翌日午後。
「はい。じゃあ昨日と午前に話した通り、ソラさんと模擬戦をします。ウタネちゃんが言うには何人でもいいらしいから……ヴィータちゃんと一緒でいいよって人は挙手! なければ私がやる!」
一応教導なのにプライベートモードななのはがびし! とソラを指す。
任務中に何かあったらしく、少し灸を添えてやろうくらいの気合いらしい。
「いいねー! 息つく暇もないくらいの極限がいいよ! なんなら全員!」
指を指し返し、意気揚々と挑発行為を敢行するソラ。
「いいの? 一応なのはは私と同じことできるよ」
「同じぃ? できるわけないでしょ。シオンに聞いてないなら私も言わないけど。じゃあ全員かな! イキナリ出てきてギンギンでゴメンね! 女の子相手だからストレス発散になる!」
「ストレスぅ? あなたがぁ?」
「この世界の犯罪組織だよ。アイツら私のことナメてたしブチ犯そうとしてきたからブン殴ってたの」
「胸ないのにね」
「あっはっはー! アンタもでしょーが! 私はえっちゃんがいいって言うからいいのー!」
「好きだねぇ……」
「いつかこっちに喚びたい! 令呪無いけど!」
「……なんか、嫌な予感した」
「へ?」
「ううん。何でもない。多分もっと先の話。模擬戦しよ」
なんか、ソラがマジになりふり構わず喚ぼうとする感じがして冷や汗かいた。いやでも……ソラは善だし、しないはず……よね。
「……いいかな? じゃあ構成はソラさんとスターズ、ライトニングチーム。八人いるけど……ホントに大丈夫?」
「うん、多分。ウタネに聞いた総力戦ってのは何人だったの?」
「えーと、私とフェイトちゃん、クロノくんにユーノくん、アルフさんと守護騎士四人だから……九人?」
「それで手を抜いてたんだよね……うん! やる!」
なのはの心配とは逆に元気満々でそれを望むソラ。
ソラは死なずに転生し続ける抑止力で、私が死んでる間も常に活動し続けてたはずだし、私の知らない未来や世界でも動いてたとすると、経験値はかなりのものになってるはず。少なくともフォワードに負けるなんてあり得ない。
「じゃあウタネちゃん。スタートとストップだけお願い」
「うん。了解」
「えー、ウタネやんないの?」
「一応あなたの試験でもあるからね。勝ったら私の部隊入りだし、負けたら帰ってもらう」
「帰るってヒドくない?」
ソラがしょぼくれてる顔をするけど一切関係無い。状況は多分、思ったより切迫してる。
何故今になってソラがこの世界に送られたのか。シオンが遅れたのは私と身体をわけるためだ。遅れたとしてもシオンから十年近く経ってる。という事は、そろそろ何かあるから……という予想が付く。とくに抑止力のソラがってのが。
「私が6までシオンしてたんだよ? 急にやめたらバレるかもじゃん」
「6……って、なんで7までしなかったの? 成り代わるなら……」
「7まですると完璧にシオンだから、向こうにもわかるの」
これは嘘。それっぽい理由にしとくべきだったけど。
闇の書事件が終わるまで向こうが私のマネできるのは知ってたけど私もそうって言うのは知らなかったからね。知った後だと分かるのかな。それなら真偽不明になるから良いけど。
「ふーん……? まぁいいよ。勝てばいいんだよね」
「うん」
「じゃ、それで良し! お願いします!」
模擬戦は総力戦とほぼ同じ数差……ソラvs機動六課八人。
ソラが他に連れられる形で訓練場へ。残ったのは私とリインフォース。
「……彼女は?」
他に聞かれないよう、誰も見えなくなってから小声で話すリインフォース。
昨日から黙ってると思ったらそれ気にしてたんだ。
「私たちの三人目。抑止力」
「その抑止力という単語は聞きましたが、どのような?」
「うん、人間や世界が作る破滅を防ぐ為の力、かな。ソラは世界の方の人寄り」
そんなに有名どころではないしね。原典が無いのに独立してる抑止力なんてそうそう無いと思う。というかもう抑止力の定義から外れてそう。
「ではなにか破滅の前兆が?」
「まぁ、私だし」
「はい?」
「ソラは基本的に私に発揮される抑止力なんだよ。前は人類史焼却の抑止してたけどそこが気に入ってるらしくてそこに基本いるんだけどね」
「では……世界を滅ぼす予定が?」
「無いよ。そんなの。でも私は能力使用自体が抑止に接触するからね。普段は自分の外には出せないの」
「そうですか。それはよかった。あるならはやてに報告しなければならないところでした」
「えー、嘘報告はやめてよねー……この事件解決しないよ」
「私が、と言えば出しゃばりでしょうか」
「ううん。シオンが敵ならあなたとシオンでやってもらう。相討ち」
「……そうですか」
それは想定していたような、提案を飲み込むような間を開けて答えるリインフォース。
「じゃなきゃ抑えられない。私は無理だし、ソラも多分シオン相手は分が悪い。だから、シオンはあなた。で、シオンが強化しただろう相手の主力を私とソラ。六課には悪いけど……期待してない」
今の六課、どころか管理局では私たちの一人にすら敵わない。それが少なくとも三人は絡む戦いが予想される。いてもいなくても、正直戦況に変わりは無い。
「……分かりました。確かに、この能力は魔導師では太刀打ちできません。私でも使い熟すには至らないので……」
「でも負荷を考えると同じくらいでしょ」
「ですかね……」
「でも私たちである以上、そこの割り切りは必要無いよ。シオンとやりたくないならしなくていい。それも自由」
「まさか。ウタネ様に反旗など。やるならとっくにしてますよ」
「……様付けはやめてってのに」
「ふふ、私なりのささやかな反旗です。こうでもしなければ覚えてくれないでしょう?」
様付けは抵抗の表現だったようで、本当は私が主になった事も嫌なのかもしれない……まぁ、今となってはどうにもならないんだけども。
『ウタネちゃん? みんな準備できたから、お願い!』
なのはが通信で知らせてくる。無駄話はあまりできないね。
「ん、はい。じゃあ、レディー……」
訓練場をくまなく映すだけのモニターがリインフォースにより私の前に展開される。実に九面。そりゃ個人を映せばそうなるけども。
廃墟街的な訓練場だし、中央にソラを置いて、周囲を円状に八人が配置。
フォワードはやる気満々って感じだったけど他の四人は総力戦を経験してるからぶっ潰してやるって感じ。シグナムとヴィータは特に。
「ゴー!」
スタートと同時にソラ以外が走り出す。なのはとフェイト、ヴィータは飛んだ。
♢♢♢
はいどうも、みんな大好き抑止力ことソラさんだよ!
なんやかんやあって何故か模擬戦だね! シオンが九人相手に圧勝したらしいから私も近いことしたいと思うよ!
話を聞いた感じウタネは知らないっぽいけどここは『魔法少女リリカルなのは』の世界だね! ロリショタコンに聞いてる限りではこの世界は二回もウタネに壊されてる可哀想なサンドバッグなんだけど何故か普通だね。どうでもいいね。
ここでの基本戦闘は魔法。私たちTYPE-MOONの価値観から見ると魔法が一般化するわけないとか一般化したら魔法じゃないとか思うんだけどどうやら理論だって作られてる全くの別物らしいね! 唯一の可能性として全員が全員別々の魔法だった場合を想定してたけどそれはなかったよ。そもそも私たちが言う魔法の数はそんなに無いしね。
じゃあ取り敢えず自己紹介かな? ソラさんです! 死んでないけど転生してまーす。基本的に『Fate/Grand Order』の世界でカルデアに在籍してます。で、自分でロリコンに頼んで移動してもらうか、ロリコンか他の世界に呼ばれたらその世界に移動するーってシステム。今回はロリコンに呼ばれた感じ。元々犯罪組織潰しにこっちの世界に呼ばれてた事もあったんだけど、通話してたみたいで『なんか変だったから行ってこい』ってロリコンに呼ばれてこの世界のストーリーの中心に姿を見せたのです。
わかってますか? 私はウタネやシオンよりかなりメタな視点で動いてますよー? 経験した時間軸も投稿された作品順ですからねー? 『vividな世界で暇つぶし』も経験してますからねー? わかってますか? わかりますね?
まぁなんやかんやで模擬戦、なんだけど! まぁ圧勝だろうね!
だってウタネが余裕かましてんだもの! それならウタネが手を抜いてるってことだからね!
『すたーと』
さぁ、始まったね。
円を描くように配置されてた八人……今現在での力量とかは知らないけど、その数年後は知ってる。だから、それを基準に対処すれば良いだけ──
「まずは……」
速度としてはフェイト、エリオ、スバル。
純粋に手を抜いてもフェイトかな。だとすれば背後の不意打ちを警戒しつつ!
「そぉい!」
飛んできた鉄球を薙ぎ払う。バインド壊したのを怒ってるはずだし、真っ先にくるのは予想できた。
さてさて。知らないフリはしてるけど元知り合い? ってのがバレないようにしないとなんだよね。ウタネみたく器用じゃないからその辺気をつけないと。
「はぁっ!」
「甘い!」
バルディッシュの切っ先を身体を捻りながら跳び退て躱す。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「せい!」
跳んだ先、ウイングロードからスバルが突撃してくる拳に腕だけで合わせ、互いを弾く。
「っと……」
思いの外スバルの拳が重く、着地で少しバランスを崩す。
「貰った!」
「わけないよね!」
当然シグナム。
ビルから飛び降りた最上段の構えは全開の紫電一閃。
着地に合わせたそれは私の身体を真っ二つにする軌道と殺意を持って振り下ろされ、当然私の拳に止められる。
「はぁぁぁぁ!」
「っ……と……!」
流石に腕だけでは受けるのが精一杯で、弾き返すまではできなかった。
「く……」
「いいねぇ! まだ様子見ってとこかな。もっと来ていいよ! ウタネと同レベルに見てくれていいから!」
改めて足を踏ん張ってシグナムを押し返す。
視界にはスバルとシグナム。ビルの合間に多分フェイトとエリオ。
まだ見えてないなのは、ティアナ、ヴィータ、キャロ。
見えてなくても弾は既に飛び交って、少しでも近距離の包囲から出れば撃たれそう。
まぁ撃たれるっても今飛んでるのなんてガンド程度だし痛くてもダメージにはならない。
「んー、どーしよっか。早く終わりたい? 長く楽しみたい?」
「それに答えるとどうなるというのだ? すぐに終わらせてやるさ」
戦略を相手に委ねようとするとピンクに即答される。
すぐかぁ……逃げられると面倒なんだけど。
「よーし! じゃあすぐ終わろう! ちょっと痛くするけどお菓子あげるから許してね! ふんっ!」
前傾姿勢ぎみで全身に力を込める。
全身が微弱な魔力を纏う感覚。全ての筋肉を収縮させる感覚。収縮させたまま、纏ったまま自然体へ維持する。
服の上からはわからないだろうけど、背中に出てる『鬼』が、むず痒く感じる。
「ふぅ……さぁ、やろうか!」
足を大きく開き、同じように両腕を広げて掲げるファイティングポーズ。
身長ではスバルにも劣る私だけど、その構えは勝利の確信。フェイトの全速を上回る反射神経は過去の未来で確認済み。
「ふ……それが構えか。いくぞ!」
シグナムが来る。
射程に入ると飛び上がり、再び紫電一閃。今度はカートリッジ三発。さっきのそれの倍は威力があるだろう。
「はぁっ!」
それでも無意味。
レヴァンティンの刀身を直に殴る。それでもパワーはこっちが上。
押し返してボディもいいけど……徹底的にしちゃおっか。ウタネの部隊に入るとはいえ今は新参だし。ある程度実力で立場を取りたい。
「……っ⁉︎」
一度腕を引き、両手で挟むように手刀を入れる。
「武器折りは戦場では常套手段だよね。分かってても壊れるとは思ってないと思うけど」
レヴァンティンの刀身を真っ二つ。
「ごめん!」
シグナムの腹を蹴り飛ばしビルに埋める。
ウタネいるし……シャマル先生なら治せるでしょ。
「さぁ……って!」
呆然としてるスバルへ走る。
速度も今なら私が上。
走り込んだ勢いをそのままにすれ違いに腕を取り、無理矢理な形で一本背負いを敢行し手頃なビルへ投げる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
これで二人。あと六人。
けど二人やる間に他の姿は見えなくなった。飛んでいた弾もいつのまにか消えてる。
隠れて作戦会議か、隙を狙ってるね。
「フンッ!」
一番近いビルを殴りつけ、壁の一部を瓦礫として引き抜く。
それを数度繰り返し、ビル一つを大量の瓦礫に変える。
それを一つ持って。
「せぇい!」
投げる! 狙いはテキトー、当たれば御の字でひたすら投げる。無くなったら次のビル。それを繰り返し辺り一面を平らになるまで破壊する。
隠れ場所無くせば流石に出てくるでしょ。
「……! 無茶苦茶しやがる……!」
「お! やっと一人! ちゃんといるようで安心したよー!」
「ずっといるぜ。行け! エリオ!」
背後から声と音。
エリオの突撃は想定内。キャロの補助も入ってるだろうし。
「まぁ残念なんだけどね」
「えっ⁉︎」
ストラーダを振り向いて掴む。
流石に少し重いけど、右手だけでエリオを空中に止める。
「ウタネと同等に扱って欲しいなって言ったつもりだったんだよ? ウタネにこれが当たるかな?」
「う……っ⁉︎」
「ごめんね。デバイス修理にお金いるならウタネが出すから」
謝ってから、握り潰す。
デバイスの支えを失って落ちるエリオを回し蹴りで飛ばす。
これで三人目。
そして四人目、ヴィータへ向かって走る。距離はそう離れてない。目視で大体十メートル。今なら二歩で届く。
「な……!」
足先で爆発させる筋力エネルギーは間合いを即座に潰し、懐へ潜り込む。
「ごめん!」
「……なーんてな」
「っ……とぉ……」
ヴィータの胸を確実に捉えたと思った拳はピンクのバインドに拘束され、次の瞬間には金色のバインドが全身を包む。
「流石にバカじゃない。昨日ので馬鹿力は分かってた。逆に、それだけなのもな。なら簡単だ、魔法戦に持ち込めばいい」
ヴィータが余裕をもって離れていく。
そして、残りの五人が一斉に姿を見せる。
構えは必殺。スターライトブレイカーではないにせよそこそこの収束砲撃。
それが、なのは、フェイト、ティアナ。ヴィータはギガントで待機。キャロは誰かの補助かな。最初に飛んでた弾は魔力散布? わざわざ? この攻撃のためだけに? 砲撃の上から潰しに来る気かぁ……一応初見でしょ? 容赦無いね。
「まぁ……でも。それじゃあ足りないね!」
「「「ブレイカァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」」」