夜間にアラート。反応は海上にガジェットドローンの大群。
今までより速度が速く数は多いがはやて達であれば問題無く処理できる……が、リミッターを使う程でもないということで通常の空戦で各個撃破する事に。
「今回は空戦だから、私とフェイト隊長、ヴィータ副隊長、リインフォースの四人」
「みんなはロビーで出動待機ね」
「私も行くのか……まぁ、飛べちゃうからな。仕方ないか」
「一応だが指揮はシグナムだ。留守は頼むぞ」
出撃する四人はそれぞれ臨戦態勢へ意識を整えながら、残るフォワード達へ指示を残す。
「「「はい!」」」
「それから……ティアナとスバル」
「……」
「ティアナとスバルは出動待機から外れとこうか」
「「……!」」
なのはの口から、直属の部下に向けての戦力外通告。
当然今日この場限り、という事は誰もが理解できたが、それすら耐えられないほど追い込まれていたティアナがいた。
「うん、よかったな。私に無い休みだぞ」
「実戦で使えない奴は……」
「ん」
「実力差も測れず特攻して殺されるような奴は、使えないってことですか」
「……言ってて分からない? 当たり前のことだよ、それ」
「教導はサボらずやってます。無茶しましたが、指示は聞いています。あなた達を尊敬して追いつきたいと思ってます。私はスバルやエリオみたいな才能も、キャロみたいなレアスキルもない。隊長達の様な熟練の技術も持ってない。そして、機動六課が戦う相手も、決して生半可じゃない。そんな場にいるなら、せめて実戦で足を引っ張らない程度になるために努力する事はダメなんですか。少しくらい死にかけてでも強くなろうとしなきゃ、追いつくことさえできないじゃないですか!」
正面からなのはを見据えた嘆き。
周囲との力の差を感じ続け、成長を自覚してもなお足りないであろう敵の存在。更には身の丈を弁えない特攻で、模擬戦だというのに援護射撃を必要としてしまった負い目。
今までのミスはシオンとリインフォースによって見逃されていたため、実質初めての罰に積み重なった罪悪感は耐えることができなかった。
「……そうかもね」
「……なら!」
「でも、やっぱり外れとこう。また落ち着いたら話そう」
「なのはさん!」
頑なに話そうとしないなのはにティアナが縋るように叫ぶ。
諦めたリインフォースがなのはを引っ張ってヘリに乗せる。
「シグナム、スバルとティアナを頼む。なのは、もう行くぞ」
「シオンの任務についてったんだよね。それで力不足だと思うのは間違いだよ」
「ヴァイス、出られるか」
『はいよ!』
リインフォースが出動を強制、なのはをヘリの中へ押し込む。
「明日またちゃんと話そう! 今は気持ちが荒れてるだけだから!」
「行くぞってのに!」
ヴィータもなのはを引っ張り、無理矢理出撃させる。
残されたのはフォワードとシオン、シグナムの六人。
「お前達は部屋に戻れ。明日、望み通り話をしろ」
「シグナム副隊長!」
「なんだ」
「……その、私とティアが怒られる事をしたのは、重々承知です。けど、自分なりに努力するのとか、リスクを背負っても勝とうとするのって、そんなにいけない事なんでしょうか!」
感情を出さず事を見ていたシグナムに、スバルも意見を求める。
シオンも昼に言いたい事は言ったのか、興味も無さそうに無表情で虚空を見つめている。
「自主練習は構わない。なのはもそれを容認している。お前達がどの様な志を持ってどの様な戦略を持とうが、私は一切関与しない。だが、昼は違うのだろう。自主的な特攻、分かりやすく言えば自殺だ。それは私でも許さない」
「模擬戦です! 怪我は承知でしたがそうなるとは想像さえしないじゃないですか!」
「そうだな。普通、模擬戦ではそんな事態は起こらない。当然、お前らが動くまでなのは達も考えなかっただろう」
「なら!」
「シグナム。寒い。ロビー行くよ」
「……了解。話はロビーで」
言いたげな視線を背に、シオンとシグナムが屋内へ向かう。
他に無いためフォワードも後を追う事になった。
♢♢♢
「シャマル先生……」
「はい。大事な話らしいから、私も同席」
フォワードがロビーに着くと、シオン、シャマル、シグナムの順で座っていた。
キャロが呼ぶと、軽く手を振って、座るように促した。
「先の話だが、まず機動六課の追うレリック収集の犯人から話す必要がある」
「知ってる通り、機動六課はロストロギア、レリックを収集する犯人より先にレリックを回収、保護する事が目的なのね」
「そしてこれが、ジェイルスカリエッティ。そしてその協力者の疑いがあるフタガミシオン。両者とも居場所は掴めていない」
「「フタ……ガミ」」
「「シオ……ン」」
シグナムが空間モニターに二人の写真を映すと、フォワードが困惑のおうむ返しをする。
「ああ。シオンはスカリエッティに技術提供、情報漏洩をした疑いがかけられている」
「「「「えええええええええ⁉︎」」」」
「だっ、だったらなんで!」
「管理局の、しかも!」
「機動六課の!」
「隊長クラスにいるんですか⁉︎」
シグナムの発言にフォワードが立ち上がる。
戦闘態勢で今にも抜きそうな雰囲気だ。
「……ふ、そんなことに今気付いたのか」
「何故今、私がこの話をしたと思う?」
シオンの怪しい笑いと、シグナムの真顔がフォワードに恐怖を感じさせる。
「ど、どういう事ですか……シグナム副隊長」
「なのはもテスタロッサも、ヴィータとリインフォースを連れて遠い海の上」
「今から戻るにしても、リインフォースの足止めがあればここには戻れない」
「ここにいるのはひよっこの新人四人と、この隊舎にも戦闘武装の無い局員たち。そしてやはり、こちら側のはやて」
「オレの正体を明かすには、持ってこいだと思わないか?」
「「「「……!」」」」
「セットアップ! スバル、エリオ!」
ティアナが瞬時にセットアップ、指示を飛ばす。
「「応!」」
「キャロは他部隊に連絡! 応援要請! なのはさん達にも知らせて!」
キャロは即座に部屋を出ようと走り出す。
「っと! ストップ!」
「すまん! 冗談だ!」
それを見たシオンとシグナムが焦りながら静止する。
しかしそう簡単に警戒を解くフォワードでは無い。
「「……」」
「すまない。本当に冗談だ。ほら、レヴァンティンを置く……戦闘はしないし、別に企みがあるわけでは無い」
シオンもシャマルも、それぞれのデバイスを机に置く。
「じゃあ、説明して貰えますか。シオンについて」
銃を構えたまま、説明を促すティアナ。
「ああ……本人から頼む。私では難しい」
「三秒以内に話さなければ撃ちます」
「んー、仕方ねぇか」
シオンは左肘を右手で持ち、左手を首に当て、七回人差し指でつつき、目を閉じて首に手のひらを添えて左へ倒す。
「……ふぅ、えーっと、初めまして? かな? シオンの姉の立場……になる? のかな? とりあえず、フタガミウタネです。記憶欠落してるけど、よろしくね?」
男口調の傍若無人の嘱託は、女口調のクレイジーな一般人へと立場を変えた。
「「「……はい?」」」