腕が、肘から、落ちた。
「はぁ……」
「ウタネちゃん⁉︎」
「左はフェイトに肩から落とされるわ右を紫電で肘から落とされるわ、私の右腕の切れ者具合は健在かー……」
「呑気過ぎる⁉︎」
んー……切れるねぇ……切れてるねぇ……
「フェイト……拾って」
流石に海水に触れるのはマズい……全く触れなくする事はできても、触れた後消毒するなんてできない。それに、この場で繋がないと誤魔化すのが難しくなる。
「フェイト! 拾って! 海に落ちる前に!」
「っ! バルディッシュ!」
フェイトが高町さんを放って高速で移動する。その速度は十分に落下速度を超え、私の腕を掴む。
「ありがとう」
「いいけど……大丈夫?」
「うん。前にも言ったけどこのくらいなら全然平気」
痛いけどね。痛覚遮断とかしたい。
「その……今のは……あの」
「いいよ、そっちのでしょ。前もアレが無かったら貴女が死んでた。それでおあいこ? にしよう?」
「え……うん……」
さて……意識が薄い……まぁいいや。なんだっけ。そうだ、指だ。指は落ちるの分かってたから能力で保護してるし……事が済むまで沈んでて貰おう。
で、ジュエルシードか。残り五つ。
「じゃ、ゴメンけどさっきの続きしてていいよ。私はジュエルシードを取る」
「できるわけないでしょ⁉︎」
高町さんに羽交い締めされ、いとも簡単に止められてしまう。素の力だとこんなに差があるのか……
「もう私がやる! アルフ!」
「いいのかい⁉︎」
「もう意地を通してる場合じゃない!」
「あいよ!」
それを見たフェイトが事態の早期収束を目指し回収に向かう。
とはいえ魔力を帯びた竜巻は、それを無視して戦闘できてもそれ自体に突っ込むのは困難。ただの魔力装甲では下手をすれば、あの黒い子の言っていた様な事が今ここで起こる。
「高町さん、管理局からの連絡は?」
「まだ無いの。こっちに来てから繋がらなくて……」
なら通信阻害か、管理局が嘘を言っていたか。
どちらにせよどうでもいいけど、黒い子の言う通りになるのも好ましくない。
「じゃあ高町さんはフェイトと協力。今2つこっちが貰ってるから、最悪残りは上げていい」
「えっ⁉︎」
私が取ったジュエルシードを封印しながら驚く高町さん。
「最後には総取りする。一旦渡すだけだよ」
真の敵はフェイトじゃない。私を散々邪魔した奴。ソイツの顔を見てからだ。
というかどの道、フェイトを倒したりこっちに引き入れたとしてもソイツが出てくる。今までフェイトが集めたジュエルシードはソイツが持ってるだろうから、結局ソイツと対面する。ならもう少し情報を集める時間を確保できるようにした方が良い。
「さて、私の役目は終わりかな。ユーノ、管理局が来ても秘密にしといてね」
「秘密? 何を……ちょっ⁉︎どうする気だい⁉︎」
「最終手段。悪用はしないよ、ただ管理局もまだ信用してないから、念のため」
「う、うん。わかった。ただそれは本当に危険なものだから、扱いは気をつけて」
動揺はしたものの表面的には取り繕うユーノ。管理局が見てるかもというのを思い出してくれてよかったよ。最も、聞かれてても問題は無い、というよりそっちの方が良い。敵にも味方にもなれる距離感を維持しやすくなる。
「分かってる。ありがとう。それじゃ、また」
気付かれないよう海から指をゆっくり這わせ、人目の付かないところまで移動させる。それを追うように帰っていけばバレずに付け直せる。
生きる事自体に価値は無いけれど、他人との関わりの中で価値を見つけ、教えてあげる事もできるかもしれない。