「最終手段、ブラスター4。大気に撒いた魔力を局部的に収束、その一点に体を引き寄せることで高速化を強制する近接格闘スタイル。姉さんと同じとは言ったが、姉さんのは押し出す放出、なのはは引き寄せる吸引だ。四肢の骨にヒビ入るくらいは前提だが……どうなったか」
♢♢♢
「終わりだよ……ヴィヴィオ」
既に4分を大きく回り、ヴィヴィオ……聖王は思考と神経が強烈な誤作動を起こしていた。
四肢は激しく震え、構えるどころかもはやまともに立つことすら出来ず膝をつき、それでもなお体勢の維持に手こずっている。
精神はすでに摩耗しきり、目の前にいる魔王からどうやって逃げようか、などということすら考えに無く、ただただ次なる恐怖に震えていた。
「私には、もう殆ど体力が残ってない。ヴィヴィオもだよね」
「ひ……ぃ」
なのはも移動に使った脚、防御に使った腕を大きく破損し、僅かではあるが血が流れている。複雑骨折に至っていないのがせめてもの救いだった。
ヴィヴィオの精神的なダメージと比べて肉体的ダメージに比重が寄ったなのは。その重い体を引きずるように一歩ずつヴィヴィオに近づく。
「……っ!」
「怖くないよ。もう終わりだから。いっ……一緒に、ここを出よう」
「こっ……こないで……」
「大丈夫。出るまでだから。私はもう、多分だけど……もたないよ。出口まで、肩貸すよ。それくらいなら、まだ多分」
「……大丈夫な、はずない……!死にそうなのはどっち……⁉︎私より、ずっと……!」
「お母さんだもん。繋がりがなくても、偽物でもね、そうしてあげたいのは本当なんだよ。ヴィヴィオに楽しい未来をあげたい。嫌な思いをして戦わなくて良いように、みんなに守って貰えるように。だから、手を」
「……っ、うん……」
一度伸ばした手を反射的に引くが、それでも手を伸ばす。
なのはがそれを笑顔で握り、引き起こす。
「っ……!」
「大丈夫。今は歩かなくていいから」
「でも……あなただって、もう……」
「マガジンは、カートリッジ6発分。戦闘に使うのは、5発だけ」
「まさか……」
「最後に、ヴィヴィオを助けてあげられるように。最期に、母親の真似事ができるように。私は結局、ワガママで、シオンに助けてもらってからも変われなくて。だけど楽しかったし、結果もそれなりに残せたと思う」
「ちがう……あなたは、私のママじゃない……!」
「うん」
「だから……私のためになんか、死ななくていい!なんで……!」
「そうしたいんだよ。ヴィヴィオになら。ただ出会っただけ。子守もまともにしてあげられなかったけど、何か、惹かれるんだ。もしかしたら、もっと深い絆があったんじゃないかって」
「……!」
あり得ないはずの、けれどあり得た世界。
それを羨んで、望んで、結局はその未来をなのはは捨てた。
ヴィヴィオと楽しく、親子として暮らすのは自分じゃなくてもいい。他の誰かが同じように、ヴィヴィオの親として、管理局員として、楽しく暮らす。
そのために自分は不要だと。中途半端な立ち位置にいるくらいなら、いない方が気楽だろうと。なのははここで死ぬことを選んだ。
「や……めろ……!やめろ!そんな……わたっ……私のた、ために!私に殺される訳でもないのに!」
「関係無いよ。私がしたいこと、やってるだけだから。やるべきことはみんなが……」
「しないよ!」
ロードしようとしたなのはの腕をソニックで止めに駆けつけたフェイト。
「っ……フェイトちゃん」
「そんなことで死のうとする人に!ついて来る人なんていないよ!」
「バカな……駆動路が破壊されたなら、魔力結合は全てシャットアウトされるはず……」
『そんなもの、私にとっては何の意味も無いわ。魔力を私が供給し続ける限り結合しなくても無理矢理魔法が使える量まで持っていける。その間フェイトも止まらない』
「ヴィーナスか……!」
「いいよ、フェイトちゃん。ついて来なくても……やるべき事は変わらない。結果も変わらない。何も、変わらないんだよ」
「なら、ヴィヴィオはどうなの」
「……?」
「なのはが……エースオブエースが誰でもよくても、その隣にいる人はその人であって欲しいんだ。私はエースオブエースの誰かじゃなく、なのはに生きてて欲しい。はやてと、ウタネと、みんなに笑ってて欲しい……なのはがヴィヴィオを救いたい様に、私もなのはに生きてて欲しい」
「フェイトちゃん……」
『フェイト。もういいでしょう。そろそろ出るわよ』
「待って!なのはもヴィヴィオも……!」
通信モニターの向こうで冷たい目をヴィヴィオに向けるプレシア。
「死にたいなら死なせてあげるけど……シオンがね。生きてるやつは生かして帰せと言うからにはね。フェイト、そのまま2人、離さないでね」
「……!うん!」
『白い子、なのはだったかしら。あなたを死なせると私も殺されるの。シオン達を怒らせることはしない方がいいわよ』
「プレシアさん……」
♢♢♢
「神威……」
プレシアから脱出報告を受けてゆりかごを収納した。
「終わりだな。スカリエッティ」
「……そのようだね。あと3歩は足りなかったか」
「ウーノの妹がもう少しいれば分からなかったかもな」
「そうかい?なら再トライさせて貰うよ」
「やめとけ。次はプレシアとソラがキレる」
「せっかく量産したガジェットも無くなってしまったしね」
「管理局とアインスが頑張って半分くらいやったあと姉さんが片手間で殲滅したからな」
「やはり……プレシアじ……プレシアの言う通り、君たちに挑もうとした事自体が敗北だったのかね」
「……そうだな」
コイツらの敗因はプレシアがいた事でもオレ達がいたことでもなく、フェイトがプレシアに殺すなと言った事だ。そうでなければオレ達は殺すか洗脳するかで処理していた。勝負という概念すら無い、ただの管理をしただろう。今のオレ達に挑むことは……ごく僅かな例外を除けば勝利を手放すと言うことに直結する。
管理局にいたのも今後の姉さんの生活にはそれがいいと思ったからだ。
ソラに任せるよりマシだしな。
「ではプレシア。私は戻りますよ」
「何を言ってるのかしら?」
「?私は既に死んでいます。一時的に喚ばれただけでは?」
「この世界には死人がいてはいけないのかしら?シオン」
「今そこで生きている。リニスだったか。お前もプレシアやオレ達と同様だ。居たければ居ればいい」
「リニス〜!私もいるんだからさ!」
「アリシア……」
「いなさい。私達は個人利益のみを考慮する。倫理観は考えないで」
「……プレシア、あなたが初めからそうであれば私は使い魔になどなりませんでしたよ。全く……プレシア、アリシア、フェイト、アルフ。改めてよろしくお願いします」
テスタロッサ家も相当な戦力を持って復活した。
穢土転生、少しは制御できるようにしても良かったか。プレシアの制御に繋がるが……まぁいい。解で穢土転生は解除できる。
「シオン……知ってたの?」
フェイトに抱えられたなのはが今更過ぎる質問をする。
「そりゃあな。アリシアを穢土転生したのはオレだし、プレシアを間接的に復活させたのもオレだ。お前ら管理局がいなけりゃオレ達だけでやってたんだぞ」
「それを言ってくれれば私たちだって色々と……」
「プレシアは出てくる気も無かったし出す気も無かった。開始時点ではいないものと考えてたんだよ」
「……?」
「私が生きてると知れば、フェイトが怯えるかもしれない。管理局が私にも注意を割くかもしれない。私を良く思わない人は大勢いるわ。いつかの黒い子もね。だから私は虚数空間で研究だけをしてた」
「どうやって……ウタネちゃんはあの時、死んだって……」
「能力で部屋を作って貰ってたのよ。仕事じゃなく、趣味でね。幸い私もアリシアも死なないし、随分と長く引き篭もれたわ」
「そういえば、姉さん……」
「ふっふーん、穢土転生!母様の死にかけの肉体を生贄に私を蘇生したキンジュツだよ!」
「再生能力に関してはコレが一番手軽だったしな。プレシアを試す意味でも。アレを拒否るようならオレ達には並ばない」
「じゃあ、プレシアさんもヴィーナスに?」
「ええ。VNAだけど」
「あ……もう、終わったんだね」
なのはの視線を追うと、ウタネとはやて、アインスがギンガを連れて来ていた。
「フタガミ……シオォォォォォォォォォン!」
「っと……なんだよ」
「よくも私を!意識があるまま操ってくれたわね!」
「っ……と」
「くっ……」
愚直過ぎる左ストレートを正面から掴んで止める。
「ちゃんとブレイカー受けた後だったろうが。拳1発で内部ハッキングするのは限度がある。そうだな、スバルを殺せ、とでも入れておけば良かったか?」
「絶対許さない!」
「はぁ……」
《KAMEN RIDE──DECADE》
懐からカードを取り出し、ベルトへ投げ入れる。
そしてバックルのハンドルを押し込み、激情態のアーマーが装着される。
《KAMEN RIDE──EX-AID》
《FORM RIDE──MUTEKI-GAMER》
《ATTACK RIDE──INVISIBLE》
《ATTACK RIDE──CLOCK UP》
無敵化、透明化、高速移動。
もう既にアインスくらいしか見えてないだろうが……
ついでに、というかそうでもしないと止まらんだろうから手首足首を切断しておく。
「あ“あ“あ"あ“あ"あ“あ“あ"あ“あ"あ“あ“あ"あ“あ"あ“あ“あ"あ“あ"!!!」
「今オレとやる意味無いだろ。それにオレに勝つのは無理だ。うるせぇ」
「いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい"ぃぃぃぃぃぃ!」
「……アインス、治してやれ」
「やれやれ……」
「絶対許さないんだからぁ!」
「仮面ライド……」
「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ったく……」
ゲンヤが見たらドン引きしそうなほど叫ぶギンガに呆れ、ふぅ、と息を吐く。
ゆりかごはオレが神威を開かない限り誰も手が出せず、ガジェットは姉さんが全てすり潰した。人的被害は聞く限り無し。終わりだ。
「さて。じゃあギンガ」
「はい?」
「1つ仕事をやろう」
「はい!」
「オレの護送を頼む」
「はい!……え?」
バカが……あれだけ別のオレを喚んどいて、D4C分だけで済むワケねぇだろ。バカか?バカだろ?
能力をこの世界に持ってくるときに負荷の判定があんだから、連れてくるときに能力もこの世界に持ってくることになるだろうが。使ってない分、マシだが……
「シオン⁉︎シオンー!」
♢♢♢
「わ……私は……!いつまでここに……!体が動かん。どれだけ力を込めてもピクリともしない!フタガミウタネ……!恐ろしい能力だ……!外は……どうなっている⁉︎誰か通信……通じない。妹たちは大丈夫なのか⁉︎ドクター、誰か……!誰か……!」
多分流れ的に整合性取れて……ると思います。自信無いです。