無気力転生者で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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第84話 二人目 その③

「はーろ。どうしてくれんの。面倒起こしちゃってさ」

「んー、そもそも想定外なんだよな、色々と」

 

 上空から謎の重機を地面に叩きつけたシオンは、気が付けば音も無く私の隣に立っていた。

 

「例えばどんな?」

「まずこの状況。ミッションはギンガとスバル、ヴィヴィオを回収するだけ、って聞いてたんだが」

「あー、それでソラが六課戻ったんだ」

「ほー? アイツがそんな事するんだな。いつくらいだ?」

「ん、ついさっき走ってったよ。間に合うかな」

「無理だな。こっちの襲撃と同時の手筈だから走って迎撃となると80%はいる。絶対0%で行っただろ」

 

 女の子たちが態勢を立て直し、私たちを包囲するようにジリジリと広がる。

 一応鎌を出すと、同じタイミングでシオンが刀を出す。警戒には値しないんだろうけど、私のためかな。

 

「じゃー徒労かぁ……で? ギンガさんとスバルは?」

「ギンガは回収した。スバルはまぁ、本人の頑張りに免じてってトコだ」

「んー、その言い方は負けたかな?」

「負けてねぇ。そもそも能力で攻撃しきれねぇ。お前、なんかしたろ」

「うん? さぁ?」

「そうか。まぁいい。現状だよな」

「そーだね。他どうなってるかわかる?」

「なのはとオレンジはまだ中。出てきたりはしないと思う。ヴィータは空でゼストって奴とやってる。多分負ける。ザフィーラとシャマルは六課でオットーディードルーテシア。これも負ける。フェイトは……バインド? されてるな。リインフォースに。リインフォースはトーレとセッテ。他は全部本部内。今目の前いるのがチンク、ノーヴェ、ウェンディ、クアットロ、ディエチ。セインはウロチョロしてんな」

「なんて? 誰が誰? まぁいいけど……行動としてはどうすんの?」

「そうだな……こいつら回収して撤退、って形になるか」

「えー……こっち残らない?」

「どうも六課はオレを敵として見てるからなぁ……それに、お前が無関係なら会わずに帰るつもりだったんだぞ」

「やー、それは無理でしょー、だってあちらさん、私殺す気マンマンだよ?」

「そーなんだよな。ちゃんと言っといたのにな。アンリミテッドデザイアの頭脳も欲望には勝てんか。そりゃそうだ」

「なになに?」

「スカリエッティの異名っぽいやつ。無限の欲望。研究者たるもの好奇心旺盛に、だそうだ」

「だから勝算無くてもやっちゃった、って感じか」

「まーなぁ……オレより頭良いのは確実だしなぁ……で、どーするチンク。姉さんに手ぇ出すのは聞いてないぞ。ん?」

 

 まだ正面で動かない会話をしてくれてた女の子……チンクと言うらしい……はそれを受け、両手の指にクナイ? を挟んで構える。

 さてさて。協力者だったシオンにも問題無く敵対するのかな。

 

「ドクターの計画だ。この場で管理局を制圧し、フタガミウタネを始末する」

 

 制圧、って事は殺す気はあんまり無し。

 始末、って事は殺す気マンマン。

 ……なんで? 

 

「オレが最も許せん事だ。失敗したことにして帰れ。死ぬよりいいだろ」

「では言っておく。シオン。お前の能力の殆どに対応した我々だ。三人もいれば負けは無いという算出だ」

「はぁ……そんなバカか……」

 

 自信満々に能力を看破、対応したというチンクにシオンがため息をつく。

 攻略したって口ぶりの割に三人も使うとなると相当腕は買ってるみたいだけど。

 

「いいか? この『能力』に『殆ど』なんて概念は無いし、『対応する』なんて事ができるワケもねぇんだよ」

「お? そこまで言っちゃうってことは戻ってくる?」

「……んー……仕方ねぇか……? いやしかし……クソ、ギンガ渡してなきゃ戻って良かったんだが……まぁいい。被害はギンガだけだしな」

「どっちよ」

「仕方ねぇ、戻る。企みの半分が失敗ってことだしな」

「半分?」

「後で言う。忘れてなけりゃ」

「周りが問い詰めるでしょ」

「そりゃそうだ」

 

 現状から諦めが付いたのか素直に戻る気になってくれた様子。

 あとは現状の打開だけ。

 

「どーすんの?」

「ああ……って! 避けろ!」

「っ⁉︎」

 

 シオンが叫ぶ前に目の前に突然現れたクナイ。

 魔力放出で回避は試みるけど多分……間に合わない……! 

 

 ♢♢♢

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 必殺ぅぅぅ! 黄金衝撃(ゴールデン・スパーク)!」

「っ⁉︎」

 

 全力ダッシュから飛び上がりピッチリスーツの一人を殴り飛ばす。斧も雷も無いけどいいんだ! 気にするな! 誰殴ったんだ⁉︎オットーだ! ごめん! 

 

「くっそお。死んでないのか」

 

 六課、だったらしい場所は元の面影は無く、ただただ冬木を思わせる火災だけ。

 エリオくんとキャロちゃんも……倒れてるのが見えた。死んではなさそう。後回し。今はスーツ二人が問題だ。まぁ、双子なんだけど知らないフリ。

 

「君ら、死ぬか投降するか選ばせてあげる。誰か殺してんなら殺す」

 

 私がいる世界で殺しなんかしてみろ、殺すぞ。

 

「管理局……ですがもう終わりです」

「あん?」

 

 片方が殴り飛ばされたのに戦闘意思は見せず、撤退の準備までしてる。

 まぁ……二人と戦わなくていいならそれがいい。

 

「それでは。今回は私たちの勝利です」

「はぁ?」

 

 一発入れただけで撃退できてしまった。

 ガジェットが飛び交ってるけど今は攻撃してないし取り敢えず中の安否確認。

 

「やー、随分とやられてるねぇ」

 

 中とか言ってる場合じゃなかったよ。

 振り向いたらシャマルとザフィーラ、エリオとキャロが倒れてるじゃあありませんか。

 

「おーい、生きてるー? ごめんねー? せめて40%は出しとくんだったよー」

「……う……っ」

「んー、生きてるね。おっけー」

 

 流石に鍛えられたもんだ。

 まぁ重傷だけど死にはしなさそうだしほっとこ。問題はヴィヴィオなんだけど、さっきの撤退ぶりからしてもう連れてかれてるね。

 

「あああああああああ! 失敗したぁぁぁぁ!」

 

 戦わないで済んで良かったじゃねぇ! なに呑気してんだバカ! 

 ああああああああああああ! くそぉ! えっと! どうする⁉︎えーっとえーっと! 

 戻るか! 

 

「40%だ!」

 

 ♢♢♢

 

「はぁっ!」

「うん、実にいい! 単純な殴り合いという点もいいぞ!」

「く……コイツ……!」

「ほらほら、もっと来いよ。それでは子供たちは喜ばないぞ」

「何の話だ!」

「っと。いやなに、私の趣味だ……趣味ではないな?」

 

 空中、かつ超高速の中殴り合い、ブレードによる斬りつけ以外何もない格闘が5秒は行われていた。

 リインフォースが使用している能力は10秒が限度。

 ただでさえ負荷の多い連続の能力使用、その半分を遊びに使っていることになる。

 

「もう1人は……セッテと言ったかな? 使わないのか?」

「いらぬ心配だ。私だけで十分!」

「そうか? 守護騎士が落とされはしたもののなのはとフェイト、フォワードはそれぞれ動き、私達に至っては全員その気だぞ。シオンもお前たちに敵対するようだ。残念だったなぁ」

「ふん、元よりそれも想定内だ」

「いや、シオンの目的の方だ。うん、やっぱり私は理解できてなかったようだ。確かにそれは敵味方など言っている意味が無いな」

「……?」

「理解しなくていい。昨日までの私のように理解できないだろうからな。さて、タイムオーバーだ」

 

 リインフォースのベルトからカードが飛び出て消える。

 同時に加速も止まり、トーレの最後の一撃だけ受け距離を取るリインフォース。

 

「く……負荷も流石に……」

「どうした? 先ほどの偉そうな余裕は?」

「シオンの能力を得たのだろう? なら対等のはずだ」

「その苦しそうなお前を見てそういう人は少数だろう」

「ふふ……多分コレで最後だな。君たちは撤退する。だが私はそれを阻止できる」

「最後までするのか?」

「いいや。もう少し付き合ってもらおう。それで逃がしてやる」

「なに……?」

「ただでさえ法外なシオンの能力。違法の存在でもオリジナルと同じコピーが出来る訳なし。事実、クロックアップもリマジ版だな」

「リマジ……?」

「では採点だ」

 

 世界が止まる。

 生物は当然、物体、流体さえも動きを完全に停止する。

 

「ふむ。動けるのか。どうだ? 何秒動けそうだ?」

「……お前も、やはり同じ……!」

「ふむ……シオンと同じ3〜4秒くらいか。じゃあ次……」

 

 ナンバーズはその中でも問題なく活動する。しかし限界なのか4秒を数える寸前に動きが止まる。

 それを確認したリインフォースが九秒を待たず能力を切り替える。

 選んだのはキング・クリムゾン。世界の時間は消し飛び、リインフォースのみが世界を変える事ができる。

 リインフォースは二人の背後へ回り、攻撃動作をする事もなく十数秒を待った。

 

「……」

「うん。なんとなく、の範囲だが解ってはいるんだな。ふむふむ……何点がいい? 50はやる……まぁいいだろう。いいぞ、撤退で」

「……チンク達も撤退している。セッテ、撤退だ」

「はい。リインフォースと言いましたか。またお会いしましょう」

「ああ。その時はお前も能力を惜しまないことだ」

「それでは」

 

 二人が消えるのを確認するとリインフォースはふぅ、と息を吐き……そのまま落下する。

 

「リインフォース!」

「フェイトか。すまない」

 

 フェイトがソニックで抱え込む。

 

「なんで私を外したんですか!」

「ウタネがシオンの時に受けた命令だ。シオンには私が当たれと……そうでなければ勝ちは無いと。だから彼女たちにも少なからず危険を感じた。一応向こうに見えないようバインドしたつもりだったが」

「私にもすぐは分かりませんでした。まさかバリアジャケットの中なんて……」

「うん。なんかできた。エッチだろう?」

「呑気なこと言ってる場合ですか! 戻りますよ! ウタネと合流します!」

「うん、よろしく頼む」

 

 魔力装甲であるバリアジャケットの内部に魔法を侵入させる、という事は防御に関係なく生身を直接攻撃できるということであり、戦闘機人にも相応のダメージを見込める技術なのだが、リインフォースにその発想は無かった。

 

 ♢♢♢

 

「オレからやるべきだったと後悔するぞ」

 

 チンクの爆破で本部の外壁に飛ばされてた姉さん。

 爆破くらいで死ぬわけでもなし、心配はしてないが起き上がって来ないとこを見ると衝撃で気絶くらいはしてるか。

 

「危険分子の排除は当然」

「オレが敵対するとは思わなかったのか?」

「敵対しても些細な問題ということだ。夜天の管制人格もな」

「そーかよ。三人だったか、まぁいいが。お前ら十数人でオレ四人分と」

「そうだ。プライムに負荷は無い。対してお前は全て負荷がかかる」

 

 ……だから、オレが勝てないってか。

 コイツらだけじゃない、ナンバーズは全員楽観的上から目線。自分たちが一番強いと思ってる。

 

「ごめーん! 二人逃がしたぁぁぁぁぁ! ヴィヴィオも盗られたぁぁぁぁぁ!」

「チンク、お前らがもたもたするからバカが増えたじゃねぇか」

「うぉ⁉︎いっぱいいる⁉︎でシオン⁉︎」

 

 バカが叫びながら……見た感じ60%……走ってきた。

 

「喋るな煩い。逃がしたのはオットーとディードだな。ソラ、お前は姉さん拾って中の救助に回れ」

「え? こいつら潰すんじゃなくて?」

「潰すな。管理局に戻るにしても潰すのは困る」

「んーん……? まぁいいや。とりあえず収まるんだよね?」

「ああ」

「じゃーそれでいいよ! ばいばーい!」

 

 管理局が敵として見ていたオレの言葉をあっさり信用して走っていったソラ。

 オレ達はそんなもんなんだろうな。

 

「さて……」

「「「⁉︎」」」

 

 左目で万華鏡写輪眼……月詠を使用。

 ナンバーズ五人全員に幻術を見せる。内容は……能力の負荷の無いオレに四肢欠損するまで追われるもの。

 このくらいなら精神崩壊は起こさないだろうが戦意喪失くらいはするだろ。しなけりゃもう一度だ。

 

「どうだ? 退く気になったか? もう一回やるか?」

 

 いつまでも追われるとはいえ、現実世界では一瞬の出来事。

 十分に幻術を終え、その余韻に浸り終わっただろうタイミングで声をかける。

 幻術中、何故か時間が止まったり跳んだりしたが……リインフォースだろうな。

 

「……トーレたちも劣勢のようだ。ここは撤退する」

「それがいい」

 

 逃げるナンバーズを見送り、その後撤退していく小型ガジェット。

 この後は施設殲滅だが……オレが管理局戻るならそれも防いだ方がマシだな。

 

「リインフォース、オレだ」

『……シオンか』

「この後ガジェットによる殲滅作戦が行われる予定だ、動けるか?」

『私は無理だ。フェイトとなのは、ティアナがいける』

「ソラも動ける。オレ入れた五人でなんとかガジェット殲滅すんぞ」

『シオン⁉︎どういうつもり⁉︎エリオとキャロは⁉︎』

「知るかよ、どう動かした?」

『六課に戻らせ……あっ!』

「落ち着けよ、もう撤退した後だ。居場所バラしても追撃はしねぇよ。六課か。ソラが一人で戻ってきたから撃墜されただけで死んではいねぇよ」

『……』

「ともかく言った通りだ。大型のやつから潰していけ」

『わかった。なのは達には私が連絡する。シオンは後で拘束するからね!』

「おう」

 

 やっぱ……管理局ってガラじゃねぇなオレな。

 時間止めたり飛ばしたり……リインフォースも無理するな……

 さて……事を終わらせるかね。

 

 ♢♢♢

 

『ミッドチルダ地上の管理局員諸君……気に入ってくれたかい?』

 

 ナンバーズ撤退後、シオンとソラによって本部を覆っていたガジェットの半数が破壊された頃、本部にいた局員に向けてモニターが開かれた。

 紫の長髪に白衣を着て傲慢に振る舞う男。ジェイル・スカリエッティ。

 

『ささやかながらこれは私からのプレゼントだ』

 

 何一つ悪びれる事はなく、嬉々として演説を行うスカリエッティ。

 

『治安維持だの、ロストロギア規制だのと言った名目の元に圧迫され、正しい技術の進化を促進したにも関わらず、罪に問われた稀代の技術者達……今日のプレゼントはその恨みの一撃とでも思ってくれたまえ!』

 

 現在の管理局を全否定する言い分はシオンに近いものがあり、手を組んだのも分からなくもない言葉だった。

 

『しかし私もまた、人間を、命を愛する者だ。無駄な血を流さぬよう努力はしたよ……可能な限り無血に人道的に、忌むべき敵を一方的に制圧できる技術。それは十分に証明できたと思う』

 

 事実、重傷を負ったのは外で迎撃していた守護騎士とフォワード三名、六課に残っていたロングアーチスタッフの数名。

 本部ではAMFの高域多重展開により戦闘すらあまり起こっていない。

 

『今日はここまでにしておくとしよう。この素晴らしき力と技術が必要ならば、いつでも私宛に依頼をくれたまえ。格別の条件でお譲りする……ふふふははははは、はははははははははは!』

 

 勝ち誇るように高笑いするスカリエッティ。

 はやてを始め、局員の多くがそれを睨みつけ悔しさを表す。

 

「予言は……覆らなかった……」

「まだや……まだ機動六課とヴィーナスは死んでない」

 

 六課の頭、はやての心はまだ死んでいない。

 反撃の狼煙は、すぐに上げられた。




シオンがラスボスないし中ボス予定だったのに何故か六課に戻ろうとしてしまったので今後少し更新が途絶えるかもしれません。
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