飛ぶたびに子供たちが萎縮する。その度にラウラが頭を撫でて大丈夫だ、と繰り返した。

 人質になって1時間半ほど経つが彼らは要求らしい要求を未だ言わずに、自分たちの女尊男卑に対する不平不満を吐き出し続けていた。

 軍も速やかな鎮圧を試みないところを見ると人質を見捨てずに慎重に対応しているのだろう。

 ここでISの説明をしていた女性は軽度の暴行を受けた後に手足を縛られて転がされていた。

 その姿を痛ましく思いながらも状況を見渡し続ける。

 状況が動いたのはリーダー格の男が声色が変わった時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうことだっ!?」

 

 男は通信越しにいる今回の協力者の言葉に声を荒らげた。

 その相手は呆れたように息を吐くのが聞こえる。

 

『どうもこうもないでしょう?こっちの目的は果たしたからもう好きにすればって話だよ。言葉通じてますー?』

 

 小馬鹿にするような相手の声に苛立ちながらも話を続けようとする。

 

「話が違う!!ここで時間を稼げば後で我々の脱出を手伝ってくれると――――」

 

『あーそれー。ムリだって。その建物の周りにどれだけの軍人や偵察機。それにISで囲まれてるか知ってる?仮に助けられるとしてもそれを行うメリットがボクらにあるのー?』

 

 若い女の声はなおも続ける。

 

『いいじゃん。このご時世に社会から追いやられた君たちが弾けるチャンスを貰ったんだし。それだけで充分な()()だとボクは思いまーす。それにもっと根本的な問題にしてさぁ。ダメだよ?女とISに反旗を翻そうとしたくせに都合の良い時だけそれに頼っちゃ。ねぇ?』

 

 彼らは通信の向こうに居る相手によって集められた女尊男卑の被害者たちだった。

 会社を解雇された者。

 無実の罪状を押し付けられた者。

 家庭が崩壊した者。

 

 そういう今の社会の在り方に被害を受け、鬱屈とした感情を溜め込み。通信越しの女にその気にさせられて弾けただけの集団だ。

 今日もここでちょっと暴れてくれれば見返りにちょっとした報酬をやるという話だった。

 もちろん彼らも胡散臭いとは思ったが、生活に貧窮している者や、女やISに一泡吹かせられるという言葉にそそのかされて今回の話に乗った。

 彼らは後先など考えておらず、ちょっと暴れて憂さを晴らせればそれでよかったのだ。

 

 動揺している男に通信越しの女はんーと考えるような声をした後にさっきとは違うことを言う。

 

『でも、ま。そこまで言うんなら助けてあげても良いよ?』

 

「本当か!?」

 

『君は誰にも追いかけられない逃げ場所って何処だと思う?」

 

「は!?」

 

 答えられない男に女はクスクスと笑って正解を告げる。

 

『答えは誰でも簡単に行けて行きたくない場所。あの世って奴だよ』

 

 通信の向こうで何かを押す機械音がした。

 同時に、上の階から大きな爆発が発生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つっ……なにが……?」

 

 突然の爆発に建物の崩壊に巻き込まれて視界が晴れて状況が確認できるようになってラウラは体を起こした。

 地下の部屋まで落とされたために身体の痛みが走る。

 利き腕を強く打ったのか上手く動かせない。

 突然の自爆を疑問に思う間もなくハッとラウラは辺りを見回した。

 

「あの子たちは!?」

 

 一緒に来た子供たちを探すと3人の中で唯一の男の子であるカスパルだった。

 

「あ、姉ちゃん!?」

 

「無事だったか!他の2人は?」

 

「ア、アニータはわかんねぇけど。ヴェラが、向こうで下敷きになってて……!?」

 

 泣きながら家族の危機を訴えるカスパルにラウラは驚きながらそちらに案内させた。

 着くと、少し大きな瓦礫に挟まれているヴェラが居た。

 

「待ってろ!今退かしてやる!!」

 

 打った腕を強引に動かし、両手で退かそうとするが動かない。

 

(なにか道具を探さないと……!)

 

 また何か落ちてこないとも限らず、ラウラは何か使える物や動けそうな人をキョロキョロと探し始めた。

 

「あ……」

 

 それを見つけてラウラは思わず声が漏れる。

 見つけたのはここに最初から地下に置かれていた訓練用のISだった。

 待機状態で座しているそれを見つけて引き込まれるようにそれに近づく。

 恐らくここで整備途中だったかもしもの時の為の予備として置かれいていたのか。

 ラウラにはどちらでも良かった。

 

(これを、今動かせれば……)

 

 軍から除名された自分に今更ISの搭乗資格があるとは思えない。

 しかし、早くしないとあの子たちが死んでしまう。

 

 何度も何度も行ったISを纏う手続きを行う

 結果は失敗。

 ISは何の反応も示さずにそこに座していた。

 何回も体に染みついたISの起動を試みたが駄目だった。

 

「クソッ!?」

 

 怒りに任せてISに拳を叩きつける。

 これさえ起動できればこの状況を何とかできるのに。

 しかしいつまでも使えないISに縋る訳にもいかず、別の手段を講じようとその体を離そうとする。

 すると、ISに熱が入ったように微振動を始め、ラウラの身体を固定する。

 

「なっ!?」

 

 驚き暇もなくISは起動し、機体の情報をラウラに開示した。

 数か月ぶりにISを動かした喜びよりも身体に浸み込ませた機体の状態確認を即座に行った。

 武器は一切詰んでおらず、エネルギーは充分にある。

 

「姉、ちゃん……?」

 

「大丈夫だ。これなら、すぐにあの子を助けられる」

 

 何故ISが動いたのか疑問が無かったと言えば嘘になる。

 しかし今は久々にISを纏う高揚。そして早く救助をしなければという使命感でヴェラの下まで移動する。

 生身なら相当な労力を要する力仕事もISならば然程苦労なく瓦礫を除けられた。

 瓦礫を除けるとラウラがカスパルにヴェラを背負うように言う。

 

「私は、アニータを探す。それに他の人たちも助けないと。だからカルパス。お前はヴェラを背負って外へ出てくれ。そうしたら大人たちに中の状況を説明するんだ。できるな?」

 

「で、でも……」

 

 不安そうな表情をするカスパルにラウラは微笑みかけた。

 

「大丈夫だ。お前は1人で逃げ出さずにヴェラを助けようとした強い子だ。だから最後までその子を守ってやるんだ。お前はそれが出来る男だろう?」

 

 ここで頭を撫でてやればよかったのかもしれないが。ISの、それも専用スーツすら着てない状態でそんなことをすれば力加減を誤って大怪我させてしまうかもしれない為にやめた。

 カスパルは頷いて背負ったヴェラと共に何度かこちらを振り返りながらも外へ出て行く。

 

 それを最後まで見届けずにISのハイパーセンサーから送られる生体反応の示す場所を近場から順々に救助していく。

 軽傷の者は足などを怪我したものを運んでもらうなどをしてここから出て貰う。

 意外だったのはテロを行った者たちもこの事態を引き起こした罪悪感からか、手を貸してくれたことで救助が捗った。

 中には身体を潰されて死亡した者も居るが、それがアニータでないことに安堵しつつもこんな風に死んでしまったことになんとも言えない気持ちになる。

 生体反応を頼りに自分を慕ってくれた少女を探す。

 そして運が良いのか悪いのか、最後の反応で少女を見つけた。

 

 見ると擦り傷などはあるが、呼吸はしっかりしており、見た目大きな傷も負っていない。

 そのことに涙が出そうな程に安堵する。

 ISでは上手く運べる自信が無かったため、装着を解除して突如起動した機体を見た。

 ロックが掛かっている筈のISが何故動いたのか。

 

(ISには微弱だが意志のようなモノが在ると聞いたことがある。この惨状を見て自ら力を貸してくれた?ハハッ。まさかな)

 

 自分の中で出たファンタジーな解答を否定するが、どうにもそんな気がしてならず、頭を下げて礼をした。

 そこでアニータが目を覚ました。

 

「お、ねえちゃん……」

 

「早くここから出よう。そうすれば恐いことはみんな終わりだ」

 

 優しく声をかけてアニータを背負う。

 そうしてラウラもここから出ようとしたときに耳障りな怒声が響いた。

 

「クソッ!?なんだよっ!なんで上手く行かなかった!!これだから女はおんなはオンナハっ!?」

 

 テロリストのリーダーが癇癪を起した子供のようにブンブンと銃を手にした腕を動かし、ラウラとアニータを見ると歪に顔が歪む。

 

「そうだ。女だ……ぜ~んぶ女とISがわるいんだよぉおおおおっ!!」

 

 最早正気を失い、ラウラとアニータに向けられた銃口が火を噴く。それはラウラの左腿に命中した。

 

「つう!?」

 

「おねえちゃんっ!?」

 

「だい、丈夫だ……!」

 

 狙ったのではなく適当に前に撃ったらラウラの腿に当たったのだろう。

 ラウラはアニータに当たらなくて良かったと思った。

 膝をついたラウラに男は嗜虐的な笑みを浮かべる。

 

「そうだ!女なんぞそうやって俺たちに見下されていればいいんだよぉ!?なのにアイツもアイツもアイツも!!俺を馬鹿にしやがってぇえええええっ!!」

 

 おそらく男は女尊男卑の世になってから女に虐げられて生きてきたのだろう。

 こんな状態になってもその恨みを晴らすことしか考えられない程に。

 

 近付いた男が膝をついているラウラの腹を蹴る。

 アニータが呼ぶ声がするがそれに反応している余裕はなかった。

 この状況でせめてアニータだけでも逃がさないと。

 そう考えていると男が動けないラウラではなく、後ろで震えているアニータへと向ける。

 

「女なんてどうせ碌な育ち方しねぇんだ。だからここでぶっ殺しておかないと……」

 

「やめろ……」

 

 アニータのヒッと掠れる悲鳴が聞こえる。

 男の引き金が動くのがスローモーションに感じた。

 

「やめろぉおおおおおっ!?」

 

 膝の痛みを忘れ。ラウラは銃口の前を塞ぐように立ち上がる。

 ラウラの胸に狙いが付いた銃口。

 引き金が、ゆっくりと動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付くと、そこは見慣れない建物の中だった。

 

「ここは……どこかの学び舎か?」

 

 良くは知らないがどこかの学校のような気がする。

 

「なぜ、私はこんなところに?」

 

 覚えているのは男に撃たれた瞬間。

 なのに何故、こんな見知らぬ場所に居るのか。

 

「それに、何故誰も私に注目しない?」

 

 行き交う自分と同じくらいの歳頃の少女たちは白い制服を着て廊下を歩いている。

 だれも、私服でここに立っているラウラに見向きもしない。

 

 埒が明かないと誰かに話しかけようと動く。

 

「すまない、ここは―――――」

 

 どこだ、と尋ねようとしたが、相手の少女はラウラの身体を()()()()()行ってしまった。

 まるで自分が立体映像(ホログラム)にでもなったかのように。

 

「どう、なっているんだ……?」

 

 今起きたことが信じられず、ラウラはその場に立ち尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次で最終話です。もう一気に書き上げようと思います。
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