ふんふんふーん、と。
なんか色んなところで色々起こってる気がするけど何一つ分からない。
私がしてるのは防衛ラインに来たガジェットをミクロまで圧縮するだけ。
制限してなければ各地にモニター張ってもらって全部潰せばいいんだけど。シオンがしないなら何かあるんでしょ。知らないけれど。
『ウタネさん!休まなくて大丈夫ですか⁉︎』
「ん……?ああ、はい、大丈夫ですよ。他にできる人もいないので」
『そうですか。わかりました。それでですが私はシャーリーです!敬語ですみません!仕事なので!』
「ああ、思い出した。久しぶりだね」
『毎日会ってます!ともかく、もうすぐ部隊長がそちらに到着します。それまで継続して下さい。お願いしますよ!』
「んー、じゃあそれは来たら任せるとして……もっかい中行こっかな……」
『ゆりかごへですか?』
「うん、ヴィータが新型ガジェット相手に残っちゃったから」
『え⁉︎なんでそれを早く言ってくれないんですか⁉︎ヴィータ副隊長一人じゃ流石に無理がありますよ!』
「やるべきことをしろって追い出されたから。それってヴィータより市民を守れってことでしょ」
『ですが!』
「ホントにダメならシオンでもソラでも動く。それがないなら何とかなるんでしょ」
自分以外誰も死なせないシオンも誰も殺させないソラも動く様子は無い。見てないけどヴィータがそのまま出てないってことはとりあえず大丈夫ってことでしょ。
作戦なんて立てられる頭でもなし、優秀な周囲に任せて能力を使うだけ……それで終わり。
「ウタネちゃん!」
「や。戦闘機人いたみたいだけど」
「あれは王様がなんとかしてくれるよ。それよりガジェットは私らに任して」
「王様?」
「ディアーチェだ。まぁ、夜天の関連プログラムだな」
「ふーん。まぁいいや、じゃあ悪いけどシオンに繋いでくれる?」
「ああ。私も正確な指示が欲しいしな」
王様……ディアーチェ?知らないね。
『あ?なんでウタネがそこにいる?』
「ああうん、めんどいから記憶読んで」
『能力使わせんな……まぁ分かった。Ⅳ型だな。あの辺には割と配置してたはずだ』
「Ⅳ型⁉︎ガジェットか⁉︎Ⅲまでやないん⁉︎」
『なんならⅣが一番先にあったぞ。ⅠからⅢはアレの型落ちみたいなもんだ。まぁ、わかった。もうすぐこっちの用事は終わるからオレが行く』
各十万、ってのはそれを含めて、ってことだから……四十万に増えたのか……辛過ぎる。減らないじゃん。
「用事?」
『ああ、案の定シグナムがゼストに負けたからな。今レジアスにカタ付けに行ってる』
「ブッ飛んだなぁ⁉︎なにしとん⁉︎」
八神さんが叫ぶ。
レジアスってお偉いさんだったかな?なんで殺しに?案の定シグナムが負けて?
これは私も混乱する。
『いや、先約だったんだよ。シグナムも致命傷ではないし治癒もしといた。あとお前ん家、融合機もう一体増えるからな』
「ああそうなん?融合機ね。なるほど……やなくて!」
『うるせぇ、止めるならオーバーSSと融合機とオレが管理局員殺して回るぞ。すれ違いが起きてたんだ。姉さんなら分かるよな』
「そーだね。じゃあしょうがない」
「なにがや⁉︎」
すれ違いって下手なミスよりイライラが強いからね。ケアレスミスという存在が最もストレスになる。それの埋め合わせとして管理局崩壊させるくらいなら仕方ない。
いや、そうなると私たちが動いてたのも無駄になるんだけどね。
「でさ、私たちは何してればいい?このままガジェットでいいの?」
『そうだな……なのフェイは大丈夫として、んー、やることねぇな』
「あるやろ!この現状でヒマってなんやねん!」
『ガジェットはそりゃ処理してもらう。それ以外にねぇってことだ。ナンバーズは十二人。二人は戦闘に出てこれず、スカリエッティに二人ついて、二人をマテリアル、四人ほどソラが引っ張ったし……あとはチンクとセインだな。どこいるかわかんねぇし……やっぱ姉さん、先にヴィータと合流すっか』
「うん。その方がいい」
「ソラちゃん大丈夫なん?ウタネちゃんそっちに行った方がええんちゃうん」
『いらんだろ。なんならアイツが一番死なん』
♢♢♢
「シオンは……私を裏切った。管理局は、酷い奴らだ……」
ガジェットが空を覆う中、ソラと少し離れたビルの屋上で紫の召喚師が憎しみと殺意を持ってフォワードを睨む。
「ルー!シオンは違う!」
「違わない!」
エリオの声も完全に遮断し、聞く耳を持たない。我を見失うほど激昂する召喚師……ルーテシア・アルピーノの足元に魔法陣が展開される。その周囲にも同様の魔法陣が複数。そこから角を持つ丸型の巨大昆虫が出現する。
「ガリュー、早く、倒して……殺して!」
ガリューと呼ばれた昆虫的特徴を持つ人型がエリオへ飛びかかる。
「ッ!」
「エリオ!そのまま召喚師と引き離しなさい!」
「はい!」
エリオがガリューと組み合ったままビルから飛び降りる。
空戦ができないとは言えどもなのはとシオンの訓練を生き延びた一人、バリアジャケットも含めそれ程のダメージにはならない。
「キャロ、あの子は任せていいのね?」
「はい、任せて下さい!」
「わかった。ヤバかったらすぐ言いなさいよ!」
「はい!ガリューをお願いします!」
ティアナもエリオを追って飛び降りる。ティアナは体の自由が効きアンカーもあるため着地には支障も無い。組み合った二人より少し離れた場所に着地すると即座に指示を飛ばす。
「エリオ!そのまま膠着状態を維持!キャロが召喚師を止めるまでこらえるわよ!」
「はい!」
ガリューとエリオの斬り合いの中にティアナが牽制を入れる、どちらも傷付かないための持久戦という選択。
「やりたいこと、やるべきこと、それぞれの思い……全部違うけど!ヴィーナスの関わる未来は一つ!私たちはやるべき事をやるわよ!」
「はい!」
「……!」
ビルの向こうから揺れ。
キャロとルーテシアの召喚獣がより激しい戦闘をしていることが分かる。しかしその戦闘もキャロが引き受けたものであり、ティアナとエリオはただ待つしかない。
とはいえティアナも安心できる状況ではない。ガリューは単体でも一流の魔導師に匹敵する実力を持つ。
だが、ティアナはウタネが演じていたシオンによって一度殺されているに等しい。その時に感じた死の実感は、今は無い。あの時は感じなかったが、自分の無茶と相手の実力を知ればその実感は明確にある。その実感が今は無い。
相手は一人、自分は前衛後衛の二人。戦術を整え環境を誘導し、コンビネーションを確実にすれば時間稼ぎできない相手では無い。
ティアナの戦力分析はかなり精度を上げ、隊長陣にも引けを取らない程にまで引き上げられていた。死という終わりを実感していなければ今でもティアナはガリューを一人で引き受け、エリオをキャロの援護に行かせただろう。
「頼むわよ……キャロ……!」
♢♢♢
「ディアーチェか……」
「誰だ?戦闘機人を抑えているほどなら聞いた事がないはずがないが」
アインスたちとの通信を覗き見ていたシグナムが記憶を辿っているようだが、オレにも思い当たらない。
「ディエンド使ってたしどっかから喚んだんだろ、並行世界か異世界の住人だろ。ま、喚んだならアインスには逆らえん。ほっといていい。それよりゼスト、レジアスの後はどうする。介錯してやろうか?」
「……構わん。どうせ明日は無い。アギトを頼む」
「旦那……」
「……まぁ、お前に殺させるわけにはいかんな。視えてるぞ、ドゥーエ」
「「……!」」
管理局内へ入ったところで立ち止まり虚空に話す。
剣で指し示したその先、空間が少しずつ輪郭を持ち、例のスーツが姿を表す。
「私の存在はドクターとウーノくらいしか知らないはずですが」
「オレも今まで知らなかったが、2番だけ空いてりゃ不自然にも思うだろ」
「……それもそうですね」
「……なぁシグナム、オレはなんでこんなヤツらと協力してたんだ?」
「私が知るか!」
「まぁいいや、ソラの心配してたスパイも正体が分かったしな。よし、シグナム、ゼスト連れてさっさと行け。コイツはオレが引き受ける」
「……仮にも局員の私に局員殺しを補助させるのか」
「じゃゼストが先に行け。シグナムは止めようと追いかけたが間に合わず、で良いだろ。アギトが妨害してたって言えばまぁ、まぁ?」
「納得し難いが……負けたのは事実。アギト、先で少し戯れるか」
「すまんな、アギトも頼む」
「まぁ、旦那が言うなら……」
「オレはコイツ確保したらゆりかごに行く。そっちの用件終わったらはやてに合流してやれ」
「了解した」
シグナムたちを送り出し、剣を構える。
「データリンクは私にも適応されています。能力無しで私に勝てると?」
戦闘要員ではないクセにイキがってるドゥーエ。
「勝つ気はねぇよ」
「では、騎士ゼストの時間稼ぎに?」
「いいや……」
無駄な時間も使わない。ピカピカの実と神威で……
「確保する、と言ったろう。お前には終わるまで神威空間にいてもらう」
「……!」
反撃も反応の隙も無い。光より速く動けるはずもなく、神威から逃げられるはずもなく。
「誰にも見られてないってのは能力が使いやすくて良い。さて、行くか……」
ピカピカのままゆりかごへ接近、神威のすり抜けで内部通路へ侵入する。
さて……姉さん、よりはヴィータか。
「おっ……」
そこにはオレと同じ姿をした生物が磔にされ、そばにはチンクが立っていた。
人質かねぇ?辛いもんだ。
「やはりここに来たか」
「やはりって何だ。テキトーに入ったんだぞ」
「それも想定範囲内だ」
「数字も数えられんくせにその辺の予測精度どうなってんだ」
「無駄話はしない。私の能力、知ってるな」
「金属を爆破、プライムはそこから派生してキラークイーン」
「つまり、人体を爆弾にもできるわけだ」
「……で?」
「コイツを爆破されたくなければ自分で腕を切れ」
「あぁ……そういうタイプ」
くだらん事をするが……オレも面倒な性格してる。さっさとチンク殺せばいいのにな。
「さっさとしろ」
「止血はしていいのか?」
「ダメだ。余計な動きをするな」
「はぁ……」
仕方ないのでこの腕とはおさらばしよう。両腕はやりづらいがな。
「チンク、両腕切るのは難しい。二振り投影して上から落とす。いいか?」
「それ以外の挙動を見せれば即爆破だ」
「どーも」
短剣を二振り、両肩の上に投影、切断に十分な威力を持って撃ち出す。
Dランクとはいえ流石宝具のレプリカ、骨さえ簡単に切り落としてくれた。
「で?もういいのか?」
「お前はここで始末する。足もだ」
「ダルマ趣味か……男のそれに需要はあるのか?」
「……?何の話だ?早くしろ」
「ま、機会があれば教えてやるよ。足な、倒れんのは無様だから座らせてもらう」
座ってから腕と同じように投影して切り落とす。
両腕両足が自分の意思で動かない形で目の前に並んでる。
……生々しいな。オレがちゃんと人だってのが実感できるな。前の世界では所詮意識の一端でしかなかったからな。
「気分はどうだ?」
「不便だな。こんな負傷で動かなくなるんだからな。人間てのは弱過ぎる」
「そうか。ではさらばだ」
「シオン!」
「よぉ、ヴィータは無事だったか?」
チンクが小型のナイフを出し、オレにトドメを刺そうとしたところで本物のウタネが現れる。
「無事ではないけど生きてるよ。駆動路を私が引き受けることになったの」
「そうか。間に合ってよかった」
「で、それどういう状況?」
「んー、踏み絵ができなかった?」
「そんな偽物で?直死ならすぐ見抜けたでしょうに」
「いや、そんなことしなくても姉さんが磔なんて有り得んだろ」
「それもそうだね。じゃあなんだ、私を傷付けないって意識のためにそんなしたの?」
「まーなぁー……」
「本物か。丁度いい。少しも動くなよ、シオンにとどめを刺されたくなければな」
「あなたがチンク?まぁ、色は似てるね。シオン、どうしよっか」
「……好きにしろ」
「じゃあ、はい。どうぞ」
ウタネは両手を上げてひらひらと降参のポーズを取る。
それをチンクが爆弾化した杭で壁に打ち付ける。手荒なことしやがって。
「では、言い残すことは?」
「まぁ……オレの負けか。それは認めるが……お前らも負けるぞ」
「?」
「これは賭けだな。まぁ、この賭けに負けようとどうでもいいが……オレ達の勝ちだ」
「頭に血が回らなくなったか。さらばだ」
一本のナイフを見た後、視界が途絶えた。
♢♢♢
「全く。手間をかけさせる。それにしても、シオンにしては雑に縫い込んだ目だな。これはなんだ?」
「さぁ?なんか見たら死ぬらしいよ。開けるのはオススメしない」
「呪いの類か?触らぬ神になんとやら、というしな。判断はドクターに任せるか」
縫いつけた目をそのまま爆破、シオンであったモノは両手足のみとなった。
「ふぅ。さて、次はお前だ、フタガミウタネ」
そして、気を抜いたチンクが呼んではならない名を口にした。
「……そうだね。面倒な時に起こされたものだ」
「何?」
「もっと寝たいと言ったと思うんだけどな。取り敢えず、離して貰おうか」
十分に壁に食い込んでいた杭を軽く払うように外し、肩をポンポンと撫でる。
「……な、私は、何故……能力を解除して……?」
「シオンの手が入った戦闘機人なら、僕が介入できないはずがない。君には生きていて貰おうか。シオンもウタネも殺す気だったようだが、僕も一応は正史に近い方が安定するからね」
「……何の話だ、お前は、誰だ……?」
「さぁね。ただの通りすがりの現実改変者だよ。双神の直系、で分かる訳はないか。ま、もう君は死なないし動けないから好きにするといい。それもできないけど」
シオンでもウタネでも無い口調と、それらを超えた威圧感。
チンクは固定された体と自由意志の中でただ恐るしかなかった。
「……ヴィーナス全員に命令だ。各々全力を持って目の前の敵を倒せ。生死は問わない。無力化すればそれでいい」
『げー!双神詩音!』
「やぁソラ。随分と早く起こしてくれたね」
『私何もしてないんだけど!』
「君がシオンに漏らすからだ。勘づいて自殺したよ」
『えー!なんで止めてくれなかったの⁉︎』
「どうせすぐ目を覚ますだろう。シオンが生きてると僕も出て居られないし、それまでの時間だけ。まぁ、罰が欲しいなら十分に時間はある」
『もー!起こしたのはごめん!分かった!全力で頑張りますぅ!』
「それでいい。他もちゃんと動くことだ。僕なら君たちでさえ存在しなかった世界に書き換える事もできる」
『脅さないで!』
「冗談だよ、両儀なら簡単だろうけど僕は少ししんどいから」
『じゃ!もういいでしょ!おやすみ!』
「ああおやすみ。次は30年は寝かせてほしい」
『それは分かんない!』
「努力はしてね」
『してたよ!』
「ま、頑張ってくれたまえ」
♢♢♢
「無駄だっつってんだろ。何の能力も持たない筋肉バカが!」
「おっと!その筋肉バカにタメ張ってるようじゃあ!まだまだだね!」
「うっせぇ!」
キレ師匠とオラオラしてウェンディとオットーの援護射撃を躱してディードの隙潰しを殴り返す。
うん。確実にvividより強いね。シオンは何してくれてんだ。
「シオンに及ばねぇ奴がちょこまかしてんじゃねぇ!」
「……!」
及ばない?私が?
「スターライト・ブレイカー」
「「「ッ⁉︎」」」
カートリッジを握り込みブレイカーをぶちまける。
まぁ当然のように防御されるけど一定の時間はできた。
「あのさぁ、シオンに遊ばれてた貴女たちがそれを言う?」
「逆っスよー、あたしらがシオンを利用してたんスよ。もう時間系能力も対応して何でもこいって感じ。アンタが一人でどうこうできるレベルじゃないんスよ。シオンも死んだそうじゃないっスか」
「パワーだけでよくやってる方だ」
どこまでも思い上がった思想。自らを、自分たちが絶対というナメた言動。
ギルガメッシュレベルだな。いや、それほどではないな。せいぜいエリザくらいか。
「んー、まぁ?シオンの能力に対応した、ってのはまぁ?信じてあげる。私だってね?シオンの全部を知ってるわけじゃないからね?」
確かにウェンディの言うことも一理ある。時間系に対応できればおおよそ全ての物理能力は通じない。因果法則を書き換えるか洗脳系……洗脳系も戦闘機人プログラムなら一人正気なら即復旧くらいするだろう。
因果法則は……シオンもアインスも負荷重くて使わないだろうし出会うこともないか……
「でもさぁ……それで私に勝てる、って理論はおかしくない?私に勝てる?大丈夫?」
「あ?」
「私たちは全く別系統の存在。シオンに対応できても、抑止力の私やウタネに対応できるとは限らない。いや、むしろ逆。誰かへ集中して対策すれば誰かに対応できなくなる。三すくみ。互いが互いの宿敵であるから、有利不利は確実に存在する」
ウタネが絶対無敵であるなら私が抑止力として成立しない。
抑止力である限り、それを超える手段は確実に存在する。
だからこそ私達三人は仲良くしてきたんだ。互いに争っても誰の得にもならないのが分かりきっていたから。
無敵なのはロリコンとか双神詩音とか両儀式とかでしょ。概念とか存在とかから書き換えるの何なの?小学生の考えた最強のキャラクターか?
「それに……変に『強化』なんてしちゃうから、世界を脅かせる力を持っちゃった。そんなだから、私抑止力の対象に入はいれちゃった。知ってるかな?聞いてるかな?抑止力は、必ずそれを上回る力を持って現れるんだよ」
ふぅ、と息を吐き、能力を解放する。
60〜80までとはしたけど、まぁいいでしょ。100%だ。四象の責任だしいいでしょ。
「データリンク、だっけ。互いの経験を共有してより早く、より強い能力を作る……」
「そーだ。だからお前らはあたしらに勝てねぇ」
もはや少女どころか人の姿からも逸脱してるだろう私を見ても怯みもしない。
それは自身の能力に自信を持って相手を舐めてるからだ。私がただのデクの棒だと信じて疑わないからだ。
「それがある限り戦闘機人……ナンバーズは全員の能力が同等以上で、この場にいる貴女たちの能力は精密なコンビネーションによってそっくりそのまま倍増されるってわけだ」
「よくわかってんじゃねぇか」
「……所詮、その程度なんだよ」
だから私達には勝てない。私達は存在そのものが普通とは違う。
根源、両儀に次ぐ世界の源流、四象。それに対する抑止力。それら以外は私の対象。私の能力の肥やしでしかない。
「……なに?」
「鬼の貌、筋肉操作とは別の、私の抑止力としての力。私は、あなた達全員の能力の合計だ」
戦闘範囲内全ての力をそのまま筋力として発揮する。それが、抑止力としての私の力。
鬼や筋肉操作はあくまでそれを使うリミッターでしかない。
「ばくめつけぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!……あれ?ページ間違えた?」
「……えっと……フェイト……じゃない、よね?若いし」
突然目の前に雷が……
誰?いつきた?どこから?どうやって?
「僕はレヴィ・ザ・スラッシャー!」
「うん……」
「お!僕は幻術師と遊ぶのに忙しいから頑張ってね!オリジナルの仲間でしょ?」
「フェイト、かな?うん、仲間だよ」
「そっか!じゃ!」
「……」
またどこかへ消えた……ページ?
「……あの、さっきのって戦闘機人?」
「知らねぇよ!ふざけてんのか!」
「だよね……うん、よし」
分かんないけど敵ではなさそうだし……まぁ、それなりに強そうだったしちょうどいいや。
気を取り直してシリアスに……
「……それに、私自身を加えた力。多勢に無勢はウタネに有利、シオンにフェア。私には、悪手。数が増えれば増えるほど、私と個人との差は開いてく。もう一回聞こっか……私世界に、勝てる?」
「うるせぇぇぇぇぇぇぇ!」
師匠が飛びかかって来る。私はデコピンでそれを相殺、弾き返す。
「まだこりてない?まだいる?全力?出していいの?」
鬼の貌を併用、私の全てがコレだ。
「100%の私は今までとは別の生き物だ。能力範囲はこの世界全て。筋力はもちろん、学力、文才、経済力、生命力。それら全て、人が『力』と認識できる全てを、私は筋力として発揮できる。最後に確認しとこっか。世界に、勝てる?」
鬼の貌により筋肉が絞り込まれ、40%程度のマッチョ感で抑えられる。
ぶっちゃけこれが素なもんだから困ったものだ。
「魔法。魔術。そんなもの。時間だの、空間だの、五大元素だの虚数元素だの、そんなもの。連携だの技術だの……宝具だの概念だの念だのスタンドだのチャクラだの気だの妖力だの……そんな、それらの超常能力は戦闘において、ある一点を代替する手段でしかない。それが筋肉。パワー、スピード、スタミナ、攻撃防御。それら全てを司る筋肉の代替としてそれらがある。そんな、筋肉の機能の一部を代替するためだけに他の何かを疎かに、犠牲にして……そんな不完全な存在が君たちだ」
ふぅ、と息を吐き、周囲の人影が無いことだけを確認する。
「技を超えた純粋な強さ!それがパワーだ!一挙一動作が起こす空気振動さえも!武器になる!」
腕をただ真横に振り抜く。空気を裂いた腕の軌跡によって真空が飛ぶ。
「ガッ⁉︎」
「っ!」
触れた戦闘機人の外装が裂ける。流石に強固な内部部品は破壊には至らなかったようだけど。
「かつての古代の遺産。膨大な犠牲と研究の産物。そんなものは、君たちが勝手に誇ればいい」
「君たち……?」
「──私達を除く総て」
無言で反撃されたレイストーム。直撃を受けても何ともない。
せめてミッドを割るくらいの威力が無いと私には効かない。スターライトブレイカーなんて豆鉄砲程の威力も無い。
「私は、存在の永遠を、そうあるべき、正しい在り方を望んだ。そのきっかけ、始まりが双神詩音に改変された過去から来てたとしても、私はそれだ。あなた達はシオンという協力者を得た。まだいい。そして元とは見違えるほどの力を得た。まだいい。そしてシオンの敷いたレールを無視して、元のレール、管理局へ攻撃した。それがダメだ。私たちによって変化したなら、そのままであるべきなのに。私達が関係したのに、関係してない元に戻ろうなんて。神の視点みたいで癪だけど。私達に頼っておいて自由意志を持とうだなんて、烏滸がましいと思わない?世界に生まれたのに世界に歯向かうなんて、最古級の神話でしか許されない。在るべき存在じゃなくなったら、世界には要らない。四象との通信、聞いてたかな?生死は問わない」
勝敗も未来も確定した。管理局には悪いけど、殺しちゃうよ。
ルーテシアがまともに出てきたのにもうほとんど出番無さそう。