──暫く後。
高町さんとフェイトは無事管理局員に。
八神さんも、足が完全に治り次第、守護騎士とリインフォースもそれを期に、という具合で話は進んでいった。
旅行の後、シオンが八神さんのデバイス制作が少し遅れると言いつつも一週間で作り終えたり、リインフォースと固有結界に篭って能力の試運転をしてみたり、私のモンブランを食べ過ぎてお腹を壊したりした。
「今日はお前が行くのか?」
「うーん、なんか起きちゃったし。たまにはね」
私は事件後シオンに頼り切りになり、学校が終わって帰って来たシオンに起こされる日々が続いていたりした。基本的に家から出てない。
……今思えば何してたんだろ。生前と何も変わってないや。
「そうか……まぁ頑張れよ。オレもこの後のことは知らねーから、最悪1は使っていいぞ」
「過保護かな?まぁ、行ってきまーす」
「おう」
学校……
久しぶり過ぎるくらい……
確か、闇の書事件以降行ってないような……
そんな、卒業式の朝。
「おはよう、高町さん」
「あ、おはよう! えっと、ウタネちゃん?」
「うん。なんでわかったの?」
「呼び方」
「あー、シオンはなのはだっけ」
大通りで高町さんに声をかけると、普段入れ替わってるはずなのに看破される。
呼び方……シオンが徹底しない筈はないんだけど……区別できるように、ワザと?
「うん。ウタネちゃんもさん付けじゃなくて名前で呼んでほしいの」
「うーん……そうだね、じゃあなのはでいいか。でも区別つかなくなるよ? 自分で言うのも何だけど」
シオンが気を利かせてしてるとしたら、それを台無しにすることにもなるんだけど。
「いいの。ウタネちゃんはウタネちゃんだし、シオンはちゃんとシオンだから」
「……? まぁ、いいならいいよ」
「うん」
「……管理局の方は?」
歩き出して、話を聞く。
一応、秘密の事だから。
「一応卒業後に移住予定。はやてちゃんもちょっと遅れてくるみたい。ウタネちゃんは……どうするの?」
「私は管理局とも魔法とも関係無いよ。こっちで普通の人生ってのを送るつもり」
「でもウタネちゃん、いずれ働かなくちゃいけないんだよ?」
「……」
ロリコンからの資金援助は継続してる。月五十万が何もせず入ってくる。
シオンと二人で暮らすにせよ、贅沢しなければ十分に暮らしていける額のはずだ。
「だから、嘱託でもいいから管理局に入らない?」
「入らない」
「でもシオンは入ったよね」
「あー、闇の書の時そんな事……」
クロノ直属の? 専用? の嘱託だったっけ? なんか手続きすっ飛ばしたって聞いたけど。
「シオンに無理させたく無いと思うなら、ウタネちゃんがそばに居るしかない」
「そんなつもりはなくも無いけども……」
「シオンは私たちの言うことなんて聞いてくれない。シオンの見る世界の為に、私たちや、自分の犠牲すら厭わない。それを抑止できるのは、ウタネちゃんだけなんだよ」
「んまぁ、そうなるように思ってたんだし……でもね、あなた達を曲げたりはそうしない……って、そんな話いる?」
「え」
「シオンがどうしようと関係無い。シオンは私の邪魔はしない。シオンはあなた達に従うらしいし、あれだけの戦力だ、本人のやる気が無いにせよ持っておく価値はあるんじゃないの?」
「戦術的価値としては、万一の危険を孕んでも十分なものがある、とはクロノ君も言ってたよ。裏切りや情報漏洩も、シオンが敵になるなら大差無いって」
「だろうね。闇の書の時、リインフォースが数発が限度だった能力を痩せ我慢とは言え倍以上使ってる。神秘の程度もあるんだろうけど」
何度か聞いて見たけど、一切具体的な解答はなかった。隠し事は禁じてないけど、都合が悪いならしないと思うし……純粋に、シオンのフレームの耐久性が高い、と判断するしかない。
「客観的な視点から見て、私とシオンはどのくらい差がある?」
「さぁね……まぁ、持久戦にするとして……それでも無理だろうね。フェイトと八神さん、三人で……シオンに攻めさせず、守らせもしない戦い方ができるなら、勝てるんじゃない?」
「でもキングクリムゾンやザワールドは、対応できない」
「そう。その辺りが難しい。シオンに勝とうと思えば、そういった概念能力も対処しなきゃならない。時間だったり、悪魔の実……ゴムだったりね。魔法では無理だ」
そして、私の能力でも。
「じゃあ、無理?」
「アルカンシェルとかなら、キングクリムゾンの時間以上、ワールドの射程以上の範囲を攻撃できる。アレを目の前で受けて逃げ延びる能力はないんじゃないかな。あったとしても、相当な負荷になると思う。正直、シオンの能力は底が知れない」
「それは……」
「無理だろうね。でもまぁ、シオンはあなた達に従うのは確かだよ」
「信用していいのかなぁ……」
「……んー、難しいよねぇ」
フェイトを殺しかけ、敵とも味方とも取れない行動を続け、かなり上位になるロストロギア夜天の書を、本来の主人から私へ奪う形で現存させた。
私の命令一つで守護騎士、リインフォースは八神さんの手を離れる。その戦力は大きい。私としてはそんな気は無いけど、他人が冷静に見てどう思うかは、火を見るより明らかだ。
「ごめん……」
「管理局……魔法関係では関わらないけど、プライベートなら別に遊びに来てもいいから。相談だったりはしてくれていいよ。もしかしたら、暫く姿を消すかもだけども」
「そうだね……ウタネちゃんは元々巻き込まれただけだったもんね。強いからってこれ以上巻き込むのは、勝手だよね」
「そうだね」
「ありがとう。これからはみんなでやっていくよ。こっちにいることは少なくなると思うけど、絶対また会いに行く。また、私に特訓つけてね」
「その時はあなたの方が強くなってるかも分からないけどね。フェイトや八神さん、守護騎士たち……シオンも、仲間として見て欲しい。あなたの様に普通じゃないメンツばかりだけど、ね」
「分かってる。そんなの関係無い。みんな、私の友達で、仲間だよ。ウタネちゃんもね」
「そう、ありがとう」
「うん。管理局は、私の知る限り正義の機関だから」
誰も差別しない。誰も殺さない。誰も彼も助ける。
それが正義というのなら、必要だけを残して効率化しようとする私やシオンは悪だ。
だけど、互いはこうやって共存できる。正義と悪は対立しない。ユーノを助けるためにジュエルシードを集める高町さんと、プレシアのためにジュエルシードを集めるフェイトが対立し、闇の書から世界を救うために動いた管理局と、闇の書から主を守るために動いた守護騎士が対立したように、互いの正義が対立する。
管理局に入るということは、私の正義と対立するかも知れないということ。
覚悟は、しておくべきだ。言わずとも、私だけでも。
「おーい! 二人ともー!」
「アリサちゃん! すずかちゃん!」
卒業式は無事終わり。
もう戻れない。進み出してしまった道は、変えられないから。
ざっくりですが、A's編も終わり、という事で。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。