何故
自分以外を選ぶのは分かる。アイツじゃあ、どうあっても壊れてた。
周囲の環境、世界と合わない自分に、耐えられない筈だ。なんとか押し殺して、社会に適応しようとした結果の
ならば何故……オレなのか。
オレより世間に馴染める人格、性格など無限にあるはずだ。人類滅亡を目論む様な性格に、わざわざしなくても良かったはずだ。そのへんの思考はしっかりできる頭のはずだ。
オレは選ばれるほど社会に適してない。それは誰よりも、ウタネよりも分かってる。間違いない。
では逆に。オレより社会に反する性格。
自分より下を作る事で自分はまだ優れていると錯覚する方法。能無しのいじめっ子なんかがそれだ。
別にそれでもいい。ウタネが自分を守るためにはそれでもいい。
オレの名前を使うとして、『シオンよりはマシなんだ』と思えるような人格でも良かった訳だ。
どちらにせよ、ウタネは救われた。
ウタネでは無く、ウタネと同じではないステータスの別の誰か。ソイツがいれば良かったんだ。何も性別まで別にする必要も無かった。女でも良かったんだ。女で、気弱で、脆弱で。それでもウタネは救われた。
だが、アイツはオレを選んだ。
ならば、オレがする事はただ一つ。
『選ばれなかったオレだったかもしれないオレ』の代わりに、ウタネを守る。
これは、どの
しかし元は何もできない女の身体。オレも未来視以外の何もできやしない。
──だからこそ。
だからこそだ。この
オレにあった可能性。オレの立場で使っていた可能性。
それを引き出すのがオレの特典。
鏡合わせに在ったハズのシオン。
それをこの世界に引き寄せる。
それがオレに与えられた特典。
数多に存在したかもしれないオレの……未来視では無い……それぞれの能力を扱う能力。
何故原作と差異がある能力なのか、何故原作に劣っていたり優れていたりしていたのか。それは、原作ではなくオレの能力だったからだ。
オレ自身が鏡なんじゃなく、オレを写す鏡。
同時に存在するには、許容されないオレ。
だから、二つ。ウタネとオレで、一人ずつは背負えるだろう、在ったかもしれないシオン。
だから。
「もう殺す。逃げるなら、今のうちだ……逃す気は、無いが」
右手の刀の先を、地面へ落とす。力は込めず、把持するだけ。
足は肩幅、両肩を脱力、ブラリブラリと身体を揺らす。
……射程は、多分半径100。制御次第。おそらく不能。
……速度は、ニキュニキュの瞬間移動速度でおそらく光速。時間系能力を見切るナンバーズでも、単純に動体視力を超えるぶんには問題無い。
刀一本だが、原作も片手で発動していた。できないはずがない。
「オレを超える無謀……その残酷さを知るがいい……」
自分にとっての最適を探す。
スタートするに必須の加速、それを得るために身体を揺らし、筋繊維を弛緩させていく……
「杓子!」
身体が勝手に動く。
決まっているかの様な乱雑なルートをただただ走り、射程に入った全てを斬る。
スタートした時には既に目的地にあるニキュニキュの移動速度。視界など望むべくもなく、過程など望むべくもなく、ただ刹那に刀を振ることだけ。
外からはどう見えているのか。
それを考える暇もない。
次々と現れるナニカ。
それはナンバーズだったり、その辺のガレキだったりするのだろうが、一瞬で視界から消える。現れる、と察知した時には既に消えているソレを確認する事はできないが、とにかくそれを斬る。
何も、無くなるまで。射程にあるもの、全て。
このナンバーズを倒すには、全て消すしか無い。
逃げる暇すら与えず、斬るまで。
その機械部品のカケラすら、その機能を失うまで。
「……!」
セインの助けか、地面を透過するナニカがある。
だが問題は無い。
この特典の前には、透過能力など特別なものではない。
即座にニキュニキュをバイオライダーへ変え、地中を追う。
速度は落ちるが幾分かは視界が利く様になり、狙いも付けられるようになった。方向も分かる。
切るのではなく、突く。移動の速度にブレーキをかけることなく標的を害する。
疲労するまで、ただ斬り、突き、抉る。
「……ふぅ」
全てが更地になり、能力が切れる。
無人のビルもレンガほどの大きさにまで刻まれたガレキの山に、ナンバーズとそれについていたガジェットも全てが倒れ伏している。
既に生き絶え、何人いたかも分からない。
杓子の範囲は砂漠よろしく真っ平ら。さて。どうするか……