空白期をどうしようかと思っていましたが、元々原作を辿りながらのカスなので原作同様飛ばしました。書くとグダるので書く予定はないです。
第60話 新世代
「スバル、あんまり暴れてると、試験中にそのオンボロローラーがイッちゃうわよ」
「ティアー、ヤな事言わないで! ちゃんと油も差してきた!」
青髪の少女は体を動かしウォーミングアップを、橙色の少女は銃のチェックをしながら、その時を待つ。
『こほん、えー、おはよう。魔導師試験の受験者二名。揃っているかな?』
「「はい!」」
ウィン、と開いたモニターから顔を覗かせた銀髪の女性が、確認を取る。
『確認だ、時空管理局、陸士386部隊所属のスバル・ナカジマ二等陸士と、ティアナ・ランスター二等陸士。合っているかな』
「「はい!」」
『所有ランクは陸戦C。今日行うのがBへの昇格試験で間違いないか?』
「はい!」
「間違いありません」
『で、試験官を務めるのが私、八神リインフォース。ランクは、ええと……曹長? 分からないが、まぁそこそこだ』
「はい……?」
『まぁ気にしないでくれ。私は昇格試験は適当に受けてきたからな、どのランクなのかはっきり覚えていないんだ。後で確認して改めて自己紹介させて貰う。さて、それはそれとして、試験の確認だ。ここをスタートし、破壊目標を破壊しつつ十五分以内にゴールを目指す。諸注意は多分Cと変わらない。破壊するものを破壊して、壊さないものを壊さない。時間は最短。現場で働く以上、どの場面でも求められる教訓だな』
「はい!」
『そのルートと、クロノ提督直属の嘱託との模擬戦。さて、どちらにする?』
「「……はい?」」
予期しなかった選択肢に、緊張もありフリーズする。
『うん、だろうな』
「クロノ提督って、あの……」
「ハラオウン提督? その直属の……?」
『ああ。これは与太話なんだが、クロノ提督とその嘱託が会談していたところ、ステージ作りが面倒だの評価がダルいだのの様々で複雑、かつ解決策の見えない問題が山ほどあり、簡潔にするために昇格試験に模擬戦しようという冗談が出た。しかしそれを聞いた他の局員が、まさかクロノ提督が冗談などと……という噂で祭り上げ、実現せざるを得なかったんだ。クロノ提督の周囲でしか話されてなかったからな。まぁアレだ、別にどっちを選んでも私の印象に変わりはないから、普通のルートを選んでくれてもいい』
「……」
『すまないな、この言い方だと模擬戦へ挑発しているようになる。本当にどっちでもいいんだ、どっちにしようとBへの昇格試験なんだからな』
申し訳なさそうししながらも、やはり雑な態度が滲むリインフォース。
「えと、でも普通の……」
「模擬戦でお願いします」
「ティア?」
「うるさい。リインフォース試験官、その相手の情報を聞く事は可能でしょうか」
『ああ。こう言った状態だからな。全て開示で良いという事だ。そうだな、基礎ステータスは今モニターに記している通り、君たちより少し小柄だな。戦闘スタイルは近接武器格闘。魔導師ランクにすると陸戦A++くらいかな』
モニターに顔写真と全身、それぞれのステータスパラメータを表示させ、確認させる。
そのステータスは今の二人を足しても届かないレベルで纏まっており、参考映像さえ載せられている。
「A++! ティア! ヤバいって!」
「全て、という事ですが。使用魔法についても可能ですか?」
『うん、可能なんだが、無いんだな、これが』
「無い?」
魔導師試験にはあり得ない情報に、疑問でもないオウム返しになる。
『うん、この嘱託、結構前から属していて、それなりの戦績を残している。正直言って、私より上官になっていておかしくないし、局内ではそう言った扱いをされているんだが、魔法が使えない。だから、嘱託』
「魔法無しで……」
「分かりました。ありがとうございます。やはり、模擬戦でお願いします」
『ああ。スバル・ナカジマも、それでいいかな?』
「あ、はい! えーと……!」
「いいって言いなさい! クロノ提督直属なんて、とんでもないランクよ⁉︎実戦もコネも……あっ」
『はは、いいさ。本人達もその辺は分かってる。受ければ多少は厚意にしてくれるさ。彼らはそこまで階級に拘りが無いからね』
リインフォースはクロノと嘱託を指したつもりだが、受ける二人にはリインフォースも含まれる様に感じてたまらなかった。
それほどまでに、この銀髪の試験官には緊張感が無い。
「その……すみません」
『上に行こうという向上心は褒められるべきだ。大きい組織ほど、コネも大事になってくる。チャンスは掴めるなら掴んでいこう。犯罪者はどんな手を使っても捕まえればいいし、どんな手を使われようと負けてはいけないんだ。あ、もちろん私に声をかけてくれてもいい』
「あ、ありがとうございます!」
『さて、どうしようか? 君たちがいいなら、今からでもできるんだが』
「今から? その嘱託の方の準備は……」
『ああ、それは心配いらない。君たちには失礼かと思うんだが……『B? オレが準備なんかすると思うか?』だそうだ。いつでもかかってこい、とな』
「そうですか……わかりました。今からお願いします」
一瞬不機嫌になりながらも、即開始を申し出るティアナ。
「お願いします!」
戸惑いながらも、相方の判断に間違い無いと同意するスバル。
『よし、じゃあちょっと移動してもらおうかな。元のルートの会場をそのまま使うから、中央まで』
「「はい!」」
マップに表示された星型の場所へ向かう二人。
1対2の戦術を確認しながら、緊張と闘志を高めていく二人。
その途中、『ふぁ〜あ、あれ、私の局員証……? ああ、一等空尉か…… 更新は一昨日だったか……また二日も講習……ヤダなぁ……』などという試験官のいろいろ不安を残した発言などが開きっぱなしのモニターから漏れていたり、それを聞こえていないフリをしたりした。
ビル……無人かつ廃屋、錆びれたものが立ち並ぶ中、本来のルートのゴール付近の道路上に、目的がいた。
「……ん、お前らか。受験者二人」
その小柄な体型に見合わない大きな鎌を杖にして、気怠げな目を向ける白髪。
「「はい!」」
「リインから説明は受けてると思うが、自己紹介。フタガミシオン嘱託局員。まぁなんだ、十五分だったか? でオレに一撃入れれば合格……クロノも無茶な事させる……後で三人で殴り込みにいくか」
「「うぇ⁉︎と、とんでもない!」」
本気でやりそうな目に、なんとか宥めようとする二人。
「そうか? アイツ落とせば提督だぞ」
「蛮族システムですか⁉︎」
「さぁ? アイツ堅いからなぁ……まぁいいや、お前らも忙しいんだろ。オレは暇だからいいんだが……やるか」
「「……! はい! お願いします!」」
「よし……じゃあリイン」
『……』
「おい、聞いてんのかポンコツ。ちゃんとやれば講習免『それでは、魔導師試験を開始する。ルールは嘱託局員との模擬戦、十五分以内にクリーンヒットで合格、時間を過ぎるか、撃墜されれば終了。問題はないか?』……やれやれ」
「……問題ありません」
「ありません」
『では、始めよう』
モニターが切り替わり、3カウントのランプが点灯する。
「スタート。来い……」
「スバル!」
「応!」
ティアナが数発魔力弾をスバルの周りに残し、道路を飛び降りる。
「ふー……一般的な遠近二人組か、それで?」
その瞬間的な動きにも、目を動かすだけで一切の構えを取らない嘱託局員……シオン。
「ウイングロード!」
スバルが地面へ拳を当て、無数の魔力路を作る。
道路を中心に広がっており、上下左右からシオンを囲う形になった。
「おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ふん」
直後、ティアナの弾丸と共に突撃したスバルの拳を鎌で受け止めながらスバルを飛び越え、弾丸も回避。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
「っ、幻影か」
着地点に見えたいない筈のティアナを幻影と見破ると、躊躇いなく鎌を振り消滅させる。
「ディバイン……」
「⁉︎」
「バスタァァァァァァァァァ!」
「っ! クソッ!」
着地と共にバスターを予感したシオンは躊躇いなく道路を飛び降り、そこで初めて驚きを見せた。
「クロスファイヤー……」
「動いてなかったのか……!」
「シュ──ート!」
着地点に立ち十発程の誘導弾を空中のシオンへ向けて射出。
魔法が使えない、つまり空中での行動が不可能であると判断しての戦略。とっさの回避で投げ出した身にその後の回避は望めないという判断だ。
「戦略としては……まずまずだ……が、オレを相手にそんなモンじゃあ……なぁ!」
鎌を一振りで二発、それを三回。残りは少し体を捻るだけで直撃を避けた。
「そんな⁉︎」
「悪くない。決してな。だが……あ、Bか。なら十分かもな。すまん、ランク? がよくわかんなくてよ。まぁ、オレには手が出ねぇってことだ」
「……」
「もう終わりか? まだ十分以上あるが……」
「スバル!」
「おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「無駄だと言うに……」
「きゃあ⁉︎」
道路上からの強襲を見る事もせず身を躱す。
「援護するから!」
「うん!」
数発牽制してティアナがビルの陰へ姿を消す。
それから援護射撃を交えながらのシオンとスバルの打ち合いがしばらく続く。
もちろん、スバルの拳がシオンに触れる事は一度として無かったが。
「はぁ……くそ、いい加減諦めろよな」
「全然届かない……ティア!」
「無駄無駄無駄無駄!」
♢♢♢
「始まったね」
「模擬戦選んだんやね……選ぶとは思てへんかったわ」
ヘリから試験場を見下ろし、予想外の状態を見るフェイトとはやて。
模擬戦はあくまで冗談、こういう話が出た、くらいで実際にするなど考えても見なかったのだが、一応示しがつかないため説明だけというものだっだのだが。
「突拍子も無い話だしね」
「二等陸士やとクロノ君の直属なんて聞いたら普通腰抜かすで……それにしても、リイン、年々劣化してへん?」
モニターから様子を見つつ、ため息を漏らす八神はやて。
模擬戦を現実のものにしたのも、この劣化しつつある魔導書に原因があるのではないかと疑ってみる。
『そうだろうか。まぁ……私は不死身・不老不死・無数の能力であるからして……ヒマなんだな、これが』
もはややる気は感じられず、この試験もただの暇つぶしのバラエティ番組程度にしか思っていないであろう態度を隠さないリインフォースに、二人は顔を引きつらせる。
「なんか、どこかの誰かに似てるよね……」
「せやなぁ……全く、あの二人がちゃんと管理局に協力してくれればいいのに」
「それは高望みだよ。二人にだって、選ぶ権利はあるんだから」
「そーやけどなぁ……」
模擬戦相手を務めているシオンと、その相方。
魔法が使えないにせよその戦力はリインフォースと同等以上であり、是非正式に……と何度も交渉したのだが、『だから、入ったらクロノの特権から離れるだろ』『仕事したくないでござる』という理由で断られている。
なんとも自己中心的だが、入局して欲しいという思いもそれはそれで自己中心的なので反論はできなかった。
『模擬戦、見なくていいのか? もう消化試合に入ったぞ』
「はや⁉︎」
「ディバインバスター、なのはと同じだ。不意打ちの連発だけど、全部対処されたね」
即時砲撃、着地点先読みの射撃を超え、全方位からの射撃、ウイングロードからの強襲を全て防ぎ続けている様子がモニターに映し続けられる。
「まぁ、なぁ……あの二人じゃ、というか、私らでも出し抜けるか分からへんもんなぁ」
「私たちが駆け引きしてるのに、手順通りこなされてるみたいで……別の戦いしてるよね」
「あーあー、シオン相手に1対1は……」
「しょうがないよ、遠近のコンビだし、不意打ちが失敗したらそうなるのも」
「でもなぁ……アカンわ。どーすんやろこれ。なのはちゃん、困り果ててるやろなぁ」
「そうだね。勝てなかったから不合格、は厳し過ぎるし」
「実質二人の進路を潰したわけやんか、クロノ君とシオン、とリインは」
『私もか⁉︎』
想定していなかったかのように驚くリインフォースに冷たく視線を向けるはやて。
「当たり前や。ロクにランク維持もせず犯罪者ボコるだけで昇格試験もスルスル通って……訓練せずダラけてるんやから」
『しかしだな……何故か仕事が減っていくんだ。そう、徹夜でゲームしても全く問題が無くなるくらいには』
「もうそれクビちゃう?」
『マジか……いや、流石にそれは無いだろう、さっき局員証を発見したんだがちゃんと一等空尉と記されている』
「でも更新してへんのやろ?」
『う……そもそも、局員証の更新とはなんだ?』
「それもう持ってへんのと同じやん。更新言うても、魔力値を測ったり、技能テストをして、ランクに見合うかどうかのチェックや。まともにすれば、一時間もかからへんはずなんやけど」
『面倒だな……』
「仕事ないんやろ。シオンが免除してくれるらしいけど」
『うん、試験官をちゃんとやれば、という条件だ。そう難しいものではないな』
「難しそうやなぁ」
どこをどう見ても試験官の自覚も緊張感も感じさせない魔導書に、主ながら落胆が過ぎる。
元を辿れば、シグナムと同等以上に自律性があり、明確な行動原理で持って仕事をこなす優秀な管制人格だったはずが……ここ何年かで、正式な主に引っ張られるようにダレてしまった。
「まぁええわ。あの二人、合否に関わらず勧誘行くから、ちょっと残しといてな」
『ああ。合否判定までの時間、待機させておく』
「ほんじゃ、ゆっくり見させて貰おか」
新戦力への期待と内輪ネタの被害者にしてしまった罪悪感を内に止め、モニターへと意識を集中させた。
9/4
入局したいという思いも→入局して欲しいという思いも、に訂正