「さぁやってまいりました第2回ジュエルシードグランプリ。今大会では竜巻飛び交う海上ですが、解説のユーノさん、どうなると予想されるでしょうか?」
「真顔で無感動に言わないでくれるかな! 藁にもすがる気持ちで呼んだのに!」
ある日ある時突然ユーノに呼ばれたと思えば目の前に広がるのは荒れ狂う海と海から上がる竜巻、雷。
私の知る地球にこんな超常現象は起き得ないし、多分この世界でもそうだろう。
「いやぁありがとうございます。互いに慣れない試合環境の中、どの様に組み立てていくのかが問題になるようです。それでは中継を見ていきましょう」
「中継も何もあるか! アンタ正気かい⁉︎このままじゃフェイトもあのなのはって子も潰れちゃうよ!」
「いやぁありがとうございます、飛び入り解説のアルフさん。確かにこの天候、もし竜巻に巻き込まれようものならバリアジャケット込みでも大怪我は避けられないでしょう。この試合には勝者が現れない可能性もあると言うことですね」
「「だから!」」
「……わかってるよ、二人が危険なのも、アースラとそっちの首謀者からも見られてるのも分かってる。だからあえて和やかに行こうと思ったのに……まぁいいや。二人はなんなの? 小中学生の男子ですらあそこまで戦闘好きじゃないよ?」
あの黒い子……誰だっけ? 出るって言ってなかった?
「いや……さぁ?」
「一応こっちは何が何でも手に入れるって感じで来てるけどねぇ」
フェイトは何かしらの目的があるんだろうけど、高町さんはただの人助けだ。そこまで……助けられてるユーノが引くくらいにまでする必要はない……ないんだ。
「はーあ……どーするー? めんどーだから帰りたいんだけどー」
「……こんなのがホントにフェイトを追いつめたのかねぇ……?」
呆れたように女性が吐く。できない人に言われたくない言葉ランキングに乗りそうな言葉だ。
「あの二人くらいなら今すぐ止められるけど?」
「へぇ? ホントかい? できないから帰りたいとか言ってんじゃないのかい?」
「……挑発かな?」
「さぁ、どうだろね? まぁこのままならフェイトが全部持ってって終わりだけどねぇ。止める力がありながらみすみす敵を逃したとなれば、管理局は黙ってないんじゃないかい?」
「む……確かに一理ある。別に管理局に入る気もないしどうって事ないけどいちいち追われるのも面倒だ……しょうがない」
どうせこうなるのは分かってた。
私が止めるか、互いにズタボロになって、恐らくフェイトが競り勝って逃げる。このどちらか。そして私が来てしまった以上、後者は私の罪になり得る。
さて……まずどうするか……竜巻は強いけど二人は無視できてるから放っておいて、竜巻を止めに行こう。
「じゃあジュエルシード取ってくるから、待ってなよ」
取り敢えず刀を抜いて歩いていく。
二人の魔法がカスろうとも、竜巻に飛ばされた海水や瓦礫が皮膚を裂こうとも。
私は無造作にジュエルシードへと歩いていく。
ジュエルシードの場所はユーノに聞いた。無数の竜巻、実に六つ。その全てに一つずつ。
何も問題は無い。私の能力を持ってして、竜巻を恐れる必要なんてカケラも無い。
「まず、一つ……」
能力に固定された空気は私の体を覆い、私の体の動きに合わせて変化する。それは車の窓に雨が降るようなもので、轟音がするだけで体のどこにも支障は無い。
竜巻に完全に体を収めると、その中心となっているジュエルシードに手を伸ばす。
海水を空まで巻き上げる魔力エネルギーは凄まじく、なるほど超常現象に相応しい力だ。
それを踏まえて、素手で触れる。私の能力は魔力を通さないから、素手で直接流し込み鎮静化させる。魔法じゃないよ、魔力だから。
「ウタネちゃん⁉︎」
竜巻の一つを消すと高町さんに気付かれた。というより始めて注視されたというべきかな。まだフェイトの方が強いだろうに。
「あなた達は自由にしてていいよ。ジュエルシードは私が回収する」
「違う! その手! 酷い怪我だよ⁉︎」
「ん……そうだね」
魔力のダメージで血が流れてたのは知ってたけど、全部終わってから固定しようと見てすらなかった……
掴んだ右手指4本、それぞれ数カ所の切り傷、爪の割れ、流れる血……ここまで酷いとね、ため息出るわ。まだ五つあるのに。
「全く、管理局の……黒いの。自分で出るとか言いながら何してるのやら」
二つ目。今度は走って向かう。傷は塞げるけど流れた血やらは戻せない。急がないと動かなくなる。
右手指3本。血は服を染め上げる程に流れている。
右手指2本。掴んだジュエルシードを仕舞おうと左手で触れたら指が落ちた。
やっぱ無理か?
「あ……」
肘から先が……落ちた。