「はぁ。やっぱり望みには遠い。現実はあの頃と全く変わらないね、ソラ」
「くっ……!」
機動六課と高町家、すずかとヴィーナスを持ってしてもフタガミウタネに届くことはなかった。
1対主役勢という構図はソラが経験した数年後の世界によるウタネとの戦いと同じになった。
固有結界でない分ソラの能力は飛躍的に上昇していたが、フタガミウタネは更にそれを上回っていた。
「バカな……これがあのウタネ様の本来の力か?規格外などと言うレベルではない。他のヴィーナスが最大のパフォーマンスを発揮しても届くかどうか……はあっ!『祝福の刻!』」
「「「っ!!!?」」」
『最高!最善!最大!最強王!!!逢魔時王!!!』
キングストーンの影響でヒーロー系統の力をより引き出せるアインスが最終の手段として取った切り札。
全てのライダーの力を持つ、最高最善の魔王、その1人。変身の衝撃でプレシアとシオン、ソラ以外は弾き飛ばされ、アリシアは塵になった。
「ふぅん。ホンモノじゃないのになれるもんなんだ」
フタガミウタネが少し感心した、と口にする。
それぞれ、あらゆる能力は汎用のものを除けば各個人専用のもので、同作品の人物であろうと使うことができず、使おうとすれば何らかのデメリットが発生することが筋であり法則だ。
だがシオンの鏡は無理矢理その型を取って使っている。元の能力の神秘が高ければ高いほど負荷がかかり、最大負荷を超えると肉体的に死ぬ。
だが、感心した理由はその負荷ではなく。
「……⁉︎ソウゴか……⁉︎なんという精神介入……!この戦いだけ力を貸してくれ……!」
「アインス⁉︎どしたんや⁉︎」
「オーマジオウから介入を受けてるんだ。全てのオーマジオウは繋がっているからね。その鏡の弱点2つ目、ということだね」
「なんやて⁉︎」
「ウォズがいないから僕が祝ってあげよう。祝え、全ライダーの力を受け継ぎ、過去と未来をしろしめす究極の時の王者。その名もオーマジオウ。今まさにこの世界の終焉である、とね」
「……!」
「ぐおー!復活!そして撤退!」
「……やれやれ。オーマジオウの力を使うと言うことは即ち、時空の再創生を意味する。闇の書時代の悲しみがそれを可能にしている。喪失無くしてオーマジオウは獲得できない。もっとも、この世界の神秘と照らし合わせれば完全な聖王とほぼ互角。そこの人間の様に成長の可能性を残したグランドジオウやRXの方がまだ神秘として高い。さぁどうかなシオン。君なら何を選ぶ?」
オーマジオウを前にして、それではダメだと言わんばかりの話をした後、戦いを離れた場所から見ていたシオンに話を投げる。
「オールフィクション。エア」
どうでもいい、とばかりの投げやりな返答。
「それでもダメだ。オールフィクションでは能力が足りないし、エアは体が保たないだろう」
「じゃー無理だ。少し考える」
「そうした方がいい」
構えを解き、さて、と口を開こうとするフタガミウタネに対してアインスが気合を入れ直す。
「アインス大丈夫⁉︎私に合わせられる⁉︎」
「大丈夫だ、私が保つ限りオーマジオウの力は私のものだ……!『終焉の刻!』」
『逢魔時王必殺撃!』
「「「うっ⁉︎」」」
「「「きゃぁっ⁉︎」」」
「よし!ふうんッ!」
周囲の人間を吹き飛ばす程の衝撃波を放ちながらゆっくりと跳び上がり、キックの文字がフタガミウタネを包囲する。
そしてソラも鬼の貌をを泣かせ、飛びかかる。
「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「決着を急ぎすぎたね。変わらないけど」
「うるせー、もう終われっての」
プス、と。音にもならない音がその場の全員の頭から鳴る。
「「「はぁ〜……」」」
「あ〜〜〜〜オーマジオウとかどうでもいい〜〜〜返す〜〜〜」
キックを中断したアインスが力無く変身を解き横になる。
他のメンバーもふやけた顔で座り込んだり寝転んだりと、一切の気を感じない。
「やれやれ……一応局の敷地内なんだぞ。通常技ならともかくそんなバカみたいのやったら後始末が面倒だろうが」
「なにを……した?いや、いい〜僕も聞く気が失せた」
唯一正常なシオンと、かろうじて立っているフタガミウタネ。
「ワカメ妖精。眼を凝らして見てみろ。手のひらサイズのがいるだろ、全員に」
「ああ〜〜いるなぁ〜〜」
「そいつが刺すとやる気を奪うんだ。数も自由だ」
「そんなのに僕がぁ〜?」
「喋り方に神秘がねぇしイラつく。ま、純正の神祖と両儀の器にも効くんだ、アンタにも効くだろ。ギャグ補正は強い」
「ラスボス戦の鉄則を知らないのか〜〜〜〜?」
ブチュ、と妖精を握り潰しシオンに不満をぶつけるがそこには怒気も威厳も無い。
「もう黙ってその目を治して戻ってくれ。ソラのイメージ見たけどこのまま続けてもロクなことにならん」
「だろうね〜〜〜〜や──、めんどくさ〜〜〜」
「……姉さんって前世からこの妖精に刺されてたんじゃねぇかと疑いたくなるな」
「あ〜〜〜」
「ここまで気の抜けた姉さんの顔見るのは初めてだな……こっち来てからは割と活動的だったしな……」
「たすけて〜〜〜シオンが姉によくじょーしてるよ〜〜〜〜」
「してねぇよ!あとテメェは姉じゃねぇだろ!人外!」
「っ……と。ふぅ。なるほど、魔術の通信販売というのがあるのか。まあそれはいい。けど姉じゃないというのは間違いだ。僕は確かに君たち2人を作ったが、ウタネとシオンの関係が姉弟だというなら僕とシオンもそうだし、僕とウタネもそうだ」
「知らん。オレの家族はウタネだけ。発生源すら不明なお前と関係を持つ気は無い」
「はは、その発生源不明の存在から発生したのが君たちだというのに。あと一応僕は人類だよ」
「はぁ⁉︎嘘だろ!オレ達が人外なのにか⁉︎」
「そうだよ。僕は純然たるヒトだとも」
「でも四象なんだろ?」
「まぁ、そうだね。一般人の前で言うことじゃ無いと思うけど」
「黙れ。どうせ記憶処理とかすんだろ。家族は?」
「さぁ?血縁ならいたような気もするけど親は知らない」
「その血縁と会ったことは?」
「ない」
「お前がソラごと改変したのはいつだ?」
「幼稚園だったかな?まぁ、普通なら物心のつく前だろうね」
「やっぱお前わかんねぇわ。むしろオレみたいにウタネの付属品じゃねぇか?」
「それは断じて違う。そもそも力の格が違うだろう?ウタネの全開でも僕には届かない。ウタネに小学校の記憶があるかでも聞いてみるといい」
「まぁ、それはそうらしいが……お前、急に出てくるようになったよな」
「君もソラのようにメタる気かな。一応真面目なものなんだが」
「うるせー黙れ。オレも死ななきゃいけないんだろ」
「おや急速展開」
「黙れ」
「まぁそうだね。何年後だったか、まぁ3、4年後だろう未来でウタネの頭が飛んだ後と同じだね」
「……お前、なんで読心能力通らねぇの?」
「僕は四象だよ。それ以下の能力なんて概念的に通るわけが無いだろう。ギャグはまぁ、彼女が負けたらしいし……」
「お前もう威厳のカケラもねぇぞ」
「うるさいな。ああ、最後にゆりかごの中の子、出しておこうか」
フタガミウタネが指を鳴らすと、ゆりかごに封印されていたチンクが現れ、2度目を鳴らすとその拘束が解かれる。
「シオン⁉︎」
「あ、お前まだゆりかごだったのか」
「ふざけるな!何日経った⁉︎あれから私は声を出すことさえ出来ずにいたのだぞ……!」
「悪かったね、君を拘束していたのは僕だ」
「ウタネか。妹たちはどうなった」
「僕はフタガミウタネだよ。略すならフタガミだ。どうなったかは後でゆっくり聞くといい。もうスカリエッティの計画は頓挫しているから、まぁ大人しくしたほうがいい」
「……そのようだ。だが何故今?」
「ちょうど終わりだからね。終わりは苦手なんだ。終わりたくないけどね」
「……?」
「まぁ、これで大体元通りってワケだ」
「そもそもヴィーナスと人間がまともな戦いになるわけ無いだろう。人外レベルとはいえ所詮は人間。足りるわけがない」
「じゃ……後は任すわ。お先」
シオンは複数の短剣を投影し、直死で自身を貫いた。
そしてシオンが死んだことでその能力、妖精に奪われたやる気もそれぞれに戻る。
「っは〜〜〜っ」
「ん〜〜〜〜!」
「これは……?」
「シオンが奪っていたやる気が戻っただけだ。僕は何もしていない」
周囲が立ち上がったり伸びをしているのを見たチンクがフタガミウタネに聞く。
シオンの能力はウタネと違い本体が死ねば効力を失う。奪われたやる気はシオンの死によって解放され、元に戻る。
そして認知機能を正常に働かせた3バカと他はフタガミウタネにつっかかる。
「シオン⁉︎」
「え⁉︎え⁉︎なんで⁉︎」
「ウタネちゃん⁉︎説明してぇや!」
「僕をウタネと信じて疑わない人間と人工生命よ、そしてこの物語の全ての生命、物質よ。この世界から僕達は消える。それに異論を唱えるな。そして神とやらに見初められたVNAよ、君達は自由にするといい。この世界に残るも良し、神に頼み他の世界を旅するも良し。ソラは勝手にするだろうけど、夢と母性はこの世界出身だからね」
「記憶処理は……?私はともかくなのはたちに記憶を残したまま消えちゃうの⁉︎」
「なるほど。そうなるか。一周前は消えた世界だからどうでも良いと思っていた……なら、多少は改変しておくよ」
「……ウタネはまだいる?」
「いいや、シオンが死んて僕だけになった。もう神のところにいるだろう」
「そう……私は、この世界に残るよ。カルデアもまだ……」
「カルデアは止まってる。あの世界の時間軸よくわからないしね。彼女はいるのかな?」
「うん。いるよ」
「なら僕の存在に気付いている筈だ。都合の良いように改変してくれる」
「今喚んでもいい?」
「終わろうとした本に続編が足される事になる。両儀と四象の最強争いなんて見たくないだろう?」
「そーなったら見れないけどね。みんな死んじゃうでしょ」
「まぁ。そうだね。それこそ神とやらが出てくるだろう」
「普通に会えばいいのに」
「出来たらそうしてるよ。シオンに言った通り僕は純然たる人間でVNAではないからね。僕の改変も神の間での権能には潰されるからどうにも上手くいかない。だからどこかの世界を滅茶苦茶にしてみようか、なんてね」
「ダメだよ」
「だよね。だからしない。もういいだろう。僕の死によりVNA以外は……まぁ、適当に記憶などなどが改変される。僕も死ぬわけじゃないしね。この世界でウタネが終わる儀式みたいなことをするだけだ」
フタガミウタネが鎌と刀を持ち、それぞれを首に当てがう。
周囲の静止もどこ吹く風、ため息1つで首が飛ぶ。
その瞬間に現実は塗り替えられ、ウタネのいた記憶は消え、その体も武器も痕跡さえ残っていない。
何があったか記憶しているのは残されたVNAの3人のみ。
3人はそれまであった記憶を忘れぬよう、他の大勢は僅かずつの違和感に気付くかどうかの日々を過ごすことになる。
時間に余裕が無くなってきたので打ち切り展開。
STSは自分にはキャラ数が多いですね。A'sでも若干多い気がします。書ききれない。他作品等よく書けるなぁと常々思ってます。
ありがとうございました。