「はい、おつかれさま」
「んー、ありがと!」
ブレイカーを耐え、ギガントシュラークを粉砕し勝利したソラにタオルを渡す。ついでに伸びた服の着替えも。私のだけど。
でもまだ訓練場なんだけどね。
「どうだった?」
「んー? まぁ、別に? 知ってる相手だし」
ディバインバスターに相当する砲撃を四方から受けつつヴィータのギカントシュラークを粉砕したとは思えないほど呑気なソラ。
ソラの知ってる時と比べてどうかってのを聞きたかったけど……面倒だしいっか。
「そっか。じゃあこの事件の事はわかる?」
「それはサッパリ」
「じゃあさっきどれくらいした?」
「40」
最初で鬼の貌出してたはずだから……収束と砲撃とギガントで……やっぱりなのは達もかなりだね。
たしかソラって筋力C++だったから……あの五人の火力で筋力Aくらいにはなるのかな。
「ふーん。結構だね」
「スターライトブレイカーだったら60はいるかなって感じ」
スターライトブレイカーまで知ってる……どこの時代を経験してんだろ。
「取り敢えず……なのは」
「うん……」
「八神さんに報告お願い。例の事件の犯人は私の知り合いで、私が全責任を持って私の部隊に引き入れた、って」
「わかった。はやてちゃんもウタネちゃんの友人なら信用してくれると思うし。でもソラちゃん、一度ははやてちゃんと会う事になると思うからね」
「はい。模擬戦は無茶を言ってすみませんでした。私の行動で損害があればウタネが出しますので」
ソラが深々と頭を下げる。
「ちょっと⁉︎」
「だって私お金無いし。あるんでしょ? 出してよー」
「……はぁ、良いけど。デバイス修理くらいかな? でも修理とか部隊でやるし要らない……?」
「修理費は大丈夫。シャーリーが喜んでするだろうし。まぁでも、ヴィータちゃんやシグナムにちょっとお詫び入れた方がいいかも……」
なのはがポリポリと頰をかく。
模擬戦後は姿を見せず、どうも部屋に引き篭もってしまった様子。
「あ……そうだった。えっと……ウタネ、どうしよう⁉︎」
「知らないよ。プライドのケアなんて私もシオンもいらないから」
「だよね! 役立たず! くっそー、モーさんでもいればなんとかなったかもなのに……」
「津波サーファーの子だっけ?」
「そっちはサモさん。モーさんはセイバー」
「……わかんないや」
「カルデア来なよー。あのカルデアにサモさんはいないけど」
「行かない」
セイバーだのライダーだの……クラスごとで呼び方が違うらしい。よくわかんないけどね。
「話は聞いたで、ウタネちゃん!」
「おー八神さん、久しぶり?」
「久しぶりやー」
リインフォースと八神さんが歩いてくる。
どうも念話で話してると来たいと言ったらしくリインフォースが迎えに行った。
「キミがソラちゃんかーよろしゅう」
「はい。よろしくお願いします。八神司令」
「司令?」
ソラの敬礼に八神さんが首を傾げる。
「あれ? なんだっけ、ウタネ」
「部隊長、かな?」
司令ってなんだっけ。もっとお偉いさんかな?
「あ! それか! すみません!」
「ええよー、一般人さんやもんな、階級も分からんやろ。それよりウタネちゃん」
「おっ……死んだ気がする」
死んだ気がする。
「私に黙って何勝手に戻ってんねん! シオンとして部隊任務遂行するんやろ! なんでバラした!」
「おほほ……ほほほ……」
八神さんが私の頬を掴み、右手だけで宙に浮かせる。
これマジ? 生身? リインフォースとユニゾン……してないね? えぇ?
「ウタネちゃんに何ができるんや! 戦闘能力だけじゃ意味ないってシオン偽ってたんは誰や? 誰や⁉︎」
「わ、わたし……わたしです……」
「せやろ? ほんでな、ウタネちゃんは一般人や。シオンは私に属する嘱託や。この差は大きいで? わかっとるん?」
「はい……」
シュベルトクロイツが八神さんの手に添えられ、私の目の前に置かれる。
「厳罰や。撃つで」
「……えぇ……」
もうチャージが始まり、魔力に直で顔が埋まっていく。
痛いんだけど。
「はやてちゃん⁉︎」
「なのはちゃん、黙っとき。拡散するで」
「……ウタネちゃん、ごめん」
うん。この魔法なにかなー……非殺傷であることだけを望むかなー……
「ディバインバスター」
「おっ」
撃たれた。
マジで撃ったよ、この隊長。
「あっはははは! マジで撃たれてんの! ガードしてた? してないよね⁉︎あはははははは!」
「ソラ、笑い事じゃない。リインフォース、お願い」
「えぇ。はやて、流石にやり過ぎかと」
治癒ができて良かった。顔の皮膚焼けてたんじゃないかな。前髪無かったよ。
「ええんや、どうせ死なへんやろ」
「死なないけどさ」
「ウタネちゃんやって言うのは隊長達の秘密にしとくつもりやったのに……」
「でもそれじゃ犯人が追えない。隠しておくには相手が強過ぎる」
私だってバラさないとフォワードと戦闘だったし、そうしないと主犯を教えられないし。
正直なところ、ソラが来てくれてほっとしてるくらいだ。
ソラが潰してきた組織が相手なら六課で十分。フォワードの強化という面でも安心してこなせる仕事だった。けどシオンが敵で、協力相手がプレシアに近いレベルの天才科学者だっていうなら、フォワードは当然なのは達だって互角にあるかどうか。
落胆してる八神さんには悪いけど、この戦いの戦力は管理局では足りない。
「いーじゃん、私がきたんだし」
「まぁそうだね。ありがと」
「ん……そうくるか。でも、その様子だとまだ甘いね」
「え?」
「タイムパラドックスかもだけど、ゴドーワードって知ってる?」
「んー……知らない、と思う」
私だけじゃなく周りもわからない様子。この世界のことじゃないのかな。
「やっぱ対面しないと分からないのかな。私もオーガに会うまで知らなかったし……」
ソラが腕を組んでブツブツと訳の分からないことを。
「なに?」
「ううん、ごめん。やっぱり私たちは同じなんだって確認」
「……? 何を今さら」
「まぁ、あなたが追加したのは別だけどね……」
それについてはホント申し訳ない気持ちだ。でもなんか見殺しはちょっと私も気が引けたし……
私を除いたシオンとの二人の関係として持つのであれば他に入って欲しくなかったんだろうなと思いつつ、手を合わせて謝る。
「あ……うん、ごめん。でも流れでさ。悪気があったわけでもないし……シオンもまぁ否定はしなかったから……」
「言い訳無し! 別に責めては無いんだよ、リインフォースさんも悪い人じゃなさそうだし」
「そりゃそうや、ウチのリインやで?」
「まぁ、私たちには善悪カンケー無いけどね! というかウタネが一番悪だしね!」
「はえ?」
「ん? あれ? コレダメだった?」
私が悪、と言うことになのはがボケる。
「んー? 別に。というかなのはが一番分かってると思ってたよ」
「なんで⁉︎シオンは確かに怖いけど!」
「私、なのはとユーノを殺そうとしたり、フェイトも殺そうとしたし、シグナムも一瞬再起不能にしようかと思ってたし、闇の書事件全体で両方の敵だったり、犯罪未遂なことしかしてないと思うんだけど」
あと世界潰したりした。紫お嬢様に戻されたけど。吸血鬼で時間逆行できてなんなら魔法より火力出せて……
「紫お嬢様呼ぶ? 私の部隊で」
「なんや急に。すずかちゃん?」
「いや、戦力的に。八神さんの五倍は強いでしょ」
「私今部隊のトップなんやけど」
「事実は事実で受け止められる組織にしなよ。生身で手を抜いて私の魔力放出と同等以上のパワーに時間逆行。予想からその他能力。シオン相手なら私より良いと思うけど」
「魔法関係あらへんやん……しかもいきなり指名手配犯相手にさせるん?」
んー、それもそうだ。闇の書リインフォースの時は緊急だったけど簡単に対処したけど。んー、やめとこっか。でも私がシオンに不利っていうのは変わらないし……もっと手軽な戦力……
「じゃあ高町家」
「じゃあて」
「ぶっちゃけなのはより強くない? 瞬間移動……そういえばなのはもできたね。私の知ってる地球人は戦闘民族では無かったと思うんだけども」
「確かに高町家は意味分からんな。シグナムが手合わせしたことあるらしいねんけどデバイス込みで勝てへんかったらしいで」
「シオンに治してもらった後で? 意味わかんないけど納得はできるなぁ……って感じ。私の歩法も一回見せてるから……あ、それを無理矢理再現してあの速度なのか……技術を力技で解決させるとそりゃあ瞬間移動になる……」
そもそも海鳴は私のいた地球には無かったよ……闇の書事件まで地図見に図書館行ったり、シオンが来てからはシオンに聞いたりしたけど。
「取り敢えず戻らないー? 私シャワー浴びたいかもー!」
「あ、そうだ八神さん、コイツ、私の部隊に引き入れるよ」
相変わらず能天気なソラを指し、管理局の外の存在だと言っておく。
「ん、それはええねんけど……やっぱりアレか、魔法使えへんのか」
「え、魔法使えないとダメなの?」
「ああいや、それは別にええねん。私が何とでもするから。やなくて、実戦的な能力の話や」
「あぁ、認めて貰いたければ見せろってことね」
「そこまでではないんやけど」
「ウタネ、どうかな」
「んえ? 別に? 80までならいいんじゃない?」
「ん。じゃあ」
「えまって、ここではしないでよ。どっか室内で」
ソラが構えを取るからちょっと後ずさる。
引き気味な私に対しソラはなんで? と言った顔。
「組織で暫く生きてくんだから人の目は気にしなよ。カルデアと違って普通の人間ばっかりなんだから」
「んー? んー! なるほどね! 死んじゃうかもってことね!」
「違う! 見た目!」
「見た目……?」
ぽかーん、と口を開けるソラ。
ソラが通ってきた未来でも私は指摘しなかったのだろうか。確かに対魔力の低い一般人なら80で死んじゃう可能性もあるけどここは管理局。素質が無い人でも常日頃から魔法に触れ、魔力を浴びている。ある程度距離がある限り無差別殺傷は無いだろうけども。けれども、その見た目はとても酷い。ヒドイ。
「とりあえず、今模擬戦したメンツは実力認めただろうし、リインフォースはいいよね。だから、八神さん」
「な、なんや」
「ソラと二人きりでお願い。絶対身体的危害は無いから!」
「ウタネちゃんがそんな必死なんは珍しいなぁ。別にええけど、ソラちゃんはええか?」
「なんか納得いかないけど! いいです! わかりました!」
「お、おう……なのはちゃん、悪いんやけどウタネちゃんとソラちゃん借りてくな」
私の進言は通り、無事私とソラが八神さんについて行くことに。
置いてきぼりのなのはとフェイト。自体の把握、情報共有を行うフォワード。能力の予想をしていてそれに行き着いたのか、引きつった笑みを浮かべ見送るリインフォース。そして八神さんに連行されていることに気付いた私。
その数分後、八神さんと私の叫びが六課を揺らした。