双神詩音が目覚める前、別の場所。
未だ仮初めの関係でしかない、ただ数日過ごしただけという親子は、子が親を攻め続ける形で戦闘を続けていた。
「それが、聖王の鎧なんだね。辛いよね……苦しいよね……」
「わかった風な口を聞くな!」
「うん……そうだよね。でも、ヴィヴィオ」
「名前を……!呼ぶなぁっ!」
「っ……!ヴィヴィオ!私は本当のママじゃないけど!ちゃんとそう呼んでもらえるように頑張るから!」
「うるさい!」
親の懸命な声も一蹴し、ただ侵入者として存在を否定する子。
ゆりかごのエネルギー供給はエースオブエースのそれを遥かに上回っており、限界を超えるブラスター2をしてようやく防御が間に合うかという瀬戸際だ。防御一辺倒の中でもなのはは言葉をかけ続ける。
「ヴィヴィオ!望まない戦いなんて、しなくていいんだよ!自分のやりたいこと、したくないこと。ちゃんと話して?私は……っ!ちゃんと聞いて、全力で協力するから!」
「うるさい!なら死ね!」
「……っ!」
「お前がいるから!私がこうして戦ってる!私一人なら……!」
「……そうなんだ」
本音を聞けた、と息を吐き距離を取るなのは。
急激にクールダウンしたあまりにも不自然な対応にヴィヴィオの攻撃も止まる。
「……ヴィヴィオ。ヴィヴィオがそうして欲しいなら、そうするよ」
「……⁉︎」
死ねと言った。それをすると言った。
聖王の記憶を持つヴィヴィオにさえ理解不能であり、理解しようとする思考は混乱していた。それではこの女の望みは果たせない。親子で暮らすためには、まずお前が生きている必要があるだろう、と。
「でも、この戦いも終わりにする。今まで……戦力を隠すことは、私たちの安全を守り、孤立を防ぐもの……管理局では、どこでどう恨みを買うかも分からなかった……でもそれは今するべきじゃない。私はVNAじゃないけど。ウタネちゃんやシオンと同じなんだ。レイジングハート。覚悟、決めるよ」
《YES》
「ブラスター、4!」
《load Cartridge》
「家族だと思ってる。家族であれたらと思ってる。だから、余計な気苦労なんてして欲しくない。だから、死ぬよ。ヴィヴィオを縛ってるそのガラクタの聖王を壊して、ヴィヴィオにとっての悪者として、ヴィヴィオにはいらない邪魔者として」
ウタネ特注の、特製カートリッジ。
そのマガジン、全3本の内1本、6発分を不発させ、ただ魔力を撒き散らす。
「なにを……」
カートリッジ6発、それだけのスターライトブレイカー分の魔力が辺りを覆い、感知能力を麻痺させる。
ただしそれも一時的、聖王の感覚はそれにも即座に対応する。ただなのはが魔力感知を捨てただけだ。
「ヴィヴィオ。いつの間にか、私もウタネちゃん達に感化されてたみたい。私がしたい事、世界の平和を守る事。それをするのは、私じゃ無くてもいい。私が死んでも、それを成す誰かがいる。そのために、私という敵を消す。争わず死ねばいいならそうするけど、このゆりかごだけは止めておきたい。いつかウタネちゃんに、ソラちゃんに守って貰って、みんなと平和に暮らしてね。私は……今、ヴィヴィオを救えるなら……命も捨てる!レイジングハート!」
エクシードのまま、飛行の為の羽根を切り、床に降りる。無理を押して飛んでいた状態から解放される。
バリアジャケットの魔力密度も落とし、軽く息を吐く。AMFの中での魔力結合の困難さから解放される。
デバイスは左手に軽く握り、ヘッドは床に触れる程落とす。重力場の重さから、最も楽な待機姿勢。
これが構え。中遠距離を基本とする高町なのはが唯一可能な近接スタイル。
近接武器戦闘……ブラスター4。
この構えが意味するところを、ヴィヴィオも、クアットロも、まだ知らない。
「はぁっ!」
聖王を舐めるな、と背後からの魔力弾を伴う打撃。
ブラスター2でもギリギリの反応だったそれは、撃ち始める前には既に避けられ、なのはの背後へ回り込んだヴィヴィオの首元にはレイジングハートのヘッドが添えられていた。
「……ふぅ」
「っ!はぁっ!」
驚くヴィヴィオを冷めた目で眺め息を吐くなのはに、後退しながら魔力弾を連発する。
「……⁉︎」
煙が晴れた後、なのはは位置を変えずに佇んでいた。
構えはそのまま、何事もなかった様に。
古代ベルカ戦乱の時代を武力によって終わらせた聖王の全力の攻撃が、子供の遊びとでも言うように。
「
一歩、また一歩と、ただヴィヴィオへ向けて歩くなのは。
重力が重いのか、その動作は実に緩慢で、戦闘をする速度では無い。
「……っ!」
それでも聖王は怯む。二度の不明な回避に、気付きもしなかった攻撃。警戒するには十分な理由だった。
ハイライトの消えた冷たい目は、ただ眼前の敵を見据えていた。
♢♢♢
「オラァッ!」
「何がおらぁだ。反動で死にかけてるくせに」
「くっそ……!」
「もう無理だよ。4人ともがどこか欠損して。武器もまともに機能しない。身体能力では勝機もない。私は殺す気なんだけど、フェイトが保護したいんだってさ。だから貴女達が諦めるなら生かしてあげる。それまで私も動かない」
初撃、カマイタチを飛ばせば勝負は決した。盾や剣は壊れ、いずれかの部位がハネ飛び、もう完全だなんて言えない機械。
プレシアの通信を聞いて私もそれに乗ろうとあぐらをかいて座り込んではみたものの、諦めない4人の攻撃がノーガードの私に届き、弾かれて。私にダメージのカケラも与えられないまま勝手に消耗していった。
「聞けばスカリエッティも負けたみたいだよ。護衛2人には大人しく捕まるようにーだって。君らもそうしたら?死にたくないでしょ?」
抑止力なの忘れてたけど……この4人、ほんとは生きてるんだよね。なら殺すわけにもいかないし……けど殺さなきゃ止まりそうもないし……どーしよ。ガンド?効くかな。効いても一発だけだから意味ないから……
「どーしよーねー?死ぬ前に早くすみませんでしたーって終わっとこうよ。ね?」
「はいはいすみませんでしたぁぁぁぁぁぁ!」
中学生のテンションで跳び蹴りをかける師匠。アインハルトが見たら泣くよ。
「んじゃま、それでいいよ。終わり!回収しまーす!」
「げっ⁉︎」
師匠の足を掴んで止めて、80%まで落とす。鬼がある分締まってるけど100%より大きくなるのマジでなんなの。
「ディエチとディードは両肩、オットーは抱えて……よし!もしもーし!はやて?」
『なんや、こっちはガジェットで忙しいんやけど!』
「ずっとそれ言ってるね」
『40万やで⁉︎』
「それもそうだ。えっとね、戦闘機人4人が降伏したから、そっち護送するね!」
『はぁ⁉︎4人も相手しとったんかいな!』
「よゆーだよ。アインスだって同じでしょ」
『いや、私はアレだ、やり過ぎると思って王……というかマテリアルたちに任せてしまってな。まぁ、あんなのが出てくるなら私がやっても……ん?そういえば王たちが来ないな。負けたか?』
『冷静に言うとる場合ちゃうやろ⁉︎大丈夫なん⁉︎』
『この世界で死んでも元の世界に戻るだけだしな。まぁいい、ソラ、その4人は私の方に連れて来てくれ。シオンが1人神威空間に放り込んでいる。取り敢えずそこに入れておく』
「んー、それはあんまりよろしくないけど……」
「隙」
『ソラちゃん⁉︎』
ディードがツインブレイズを背中におもっきり突き立ててきたけれど……筋肉層の半分にも到達せず、筋肉を締めることで逆に封印した。足じゃなくて腕落としとくべきだったかな。
未来より強いのは間違いないけど。てかこの子たちのプライムはなんなのよ。まさか多少強かった蹴りとか亜空間ビームがそれか?マジ?全部弾いちゃった。
「無駄な抵抗しないで。隙なんか無いの。私の肩におっぱい当てることだけ考えてればいーの」
「ちょっ!そーゆー理由で担いでんスか⁉︎」
「当たり前でしょ。護送だって言ったじゃない。足無いのに歩かせたら正義じゃないでしょ。ま、連れてくだけなら投げればいいし」
『……なぁソラちゃん、あとで私もそれできへん?』
「この子たちの攻撃受けるかこの子たちをダルマにするか」
『無理そうやわ。シャマルとシグナムでやるわ』
「それが良いよ。そういえばフェイトに似た子が来てたけど……それがマテリアル?」
『うん?そことは結構距離があるはずだが……レヴィの速度ならまぁあるのか?』
「なんかページ間違えたって」
『ページ?』
「わかんないんだ」
『さぁ?レヴィだしな……見てみるか』
アインスがモニターを開き、私にも見えるように示してくれた。
「エクスカリバァァァァ!」
「てぇぇぇぇぇぇぇぇい!」
「レヴィ!何処へ行っておった!」
「ごめん王様!ページ間違えちゃって!」
「なんだそれは⁉︎真面目にせぬか!」
「だってー、避けようとしたら勢い余っちゃって!」
「全く……我とは違う世界のレヴィだからな。少しは多めに見てやるが、あまりふざけるでないぞ?」
「おー!王様優しい!」
「やかましい!我はもう700を越えたぞ!」
「えー⁉︎僕まだ500ちょっとなのにー!ユーリは⁉︎」
「えっと、1057です!」
「がーん!よーし、僕も頑張るぞ!」
画面にはガジェットレベルで無数のメガネとそれを殲滅していく幼い三バカに似た容姿の子たち……マテリアルか。それはそれとして。
「何あの無限メガネ」
『クアットロ。プライムで相当な幻術を得たようだ。2000を超えてなお増え続けるとは……うん、ソラ、あのビルの向こうを見てみろ。黒い球があるはずだ。あれがクアットロ玉だな』
「新種生物かな?あー、見えた。どうしよう、ほっといていいかな」
『あの様子だとマテリアルは遊んでるし放っておけ。まずガジェットが先だ、まだ10万ほど予想されるからな』
「新型だっけ?」
『らしい。ゆりかご内ならあの双神詩音とやらがなんとかしてくれそうだが』
「あー、それは期待できないよ。どれだけ無茶苦茶な存在でも所詮は私より淡い現象な訳だし、もういないかも」
『いない?』
「うん、ウタネと同じ世界にいるシオンが死んでないと起きてられないんだ。シオンもそろそろ……お、ナイスタイミング?」
「じゃねぇよ。神威!」
良い感じに推測できてたっぽい。
なんか飛んできたシオンが私のためのおっぱいを3……4人吸収してしまった。
「うわっと……なにすんの」
「もうチンクとウーノも入ってる。後はあそこの2人とドゥーエ、セインだな」
「そういえばセインどこいんの」
「しらね。プライム込みだとマジで分からんしな」
「どんな能力?」
「
こうやって、とシオンが急に消える。
80の私でも感知できない……シオンだとこの状態で直死や神威かぁ……
「は?」
「触らない限りは探知不能だ。さらにディープダイバーがあるから人目に付かず呼吸するなんて造作もない。流石に何もねぇ平原とかでは難しいかもしれんがこの辺は建物があるからな」
モニター越しのアインスにも見えて無かったようで、かなりのステルス性だと言うことが分かる。
淡々と説明してるけどシオンが最初からそれ使えばいいのでわーいわい?
「直死は?」
「そりゃあ目の前にいれば視えるが探すのは無理だ。お前……は今あんまり無いが、道にも空気にも能力にだって線はあるんだぞ、探すには効率が悪過ぎる」
「私がミッドを平らにしようか?」
「してどうすんだ。地面の下まで探るのは同じだ。とりあえずセインは放っておけ」
「いいの?」
「いくら共有した戦闘能力でもISが戦闘向きじゃない以上そこそこの魔導師が数人固まれば対応できる。アイツ一人残しても何もできねぇよ」
「レリック盗られたらどうするの」
「もう六課には無い。オレのバビロンに仕舞ってある」
「……ギルガメッシュのと繋がってる?それ」
「いいや。あくまでオレだけだな。アインスのは繋がってんじゃねぇか?なんでだ?」
「や……アイツの持ってる和菓子が欲しい」
何故か古代の和菓子が格納されているのを自慢げにはなしてきたからね、あの金ピカ。ホントに何で入ってるか知らないけど欲しいものは欲しい。
「却下だ。カルデア戻ってからやれ。にしてもお前、あの4人よく倒せたな」
「そんな強く感じなかったけど」
「あー……なんで?」
「さぁ……?もしかして、使う前に足とか腕とか吹っ飛ばしちゃったから……?」
「……」
「……」
あのシオンが絶句してる。気まずいんだけど。
「よし……ガジェット殲滅いくぞ」
「まって!そんな『やりやがったコイツ……』みたいな目で見ないで!」
「さぁて、じゃアインスとはやてはそのままガジェット続けてくれ。オレも攻撃飛ばしながら合流する」
『了解』
「おら、なに不満そうな顔してんだ、さっさと行くぞ」
「不満ー!やり直させてよー!」
「無理だろ。諦めろ」
「納得いかないー!」
「しらね」
「もぉー!」
戦闘機人を回収して満足したのかシオンは私に来いと言うだけ言って先を行ってしまった。
……納得いかない。
アインスがやり過ぎると枯渇庭園オーマジオウとかやり始めるのでダメです。