「多数の力を一人で押し退けられるのなんて……生まれる世界を、間違えたのかも……」
「にゃははは……ほんとにごめんなさい……」
高町さんがなんとも言えない笑いを浮かべて謝っている。
いいんだ……所詮私はマイノリティ、弱者なんだ……なんだよぅ、空間固定してるのに突き進んで来るとかよぅ……母は能力無視(暫定)、兄はフィジカル全般、姉はーー?父はーー?想像するだけで背筋が凍る。魔術も無しに埋葬機関と同等の戦力を有していたら……私は平和に暮らせない……くそっ、やりたくなかったけど……
「〜〜♪」
高町さんに断って、少し離れた物陰で電話をかける。
すると相手は望んだ通り、すぐに出てくれた。
《なんだ?というか番号どうした?》
「ようクソショタロリコン。ちょっと高町家について聞きたいんだけども。番号は皇帝特権でやった」
《高町家だぁ?皇帝特権ご都合過ぎるな》
「アレ本当に元々いる人間?私が来たことによる改変とかそんな感じ?皇帝特権については私も持て余しそうだよ」
《高町家は元々いるやつらだ。改変はされてないが、それでも元と多少は差が出るだろ。パラレルワールド的な感じだ》
「つまり元々アレに近いのか……わかったじゃあね」
《まっ……》
ふぅ〜……スッキリした。
つまり高町家は元の世界でも大体あんなレベルの強さを持ってて、平然と生活してると……クソが。あんなのが一般だと?普通だと?私の能力すら珍しいで済む程度のものだと?
「……帰って寝よう。分からない事は分からないままでいい事もある」
というかそもそも頭使うの苦手だからね。苦手というか嫌いというか好きじゃないというか……まあニュアンスだけでも伝われ。
「さて……今の内に逃げ出すか……」
《ウタネ。逃げようとしているところ悪いんだが、目的を忘れてないか?》
脱出経路を探していると、それを止める様に念話が聞こえた。
「なんだっけ。桃子さんに遊ばれる?」
《違う。少し話がしたいと言っただろう》
「少し口調厳しくない?」
《あ、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。とにかく、なのはの部屋に来てくれ》
「……わかった」
話がしたいなんて言ってたっけ……?全然覚えてないや。
「……で、なんだっけ」
高町さんに桃子さん達を押さえ込んで貰って、その隙に部屋に入って鍵をかけた。
「うん、なのはの特訓を見ての事なんだけど」
「また私の昔の話?話す気無いしそもそもあんまり覚えてないよ」
「いや、もうそれはいい。僕もなのはも君を信用する事にしたから」
「ふーん、へんなの」
「僕らに対し殺意があっても管理局に追われるような犯罪者じゃないと思ってる。まぁそれはいいんだ。それで、なのはに接近戦を教えてどうするつもり?」
殺意がある相手を一対一で部屋に入れるのもどうかと思うけども。
「どうするって?」
取り敢えずユーノに向き合う様に腰を下ろす。
「なのはの資質ではフェイトに対抗できる程になるとは思えない。それよりは砲撃に集中して伸ばすべきだと思う」
「うん……資質で言うならそうだろうね。でも高町さんのしたい事はそうじゃないでしょ?」
「え?」
「君の助けになる事、自分の力で誰かを守る事。強くなるだけ、敵を倒すだけなら砲撃だけでいい。ひたすら自分の有利に立ち回って、砲撃してればいい。でもそれでは守れない。普通、一人の人間は何か一つしか極められない。なら、したい事をできるようにした方が楽でしょ?」
ーー『才能だけに従う人間は、機械と何も変わらない』そんな事を言われてた人がいたとか聞いた事がある。
私は別にそれが悪いとは思わない。だが世界はそれを良しとしない。したい事を優先するという非効率極まりない理屈で動いている。私はそれが許せなくてーー
「ウタネ?」
「あっ?あ、ごめん、というわけだから、フェイト戦においては設置型バインドが有用だよね」
「ごめんまた話が跳んでるよ。僕じゃわからない」
ユーノが呆れた表情をしている。
あれ、またどっか説明抜けちゃったかな。
「なのはに出来る事じゃなく、やりたい事をさせるって話まで戻ってよ」
「んー、あ、そうだね。まぁそれは本人だけで考えるものだし、気にしなくていい。高町さんがしたい事を尊重する、ってだけの話だよ」
「そっか……あと一つ。昔の事は聞かないって言ったばかりだけど、やっぱり気になる。現時点では断定できないけど、魔力もフィジカルもなのはが圧倒的な筈なのに、実践ではウタネの方が圧倒的だ。それが分からない」
ユーノは私の曖昧な説明に納得し、新たな……何度か行っている問いを投げてくる。
「確かに私は、フィジカルだとほぼ全ての人間に劣っている。けど……私は強い。それだけだよ」
「……」
もう話す事はないとユーノに背を向け、ドアを開ける。
「どんなにスペックが高くても、必ず予兆と死角はある。誰かにできるなら、私にもできるはず」
同じ人間で差ができるのならば、それは知識や経験によるものだ。それらは再現できない筈は無いし、超えられない筈もない。以前なら特定分野にしか使えない私の理論だけど、皇帝特権を得た今では全てにそれを応用できる。
「やるやらないは勝手だけど、やらなかった人間には可能性すらない。高町さんは進んでやってる。あなたも、
「え⁉︎」
「回復したんなら、せめて魔法関係の時だけでも戻った方が助けになるよ。じゃあね」
「待って!君はどこまで把握してる⁉︎何故僕の事を⁉︎」
普段の平静を失い、私に追いすがる。
「別に何も知らないしわざわざ調べる気も無いよ。ただ見たところ、生まれもった身体じゃないなとは思ってた。もう長いから帰るよ」
私は桃子さん以外に礼を言って、図書館へ向かった。
ユーノ君の口調忘れた……ワスレタワスレタ