無気力転生者で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第76話 ナンバーズ その①

「はじめまして……ウタネです……」

「はじめまして! スバルがいつもお世話になってます! ギンガ・ナカジマです! よろしくお願いします!」

 ビシ! と敬礼される。

 割と走ってきて結構疲れてる時に元気いっぱいされるとツライ。寝たい。

「えっと……あの、私一般人なんで、そういうのはなくていいです。堅苦しい関係は苦手なもので敬遠している次第でございます。ですのでギンガ・ナカジマさんにおかれましても当面の間は慣れないかと思われますが敬語ならびに敬礼等、管理局内での階級間で行われる上下関係を意識させないようお願いしてよろしいでしょうか」

 威圧だ威圧。誰かにもしたような気がしなくも無いけど覚えてないからいいや。

「わ、わかりました! わかった! ウタネちゃん! よろしくね! これでいいでしょう⁉︎」

「うん」

 流石姉妹、物分かりがいい。妹の方がどうとか知らないけども。

「じゃあスバル達と合流しましょう、位置データはデバイスに貰ってるから」

「了解。遠い?」

「んー、少し?」

「じゃ、コレ」

 モニターを見ながら出た答えは、少し。遠いかどうかを聞いたから少し遠い、でいいだろう。

 というわけで、板に車輪を付けただけの台車を渡す。

「え……っと?」

「スバルと同じスタイルだって聞いて、それなら引っ張れるかなって」

「レリックの運送? べつに素手でも……」

「違う違う。私の」

「はい?」

「それに私が座るか寝るかするから、引っ張って」

「え?」

「スバルと同じ速度で走るなんてしたら即お荷物だし、面倒だししんどいから」

「……今、急激にあなたへ持っていたイメージと株が崩れ落ちてます」

「だろうね。私になってからよく言われる」

「なってから?」

「私の話。妹さんから聞いたらいいよ。話すのは面倒だから」

「わかりました。じゃあお好きにどうぞ」

「寝よっかなぁ……元々サボる気だったし。うん、それくらいは許して」

「振り落とされないでね。下水に落ちると面倒ですので」

「繋げてるワイヤーが切れない限りは大丈夫」

 台車と私は能力で……どうしよう。紐っぽいのでグルグル巻きのイメージでいいか。

「ブリッツキャリバー、ゴー!」

 

 ♢♢♢

 

「はやて! 限定解除許可を! 私一人で空を潰す!」

 ウタネがギンガと合流した少し後、空のガジェット反応が増大、なのはとフェイト、別地点でヴィータとはやてが空に拘束される。

「フェイトちゃん!」

《いるかぁ? フォワードにはウタネちゃんとソラちゃん、ヘリにはリインフォースやで? 実際のとこ、今は二人と私らが一番手薄や》

 砲撃と爆発音の中、自分たちがどう対処するべきかを相談する。

 ガジェットのみであればウタネとリインフォースがいる以上何百何千といようと同じこと。魔力切れがある自分たちが最後になるとはやては考えていた。

 リインフォースは未だラディカルでグッドスピードなまま衣服中毒の禁断症状が出て戦闘どころか話しかけたら殺すオーラを増大させ続けているのだが、それを知るのはフォワードとソラ、ヘリで女の子のチェックを行なっているシャマルと操縦しているヴァイスしか知らない。

「こっちはただの陽動だと思う。ガジェットで私たちを止められるなら十分って感じの。何か嫌な予感がするんだ」

《嫌な予感、ね。最悪の予想としてシオンが敵対するならわからへん、か……最重要はレリックやもんな。よし、フェイト隊長の限定解除を承認、なのはちゃんはヘリの護衛に回って! 私もそっちに行く! ヴィータはフォワードたちと合流や!》

「「了解!」」

《ん? ちょい待ち、それフェイトちゃん大丈夫か? シオンがそっち行ったら死ぬで? 最初に死ぬんはフェイトちゃんやて言われてんちゃうん?》

「それは闇の書の時だけ。以降は言われてないから大丈夫だと思う!」

《ホンマかいな》

「それにシオン相手に全部対応するのはウタネでも無理って言ってたから、戦力はできるだけ固めないと」

《三本の矢、って知ってるか?》

「「?」」

《三本の矢は、一本ずつやと簡単に折れるけど、三本纏めると纏めて折れるって冗談話》

「歴史かな……私は無理なの……」

「わ、私も日本の歴史はあんまり……」

《私らとはいえ戦力固めてもシオンなら一網打尽のチャンスにしかならへんと思うねんけど、どうやと思う?》

「どうだろう。ウタネの言う通りならウタネにだけは敵対しないと思うけど」

《とりあえずよ、多分まだ手遅れじゃねーから、さっきので動かねーか》

《せやなぁ、じゃあフェイトちゃんの限定解除承認で、なのはちゃんと協力して空の制圧お願いできるか? 私はヘリ、ヴィータはフォワードに。出来るだけ単独では動かんように!》

「「《了解!》」」

 

 ♢♢♢

 

「ふーん……人工生命ねぇ……」

「よっぽどどうかしてる連中しか手を出したりしないはずの技術。だけど、スカリエッティが犯人だっていうのなら、その線も納得できる」

「ふーん……どうかしてる技術ねぇ……」

 ガラガラガラガラガラ、と言う音が走る音をかき消して響く。

「今はとりあえずレリックの確保が最優先! その時はウタネちゃんも手伝ってね!」

「ふーん……レリック……ロストロギアねぇ……」

 ガラガラガラ……

 なんか聞いた事ある。なんか、身近なところに近いものがある気がする。

 人工生命、不合理な技術、ロストロギア。繋がれー……記憶を遡って繋げろ……無い記憶を世界から引っ張るんだ……そんなことできたら魔法使いだ……

「あの、ウタネさん……」

「ん?」

「なんでそんな……?」

「だって走るとしんどいし」

 子どもなのに槍持ってなんでそんな走れるかね? アレか? バリアジャケットは重量軽減疲労軽減の効果があるのか? 

「ウタネちゃん! やっぱり普段からしてないことなんでしょ!」

「してるよー……ねぇソラ」

 あ、死んだ。言うんじゃなかった。

「そーだね! ギンガさん? 私が代わりやる!」

 えっちゃんが小石に躓いた時くらい怒ってる気がする。なんだっけ、アキレウス? を純粋に殴り殺す直前までいったらしい。大英雄らしいのにね。不思議なこともあるもんだ。

「ソラちゃん? だっけ? スッゴイ血管浮かんでるけど⁉︎いいのかな? 渡していいのかな⁉︎スバル!」

「ギン姉! その人たちの事は! 任せる! 前方にガジェットいるから!」

 スバルさんや、前を走ってるとこ悪いけど振り向いてみなよ。お姉さんが般若に威圧されてるよ。助けてあげなよ。ついでに私も助けてよ。

「えー! じゃあはい!」

「どーも! 死ねぇ!」

 ヤケになったお姉さんがワイヤーをソラに渡し、ソラがそれを引っ張るだけで私は前方のガジェットの群れに投げ込まれる事になった。

 これ死ぬよ? 殺さずの誓いはどこに? 

「ソラちゃん⁉︎スバル! 行くわよ⁉︎」

「お、おう!」

「ウタネちゃん、ちょっと待ってて!」

「ディバイン……バスタァァァァァァァ!」

 何故か間髪入れずバスターの声。なんで? なんでそうすぐにバスターで解決しようとするの? 

 台車にくくりっぱなしでさ、見事に霊柩車になりそうなんだけども。死んだフリしとくか。罪悪感で死ね。

「あぁ! 一面焼き払われた⁉︎ちょっとスバル! やり過ぎ! ウタネちゃん死んじゃったらどうするの! ウタネちゃん、ウタネちゃーん? あれ? どこ?」

「ギン姉、足元」

「ん……あ! ウタネちゃん! 大丈夫⁉︎」

 頭上から声が……目を開けるとダイナマイツボディーを真下から見上げることになってた。なんだコレ。

「うん。今とても頭が痛い」

「大丈夫ですか? 治療しますよ!」

「じゃあどいてもらって……」

 この人、天然か? それはどうでもいいけど重い。武装のせいかな。能力無かったら多分命に届く重圧だった。

「あ、すみません。フタガミシオンに気を張りすぎてて、ウタネちゃんが緩いもんだから落差でちょっと動転してます」

「そうですか。で、レリックは?」

 八神さんから聞いた話だとこの人は妹よりしっかりしてるはずだから一時的なものと信じたい。

 レリック見つけて落ち着いてから判断したい。

「はい、多分この辺りのはずです!」

「ギンガさん! ふざけるのは終わりです! 手分けして探しましょう! ウタネさんとソラさんもお願いします!」

「はいはーい」

 ティアナだっけ。だいぶ指揮官じみてきたね。

 少し開けた場所でそれぞれレリックを探す。

「んー、ジメジメだぁ」

「は? ロンドン行く?」

「経験値マウントはやめようね。引きこもり相手には特に」

「ありましたぁ!」

「お、ナイスキャロ!」

「早かったね……じゃあ気を付けて」

 こういうのなんだろ。お決まりのパターンかな。この世界に来たばかりやシオンが来たばかりの頃は意識できてたけど、ソラが来たからかな。

「そこだ!」

 ソラがアタリを付けて跳び蹴りをかます。

 当たりはせず壁にクレーターを作ったものの明らかに何かが動いた気配と床を蹴る音が確認できた。

「ウタネ! キャロちゃん守って!」

「了解」

 鎌を出しレリックを拾ったピンク……キャロ、というらしい。覚えておこう……に近付き、皇帝特権で近接格闘に備える。

「それ」

 近付いてくる気配の速度に合わせて先振り。当たらないまでも鎌の範囲から退避した事が感じられる。

「オッケーナイス! もういいよ、私が代わる」

「ん」

 ソラが戻って来たのでチェンジ。私は敵の戦闘不能を狙って動くことに。

「流石ヴィーナス、なんて対応でしょう。こんな方々がスバルの教導をしてくださっているなんて、フェイトさん達には更に感謝しないと」

「ギン姉! 感動は後にして!」

 ホントに大丈夫この人。壊れてない? 

「キャロちゃん、それしっかり持っててね。シオンじゃないみたいだけど荒くなりそう」

「はい!」

「ティアナ、どうする? 管理局的にどう動けばいい?」

「ともかくレリックを保護しながら隊長達と合流でしょうか。敵は確認しておきたいですが。ちなみに、ソラさんならどうします?」

「敵の確認はしたいかな」

「では撤退しながら応戦しましょう。捕獲できれば完璧ですね」

 ソラ達が難しい会話してる。どこまでも追って捕まえればいいのにね。

「ウタネ、取り敢えず地上に出たいんだけど」

「なんで私に言うのかな?」

「階段でも坂道でもなんでもいいから」

 周囲警戒しつつだけど謎の提案がしたかったようだ。無駄だけど。

「いや無理。シオンの許可ないと私は外に使えない」

 全くじゃないけど全身を覆うくらいしかできない。シオン来る前はどうしてたっけ……

 まぁできないこともないんだけど、使う前にやめとかないと歯止めが効かないからね。

「それも制限⁉︎なにしてんの⁉︎」

「んー、決まりごと? ソラだって私の許可いるじゃん」

「ウタネいない時は自由だよ!」

「そーなんだ。まぁいいけど」

 能力で坂道作るくらいならエレベーター作るほうが楽。襲われないしね。まぁそうなったらなったで人が直立不動で上昇する不思議現象になるんだけど。

 そもそもソラって許可しなくても60くらいまで自由なんだよね。じゃあもう許可とか要らなくない? リミッターと同じ扱いじゃん。私と違うよそれ。

「えっと……スバル、ウイングロードお願いできる?」

「えっと……! どう行きますか⁉︎」

「ん、速いほうがいいよね、上」

「ウイングロードは壁貫通できません……」

「じゃあ……ちょっと周囲警戒してて。今襲ってくるほどバカじゃないと思うけど」

「周囲じゃなくて頭上でしょうに」

「ん。20? 40?」

「さんじゅー」

「じゃあそれで。ふぅ」

 肉塊ができあがる。体重どんくらいなんだろ。

「っ⁉︎」

「この揺れは……!」

 ソラが跳ぼうとすると地面が揺れた。

「ソラ、力入れすぎじゃない? 崩れるよ」

「入れてない! 多分さっきの敵だよ! 潰そーとしてんの!」

「あら大変。フォワードとギンガさんは逃げてていいよ。ソラが瓦礫とか受けるから」

「は……はい! 行くわよみんな!」

 ティアナの指示でフォワードとギンガさんが元来た道を戻っていく。

「ウタネは⁉︎あなたいても邪魔なんだけど⁉︎」

「ん? もう動くのしんどいから瓦礫受けるよ。後で掘り起こして。できれば解決後に」

「ふざけんなぁ! もう! そろそろ来るからどうなっても知らないよ!」

「うんー」

 地面の揺れは激しく、原因が近付いて来てる感じもする。真上から何か。

「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「うお⁉︎虫だ! オラァ!」

 上から巨大な虫が降ってきて、結構な速度だったけどソラは十分にリアクションしてから拳を振るう。

「……ん、ごめんウタネ、これ貫通するやつだ」

「……は?」

 ソラの拳は虫を支えて止めるのではなく、腹部を貫通して命を止めた。

 その残骸と崩れた瓦礫は容赦無く私とソラを叩き、心を折ってくる。あー、これでシオン関係無かったらマジで骨折り損じゃない? 

「よし、無事みたいだな。コイツの召喚者は上だ。姿を消したが、レリックがある以上まだ来るはずだ」

「ヴィータ副隊長!」

「はーろ。ヴィータ。私、下敷きなんだ。引っ張って」

「げっ、ウタネ……わりぃ。いくぞ、せえのっ!」

「よっと……さて、こんな虫を私に叩きつけた罪は重いね。ソラ、出てきなよ」

「んぃ!」

 巨大な虫はものの見事に吹き飛ばされ、闇の書みたいな色の魔法陣で消える。

「断罪の時間だよ。犯人は上かな? 捕まえに行こうか」

「お、おう……」

「じゃあ私が跳ぶ手間も省けたし、スバル、お願い!」

「ウイングロードッ!」

 よく見る移動経路作成魔法。それが螺旋を描いて上に伸びていき、虫の落ちてきた軌道に道を作る。

「ソラとヴィータが先行して。私とギンガさんが最後行く」

「もう引っ張りませんよ」

「えぇ……じゃあギンガさんも前で。フォワードはレリック落とさないでね」

「「「はい!」」」

「アタシが来た意味ねーな。まぁいい、行くぞ!」

 ソラとフォワードが走り出し、ヴィータは螺旋の真ん中を飛んでいく。

「まだ敵はいると思う?」

 結局残ったギンガさん。それを私に聞いても意味無いよ。何にも考えてないもの。

「レリックを狙ってるんでしょ? なら出てくるの待ってんじゃないかな」

 来ないで欲しいけどね。来てもこの戦力だからあっという間だと思うけど。

『ウタネー! はやくー! 捕まえたよー!』

「……マジで私いらないじゃん」

 穴の向こうからソラの声が響く。

 なんだ? 今さっき走り出したと思ったのは幻覚だったのかな。それとも本気で走った? 跳んだ? 

「さすがヴィーナス……!」

「あなたは少し冷静になって。そんな尊敬の目で見るもんじゃないから」

 基本的にはダメ人間の集まりだぞ。もうほとんどヒトのくくりに無いけど。

 取り敢えず上に上がる。

 犯人は小柄な女の子とさらに小柄な女の子? だった。薄い紫と赤かな。

「ずいぶん早かったね」

「なんか召喚術者? ってやつらしくて。速さもパワーも私が圧倒的だったよ」

「……でしょうね」

 ソラが淡々と言うけれど。普通の女の子とソラの運動能力を比べるのはあまりにかわいそうだ。アリは象に勝てない。

「とりあえず、市街地での危険魔法使用で逮捕だ」

「くっそー! はなせよー!」

「おー、喋るんだぁ」

 人形サイズの赤い子が元気いっぱいに叫ぶ。

「おー、ホントに人みたいだね」

「はなせ! 燃やすぞ!」

「んー、やってみなさーい?」

「くらえ! ……えぇ⁉︎」

「あぁ、ごめんね。私燃えないの」

 ほんとに燃やしてくるとは。服はちょっと焦げたけど。昔能力で補強した部位は傷付けられるもんなら付けてみろって感じ。

「……逮捕は、いいけど」

「ん?」

 だんまりだった紫の子が急に口を開く。

「……大事なヘリは、放っておいていいの?」

「「「⁉︎」」」

 ヘリの護衛はリインフォースが乗ってるのと、八神さんが向かってるらしい。

 ……放っておいてよくない? 

『ウタネちゃん! ヴィータ! 今どこや⁉︎』

 焦った様子の八神さんが用件のみの通信。そんなに切羽詰ってる? 

「はやて⁉︎今フォワードと合流して犯人らしきヤツを拘束してる」

『本命はヘリの子や! 高エネルギー砲撃が確認されてる! 私じゃ間に合わへん! 行けんか⁉︎』

「ヘリ⁉︎こっからじゃもう遠い! リインフォースは⁉︎」

『ヘリは何故か通信が繋がらへん! 妨害受けて気付いてないかもしれん!』

 シオンの計画か……? あの子とあの子が持っていたレリックが本命としても、襲う前に反応察知されるようなことをする……? 

「マジか……! ウタネ! どうにかならねーか⁉︎」

 能力と皇帝特権で空を走ってくにしても距離がありすぎる。更に言うならシオン相手の場合、単純に距離を詰めれば即発射くらいはするだろう。

 最後の手段も……シオン相手と仮定すると意味ないか。

「むりぽよ」

『しばくでホンマ!』




ギンカさんのタメ口?はちょっと難しかったのでウタネ達に対しては基本スバル達と同じだけど敬語も交えて丁寧め、という感じで。
ナンバーズも口調おかしいかもです。特にクアットロとドゥーエ。
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