ーーどういうこと?
「認識しているのは僕だ。君はまだ無自覚。僕たちはそもそもが他人とは違うんだ。世界に選ばれたと言っても過言じゃない」
ーーどう違うの?私たちは、普通だよ?
「再び僕と会う時、これだったんだと気付くさ。自分の力は、自分では正確に認識しづらいものだから」
「……おはよう」
寝不足もあり、重い足取りで教室へ入る。
「あ、おはようウタネ」
「ウタネちゃん、おはよう!」
「あら、随分と細ってるわね」
「……おはよう、ウタネちゃん」
「うん……若い子は朝から元気だね……」
まさか一切触ってない教科書が無くなってたなど思いもするまい。何日サボってたか分かんないけど……不思議。結局はロリコンに用意してもらった。神様ちょー便利。
「何言ってんのよ、あんたも同い年じゃないの」
「んあ、そうだった。そうだ、フェイトはもう学校慣れた?」
「ウタネちゃん……フェイトちゃんが転入したのは一昨日だよ?」
「え、そうなの?」
大変だねー……転入して何ヶ月かの私が馴染んで無いのに……
「うん。でもなのはも二人もいるから、結構馴染めてると思う」
私の半年がフェイトの二日に負けた。マジか。
「そう、ならいいじゃない」
しかしそれで傷付く私ではない。友達がいないのは昔から……いや、好きで一人でいるんだよ、そう、決して友達ができなかったわけではない……
「そうよ、私たちに感謝しなさい」
「アリサちゃん! もう……」
うんうん。微笑ましい微笑ましい。
あー……眠たい。お昼前に起きて夕方に寝る生活がしたい。面倒くさい。ぶっちゃけ何もしなくても神が勝手に口座に振り込んでくれるんだから学校なんて行かなくてもいいし管理局に入る必要も無いんだよ。魔法なんてのが無ければ勝ち組なのになぁ……
「えと、ウタネちゃん、おはよう……覚えてる?」
目の前の年相応の気楽さを妬んでいると、聞いたことのある声が近づいてきた。
「ん? あー、この前誘ってくれた子だよね、ごめんね?」
「かんなちゃん、ロクに学校来てないコイツと知り合いなの?」
金髪お嬢様が名前を呼ぶ。そうだ、かんなだ。忘れてた。
「転校初日に話してくれたんだよ。職員室に用があって断っちゃったけど」
「へぇ〜、いいじゃない。コイツ器用だから
金髪お嬢様のニュアンスには敢えてツッコむまい。使えるものなら使ってみろ。
「アリサもそうすれば? 結果出てるのに課題増えるよ」
満点常連の金と紫お嬢様に遠慮して90半ばくらいでテスト出してるのに学校行ってないだけ課題が増える。クラスの上位五人には入ってるのにおかしいよね。
「……やめとくわ。普通に出席した方が楽ね」
「日本も頭固いからねぇ。中身の無い決まり事ばっか」
金髪お嬢様と紫お嬢様はかなりの優等生だった筈だ。今が良いなら変えるべきでは無いだろう。
「ウタネ、毒漏れてるよ」
フェイトに愚痴を指摘される。私のは存在ごと否定するから余り表に出さないのがマナーらしい。フェイトの存在も人間の言う倫理観ではタブーでは?
「ん……と。ごめんねかんなちゃん。私こんな感じだから」
とりあえず謝ってはおく。
「うん、よろしくね!」
挨拶に取られたようで、笑顔で返される。
そんなやり取りを他数人と繰り返しながら、無駄な授業を聞き流し1日を終える。
「お疲れさま〜」
つまらん。習い終わった授業を知らないフリして受け直すくらいつまらん。義務教育とかさ、躾とかさ、いる? 本人の美意識じゃないの?
「ちょ、待ちなさいよ!」
「……なに。学校終わったんじゃないの?」
「違うわよ! 終わったわよ! 終わったからこそ待てって言ってるのよ!」
「……? ちょっとワカンナイ。ニホンゴシャベッテヨ」
金髪お嬢様の言動が理解できない。他の三人も同様に私を引き止める態度だけど、なんで?
「キィィィィィェェェェェェェ!」
「アリサ……女の子が人前で出しちゃいけない声出てるよ……」
図太いのに甲高い奇妙な叫び? を上げ、同じ金髪のフェイトに止められるアリサ。声帯どうなってんのそれ。
「ふん! そうね! フェイトはお淑やかね!」
「アリサちゃん! フェイトちゃんに当たらないで!」
「悪かったわね! 荒くれで! 貴女達淑女とは違うのよ!」
「……で? なんだよ。いい加減にしねぇと切るぞ」
長くなりそうだったのでいつかのように男口調で話す。随分久しぶりだし私これ慣れないのよね。
「なによ、文句あるわけ⁉︎」
「あるに決まってんだろ。どれだけ待たす気だクソ女」
「何やその言い方ぁ! 堂々と約束すっぽかすアンタに言われたくないわ!」
「……約束?」
そういう物言いはこちらが絶対的な悪だと錯覚するからやめてほしい。
まるで久し振りに揃ったからお茶でもしましょう的な約束をしてたみたいじゃないか。んー、この流れ、そんな感じだね。
「ウタネちゃん、みんな久しぶりに集まったから、今日はウチでお茶でもどうかなってお昼話したじゃない」
そんな感じだった。
「あらそう……覚えてないけども……」
ホントに? という視線を他三人に向けるも、全て肯定で返される。
「わかった……忘れててごめん……行くよ……」
「そうよ、さっさと来ればいいのよ」
「はいはい……」
すると颯爽とリムジンが飛んでくる。私待ちか……
「ところでアンタさ」
「ん?」
リムジンが出た所でいきなり金髪お嬢様に話しかけられる」
「さっきといいたまに口調とか変わるじゃない。あれなんなの?」
「……なに、というか……多重人格」
「トンデモワード出たわね」
「今はなんか無いけど……多重人格歴は結構長いよ」
「ホントなの? 厨二病?」
「んー、今は厨二病」
「なにそれ」
「べつにー」
若干過去を掘られてる気もするけど、適当な受け流しをしつつ時間を稼ぐ。
(高町さん、管理局の方はいいの?)
(うん……レイジングハートもバルディッシュもまだ修理が完了できてなくて。あと二日くらいは覚悟しておけって)
(そう……)
……デバイスの修理に、そこまで時間を要するだろうか?
高町さんもファイトも嘘をついている様子は無い。事件の事は気にしつつも、折角の休みは堪能しようといった……いつも通り。そこが気になる。シグナム達に不利になる状況は出来るだけ把握しておきたいけど……
「さ、行きましょ」
そう考えている内に着いたようで、金髪お嬢様が先陣を切って降りていく。
ここ確か、紫お嬢様の家だったような……
(……フタガミ、聞こえるか)
(……! シグナム、どうかした?)
さぁお茶会、というところで思わぬ相手から念話が来る。
お嬢様たちの話はそこそこに、シグナムとの念話に気を割くことにした。