「あなたは、これでよかったの?」
「なにが」
能力で球体のセンサーを張り、触れたガジェットを即座に虚無に潰しながら歩く私とヴィータ。
駆動路側だとガジェットもあんまりいないね。
「なのはのこと、守りたかったんじゃないの?」
「なんだそりゃ。そんなこと言ったことあるかよ」
「さぁ?私は聞いてないと思うけど。駆動路の破壊くらい私がやるよ?」
「いらねー。なのはが私に頼んだんだ。やり切ってやるさ。それとも、主として止めるか?」
「ふふ、主って認めてくれてたんだ?」
「どうあっても形式上はな!恩人には変わりねーんだ。多少の無茶くらい聞いてやるさ」
「それも気にしなくていいのに。ま、いいよ」
『姉さん、わりぃ、大丈夫か?』
「ん?ん」
『ナンバーズの大体を把握した。取り敢えず中はガジェットとヴィヴィオ、クアットロの本物か偽物とウーノだ。なのはがヴィヴィオやるなら気にしないでいい。手が空きそうなら外のガジェットの方回ってやってくれ。アインスは手が回らん。ああ……それとな、オレが何か……記憶処理かなんか影響を受けてる。多分影響無いだろうが一応。多分アインスだろな』
「ん。りょーかい」
シオンがそれぞれの場に繋がるモニターを中継してくれる。
ソラは問題無いだろうし、スバルはまぁ、ソラと近いし。フォワードは放置、アインスも放っておいていいし……やっぱりガジェットか。
影響……ってのはなんだろ。分かんないけど……放置しようか。
「……」
「ん?どうしたの?」
なのはについては明るかったヴィータの顔が沈んでいる。
思い当たる節は無い。なのはの話題切ったのがまずかった?
「リインフォースが……シオンに何かしたって」
「ああ、うん。らしいね」
「怒らねーのか?」
「なんで?」
「いくら良いって言っても主従関係だ。その……」
「私やシオンに正しいとするものがあるように、アインスにもそれがあるんでしょ。それについて私が批判するのは一方的過ぎる。この世界は管理局が基本だから、それに近いアインスを責めるのは間違ってる。それに、謝ってもらってるしね」
殺されたから殺す。それは法治国家においては正義じゃない。殺されたら裁判で殺した奴を裁くのが正義だ。個人が恨みを晴らすのは悪だ。
この世界は異常なほど管理局が権利を持つ。クロノが法の番人を自称するのは情に流されないように自分を戒める意味もある。それを否定はしない。アインスの行動もそれに則ってシオンをコントロールしただけだ。責める要素は何も無い。
……世界のはみ出し者の集まりである私達がそれをするのはどうなのか、とは思うけれども。まぁ、それも勝手かな。
「……そう、か」
「……ヴィータがそんなの気にするなんて思わなかった」
「気にするに決まってる。お前とはやては私たちが初めて得られた、心から尽くしたい主たちなんだからな」
「……ひぉお、意外。私も八神さんと同列なんだ」
ゾクってした。シオン以外に言われるとなんか……怖い。
「うっせ!もー言わねぇからな!さっさとやんぞ!」
「ふっふーん。で?どうするヴィータ。二人で駆動路先に潰してガジェットに行く?」
「バカ言えよ。ガジェットは一基でも通せば負けなんだぞ。さっさと行ってくれ、二人の主に十分に応えられるのはヴォルケンリッターをおいて他にいねぇからな!」
ヴィータがガジェットを止めてる局員の隊列上空にモニターを開きこちらへ向ける。
急かされてる気がするから手をかけて上半身からモニターに通す。
「ふーん。悪いけど、主は八神さんだけでいいよ。私はそういうのに向いてない。ま、そうしとく……がんばっヴィータ!後ろ!」
「な……っ⁉︎」
遠慮するな、という感じの言葉を言っとこうとした瞬間に感じた悪寒。
嫌な直感に警告を飛ばすも遅く、振り向くとヴィータの胸には空洞が見えた。
……空洞?
「えっ、なっ⁉︎」
「っ!てりぁぁぁぁぁぁ!」
「なっ、ナニソレ⁉︎」
「コイツだ……コイツらだ!なのはを墜としたヤツは!」
「待って!なら私も残る!」
「うるせぇ!早く行け!外行かねぇと相当の被害になんだぞ!」
「でも……!」
「私の主なら!はやての友達だってんなら!やるべきことをやれよ!」
「……!」
何かを確認する前にモニターを切られた。
分断されたり……はしないけど半分以上は通ってたから外に放り出される。
やるべき……なら、外で多少の被害を覚悟しても新手が固まってるあの場所で全滅させておくべきだったんだ。
自分を捨てて他を助けろなんて……私がするはずもないけど……仕方ない。ヴィータの命が引き換えならそれも有り、だ。
♢♢♢
「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「……」
市街地付近、高架の道路でぶつかり合う拳。
拳と拳、元は同じ母のもの。
放たれた拳も、受けた蹴りも、地に落ちた薬莢も全く同じ六課で強化されたもの。
けれど質は全く逆。助けたい、救いたいという激情と、ただ命令に動く無情。
互いを見据える緑の瞳は、機械と人間が違う視点を持つように、全く別のものを映していた。
「く……ッ!」
守るために放つ拳と、壊すための拳。元の差もあり、いずれ限界が来る。
姉を守るための拳は、ゼロ2ndを回収するための拳に及ばない。
「ギン姉ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「……」
「ガッ……!」
「……!」
正面からぶつかった拳は互いを弾き、間合いから外れる。
今ので二度目の相打ちになる。カートリッジの消費も嵩み、長くは続けられないことをスバルは認識し、焦っていた。
頼みとするなら……アインスから渡されたカートリッジのみ。
頼りたくない思いと、頼りたくなる現実。
「このぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
三度目。
殴り込む拳に特製カートリッジを装填、至近距離から拳を振り抜くまでに収束が終了する。
「スターライトぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
構えたギンガのバリアの上から問答無用で拳を撃ち込む。
「ブレイカァァァァァァァァァァァ!」
「……!」
あらゆるものをリーズナブルに葬り去ってきた砲撃がワンタッチでコンスタントに放たれ、衝撃と煙が当たりを埋める。
「……ギン姉!大丈夫⁉︎」
距離を取り、煙が晴れるのを待ちながら安否を問うスバル。
それでも尚警戒を解いていなかったのは模擬戦による死の恐怖からだった。
「ッ!」
それが幸いし、煙の向こうから放たれた魔力弾に防御が間に合う。
ダメだった、と気を落としながらも再び気を入れ直す。
「ぷっ!あははははははは!」
「……え?」
「いや!流石ね!なのはさんのブレイカーまで使えるなんて!流石ヴィーナスは違うわね!」
「えっ、えっ?」
「あ、ごめんねスバル。シオンに言われてたの。いや、言われた、のは違うかな」
「ギン姉……?大丈夫⁉︎」
「大丈夫!何か知らないけど条件が揃えばそういうのができるらしいのよ。『妹からブレイカーを至近距離で受けたら自我を取り戻せ』……って言う条件命令」
「いつ……そんな?」
「拐われた時よ。ヴィーナスがまさか普通に殴るだけなはずが無いでしょう?」
混乱するスバルと、嬉しそうなギンガ。
空のガジェットを見たギンガは一瞬顔をしかめるが、すぐスバルに向き直る。
「でも体の方はまだ戻るのに時間かかりそう。もうちょっと、お姉ちゃんと遊ぼうか!」
「……うん!」
♢♢♢
「はぁ……はぁ……ぅっ!」
「無駄です。ISのみならばともかく、プライムを持つ我々に敵う訳が無い。今からでも遅くありません。同じ生まれ……プロジェクトFの派生として、ドクターの元へ」
「く……断る……!誰が、お前らなんかと!」
「フハハハハ……!よく単独でここまで来れたがね。君ではどうあっても娘には勝てない。AMFに加えて重力制御。立っているだけでも辛いだろう。この場でなら誰も娘を倒せない」
二人の戦闘機人の間に倒れ伏すフェイト。
それを笑いながら現れたスカリエッティ。
「貴様ッ!スカリエッティ!」
「おっと……動くことも許さない。少し煽ればすぐそれだ。母親に似て良かったじゃないか。態度に関しては謝るよ、君の性質を君自身に認知させるのに必要と思っただけさ」
「なんだと」
「私もバカではない。失敗する未来は防いでいきたいものだ。だから何度でも言う。私と手を組みたまえ。管理局は独裁者そのものだ。管理局の権力がそのまま世界の権力と結び付く。やっていることは法治に必要な全てだ。それではトップが老害の脳みそになってしまった場合に全てが壊れる。今までと同じ、今のまま、何も変わらない……そんな世界、あるわけが無いだろう?誰もが望むかもしれないが、人は歳をとり、劣化する。動植物も成長し、数を増減させる。物も次第に壊れていく。変わっていく事は必然なんだ。この世界の常識で生きる限り、ね」
戦闘機人、トーレとセッテは構えたままスカリエッティの言葉をただフェイトへ聞かせる。
動くものはスカリエッティのみ。その靴音のみが響く。
「何が言いたい……!」
「この世界の常識から外れれば、変わらなくて済むかもしれない、という事さ。その可能性が戦闘機人とシオンたち。不老不死の世界があるかもしれないのだよ」
「……!」
「もちろん、この世界全てを不老不死に変える力は私に無い。だから今の世界には消えてもらうことにした。その後新しい世界を私が作る。君もその世界に連れて行こう。プレシア女史もさぞ喜ぶことだろう」
「私がそれを望むと思うか!」
「望まないからこそだよ。プレシアは君を大層嫌っていたそうじゃないか、ウタネがいなければ殺されていたかもしれないほどに……だからこそ。嫌がる君を永遠に死ねないようにするのさ。死んだプレシアと良い対比だ」
「絶対……絶対に許さない……!」
「おっと!無駄だよ、無駄。真ソニックだったかな。いくら速度を上げようともトーレの速度には敵わない。夜天の管制人格との戦いを見ていたのだろう?目で追えたかね?反射は間に合いそうかね?装甲を薄くして耐えられそうかね?全てが無駄だ。管理局では娘たちの誰一人にさえ敵わない」
「……異世界を見る、というのは本当らしいな」
「ほう?シオンが喋ったのかな?そうだとも、私は本来なら負けていた。トーレもプライムを持たず、君の真ソニックに負け、私も無様に捕らえられた……だが、もう違う。プライムを持つ娘は君たちを完全に上回り、シオンの能力にも対応した……ヴィーナスの残りは不確定だが、まぁ問題にならないだろう」
「お前らはウタネ達の力を知らない!たとえ私たちが敗北しても、お前たちが勝利することもない!」
「ふふふふふ、信じる心は真実を歪めてしまう。正しい事、それは世界が変わり続けるように刻一刻と変化するものなんだ」
「……?」
「彼らが私を止めるというのなら、何故、シオンは姿を隠していたと思う?ただ私の技術を得たいだけなら、私を捕らえ管理局で動かせば良い。シオンにはそうする能力があった。何故、そうしなかったと思う?」
「まさか……」
「そう!彼も管理局が邪魔だった!その先については答えてくれなかったがね、彼も管理局を解体する気だったのだよ。夜天の管制人格が防ぎはしたようだが……それも同じことだ。時間停止や時間跳躍といった彼が好んで使う能力には既に対応できるだけのスペックを全員が持ち、それぞれが別の能力をプライムとして設定している。魔法などもう型落ちの技術に過ぎないのだよ。それに、彼の能力と違いプライムは適合さえしてしまえば制限が無い。魔力切れや負荷などという概念すらなく使い続けることができる。さらにプライムはシオンが加減しただけで適合さえするならいくらでも足すことができる!」
「なん……だと……」
「まぁ、二つ目以降は確かに手間と時間がかかり失敗する危険もあったからね。してはいないが……管理局を落とした後ゆっくりと研究するよ」
「そのために……多くの人を殺すのか!日々を静かに生きているだけの人々を何だと思ってる!」
「んー、そこが意見の相違というヤツだ。言っただろう?世界は変わらなければならない。『今』は刻一刻と進化している。自分たちの日々を守ろうとするなら、進化しなければいけない。変わらないこと、それは相対的な退化なんだよ。そういった者たちは淘汰されるが必然だ。世界の理、弱肉強食というものだね」
「……!だからって……」
「そう言った意味で、シオン達も同様さ。彼らは既に存在として完成している。だからこそ、彼らは退化するしかない。完璧な存在が私たちのような俗物と触れ合い、感化されること……既にそれ自体が彼らにとってデメリットでしかないのさ。付き合ってくれるのはあくまで彼らの善意。君だってプロジェクトFの残滓や身寄りの無い召喚士を助けたのも善意だろう?それと同じさ、自分には何の得もない」
「違う!彼らは自分で望んであの場所にいる!善意でそれが成されるならそれ以上は無いだろう!」
「ならそこに意味はあるかい?」
「意味、だと?」
「助けたからなんだい?導いたからどうした?君はそれで強くなれたかな?賢くなれたかな?何も変わっていない。自分の財と労力を払って得たものは満足感だけ。それはあまりにも救われない。私なら相応の対価を支払える。活動、行動に、その成果に相応しい対価を望む形で支払おう。その体の働きが全て反映される対価だ。君の能力ならば管理局のそれを大きく上回るだろう。今よりもっと、今日よりずっと。より良い生活と快適な活動ができる。もちろん、それを孤児の救済に当てるも自由だ。あらゆる個人的価値観に囚われない絶対的対価を出す。管理局などという凝り固まった老害組織に固執する必要などないのではないかな?」
「違う……!そんな対価は望んでない!より民主的に必要とされる組織が必要なんだ!お前だけが上に立つなんて許されない!」
「……人は真実を知った時に変化する生物だ」
「……ッ⁉︎」
「人はその認識によって価値観を変動させる。何も知らないのであれば万物は全て平等であり、現代の価値観に寄るならば金は高価、土はガラクタ、と言うのが一般だ。だがどうだね。もし何も鉱物資源が入手できない地において金より土の供給が少なければ?土は植物を育て、あらゆる地上の基礎となる。金と比べても分量的には土は多く必要とする。そんな状態で土は金より遥かに安価だと主張できるかね?土が貴重と言わざるを得ないのではないのかね?それと同じさ、君の価値観はこの世界がこの世界であるから発生する価値観だ。それを一新し、絶対的量に則った価値を根付かせようと言うのが私の先だ……では教えてくれたまえ。一体何が……全てに平等な価値観の何が、ダメなのかね」
本当は昨日投稿できるはずだったんですけどスカさんの演説が長くなり過ぎました。地の文長すぎですけどまぁ……クソザコ作家なんで想像してもらって……
良いお年をお過ごし下さい。一年間ありがとうございました。