無気力転生者で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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「ウタネ……私を、殺して……」
今の彼の言葉で理解したのか、一瞬の無表情の後、怒られた小学生の様な……拗ねたような、落ち込んでいるような表情を浮かべた。
「無理だよ……」
「殺せ!じゃないと!私が……あなたを……!」
「それでいい。それが、正しいんだよ。きっと」
「嫌だ!私はあなたを殺したくない!」
「いいえ、大丈夫です。あなたはウタネさんを殺さない。ただ、十字にかけるだけです」


第51話 闇の書 その3

「ああああああああああああああああ!」

「……甘い」

「轟天爆砕! ギガントシュラーク!」

「騎士の技が通じると思うか」

 直死込みの技が尽く防がれ、相殺される。

「六道五輪……」

「無駄だ」

「ぐ……」

 技の発動にすら手間がかかる。

「二重の極み! てやぁぁぁぁ!」

「……苦し紛れか? それ程の力の差があるという事だ」

「ガッ……」

 右正拳突きは握り止められ、お返しとばかりに額に食らう。

 吹き飛ばされアウレアの外壁に叩き付けられる。

「くそ……想定外だ。馴染めばそれ程だったのか……」

 暫く撃ち合った後、初めは押し気味だったのが徐々に押されてきている気がする。原因は不明。恐らくこの劇場も理解し、対応したからと考える。

「馴染む……そうか、お前にはそう見えるのだな。私から見ればまた別だ」

「あぁ……?」

 なんだ……何が違う。

 現状に変化は無し。ヤツが見えない武器や能力を使った形跡は無い。

「まぁ変わらねぇ。ただはやてを起こすまでだ」

 刀を軽く振り、闇の書との距離を見る。

 未だ平気な顔をしてるが、向こうだってオレの能力を使ってる。それなりの反動が来てるはずだ。戦い続ける限り、互いは消耗していく……オレが潰れる頃には、奴らでも何とかなるくらいには持っていけるはずだ。

「ザ・ワールド!」

「無駄だ」

 時間を止める。四秒という時間の中、相手を止められなくともオレにかかる重力等を無視できる。

 それでも闇の書は平然と対処してくる。

「才気煥発の極み……51秒」

「50秒だ」

「っ……」

 時間停止、未来予知、敗北。

「エピタフ……キング・クリムゾン!」

「甘い……!」

「あぁぁぁぁぁ!」

 未来予知、時飛ばし。攻撃を見切られ、防御される。敗北。

 何をしても完璧な対処。時間系能力すら見切ってくる。同程度の能力であるはずなのに……オレの方が能力の使い方を知っているはずなのに……

「はぁ……は、はぁ……」

 何か……糸口を見つけろ。あの余裕かましてる闇の書を死ぬ程後悔させる程の突破法を。

 原作ではなのはが押されていたとはいえ戦えたんだ……知識有り、特典有りのオレが同等にできないはずがない……か。

 そこまで考え、それら全てが術中だった事を、手遅れながら認識する。

「……なるほどな。お前が強くなったわけじゃない、って事か」

「この力は、強大過ぎる」

「あぁ……たしかにそうだ」

 あらゆる動作を封じられ、届くはずが届かない。

 いつも間近で見ていたその力。それを疑うはずも無い。

 蒐集されてないはずのウタネの力……特典でも能力でも無いからオレの中からでも取れたのだろうか。

 ウタネと戦う相手は次第にその行為自体に嫌悪を示し、いずれ得物を見る事にすら拒否反応を起こすようになる……それがウタネの戦闘。神の子と似た能力だが、原理が違う。神の子は自身によるイップスだが、ウタネは相手に対して働く抑止力だ。ウタネが全力を出せば……その能力を解放すれば、世界の存続が危うい。だからこそ世界は対戦相手を苦しめ、束縛し、ウタネを脅かさないよう押し潰していく。ウタネが知ってか知らずか、世界はそうなるよう仕組んでる。

 皮肉なもんだ……世界を救うかもしれないやつを、世界が潰しているんだからな。まるで以前いた社会的。圧倒的理不尽。既に力あるクズを守り、新たな道を開く力無き開拓者を抹殺する。

 ……所詮、成熟した文明はそうなる。

 そんなのが嫌で、力の無いものが無造作に消されていくのが嫌で……

「だからオレが、ウタネ以外に負ける事は許されない」

 エピタフとオレの予知で確定的な未来を擦り合わせる。

 確実な未来と、それに到達するまでの過程。その過程を消し飛ばす。

「キング・クリムゾン!」

 闇の書の背後へ回り込む。そしてこれから行われると予測された様々なカウンター、バインド、その全てを想定し、それら全てを対処可能なコースを選択。

「直死──いっそ死ね!」

 キングクリムゾンの解除と同時に直死の魔眼。

 致命傷程度には持っていけ……! 

「……」

 

 ♢♢♢

 

「クロノ。観測結果は?」

「魔力量SSS。これだけでも破格なのに、シオンの能力まで使えるとなると……正直、手詰まりだ」

「そんな⁉︎」

 なのはが嘆く。けれどそれも覚悟していた事。

 ……自分で手が付けられなくなると分かっててやった可能性はある。私を期待してそうした可能性は十分に考えられる。

「ウタネ、君の意見が聞きたい。シオンと協力でもいい、アレを打倒する手段はあるか?」

「……分からない。でも、可能性があるとするなら、高町さん。あなただ。あなたの砲撃をゼロ距離に近いくらいで全力で撃てれば……抜ける可能性もある」

「シオンでも防御が精一杯だったのに……」

「フェイト、それは少し違う」

「え?」

「攻撃と防御は別だし、戦法と攻撃も別。よく思い出して、シオンが総力戦と模擬戦で使った能力を」

「……えと、時間停止、時間を飛ばす……暗黒空間?」

 高町さんが自信なさそうに並べる。

「そんな感じ。で、どれも攻撃には使ってないでしょ?」

「そう言えば……攻撃はあくまで武器だった……」

「多分シオンは能力を試したいだけで、火力を出すことは目的に無かったんだと思う」

「そうか、それならまだ可能性があるということか!」

「うん。それでも多分、ゼロに近いくらいからじゃないとだけど」

「だからシオンは私に近距離戦を……?」

「さぁ? それは分かんない。楽しそうだったから誘っただけだと思うけども」

 模擬戦では得意な砲撃より、近距離に高町さんを誘ってた。近距離で二人じゃないと勝負にならなかったのか、この展開を見越してのものかは分からないけど……おかげで以前より多少は高町さんの近距離も強くなった。

「だが待て、ウタネ。モニターを見ろ。なんだアレは」

「ん……」

 クロノが示したモニターには、黄金に煌く建造物が空中に存在していた。

「……シオンじゃないかな。能力」

「知らないのか?」

「シオンの使う能力なんて殆ど知らない。でも多分、シオンが使ってる」

 私のカンはそう言ってる。

「シオンは能力を試したいって話、結局はアレも同じ。色んな方向の能力を使いたいからか、ホントに苦し紛れ。まぁでも、シオンだし心配しなくていいよ」

「対策があるのか?」

「無いとシオンは動かないしね。慎重だから《クロノ、私の能力をアテにしてるなら考えを改めて。総力戦の時、シオンは私の能力を二度突破してる》」

「そうか……だが、今援護に行くのは足手纏いだ。あの能力が全力で解放されれば、僕たちに手は無い《なんだと……分かった、すまない》」

「でもクロノ、このまま見てるのは……」

「フェイト、自分が何かしたいという気持ちは分かる。だが、僕たちは管理局だ。言った筈だ、事件の解決を優先する。これは絶対だ」

「でも、このままだとシオンは……」

「それも、僕の知った事じゃない。あくまで彼の申し出で嘱託になり、単独戦闘を買って出た。僕はその時点でそれを知っていた訳じゃないが、それを信じた。瀕死でも生きていれば回収するさ」

「クロノ君! 見損なったの!」

「なんとでも言え。闇の書の強化も、単独戦闘も、シオンの想定通り、思惑の内だ。それをシオンの危機だから止めろと? 利用された相手を擁護する程僕は優しくないぞ」

「……」

「高町さん、クロノの言う通りだよ。シオンは望んでこうなってる。こうなる事を想定してやってたんだ。私たちが邪魔するのはダメだ」

 いい加減に進まない議論に助け舟を出す。私が言えば多少の説得力はあるでしょ。

「だからって見殺しにするの⁉︎」

「うん」

「……!」

「そんな……」

 と思ったら火に油だったかも。やっぱり人と人の会話に私は入るべきじゃないや。

「シオンの企みなんて知らない。管理局の味方もしない。目的はあくまで闇の書の解決と、八神さんの安全。それが優先」

「それでも行く……って言ったら?」

「止めはしないよ。今そこまでする必要は感じない。だいたい……っと、そんな暇はもうないみたい。出るよ」

「え」

 モニターに変化が見えた。私のカンは勝負がついた……シオンが負けたと感じる。

「黄金が消えて……シオン⁉︎」

 黄金を全体で映していたから少し遠いけど、シオンの体が消えていくのが見えた。

「あの様子だとカウンターされたね。まぁいいけど。じゃあクロノ、転移を」

「あのシオンが……ふ、わかった。行ってこい。ユーノからの情報があればこちらから連絡する」

「……? 分かった」

 シオンの負けザマを見たクロノが少し笑う。

 意図は読めないけどそう大した問題じゃないと無視。

 高町さんとフェイトと三人で現地へ跳んだ。

 

 ♢♢♢

 

「……」

「これは……アレか」

 あらゆる反撃を見越して突き立てた筈の死。

 それはある魔法に防がれた、防がれていた。

 原作ではフェイトが受ける筈だった魔法、それがオレの刀の先にある。

「……次にお前は、『お前にも心の闇があろう』と言う」

「お前にも心の闇があろう……っ!」

「は、安心しろ……オレの反撃はねぇ。お前の勝ちだ、後はお前の目的を邪魔する世界と戦えばいい」

「そうか。永遠の眠りの言葉がそれか」

「……はっ」

 消えかけた体から嘲笑を返す。

 アウレアが消えた時点で負けた事は姉さんが認識してるはずだ。後は奴らに任せる。

 ユーノなら夜天の書について十分に調べられるだろうし、奴らの諦めの悪さならはやてを起こすにも十分なはずだ。

 これから見る夢に対しての警戒だけを残し、一度意識を手放す事にした。




キンクリは全世界を跳ばしつつ、キンクリを認識していなければ体験したものとして無視できるもの、ワールドは止められる時間、動ける時間でシオンが4秒、10秒、闇の書が9秒、9秒、ウタネが0秒、無制限という感じで。テキトーな秒数ですけども。
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