無気力転生者で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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緑茶がメインか、砂糖がメインか。


第14話 議論

「……はい。おおよそは分かりました。ですがジュエルシードを始め、ロストロギアは素人の子どもの手に負える物ではありません。それは分かりますか?」

 時空管理局、アースラ。というらしい単語に誤魔化されてこの女性、緑の長髪で緑茶に砂糖を……いやむしろ緑茶で溶かしている砂糖を飲んでいる奇人の説教を聞かされている。

「……はい」

「……いいえ」

「えっ⁉︎」

「えっ?」

 いいえって答えたら何故か驚かれた。なんで?

「あのくらいの力なら高町さんで十分に制御できていた。フェイトも同様。確かに発現させると面倒かもしれないけど、手に負えない程でもない。『ですが危険には変わりなく』なんていい直したら斬るからね」

「……」

「とにかく、私に交渉の余地は無いよ。組織に入る気なんてサラサラないから。ま、気分次第で協力はするかもだし、高町さん達には付け入る隙はあるかもね」

「にゃっ⁉︎」

「そうだね。ウタネは元々不本意で巻き込んじゃったし……そちらの言い分次第では、考えもある」

 高町を肘でつくと、へにょい驚き方をしてユーノが私の意図を汲み取ってくれた。

 高町さんも頷いて、私に任せてくれる様だ。

「では、どうすると?」

「高町さんとユーノが管理局、というよりこのアースラに所属する。それで今のままジュエルシードに対する全権を持たせる。それなら貴方達は足りない人手も賄え、無駄な損害を出す事なくジュエルシードを手にできる。ユーノがそれでいいならそれでお願いする」

 ユーノはジュエルシード自体に執着は無く、単に被害が出るのを嫌うだけ、高町さんに至ってはその助けがしたいだけ。タダで扱いやすい戦力が手に入るのなら人手の足りない(・・・・・・・)組織としては喜んで受け入れるだろう。

「すみませんが、お断りします」

「なっ⁉︎」

 嘘⁉︎なんだこの緑茶⁉︎どんな思考してんの⁉︎

「なんで……」

「簡単な事です。仮にそう難しくなくとも、命の危険がある事には変わりません。万が一、命を落とす事がなくとも。その後の人生に影響を残す怪我をするかもしれない。ジュエルシード、ロストロギアとはそういう類のものです。そこのクロノも年はそう変わらないでしょうが、キチンと訓練を受け、相応の資格を示しています。できるできないではないのです。それをする、という単純な意思の強さ。それを示すだけの過程、行動が無ければ、どれだけ能力が優れていようとさせる事は出来ません」

「……っ、あまり言いたくは無かったけど、人手不足はどうするつもり?この二人が勝手に集めて来てくれるんだから、これ以上は無いと思うけど」

「……素晴らしい洞察力をお持ちのようですね。確かに、能力と人材という点では二人はとても貴重です。ですが申した通り、ただ能力があるからと、その場しのぎでその道に進ませるのはその二人の人生を潰しかねません。キツい訓練を経て、それでもなおこの道に進むというのなら、私は喜んで歓迎します。ですがその実態を知らぬまま、後で後悔しても遅いのです。出来合いの人員で成り立つ程、この組織は小さくありません」

 この女……資格だの訓練だの面倒な事を……

 少し睨んでみたけど、それを見た上でまだ態度を崩さない。緑茶に入れる砂糖の量も変わらない。それだけ自分の考えが正しいと確信しているのだろう。

「分かった。無理強いはしない。聞いてた限りそんなのが出来る程の組織じゃない。むしろもっと恐ろしいのを想像してたよ。でも、ならどうするの?このままだとジュエルシードはフェイトの手に渡る。高町さんが収集したのはともかく、他が何個あるのか知らないけど、対処できるの?」

 確信しているからこそ、この問題は刺さる筈だ。人手不足な上にフェイトという敵対、ないし競合者。対策は必要なはずだ。

「その点も問題ありません。クロノ」

「はい。じゃあ、これを見てくれ」

 クロノと呼ばれた、私が斬ってしまった少年が空間上に四角いなにかを浮かべる。

「これは……?」

「モニターの様なものと思ってくれ。覗きの様で申し訳ないが、君たちがこれまでに見つけてきたジュエルシードの発現は全てこちらも認知済みだ。これらからジュエルシードの発現位置を予測して、それを上回る最低限の戦力を用意し、発現前に封印する。この方法なら僕一人でも可能だ」

「待って。ならなんでそれまで介入しなかったの?なんで今回に限って介入してきたの?」

「簡単さ。今回ばかりは見過ごせなかった、という事だ。今までも出撃準備はしていたが、君たちだけで済むならなら人員を割かずに済む。あのままジュエルシードが暴発していれば二人はもちろん、ジュエルシード自体もどうなっていたか分からなかったからな」

「お人好し……」

「何か?」

「別に」

 つまり、高町さんでもフェイトでも、全てが1つに集められた所を総取りするつもりだったと。それでも今回は危険と判断し待ったをかけた。魔術師なら二人を見殺しにしてジュエルシードを回収する。この組織はまだ人間寄りの様だ。

「いいな、これからは僕が主に回収にあたる。以上だ」

「……じゃあさ、なんでここまで連れてきたの?」

「できれば君たちには手を引いて貰いたいからだ。今回のような事が起こりかねない様になった以上、次はどうなるかわからない」

「いやなの……」

「なに?」

「私はまだフェイトちゃんとお話できてない!ちゃんとお話するまでやめないの!」

 今まで私に任せていた高町さんが声を荒げる。その目は決意と言うより敵意に近い。

「だめだ。諦めてくれ」

「納得できないの!やめない!」

「納得するかどうかは別の話だ!下手すればその人生を棒に振る事になるんだぞ!」

 売り言葉に買い言葉。二人で勝手にヒートアップしている。

 提督さんも止める気は無い様子。ならばとユーノにも手を出すなと伝える。

「それでもやるの!途中で投げ出したら一生後悔するの!」

「貴様……ッ!分からん奴だな!魔法文化の無い管理外世界の住人が魔法で故障してもそれを誤魔化すしか無いんだぞ!お前は自由を無くし、家族や友人を偽り続けながら病院で一生暮らす事になる!それを止めろと言ってるんだ!」

「っ……」

「お前の様な普通に暮らしてきた人間がいきなり戦場に立ってどうなるか分かってるのか?ただ戦うだけじゃない。その為の犠牲や、その後の人生を踏まえて立たなきゃいけないんだ。お前はお前だけの人生じゃない。お前の親はお前を育てる為にどれだけの金と労力を費やしたと思う?華々しい妄想じゃない、現実的な想像をしてみろ。お前にそれが充分にできるか?そしてそこまでした子供が原因不明の重体を負ってみろ。どう感じるか想像できるか?そのまま数十年、自立するはずだったお前を生かす為に出費も時間もかかり、介護されるはずだった親はお前の介護をしなくちゃならない。お前がそれをどうでもいいと言うのなら止めはしない。勝手に続けろ。だがな、お前が家族や友人を思うならここで引き下がれ。デバイスまでは取らない。ここの連絡先も教える。魔法も時間があれば教えられる。だがそこまでだ。実戦はさせない」

 高町さんに詰め寄って言葉を続けるクロノの目には強い怒りが見えたが、私からすればどうでもいい事だった。自分を生んだのは親の勝手だし、育てたのも勝手だ。怪我するのも勝手だし、死ぬのも勝手。確かにクロノの言い分には一理ある。高町さんはまだ現状とその後を見ていない。ただ感情だけの行動だ。生きてる事を前提とした結果論は……理解しようとする気さえ失せる。

「クロノ。そこまでにしなさい。高町さん、ユーノさん、ウタネさん。今日はここまでです。お時間を取らせてすみませんが、ご帰宅願います」

「……わかりました」

「失礼します」

「次のジュエルシードからは僕も出る。邪魔する様なら敵と認識するぞ」

「……わかったの」

 高町さんは不満たっぷりという顔や雰囲気だったが、あれ程言われれば引き下がるしか無かったようだ。

 その煮え切らない空気のまま、私たちは旅先へ戻される事になった。

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