切断などすればその内部に干渉できる、ではなく、切断などすればその内部に入り込める、です。
切断しようが擦り潰そうが『生物』である限り一切の干渉は出来ません。内部に性質変化させた空気等を入れ込み、補強する、と言った事ができます。ペースメーカーやインプラントと似たようなものと捉えて下さい。
「そう、そこでこうだね」
「えと……こう?」
教えた手順と違うデタラメな歩法を使う高町さん。
人通りのない山の中の公園だから別にいいけど……街中だと凄い目立つ歩き方してる。させてるの私だけども。
「違う違う、左から出すと次が途切れるでしょ?右からだして左は動かない、そして重心は一切ズラさない」
ゆっくりと手順を実演して見せる。これを数回してもこの有様だ。
「うー……難しいの……」
「教えてって言ったのはそっちなんだから、とりあえずでも覚えてもらうよ」
つい先日のフェイト戦、そこで何を思ったのか私に戦闘を教えてほしいと頼む高町なのは。
私は良いのだけど高町さんは魔力を撃ち出す砲撃タイプらしいので、剣術は使えない。私の能力も一回聞かせてみたけど聞こえないらしい。多分話せれば使えるんだろうけど伝えようが無い。文字に起こすにもどんな風に文字にすれば良いか分からないし。そういう訳で私の使う技術……箭疾歩、縮地と呼ばれる技術を取り敢えず教える事に。
「右、右、左……」
「そうそう。ユーノ、ちょっと実験台になって」
取り敢えずは手順を覚えたみたいなので実験。できるようになれば即実行。練習だけでは使えないからね。
「う、うん」
「行くよ、ユーノ君」
「見えたら失敗、見えなければ成功。ではどうぞ」
高町さんと謎生物くんの間は五メートル程。普通に走るなら認知できるけど、多少なり成功すれば分からないはず。
「行くよっ!」
僅かに高町さんの左足が動く。しかしそれはフェイクで、実際には右足が前に出ている。
普通の歩法としては間違い、だけどその後は手順通り右足を……
「にゃっ⁉︎」
「なのは⁉︎」
「あーあ」
右足を低く出し過ぎて躓き、進む事なく地面へダイブした。
何というか、言葉も無い。
「大丈夫?大丈夫じゃないと思うけど」
「う、うん、ちょっとヒリヒリする」
「なんでそんな軽傷なの⁉︎」
頭からコケてかすり傷とか普通じゃない。私なら即病院送りだ。
「うーん……ちょっと運動に慣れてない感じだね。普通に走る練習からしようか」
何故かしっかりしてるから忘れてたけど小学生なんだよね。なら走れなくても……問題か。
「才能無いのかな……」
「無くても問題ないでしょ。時間はかかるけどできるよ」
「そう……かな?ウタネちゃんと違って私はできない事多いよ?」
「はぁ……いい?才能って言うのは、物事を行う際の効率を言うの。世間でいう天才って言うのは、その効率を生まれながらに知ってる人。秀才はそれを後天的に高めた人。効率さえ知るなら、できない事は無いんだよ」
「え……と?」
やっぱり難しいよね。私にも分かってないし。
「誰かに出来る事は誰でも出来るって事。私達はこれを極めようとしてきたの」
「私達?」
「あー……後二人、同じ考えに納得したのがいるんだ。それはまた今度にしよう」
今はどうしようもないからね。転生してからというもの一人で暮らすのは中々慣れない。元の世界との連絡手段すら分からないからね。
「う、うん」
「あれ、やけにアッサリだね。貴女の事だからもっと突っかかってくると思ったのに」
「あの、聞いたらまた殺すとか言われそうで……」
薄く笑う高町さんの表情は僅かに怯えていた。その生き物らしい感情表現に、私はどこか冷めていた。
当初は気にしていないのかと思っていたけど、どうやら痩せ我慢に近いものだったらしい。私の意思は本当だったし、その辺の形だけのやつとは違うから、それを感じ取ったのかもしれない。いや、小学生ならどちらも同じ様に見えるか。
「別に。魔法ってのに触れるまでは何もしないよ。ジュエルシード集めも緊急時とかなら手伝うし、頼まれればやる」
我ながら恥ずかしい言葉を良く使えるものだ。以前ならもう……
「うん、ありがとう!」
にっこり笑う高町さん。うん……やっぱり普通の小学生っていうのはこんな感じに笑うのが普通なんだ。深く関わってしまった以上、やるだけはやろう。
「じゃあまず、走る練習からしようか。家まで走って帰ってね。途中で休んだりコケたりしたら殺すから」
「ヒドイ⁉︎」
「じょーだんじょーだん。まだ時間はあるし……どうする?続ける?やめる?」
「少し休憩……は?」
「いいよ」
「ふぅ〜……疲れたの」
高町さんがベンチに座って息を吐く。
平日の学校終わりという事もあって少し日は傾いてきてるけど……後二時間くらいは大丈夫かな。
「ねぇウタネちゃん」
「なに?」
「剣術も、教えてくれないかな」
「は?」
「なのは⁉︎」
高町さんの発言にユーノも驚いている。私もビックリだ。
「多分今のままじゃ私はフェイトちゃんに勝てない……よね?」
「うん」
《バッサリ言うね……》
ユーノが高町さんに聞こえない様にわざわざ念話を使ってくる。
変に励ましても意味無いし。
「だから、ウタネちゃん程とはいかなくても、近距離もある程度できると可能性が高くなると思うの!」
「うーん……私の場合剣に関してはシロウトなんだよね。ほぼカン任せだから……」
「そこをなんとか!」
「そこって何?教えられない……と言いたいところだけど。近距離で強くなればそれだけ向こうの決定打が減るのは間違いない。という事で知識だけの私で良ければ教えてあげる」
ぶっちゃけ、高町家の方が剣に関しては……いや、いいや。高町家には関わらない。多分だけど高町さんのお兄さん……
取り敢えず今は高町さんの強化に努めよう。そうすれば私が出向く必要も無くなって、高町さんは自分のしたい事ができる、ユーノも無事……なんだかを集められる。みんなハッピー。
「……」
「ウタネちゃん?」
「ウタネ?どうしたんだ急に?」
「へぁっ⁉︎あ、ごめん、えーと、じゃあレイジングハートの出力限定からだね」
「「へ?」」
「んえ?」
あれ、なんで?
「剣術はどうなったんだ?」
「そうなの!」
「あ、そうか、私が勝手に考えてただけか。いやさ、高町さんが接近戦をするにしても私にデバイスを作れないって点から、高町さんにも新しくデバイスは作れないんだろーなって思って、レイジングハートのまま熟そうとしてると思ったの。そのままだと耐久力がバルディッシュに追いつかないから、レイジングハート全体を軽く魔力でコーティング、更に撃ち合いの際に魔力を放出する事で威力を上げつつ衝撃を緩和しようとしてたの」
更にバリアジャケットを軽量化する事で速さに対応、魔力放出によって防御力をカバーする。高町さんのレベルなら装甲をそのままに魔力放出の攻撃サポートより、少しでも自分で動いた方がやり易いと思ったから。
「す、すごいね……やっぱり何か、なのはと同年代とは思えないよ」
ユーノが驚愕している。
違うからね。言わないけども。
「だから、前提として物理耐性を上げる必要があるんだけど……レイジングハート、できる?」
《YES》
「おっけー、じゃあ高町さん、セットアップ」
「う、うん。レイジングハート!セットアップ!」
高町さんの魔力光と共に衣服が変わる。制服に似たデザインからは想像も出来ないほどの耐久性を備えた魔導師の装備だ。そして飴玉程だったレイジングハートも高町さんの身長程の杖に変化している。
「じゃ……人避けの結界を……」
「あ、そうだね。それは僕がやるよ」
「ありがとう」
ユーノに結界を張ってもらって、効果を確認してから口を開く。
「よし、じゃあ高町さん」
「はい!」
「私を全力で倒しに来て」
「うん!……えぇ⁉︎」
「ウ、ウタネ!分かってると思うけど魔法無しには……!」
「ふぅ……黙って、やれ。砲撃でもバインドでもなんでもしろ。今から見せるのはお前が理想とするべき剣術だ」
私の剣術では他人が使えない。皇帝特権を発動して、万人に対する理想……全ての理想となる剣術……を使用する。
「三分で終わるから安心して。さぁ、乙女の加護を!」
ウタネさんの言う燕返しはFate/staynightのアサシンのものと同じで、厳密には第二魔法ではありません。ウタネさんの知識はにわかものです。