「どうしようもないんだ。できる人がすべき時にやるしかない。私が数回繰り返した短い人生で学んだ事は、どんな世界であっても私の望む世界ではないという事だよ。私と同じ思想に出逢う事も、私の理想を叶える手段も無い。そして、そこの封印指定によって私は今この状況に限り完全に無力化されている。ショタロリコンの権能からすら隔離されてるから、今死ねば転生もなく死ぬ」
抑止力をものともしないのなら磔にもされない筈、と思う人は多いだろう。だけどこの封印指定に限れば別だ。私の能力、シオンの体術を上回る能力に加え、能力を封印する簀巻きセット……シオンも私の能力と判定されるらしく、シオンの力で抜ける事も出来ない。
そして、私に唯一発揮される抑止力、ソラ。しかし私……ウタネではなく、シオンを気に入り、ソラは私をカルデアへ、私はカルデアをこちら側へ、誘い誘われでよく分からない、とても不安定な立ち位置のまま友好を深めてきた。けれどこれで終わり。私の全てがここで終わる。
「やった……⁉︎」
「フェイト、それはフラグだぞ……まぁそうだな。闇の書の原因、暴走プログラムは消し飛ばせたはずだ」
「八神さんは……」
「それも無事だ。すぐ出てくるはずだ」
「そう……」
♢♢♢
「……協力、してくれましたね。それに、倒れた一人も戻って来たようです」
呆然とした様子で呟く夜天の書の意思。
「やろ。ウタネちゃんは凄いからな! えと……夜天の書、って呼ぶのも変やね。名前……無かったけな。うん。名前をあげる」
はやてが闇の書に魔力を流す。
単なる思い付きではあったものの、それは正式な契約と同じ手順を踏んでいた。
「名前……」
「夜天の主の名において汝に新たな名を贈る。強く支えるもの。幸運の追い風。祝福のエール……リインフォース」
闇の書を正面から捉え、それを優しく受け入れた八神はやて。
この工程により、夜天の主として真なる覚醒を経ることになる。
「リイン、フォース……」
「私はあなたのマスターで、あなたはもう私の家族や。やから行こう。今まで私らがかけた迷惑の謝罪をしに」
闇色が剥がれ、光の中に投げ出されるはやて。
「……! はい。新名称、リインフォース認識。管理者権限、正式に使用が可能です」
「うん」
「ですが、謝罪には少し苦労しそうです。切り離された防御プログラムは、闇の書の力を殆どそのまま持っています。暴走するまでに数分足らずです」
立っているでも浮いているでもない空間で、夜天の書を抱く。
「んまぁ、ウタネちゃんもおるし何とかなるやろ。行こか」
「はい。我が主」
♢♢♢
「アレが闇の書の闇、夜天の書を闇の書たらしめていた防衛プログラム」
「この後の展開は?」
「はやての覚醒、プログラムの破壊だ」
「そう……」
海の上にある闇色の半球。
大きい、のだろうけど、正確な大きさが分かりづらい。
その周囲には大小の触手が伸びていて、それもまた距離感を損ねさせる。
「はやてちゃん!」
高町さんが声をあげる。
ベルカの魔法陣から守護騎士と八神さんが姿を現す。
その見た目は少し色彩が違うようだけど……まぁいいか。
八神さんは高町さんの声に反応し、ニッコリ笑う。
「守護騎士……生きてたんだ」
「当たり前だ。言ったろ、死ぬとしてもオレだけだって」
「そうだね」
シオンはここまで予想して動いてくれていた。
八神さんの事も、高町さん達も守ってくれた。
そのおかげで、今はみんな喜んでくれてる。あり得なかった再会を噛み締めてくれてる。
シオンに返るものは何も無いけど、これで良いんだと思う。
「……水を差すようですまないが」
それも束の間、クロノが新情報を引っ提げてやってきた。
「あの黒いのが防衛プログラムだ。こちらの観測では後五分程で暴走が開始する。アレを無力化したいんだが、今のところ手段が二つある。一つ、このデュランダルによる氷結魔法で凍結させる。二つ、この軌道上に待機しているアースラのアルカンシェルで消滅させる。これ以外に案はあるか。守護騎士と主、シオンに聞きたい」
「えと、一つ目は難しいと思います。主を失ったプログラムは、魔力の塊みたいなものだから……」
「アルカンシェルもダメ! こんなとこで撃ったら、はやての家まで吹き飛んじゃうじゃないか!」
クロノが示した案は、二つとも否定されてしまう。
「……それに、アルカンシェルが効かない可能性もあるからな」
「え?」
さらにシオンの追撃。
ユーノの解説では、辺り数十キロを巻き込んで反応消滅させる……という小難しいもの。
よく分かんないけど取り敢えず分子レベルで消滅するらしい。
その説明に高町さん達は納得した様子だった。何故理解できる?
「だろ、リインフォース」
『ああ。プログラムを切り離した際にシオンの能力もコピーしている。流石に避けきるだけ時間を跳ばせるとは思わないが、とどめにまでは』
八神さんにシオンが呼びかけると、八神さんのものでない……闇の書が話していたのと同じ声がする。
「だから、まずは奴の力を削ぐ。そしてプログラムのコアのみを摘出、宇宙空間へ転送する」
「そうか、それでアルカンシェルを」
「ああ。宇宙で離れた場所なら地球に被害は無い。だろ?」
「でもよー、さっきの効かないって話はどうなんだよ」
クロノとユーノが納得したが、守護騎士や高町さん達からは疑問があがる。
「コアだけ抜けるようになるって事は弱ってるって事だ」
「ヴィータ、シオンの能力は使う能力に応じてダメージが入るから、防御を抜けるほどダメージを入れてれば使うことさえできない。だから、アルカンシェルを避けたりはできなくなるって言ってるんだよ」
能力について補足。
疑問や違和感は無い方がいい。
「あー! なるほどな!」
「オレの説明そんな分かりづらいか……?」
「シオンの能力の説明は守護騎士聞いてないでしょ」
「あー……そうだったっけか。まぁ取り敢えず、このプランでどうだ。異論反論は歓迎する。迷いや躊躇いは無い方がいい」
頭をかきながら先を促すシオン。
この様子だと面倒な話題だったから放置してたみたい。
「アルカンシェルも問題は無い。僕はオーケーだ。騎士たちはどうだ」
「はやての家がふっとばねーなら。なぁ?」
「私もそれで構わない。主はやて、如何でしょうか」
「うん。なのはちゃんもフェイトちゃんもええか?」
「うん!」
「私も」
全員の賛同が得られた。
作戦は述べた通り、闇の書の闇、防衛プログラムの力を削ぐだけのダメージを入れ、コアを宇宙空間でアルカンシェルで消滅させる。
「……よし。姉さんはどうだ。聞くまでもないが」
「勿論。私がシオンの作戦を否定した事ある?」
「無いな。勿論……そして」
「始まる……」
シオンが視線をやると、クロノが呟く。
「夜天の魔導書を、呪われた闇の書と呼ばせたプログラム……ナハトヴァールの侵食暴走体。闇の書の……闇」
ただ黒いだけの球体から柱の様な黒い光が伸び、その実態が現れる。
ソレは一言で言えば悍しい。異形の物体だった。
対になる六つの脚、突起や翅など様々な要素を感じさせる胴体。無機物の怪獣を思わせる頭部に、更に上半身だけの女性。
それが高町さん達を遥かに凌ぐ魔力を放ちながら、急速にバリアを展開する。
「……? アレは……」
それを見たシオンが眉をひそめる。
「シオン?」
「いや、わからん。だが一撃で分かる。なのは、撃て」
「っ、うん! 行きますっ! レイジングハート!」
管理局施設を破壊しかねない程の高火力。
カートリッジ3発を消費して放たれたディバインバスターは、バリアを貫通する事なく消失した。
「嘘⁉︎」
少なからず自信はあった筈の攻撃結果に、高町さんが声を上げる。
「……ふぅ」
「シオン、アレ何?」
「
「さっきのがB以下?」
「神秘の度合いだ。威力じゃない……なのはならスターライトブレイカーで一ついけるくらいだろ」
「フェイトや八神さんは?」
「フェイトもプラズマザンバー……後ファランクスシフトもいけるか。詠唱呪文は神秘を高めるからな。はやては……何でもいい。数百年の歴史と詠唱があれば抜けるはずだ。だが二つに抑えておけ。負担が大きいだろう。終わればリインフォースと分離、リインフォースにやってもらう」
「それで五枚……あと七は?」
「オレが三、リインフォースに四やってもらう。正直、体が持たん」
「回復は?」
「回復魔法なら、私が!」
「いや、いい。ダメージは身体的なものじゃなく、概念的なものだ。魔法治癒では治らん。回復能力もあるが、例外を除いてプラマイゼロだから使うだけ無駄だ」
シャマルが名乗り出るが、シオンはそれを拒否。
私の視てる世界と似た概念なのかな。
「まぁそんなのは後だ。バリアを抜いたら元の作戦に戻す。指揮はクロノとシャマルだ。行……」
「え……」
紅い一閃。
超高速で何かが通過した。
「……ガハッ」
シオンの胸にソフトボール大の穴が貫通して、血を流していく。
隣には私やクロノが居たし、闇の書の闇に近い側に高町さんやフェイト、守護騎士も居た。
まさか……狙って撃った?
「シオン⁉︎」
「シャマル! 今度こそ出番や! 急いで!」
「はい!」
「ザフィーラ! ガード固めて!」
「了解だ!」
場が困惑する。それぞれが出来る限りで動いていたけれど、闇の書の闇に対抗する知識と能力を持つシオンが狙い撃ちされたのはかなりマズい。
油断なんてしてなかった。他のみんなからすれば格上の相手、八神さんは自身の分身以上、シオンも重々承知の筈。
更に私のカンも、反応できなかった。
それでもなお、という事実は、私たちにより一層の警戒を強いることになった。
「は……ぐっ……」
「シオン! 喋らないで下さい。体力も持っていかれてます」
致命傷なのに動こうとするシオンをシャマルがバインドで押さえつける。
ただでさえ慣れてない筈なのに、更には少し前までただの人間だった筈なのにここまでする。能力故か気力なのか分からないけど、気持ちとしては十分。
「わっ……てる……んな覚悟で……来てねぇんだ……!」
それでも尚バインドを砕こうとする。
あのダメージじゃもう能力は使えない。能力の無いシオンはただ対人の剣術が少し優れているだけのただの人間だ。
ここに居ていいレベルじゃない。
「……いいよシオン。私が代わる。2だけ頂戴」
「……2は、いらねぇ……だろ……」
「いる。じゃないと守れない。貴方みたいに無駄に抜かれても困る」
「……わかった。許す」
自分のミスには弱いのか、少しは悩んだものの許可をくれた。
「じゃあおやすみ。クロノ、もうシオンはいいよ。アースラで寝かせといて」
「……大丈夫なのか?」
「私がシオンの割るはずだった三つをやる。みんなも守る」
「わかった。エイミィ」
シオンが転送される。シャマルの治癒もあったしアースラなら十分だろう。
「……でも、あんな言い方は良くないの」
「ん」
「闇の書をここまで持ってこれたのも、シオンがいたからだよ。私たちが強くなったのも、シオンのアドバイスがあったからだよ。それを無駄だなんて」
「無駄だよ。それまでの積み重ねも、さっきみたいな油断でアッサリ崩れる。あんな瀕死を庇うのはデメリットしかない」
「だからって!」
「死刑は親兄弟に至るまで例外を作らない。戦場に要らないってことはそう言う事だ。覚悟って言うのはこう言う事だよ。まずは出来る事が前提だ」
昔はどうだとか、これが無ければだとか、そんな空想の話はどうでもいい。
今、ここで。それができるかどうかのみが意味を持つ。
確かにさっきまではシオンの価値は大きかったかもしれない。
でももう動けない。喋るのもやっと。そんなのは金髪お嬢様と一緒。
「クロノ、指揮を。早く止めよう」
「あ、ああ。みんな、シオンの言った攻撃準備だ! 他は援護と同時に魔力を撒け! 収束を早められるように!」
「「「了解!」」」
クロノの指示で全員が散る。
各自巻き添えにならないよう、互いの邪魔にならないように。
「じゃあ一枚目は私が行くよ」
「さっきは流したが、策はあるのか?」
「別に。神秘なら、私の能力も対象だろうから」
クロノに離れてもらい、ふぅ、と息を吐く。
「……2パーセントか……こんなに解放するのは初めてだ……」
小さく呟き、私の世界を見る。
高町さんを始め、闇の書の闇ですら存在しない世界。
赤くフィルターの掛かった物質だけの世界で、私の思うままに姿を変える。
闇の書の闇を、全体的に囲うほどの槍を空気で作り出す。
質は鋼鉄、長さは三メートル、数にして三百。
【殺せ】
即座にバリアへ到達し、音を立てて破壊する。
神秘は唯一性、秘匿性。誰にも聞こえず、誰にも使えないこの力はその条件を十分に満たしている。
ついでに周りの触手も刻んで、反撃を潰す。
「よし! 次! なのは!」
「はい! 高町なのは、レイジングハート、行きますっ!」
闇の書と同等レベルのスターライトブレイカー。
これも無事バリアを破ることに成功。
「よし、三枚目はまた私……」
「いや、私に任せて貰おう」
「シグナム……」
三枚目をいこうとしたらシグナムに止められる。
「お前には借りがあるからな。少しは役に立たせてくれ」
「私もだ! 管理局ばっかにやらせっかよ!」
それにヴィータも加わり、私の担当は埋まってしまった。
「……うん、お願いね」
「行くぞ、レヴァンティン……最大出力だ」
いつかの様にレヴァンティンが弓へと変化し、魔力の矢が編まれる。
カートリッジ4発、この形態から消費したのを見るのは初めてかも。
「駆けよ、隼……!」
一点集中の矢が放たれ、バリアを貫通、爆破する。
バリアは穿たれた穴からヒビが入り、砕け散る。
「次は私だな、アイゼン!」
カートリッジ4発、アイゼンが闇の書の闇より大きくなる。
「轟天、爆砕!」
ヴィータはそれを軽々と振り上げ、ただ全力で振り下ろす。
「ギガント……シュラーク!」
周囲に波が立つほどの衝撃と共に4枚目が砕ける。
残り8枚。
「次! フェイト、はやて!」
「はい! フェイト・テスタロッサ、バルディッシュザンバー、行きます!」
フェイトも収束完了、二つの魔法を立て続けに発射する。
「連続⁉︎」
「負荷は大丈夫! シャマルさんが治癒してくれてるから!」
天災とも取れる程の雷の中、5、6枚目が消える。
フェイトもシャマルに支えられてなんとか耐える。
「はやて!」
「来よ、白銀の風。天よりそそぐ矢羽となれ。石化の槍……ミストルティン!」
七つの光が闇の書の闇へ向かい、バリアを石化、崩壊させる。
第一射、無事貫通。
そこで触手が再生、八神さんに照準を合わせ始める。
「ザフィーラ!」
「我が主へ攻撃など……させん!」
本人が縛れと叫ぶと、白い楔が触手を刺し、斬り払う。
ベルカ式拘束術は相手を動かなくするという結果だけを追求したようだ。
「二発目、行くで……賭けや、持ってな……突き立て、喰らえ。十三の牙……
八神さんが杖を構え、雑な構えから突き出すと、黒い風が発射される。
実物は知らないけど、名前は知ってる。
「それも負荷が! っていうか能力⁉︎」
台風なんて目じゃない程の風圧はバリアを十分に破壊した上、闇の書の闇の全貌が現れるほどに海面を抉った。
「ふぅ……持ってくれたな。負荷もやけど、シオンにあれだけされて何もできんじゃ面目ないからな」
それをした八神さんは杖を支えにやっと魔法陣に立っている様な状態にまで消耗していた。
……やっぱり、能力の負荷っていうのは一つ使うだけでも相当な消耗なんだ……
「だからって……」
「ええんよ、後のバリアは任せるからな。ちょっと休憩や。リインフォース、ありがとな」
「……いえ。能力行使は無理を言いました。後は私が」
八神さんから闇の書の擬人化した姿が分離し、八神さんの見た目も元に戻る。
「うん。シャマル、私もお願いな」
「はい。お任せ下さい」
シャマルが八神さんを抱え、治癒をかける。
シオンは効かないって言ってたけど、魔力補助でもしてるのかな。
「じゃあ……リインフォース、でいいのかな。お願いできる?」
「ああ。後四枚だな。砕くには問題無いだろう。その後もしっかり頼むぞ」
「それも万全だ。二人も回復するだろうし、僕らも動けるからな」
「頼りにするよ、主の友たち。少し、離れていてくれ」
指を鳴らすと、夜天の書をめくり始めるリインフォース。
「これ以上の好機。過去にあっただろうか…… 全力でいく。十三拘束解放。円卓議決開始……是は、世界を救う戦いである……
先のロンゴミニアドと同じ、アーサー伝説からの宝具。
何も手にしてはいないものの、確かにそうであると認識させる何かがある。
「ぐ……流石に、負荷が大きいな。だが、まだ3枚……神々の王の慈悲を知れ。絶滅とは是この一刺。インドラよ、刮目しろ……焼き尽くせ、
自然体のまま、やはり無造作な構えから何かを突き出す。
「ユーノ、アルフ! 防御だ!」
「っ、ああ!」
背後に太陽の様な灼熱を纏い、それを放出する。
余波と熱は私たちにも及ぶ程で、二人がかりでようやく防げるほど。
これも英雄。だと思う。私は知らない。
「──ー! ガッ……!」
「リインフォース⁉︎」
「やっぱ無茶だったんじゃ……!」
リインフォースが胸を押さえて顔を歪める。
「近寄るな! 大丈夫、大丈夫だ……ただの負荷だ」
「ならユニゾンや! 二人ならまだ抑えられるやろ!」
「いえ、これ以上主に負荷をかける訳にはいきません。アレを破った後も動かなくてはダメなのですから」
……シオンはこれと同じくらいの負荷を隠してたのかと思うと、私としては動かずにはいられない。
他のメンツを守るようにクロノに伝えると、リインフォースに近付いていく。
「私もやるよ、1枚ぐらいなら抜けるから。ね?」
「……そうだな、より被害を抑えるためだ」
「よし」
近付くのは禁止。遠距離ばかりだったのは接射を避けるためだったりだけど、あと2枚。それを抜けば他の全力でアレを削れる。
【水は空へ。爆ぜろ】
海水を、水面だけ固定して振動させる。
そして空気中の水分を固め、全方位から圧縮する。
神秘は能力そのもの。破壊力は地上全てを潰せる程。
「よし、じゃあごめんね、よろしく」
「ああ。十分だ…… 神性領域拡大。空間固定。神罰執行期限設定、全承認。夜天の期限工程、完了。シヴァの怒りを以て、汝の命をここで絶つ……
手のひらに収まるほどの小さな光を軽く押し出し、それがバリアに触れると私の攻撃以上の衝撃波が発生する。
更にバリア内部の女性も甲高い声を上げ、苦しんでいる様に見える。
バリアは、全て破壊された。
「クロノ!」
「ああ……総員! 全火力集中!」
陣形は全て整っている。
上空に高町さん、フェイト、八神さん。
横から守護騎士とクロノ。
それぞれが必殺の攻撃準備を完了していた。
「全力全開! スターライト……!」
「雷光一閃、プラズマザンバー!」
管理局の二人はそれぞれの最大火力を、その性格のままに。
「……ごめんな、おやすみな……」
一瞬、悲しそうな表情で呟き、即座に殺意を宿らせる八神さん。
「響け終焉の笛、ラグナロク!」
ユニゾン無し、生身での初戦ではあり得ないほどの魔力行使。
リインフォースと八神さんの後が心配でならない。
「さぁ、もう一度行くぞ。レヴァンティン」
「これが最後だかんな、アイゼン」
守護騎士二人もそれぞれ構える。
「「「ブレイカァァァァァァ!」」」
バリア崩壊から隙を作らず放たれた様々な魔力光。
同時攻撃はリインフォースの使った能力以上の爆音と衝撃、光で身動きができないほど。
神秘という概念が無ければシオン以上である事は確実だろうという一撃は、これ以上なく闇の書の闇を蒸発させていく。
「……、見えた、けど……!」
「シャマル?」
「引き抜くには、もう少し力が……!」
シャマルが円形のモニターのような物を展開し、闇の書のコアと思われるものを映している。
「コレを転送できればいいのね」
「そう。リインフォース、私の力、使えないかしら」
「済まない、流石に神霊級の連発は堪える……」
「みんな! もうちょっと頑張って!」
シャマルが声を上げる。
でもそんな必要は無い。
「転送準備は?」
「できてる! けど、あれじゃ……!」
「よっ……と。はい。転送」
シャマルのモニターに腕を突っ込み、能力で掴んで引き抜く。
それをユーノ達に差し出す。
「げっ……! アルフ!」
「ああ!」
「「転送!」」
二人の魔法陣に挟まれたソレは、一瞬にして空間ごと縮む様に消えてしまった。
「……うん」
ソレを持っていた私の腕ごと。
「まぁいいや。よし」
能力で死なない程度まで止血。完全に止めると怪しまれる。
「よしじゃないよ⁉︎」
「ごめん! 今すぐ戻す……!」
「戻したらついてくるでしょ。いいよ、シオンに作ってもらうから」
周りが慌てても気にしない。死ななきゃどうとでもなるのが今の私。
「作る……?」
「ね、リインフォース。腕くらい作る能力あるでしょ?」
「ああ……それは安心していい。回復すれば私が作ろう」
「うん……お願い」
無事腕の確保もできた。
あとはアルカンシェルがどうかっていう話だけど……
〈みんな、お疲れ様! 無事終わったよ! あとは経過観察とか残骸撤去があるけど……ひとまず終了! 〉
「……ふぅ」
エイミィからの通信があり、気を緩める。
さて……
「クロノ、八神さんとリインフォースを医療室へ。シオンと同じとこでいいから」
「あ、ああ。みんな、転送する……おい?」
「ん?」
クロノが周囲を見渡すと、一点で止まる。
その視線の先には想定通り、意識を失った八神さんと、声をかける守護騎士たち。
「リインフォース、行ってあげなよ」
「……いや、このまま送ってくれ」
「そ。じゃあクロノ。あのままだって」
「分かった。全員の転移を」
♢♢♢
その後は治療を受けたり、守護騎士たちのチェックだったりが行われ、シオンや八神さんの治癒が終わるまで自由時間とされた。
闇の書の闇も活動再開は確認されておらず、事件は無事終了との事だった。
そして、それからは魔法とも離れ、やはりいつも通りの生活に戻ろうとしていた。
「……終わったばかりですまないが、三人とも、話があるんだが」
細々した描写や緊張感の演出ができなかった。
どうしたらいいんだろうねと思うと共に型月要素を取り入れ過ぎだと思いました。