シオンの特典がもう個人能力扱いですけど、世界に認識されたらそうなるのでそうなんです。
「王、お疲れ様でした」
「む、そちらも丁度か」
バインドでギッチギチになったディエチを抱えて紫天に合流したシュテル。
ディアーチェはクアットロを拘束し終え、レヴィとユーリに労いをかけていた。
「いかがでしたか?」
「別になんとも。我は2560体」
「僕は2016!」
「私は3340です」
「で、感想は?」
「サイアクですぅ!」
シュテルの無感情な問いに激昂するクアットロ。
それすら些事と鼻で笑うディアーチェ。
「ま、そんなものよな。さっさと小鴉に引き渡して撤収としようぞ」
「そうですね。もう終わりのようですし」
「えー!僕らも混ざろーよー」
「たわけ、ヤツらを見てみろ。ユーリの暴走時以上だ。我らが行っても死ぬだけぞ」
「むー」
「えぇ、あの白髪……実に。胸が躍ります」
「シュテル、終わりぞ。そもそも別世界の事件。与えられた役割以上に関わるべきでもない」
「そうか?多少なら、この世界は許容するぞ?」
参戦しようとする2人を宥めるディアーチェにアインスとはやてが合流する。
「融合機、ガジェットは良いのか?」
「ああ、ウタネが代わりをしてくれてる」
「ならば良い。さっさと我らを戻せ」
「えー⁉︎もう⁉︎」
「それより、その後ろの方は……」
「あ、はい!ギンガ・ナカジマです!決してこれは趣味ではございませんので!」
シュテルの指差した先、はやてにおんぶする形で縛り付けられているギンガ。
しがみつく赤子のようだが手足首のバインドがそれを否定する。
「……ユーリ、あまり見ないように。レヴィもです」
「えっ、はい」
「ちょっ⁉︎八神部隊長!やっぱりやめましょうよ!」
「アカン」
「もー!」
「小鴉……貴様、融合機にばかり負荷をかけて遊ぶでない」
「え?」
「王……気付いていたのか」
「え?なになに?クロハネ、何かあるの⁉︎」
「こやつは我らがいる限り全力を出せぬのよ」
「そうなのですか?」
「ああ……私の能力は2つまで。ディエンドの召喚で1つ埋まってしまっているからな」
本来なら、使える能力は2つまで。
どれほど強力な能力を使おうと、この原則は変えられない……いや、変わってはいない。
だが下に見えるシオンは、自分を増やす事でそれを無理矢理捻じ曲げた。
当然、それぞれが使う能力は1つか2つだろうが……
「なぁ、アレやったらアインスもできへんの?」
「クロハネがいっぱい……?」
「世界の終わりだな」
「いや、できないな」
アインスは自身の能力を想定し、即座に否定を返した。
「なんでや?同じ……」
「同じではない。もちろん、能力としては同じだ。だが、その能力の先、対象とする並行世界が異なっている。私がアレをしても、この能力を持たない夜天の書ないし闇の書を持つ私が来るだけだ。この時代に存在するかもしれない私は、いや……魔導師は、そう変わらないからな」
「「「……?」」」
「いや、私の並行世界では、私は死んでいたり、消滅しかけていたりと、存在自体が怪しい。この私が、あらゆる並行世界でも1番強く安定しているだろう。蒐集する魔法も、シオンがいない世界ではそう変わったものは無いからな」
「……まぁ、お主らの事情なのであろう。我は聞かん。それより、さっさと戻せ。もう出番は無いのであろう?」
「いいのか?もう少し居ても……」
「たわけ、我らはそもこの世界を去った。必要以上には居られまい」
「……他の子も、それでええんか?」
「私は王に従います。ナノハとも会いたいですが……それもまた、あるべき世界で」
「僕もそれでいいかな。じゅーぶん楽しかった!」
「お世話になりました。機会があれば、また呼んでください。リインフォース、はやてさん」
「……そうか。ではさらばだ。マテリアル、ユーリ」
「さよならか……また会おうな」
♢♢♢
「おらぁ!」
『直死──』
『終焉の時!』
『金剛風雷破神撃』
『真実はこの能力にある!』
『超尾獣玉螺旋手裏剣!』
『ティロ・フィナーレ!』
『飛天御剣流!九頭龍閃!』
『絶影!』
戦争というにはそれはあまりにも一方的過ぎた。
それは、ただの蹂躙だった。
宝具が、スタンドが、ベルトが、妖力が、あらゆる世界の能力をシオンが使いこなしている。まるで生まれ持った力の様に。
決して殺そうとはしないが、反撃の術を一切無くそうと徹底的に。
「私が触れればいい!殺してみろ!お前たちも終わりだ!」
『そうか?なら、【死ね】』
「ぶがっ……⁉︎」
「えっ……⁉︎」
ソラが激しく動揺する。
それもそのはず、十三人目の戦闘機人を攻撃したシオンが使っていたのは失われた統一言語。ソラにとっては過去、シオンにとっての未来においてシオンの偽固有結界で双神詩音を追い詰めた能力をシオンが使っていたからだ。
死ね、という絶対命令を受けた十三人目は激しく痙攣し、血を撒き散らし地面に倒れ伏した。その後も統一言語は使用可能なようで、神代との格差が見て取れる。
それを皮切りに次々と動作不能になったナンバーズが並べられていく。
両足切断、両手足切断、逆キャタピラ、亀甲縛り……様々に並べられた後、いずれかのシオンによって修復がなされ、また別のシオンによって拘束された。
「さぁ、もう終わりか?えー……ウーノ、ドゥーエ、トーレ、セッテ、オットー、ノーヴェ、ウェンディ、ディード。アインスのとこにクアットロとディエチ。ゆりかごに封印されたチンク。あとはセインか。出てこいよ、今なら拘束だけで済むぞ」
この世界の……ベリアルアイのシオンが辺りを見回す。
しかし反応は無く、他のシオンが何かをする。
『いないぞ。コイツらと同じのは……おい、誰かビーチボーイ持ってねぇ?』
『ああ、オレだ』
『あっちの地中……感知できるか?』
『……今一瞬出た。左に動いてるやつか?』
『それだ』
『よし……ん、釣れた。殺っていいのか?』
「ダメみたいだ。そのまま連れてこい」
何らかの能力で戦闘機人と同じ反応を感知、ビーチボーイがおそらく呼吸したタイミングでそれを見つけ、釣る。
『了解』
「さぁ……よかったな。もう終わりだぞ」
「ヤバすぎぶっ壊れじゃん」
完全に存在を探知されなくなるセインをものの数秒で探し出し、確保した能力にソラが絶句する。
使った能力は2つ、つまりこの世界のシオン単体でも同じことが可能だったという点も、完全に戦闘機人を自分だけでコントロールするつもりだったことが伺える。
「黙れ。ならこの状況でお前はオレに負けるのか?」
「ううん?勝てるよ♪」
「だったら文句言うな」
「はーい」
世界全体の力を得るという性質上、シオンがどれだけ力を増してもソラは必ずそれを上回り、ガイアでありアラヤでもある特異な抑止力であるからして八卦以下の現実改変等を受け付けない。よって互いが全力の場合、ソラはシオンにはまず負けることがない。
『おーし釣れた』
「いいいってぇぇぇぇぇ!うぉ⁉︎シオンいっぱいいる⁉︎他もやべぇ⁉︎」
「見てわかる通り終わりなんだが、お前何してた?」
「あ?いや、普通に諜報とかロストロギアの奪取とか。戦闘はしてない」
左腕から胸にかけてスタンドの糸が命を握っていることを知ってか知らずか飄々とした態度が崩れることはなく、オッケー降参、と早々に捕まった。
「……よし。終わりだ。D4C以外のオレは帰っていいぞ。ご苦労……でもねぇか」
『ふん、ウタネが無事なら良い』
『オレんとこ課題あんだけどやってくんね?』
「断る。自分でやれ」
『あ"ー!ダリィ!手ぇ貸してやったろ!』
『じゃーな』
『この世界にもソラいんのな』
「うん?」
『昔はいた気がするんだよ、こっちの世界にも』
「んー、そっちにも、じゃなくてこの私かな。カルデア前かも?けど記憶無いの。ごめんね?」
『その方がいい。オレも覚えてねぇ』
「うん……ごめん」
それぞれが互いに……シオンが一列に並び、中央に縮む形で押し合っていくとシオンとシオンにシオンが挟まってシオンのD4Cがシオンをそれぞれの元の世界へ戻していく。最後の2人、この世界のシオンとD4Cのシオンが残る。
『さて……どうする?』
「この世界と同じ規模でガジェットがいる世界はあるか?」
『……無いだろ。あるにしても探すのがダリィ』
「だよな、オーバーヘブンのやつに残って貰えば良かったな」
『お前がやれよ』
「負荷が重いだろ」
『
「制限あるしそこまで重くない。第二魔法の型落ちみたいなもんだしな」
『なんかムカつくな。まぁいいが。さっさと片付けた方がいいんじゃねぇか』
「姉さんに行ってもらってる。じき終わる」
『この世界ではえげつねぇ能力持ってんなぁ』
「びっくりだよな」
『じゃ、とりあえず半分突っ込んどくな』
D4Cのシオンがナンバーズにそれぞれ人間大のガラスの箱のようなものを触れさせると、右半分が箱に消える。
『ガラス挟めば消滅はしないからな。まぁ、引っ張られたりはするだろうがガラス強度は安心しろ。それぞれの世界にオレがいるから説明はしてくれるだろ。あっはっは』
「ねぇ……いやな想像してんだけどさ」
今度こそ全ての戦闘機人を完璧に捕縛し、ガジェットの心配も無くなり余裕綽々なシオン2人にソラがしなびた声をかける。
「あ?」
「もしかしてさっきの、D4C分の負荷しかないとか言わない?」
「当たり前だろ。それしか使ってねぇんだから」
「うそぉ⁉︎オーバーヘブンやら聖光気!あれ全部⁉︎」
「ねぇよ。あいつら……オレだけど、あいつらが勝手に使ってんだから」
「ナニソレ……じゃあ、最悪……別の世界の能力者と差し替えれるってこと……?」
「ああ。なんならこの世界の物体全てをオレにする事もできるな」
「物体……?」
「オレが生まれた理由、分かるだろ?」
「双神詩音が……」
「それは発生原因。言ってるのはウタネがシオンを作った理由」
「えと、現実逃避?」
『人に言われるとなんか情け無いな』
「自分で言ってもそうだろ。ま、正解」
「それと何の関係が?」
「あの時ウタネが必要としたのは『自分である他者』だ。自分じゃない自分がいれば、ウタネは精神を保てた」
「まぁ、多重人格のありきたりなアレだよね」
「まぁな。厳密に言うと違ったりするが。で、その他者はウタネ以上でもいいしウタネ未満でもよかった。自分のジレンマを押し付けられればいいんだからな」
「うん」
「そして、その対象は物でも良い。人形に話す子供とかいるだろ、アレは親の次にほぼ100%信頼する存在として接し、安心感や自己整理の効果があるらしい。別人格としてのシオンとほぼ同じだろ?」
「んえ……ちょっとよくわかんない」
「要はウタネの負担を肩代わりする誰かがいれば良かったんだ。ウタネでありながらウタネでなく、ウタネの心理的または肉体的負担を軽減する存在。それがシオン。だから、今のオレと同じヒト型を持つシオンがいるのは当然、物がシオンとしていたかもしれない並行世界もまた当然存在する。そしてウタネと違う体を持つシオンもまた存在する」
「つまり……ウタネ以外はシオンになってる可能性がある?」
「まぁな。全てがオレであること。オレが世界だ」
「まぁ、うん」
「世界そのものであるからしてオレは常に中立だ。姉さんに絡まねえコイツらのアレコレははやてに任せるさ」
『自分語りは結構だがな。言っとくが、オレらを連れてくるのは中立の立場では無いぞ』
「姉さんが関係するなら例外だ。お前もそうだろ」
『まぁな。なんならその為だけに来たしな』
「あえ?じゃあさ、そっちのウタネはどうなってんの?」
『ん、別に?いつも通り引きこもってるが。起こすか?』
「は?」
「言っとくが、他は基本的に前の世界だぞ。あの能力持ちの姉さんが特異なんだよ。だから、双神詩音やロリコンが関係してるのもこの世界のオレと姉さんだけ」
「ああ、だからさっき否定したのね」
「まぁ、たまに他の世界に存在してたりするが……ん、よし、全部終わったな」
「ん──ゆりかごが……」
「そういや駆動路……四象のせいで触ってないな」
「えぇ⁉︎」
「でも減速したって事はアレだろ、ヴィヴィオが死んだんだろ」
「死んだの……?死ぬの⁉︎」
「姉さんのをなのはが使ってんだぞ?実力差があり過ぎるのにそんなことしたら死ぬだろ」
「マジで⁉︎ちょっと!私をなのはのとこに跳ばして!」
「してどうするよ。完全無敵の筈の王が、多少名がある程度の人間に触れもしない……その精神的苦痛をヴィヴィオが無視できるなら、また話は違うけどな」
「でも5分もなのはだってAMF下で魔力が持つ訳……!」
「なんの為のカートリッジだよ。スターライトブレイカー分の魔力だ、1発分で1分は待つ。そしてなのはにはマガジン3つは渡してる……」
「じゃあ、なのは自体は魔力を使わずってこと?」
「不発させて撒き散らした魔力を瞬時に収束して魔力放出に近いことをする。いくら訓練しても『普通に動ける』奴がそれをするのはかなり難儀だ。できるなら使うなとは言っといたが、まぁ使うだろうな」
「え、何その言い方、使ったらなんかあるの?」
「アルトリアの魔力放出は知ってるだろ。それを生身でやるんだ、負担なんてもんじゃない」
「バリアジャケットは……」
「フェイトのソニックくらい薄くしなきゃ使えない。撒いた魔力を収束して放出すんだぞ。なのはの防御だと意味無くなるだろ」
「なんでわざわざ撒いてからするの?防御高いならその分威力も上げればいいんじゃん?」
「威力上げたら消費魔力が増えるしダメージも上がるだろ。そんで撒かないと連続で使えないんだよ。1動作ごとにカートリッジロードとかバカかよ」
「んまぁ……そう考えると……そう……なのかな……?」
「駆動路……どうする?抑止力的に。壊す?」
「他にあるの?」
「回収する。バビロンとかに」
「ダメ。壊して」
「じゃ。1、2、3。選べ」
「4」
「お前絶対普通の社会で生きてけねぇよ。4……ま、ちゃんとやるか」
「ちゃんと?」
「空想具現化」
「……マジ?」
「全力で壊さなきゃな。大丈夫、ホントに核だけだ」
「えぇ……」
「ふぅ……!」
シオンの目が金に変わる。
胸の前に赤い水晶体のような映像とも幻とも取れるものが出現する。ゆりかご内部にある駆動路そのものが、シオンの自由意志を受けるだけの存在として現れている。
「直死……」
シオンがソレに刀を振る。
手元のソレは霧散し、それは現実に影響する。
「おぅ……ホントにできるんだ……」
「おおよそ不可能は無いしな」
「……でもさ、人工物にも使えたっけ、それ」
「そうなのか?オリジナルは知らないが、オレのは使えるぞ」
「ふーん……へぇ。まぁ、いいや」
『じゃ、オレは帰るぞ』
「ああ」
D4Cのシオンは戦闘でできた瓦礫に身を挟み消えていった。
「シオン、ソラちゃん!」
「戦闘機人2機を確保しました。いかがいたしましょう?」
「知らん。もうお前らの好きにしろ。オレの管轄外だ。プレシア、聞こえるか」
『なにかしら』
「ゆりかご、蒸発させられるか?」
『制御しないの?バカが使ってたとはいえ、相当なものよ?』
「ソラが壊せとよ」
『まぁ、このくらいならいいわ。ただ、電撃がもし地上に落ちると全体的に感電するかもしれないわね』
「じゃあやっぱオレの神威に入れとく。お前はなのは探して救出しといてくれ。死んでたら好きにしろ」
『いつかの白い子ね。いいわ。それだけかしら』
『待って!なのはどうなってるの⁉︎』
「知らん。もしかしたら、って話だ」
『ちょっ⁉︎母さん!早く行こう!』
『フェイト、落ち着いてください。あなたも相当なダメージなのですから』
「まぁ、できるだけ生きてる奴は逃がしてやれ。ガジェットも外に出てたのは姉さんがほとんど潰したしな」
『中のは私が焼いたわよ。出たらまた連絡するわ』
「ああ」
「結局はそうなるの?」
「一応古代技術の叡智だ、あってもいいだろ。オレが神威の能力を切れば誰にも出せん」
「並行世界の神威のシオンは」
「出せん。鏡で分断されてる。この世界の神威はこの世界じゃないと繋がらない」
「じゃあここに来たらどうするのよ」
「来れん。D4Cと協力すればいいがそこまでするメリットは無い」
「……なんか、私言いくるめられてばっかじゃない?」
「お前が理論的に弱いからだ」
「むぅ……」
やーめた、と抗議をやめ、大の字に寝転ぶソラ。
「後始末のとき起こしてよ。力仕事なら動くから」
「あー。じゃあ、はやてとアインスはナンバーズ頼む。オレはプレシア達が出たらゆりかごを処理する」
「わかりました。私の神威で本部まで送っても?」
「まぁ、それが一番安全か。はやてがいいならいいぞ」
「私は全然ええけど」
「ではそれで」
「おう」
アインスがナンバーズをそれぞれ眼に収納し、はやてと本部へ戻る。
ソラをそのまま放置してシオンはゆりかごへ向かった。
シオンの自分語りとかを設定としてカットすればスッキリして読みやすくなるんだと思います。できませんでしたが。