後は……前にも書いたかもですがタイトルが被るのが怖いので無くなるかも。思い付く限りは入れようと思いますが。
「ねぇクロノ君、ウタネちゃんの言ってた事、どう思う?」
闇の書の捜索の為に地球に構えた拠点にて、ティータイムついでに闇の書についての資料整理をしていた所で、突然なのはが口を開く。
「さぁね。なんでフェイトじゃなくて僕に聞くんだ?」
クロノは資料から目を離さず答える。
「だって、二人とも仲良いじゃない」
「ぶっ! そんな訳ないだろ! どういう神経してるんだ」
クロノからしても意外すぎる評価に、ついなのはを見てしまうクロノ。
それを好機と見たなのはは、更に深く言葉を続ける。
「ウタネちゃんも肯定はしなかったけど、そうだと思ってると思うの。そうじゃなかったらクロノ君、犯罪者相手に擁護したりしないの」
「擁護なんてした覚えは無いがね」
「嘘。私も、フェイトちゃんも知ってる。ウタネちゃんの弁護の為に書類まで書いて、自分の立場すら人質にして」
「なっ⁉︎」
クロノからすれば当然と思っていた、ウタネの権利擁護。
本来であればロストロギア襲撃の疑惑がかかった時点で本局から手が出てもおかしくは無い事態であるにも関わらず、知り合いの観察のみで自由を与えられたのか。闇の書の守護騎士との繋がりの可能性や、事件収束の鍵となる可能性を示した上で『道具』として上に示し、Aランク魔導師二人を付ける事で完全に管理下に置いていると思わせた。万が一の保険、闇の書の完成とその被害、ロストロギア襲撃犯の取り逃がしという責任問題となった際には、自身の執務官としての全てを返還する、という条件付きで。
勿論そこまでの行為は権利擁護などでは無い。ただ対価を払って叶えるワガママだ。それをなのはに言われるまでクロノは全く意識できていなかった。
「だから、私たちも必死だよ。できることなら、なんでもする。ここにある資料の通り、闇の書は兵器なのか、ウタネちゃんやヴィータちゃん達が完成させるために管理局を敵にするくらい価値のある物なのかは、私たちには分からない。だからクロノ君の意見を聞きたいの。闇の書の蒐集の阻止は、正しいのかどうか」
「君は凄いな。少し前まで魔法も知らない小学生だったと言うのに、そこまで考えて行動できるとは。なら今のところ、という前提だが話そう。闇の書の完成は阻止するべきだ。守護騎士達の記録に無い感情の表れには注目したいが、それでも闇の書の機能が変わったとは思えない。一度は蒐集を止めて、向こうの話を聞ければと思ってる。その上でどうするかは、向こうの話や態度次第だ」
「今まで通り、でいいんだね」
「ああ。だがこれはあくまで僕の意見だ。現場で直接対峙するのは君たちになるだろうから、君たちが良しとした方向に進んでくれても構わない。より被害を抑え、事件が収束するならそれでいい」
「うん。じゃあ、私はフェイトちゃんに伝えてくる」
「ああ。いつでも出られる様にはしておいてくれ」
「うん!」
なのはが資料を揃えて出て行った後も、クロノの思考は終わらなかった。
クロノとしてはウタネの言葉を無視は出来なかった。あれ程までに力を持ち、いざとなれば管理局そのものを消し去ることのできるウタネが、能力の使用を控えて守護騎士に協力した事。
それについてはいくつか考察ができる。
一つ。今の闇の書の主が管理局に属していない善人である可能性だ。ウタネが協力しても良いと思える程の人格者で、管理局……または人的被害を出さない事を良しとする者。単に闇の書を完成させ、その転生機能だけを無くす力と精神の持ち主であるのなら。限りなく低い可能性ではあるが、管理局の行いは完全に悪だ。闇の書を助長してさえいる。
二つ。ウタネが闇の書の主である可能性。ウタネであれば闇の書の機能の理解はそう難しく無いだろうし、守護騎士と協力する事に不思議は無い。また、クロノ達がウタネを擁護している事を知っている為、守護騎士を逃がす事を優先できる。しかしウタネが闇の書を持っているのを見た者はいないし、そもそもウタネは魔力こそ持つものの魔法は使えない。主に選ばれるかと言えば微妙なところだ。
三つ。主が既にいない可能性。蒐集活動であれ、何かの間違いで主のみが死亡、または重症を負い、それでも闇の書とパスが繋がっている場合。主の危機に感情が芽生えたか、主の指示無しに被害を出すのは愚行であると考えたのか。これは可能性としては低い。無限転生という機能がある以上、そうなれば見切りを付け転生を選ぶのが妥当と考えられる。
四つ。それら以外。
この中で四つ目を除外するのであれば、一つ目の可能性が最も高いと言える。だが、クロノの頭……理論ではなく感情はそれを否定する。
そんな人間がいる筈がないと。闇の書は制御出来ない兵器であってくれと。
「そんな奴がいるなら、なんで前回……! もっと前に……前の主に選ばれなかった! 今更そんな奴が出て英雄ヅラしても……くそ!」
ダン、と資料を置く。
理論では、局員としては、法の番人としては、過去の犠牲は必要なものだったとして遺恨を持たず、それで良しとするべきだと。感情での判断は、正しいものでは無いと。
それでも感情は。大切な人には死んでほしくなかったし、生きて欲しいと思ってしまう。クロノはその優秀さ故に完璧ではあるが、内面の底ではまだ少年の心が捨てきれずにいた。
「はぁ……」
これではウタネに同じ事を言われるな、と初対面時を思い出す。
なのはに向けて放った怒声。今でも正しいと確信しているが、今の自分が同じ事を言われて冷静にいられるかと問われると答えに詰まる。
そこで改めてクロノは自身と他人との距離を痛感する。
「エイミィ、いいか?」
(はーい、なに?)
クロノの呼びかけに、迅速に反応してくれるエイミィ。
その行動にクロノは少しだけ安心を覚える。
「いやなに、資料の整理が終わったから処理してもらおうと思ってね」
(あー、なのはちゃんとやってたやつね? 分かった。後でデータ化して保管しとくよ)
「ああ、よろしく頼む」
(じゃあクロノ君暇かな?)
「そうだな。守護騎士が発見されるまではトレーニングでも」
(もー、クロノ君ってば最近ずっとそれじゃない。何? ウタネちゃんにやられてから気が立ってる?)
クロノは執務官として十分な実力、素質を持っているが、ウタネに斬られて以降、時間さえあれば一人で訓練するようになった。以前にも増して実力を高めようとするその姿には、アースラの局員でも少し怖れる程で、睡眠を全く取らない日もあった。
「バカを言うな。師匠にも言われてるんだ、精進しろと」
(成果は?)
「ああ、いくらか使える魔法も増えたし、純粋な魔力コントロールも速くなった。フェイトのスピードにもついていける」
クロノのデバイスはなのは、フェイトのインテリジェントデバイスとは違い、AIによる成長をしないストレージデバイスと呼ばれるもの。
魔法を自動で発動したり、受け答えをする事は無いが、その単純さ故にインテリジェントより処理が早く、使いこなせればインテリジェントデバイスを上回る性能を発揮できる。AIを搭載しないため、安い。
クロノ自身の魔力コントロールの上昇は、デバイスの差によりなのは、フェイトより効果が大きく、より強くなれる。しかし使える魔法が増えるという事は、それすらも自分で選択し、発動する必要がある。選択肢が多いと咄嗟の判断でミスが生じることもありクロノは必要以上に増やしたりはしなかったが、自分の能力を正確に把握し、確実に増やしていた。
(おー! すごいじゃないのー!)
「……今日はやけにテンションが高いな。何かあったか?」
(いや〜? クロノ君と二人で話すのは久しぶりだからかな)
「そうだったか。まぁ、最近忙しいからな。エイミィも時間ができれば休めばいい……そうだ、お茶でもどうだ? 今ならティーセットも出してるし」
(え! クロノ君がお誘い⁉︎)
「嫌ならいいぞ。片付けるから」
(行く行く! ちょっと待ってて!)
(あ"〜、聞こえるかい、クロノ……)
「ブッ! どうした急に!」
(悪いんだけど、新しく出てきた闇の書の資料を取りに来てくれないかな……僕はもう、一度寝る……)
「おい! 無茶するなと言っただろう! おい寝るな! 無限書庫なんだろうけどそこはどこだ! おーい……参ったな……完全に落ちてる」
「はろー! お待たせクロノ君! あれ、どうかした?」
ドン! とマナーの足りない入室に、やれやれとため息をつきながら返事をする。
「あぁエイミィ、すまないが無限書庫まで付き合ってくれないか。ユーノが新しい資料を発掘したらしいんだが、何のデータも寄越さず落ちてしまった」
「えー! じゃあどこにいるかわかんないの⁉︎」
「ああ。なのはやフェイトも連れて行きたいが、下手に増やしても遭難者が増えるだけだからな」
無限書庫はあらゆる書物が収められているとされる故に、その膨大な量を収納する場所が必要になる。一部ではまだ整理されていない場所もあり、登山用の荷物を持った上でチームを組み本を探す、と言うのが一番だ。しかしユーノはその能力から一人で闇の書の書物を探し出してしまった。
クロノが彼を最後に見たのは、そう言えば、いつだったか……? そう思えば危機感が増し、お茶会などでは無い、という結論に至るまで時間はかからなかった。
「うーん、闇の書は優先だね。お茶会はまた今度にしよう!」
「ああ。事件が終われば付き合うさ」
二人は速やかに片付けを済ませ、無限書庫の受付に連絡を取るのだった。
「ありがとね。じゃあ先に片付けよう」