無気力転生者で暇つぶし   作:プラスマイナス裏表

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どこかで言ってたソラの象名を保護から抑止に変更してます。おおよそ物語にも設定にも影響は無いです。


第88話 能力談義 その②

 話し方がある。

 その種類は様々だ。話し方一つで内容が伝わり易くなったり伝わりにくくなったり。重く感じられたりなんでもない軽い話に聞こえたり。

 例えば『ソレ』を説明するのについて、『背が高く反対側から向き合っており、三つの目があり平行線を見つめ続け、互いが交わることはなく、ある時間毎にその目を閉じたり開けたりしている。人々はその目を常に伺いながら日々を過ごしている』……というのか、『信号機』というのかだけでも違う。

 今回のシオンの話は、投資活動をして全財産を失ったと言うか、パチンコで負けたと言うかの差で後者だった。

 

「いつぞや説明した能力だがな、ちょっと勘違いしてたからそれ正しに」

 

 私達の能力はそれぞれが違うものでありながら私達以外には実際止められない。

 信頼を得るためにも以前に話したため、クロノは心労が堪えるのか頭を抱えた。

 

「……まぁ、いいだろう。今回話すのは間違いなく正しい説明なんだな?」

「ああ。オレもバカじゃない。なのはが墜ちてから能力について試し続けたからな」

「試し続けた……? 負荷は? そんな高頻度で使えるものではないだろう」

「そう思うか?」

「なに?」

「確かに能力を使えば負荷はかかる。これが嘘じゃないのはアインスを見れば分かるはずだ。だが、負荷をどうにもできないとは言ってない」

「「……は?」」

「治癒魔法は効かないんじゃなかったのか⁉︎」

「魔法はな。単に傷を治すだけじゃ無駄だ。だが概念的に治す能力もある。あらゆる能力を精査すればそういう能力は十分に」

「……つまり」

「能力負荷を取り除けるだけの余裕を残せれば負荷はオレが苦痛を感じるだけのものに成り下がるという事だ。コレはスカリエッティ達には隠してる事実だ。オレとアインスには制限があると思わせておいて損は無い」

 

 シオンからすればついでの話なんだろうけど、私とクロノからすればそれはそれは大きな……今までの認識が全く変わる衝撃だ。

 いつから……隠すと決めたのかは知らないけど。思えばそう言った節はあった。シオンが能力負荷で倒れたのは一度だけ、能力使用から倒れるまで常に私がいた模擬戦の時だ。他は使用後、一人になる時間が必ずあった……

 

「全く……君には驚かされてばかりだ。どんな環境で育てばそこまで先が見える」

「お前が見てた環境通りだよ」

「ん、でもそうだよね。私もあんまり言わなかったけどそんな広く視野持ってはなかったような……?」

「それを姉さんが言うのか。まぁな、あくまで一般人のオレが急に戦慣れするわけ無い。これも能力。戦争だのしてる世界の経験をちょっと見せてもらっただけだ」

「えぇ……ズルくない?」

「ズルくない。むしろそんだけやったのに同列にいる元一般人のなのははどうなんだ」

「戦闘民族タカマチ人は私にも理解できないから……」

 

 能力や思想はともかく、暮らしてたのは文明社会。タカマチ以外の道場剣術を多少修めた程度の私が魔法ありきの世界にすぐ馴染むのもおかしな話だ。

 それを私はなのはと同じ時間によって、シオンは能力を使って馴染ませたわけだ。

 

「ま、そんなのはどうでもいい。黙っててもいつか誰かが見ただろうしな。でだ、話すのは姉さんも気にしてた『異世界』について」

「確か、僕たちの世界で漫画やアニメの中といった具合のこの世界とは別の概念などがある世界だな?」

「ああ。オレらのいう魔術もその一つ。ロストロギアと聖遺物が近い概念だ」

「それのどこが勘違いなんだ?」

「異世界は異世界なんだが、オレのはオレの異世界らしい」

「「???」」

 

 漫画の異世界は分かる。ロストロギアと聖遺物も分かる。聖遺物は過去の偉人等が遺した物品。主に触媒として使用されるし宝具そのものである場合もある。

 けれども、シオンの異世界とは? 

 

「どーゆうこと?」

「オレの素の能力分かるだろ、鏡じゃないやつ」

「未来視でしょ?」

 

 シオンの問いの意味は分からないけど、能力はよく知ってるままを答える。

 シオンはそう、と少し嬉しそうにして話を続けた。

 

「コレはアインスの能力で言うところの魔王の眼(ベリアルアイ)ってやつになる。視るのは一人だけの方が楽なんだが」

「……うん、で?」

「この鏡はオレのその素の能力だったかもしれない世界のオレを引っ張ってきてるってことだ」

「?????」

「ウタネ、君がそう不思議な顔をしないでくれ。僕がしたいくらいだ」

「まー、異世界って言い方が悪かったな。オレが生まれる瞬間から無数に存在した『シオンという存在を観測する並行世界』って感じだな」

「えっと……もっと分かりやすく……」

「姉さんがオレを作るだろ? けどオレの能力は別に未来視である必要はなかったよな?」

「うん……まぁ、そうだね?」

 

 シオンが生まれた時……って正確にいつだったか覚えてないしな……気が付いたらいたようなもんだし。能力だってそう選べるもんじゃない……よね? 

 

「つまり、例えば時間を止める能力だったかもしれなかったって事だ。分かるか?」

「えーっと……シオンは別の能力を持ったシオンが……?」

「別の能力を持っていたかもしれない並行世界があり、シオンの能力はその世界のシオンから能力を借りて使っている。負荷はその利子とでも言ったところか」

「おー、そんな感じだ。流石だな」

「おーすごーい。一切合切分かんないけども」

「二つまで、というのも貸出上限という感じで見ていいのか?」

「ああ。シオンとして世界に認識されるウタネとシオンの二人分だけ」

「リインフォースはどうなんだ?」

「アイツはマジで漫画とかの異世界だよ。二つなのは多分元々この能力自体もそういうもんなんだと思う」

「なんで分けたんだろ」

「さぁ? 強いて言うなら気を使ったんだろうが……それはそれで癪だな」

 

 あのロリコンが私達に気を使う……? あ、いやでもアレだ、最初の方は割と手助けしてくれてた気がする。その辺なんなんだろう。

 

「まぁ、そんなトコだ。で、アインスの時ちょっと言ったがこの能力は使う奴次第で適性がある。アインスはキングストーンの様にその元の個人しか持てないような唯一性、もしくは既に死んでいるような者の能力に適性がある。オレはオレが未来視持ちって事で目に関する能力に適性がある。直死やらがそんな感じだ。理解したか?」

「……大体はな。他の能力を持つ並行世界のシオンと能力の貸し借りをする能力、か。お前から並行世界へ貸したりはしないのか?」

「基本無理だな。並行世界の奴らは相応の能力持ちだし、鏡の能力を持つのはこのオレだけだ。貸しっても向こうが使えなくなるわけじゃない。鏡が映したコピーをオレが使うだけだ」

「なるほど。未来視を持っていても他のシオンが鏡を持たなければ貸せないと」

「ま、そういう感じだ。姉さんはどうだ? 納得できたか?」

 

 シオンが生まれたことで未来視以外の能力を持つシオンが生まれた並行世界が生まれ、それら並行世界のシオンの能力をロリコンに特典として貰った鏡で映し、そのコピーを一時的に使用することができるのがシオンの能力……特典か。

 

「仕組みは理解したよ。けどそれは、この世界だけだよね?」

「いいや。もうオレの能力は並行世界と繋がったことで世界にはオレとして認識されてる。次でもこれはオレの能力としてこのままだ」

「えぇ……」

「次? なんの話だ?」

「いや、関係無い話だ。強いて言うならオレ達VNAの話」

「……隠したいこと、か。良いだろう。管理局及び事件には関わりの無いものと思っておく」

「おう。じゃ、オレが言いたかったのはこれで終わりだ。他なにか聞くことは?」

「ん、私はもういいや。クロノは?」

「そうだな……今思い付くのは二つ。写輪眼と戦闘機人だ」

「戦闘機人はオレ以上に詳しいのがいるだろうよ。あの二人の親とか。プライムも上位能力の付与ってだけだしな。写輪眼……はオレが止めさせた理由か。姉さんも一応見とけ。コレが写輪眼と言って勾玉が最大三つまで浮かぶ基本的な眼だ。能力は洞察力、見切り、動体視力。次、万華鏡写輪眼。写輪眼の上位種で、それぞれ固有の能力が発現する。この模様は月詠。他にも色々模様と能力がある。発動条件が多少違うくらい……だが、そんなのはどうでもいい。お前が知りたいのは無限月詠だ」

「無限……つくよみ」

「写輪眼の最上位、輪廻写輪眼を月に投影する事でこの世全てを幻術にかける。どんなものかは……オレが言っていいのか分からんが、『生と死の狭間の夢』だ。全ての生物は死ぬまで理想の夢を見させ続けられる。姉さんやソラは嫌うだろうがオレはこれもアリだと思う」

 

 楽しいだけの世界かー……私はお断りだな。そんな楽しいだけに命を使い切るなら無くていい命だ。興味無いな……

 ソラは当然止めるだろうね。一人による全生命の掌握なんて許すはず無い。

 ……興味無いだけってのが問題なんだけどね。私達の中で、私だけが理想の世界を持たない。私の方針は全てを他者に任せるものだ。自分がどうしようというものじゃない。ただその場その場で動いて終わりだ。この世界に干渉しない、そうしようとしたのも束の間。本来なら死んでる人が生き残り、夜天の書は私の手に、スカリエッティはシオンの力を借りた……理想は、なんだろうね……

 

「まぁ……それは別にいいや。でさ、右目? 聞いていい?」

「僕も触れないようにしてたんだが。聞いていいのか?」

「ん……まぁ……切り札?」

「もうちょっと具体的に教えてよ。疑っちゃうぞ?」

「疑う気なんて微塵もねぇくせに……この眼は瞳術。言うことは……ねぇな」

「ある! 効果! 発動条件! 縫い込んでる理由!」

「姉さんが騒ぐの珍しいな。えー、効果は敵を殺す。発動条件はオレに敵意を持つ人間が目を見る。縫い込んでるのは死体仕掛けもあるがお前らに見せないため」

「僕らに……?」

「ああ。信頼のためには見せればいいんだが、スカリエッティと組んでたのは事実。管理局を襲撃しギンガを拐った。事実フォワードは当然ヴォルケンリッターも少なからず敵意はあった。だから見せられない。敵意ってのは理性じゃ抑えられんからな。ムカついて我慢するのは簡単だがムカつかないようにするのは無理だろ? 姉さんは……違うが……」

「私だって許容範囲はあるよ?」

「当然刺されたら」

「死ねてラッキーだし今の私だと全身ほとんど刺さらない」

「欠点を的確に突かれて煽り散らかされたら」

「欠点は特に無いし無視」

「……そういうトコだぞ」

「はぁ?」

「とにかく、少しでも敵意がある状態でこの目を見ると自傷に走るから開けられん。コレはオレがどうしようもなくなったら開ける。開ける予定は無い」

「そうか……分かった」

 

 簡単に言うと見たら死ぬ目らしい。無敵か? 

 欠点無いってのはシオンといたらの話ね。私個人はそうでもないよ。

 

「あとクロノ」

「ん?」

「もうちょっと六課のメンツどうにかならなかったのか? 全線が男一人じゃ色々苦労すんだろ。その辺気ぃ配れよ」

「や……返す言葉もないがメンバーは殆どはやてが決めたものだ。はやてに言ってくれ」

「やっぱ七光の女はダメだな。ロクなもんじゃねぇ」

「……シオン、相変わらずだがその偏見と敵意に満ちた言動はやめた方がいい。全世界の女性に殺されるぞ」

「全世界の女如きがオレを殺せると思わないことだな。それに偏見ってのはな、ある程度理由があるんだぞ。オレは偏見で遊んでるが」

「遊びで敵を作るな」

「さっき言った七光りと女ってのはな、まぁはやての七光りはちょっと特殊ってか闇の書に選ばれただけってことなんだが、親の権力と財産で生きてきた人間は相応に甘やかされそれを常識としてる。それは世間から見れば異常だ。女もレディファースト、弱者ってイメージから法的権力を高めて配慮を強要する。これも異常。障害者も障害だからと配慮され、合わせてもらうのが当たり前と思ってる。美男美女はもてはやされ自分本位、ブスは貶され卑屈。そういう偏見は実態がある。だからオレはそうやって言うだけだ。まぁ……あの三バカはそれに当てはまらないが」

 

 八神さんの七光り……歩くロストロギアって異名は夜天の書ありきなんだけど持ち主が私だからね……才能だけでああなったのはすごいと思うけど。

 それに前線メンバー美人しかいないしね。奇跡的に高いレベルで平等が実現してる。

 

「お前も女顔の美人に該当するんだが?」

「だから自分本位で動いてるだろ」

「……開き直られると言葉が無い」

「セクハラオヤジとメンヘラヒス女よりマシだろ。まともに会話できてるから」

「そうだな。意思疎通できる事は大事だし助かってる」

「十数年住んでる国の言語も読めねぇし話せねぇし理解できないゴミもいるからな。暴走した姉さんとか」

「ヒドっ……」

「酷くねぇだろ。方言なまりを集約したのと同じくらい何言ってるか分からんぞ」

「方言ダメなの?」

「ダメだろ。分かるけど伝わらん事の方が多いだろ。接続詞と語尾が違うと文はメチャクチャになるんだぞ?」

「せやかてシオン! 八神さんなまら関西弁っぽい喋り方ばしよるっちゃばい!」

「……せやかてしか関西要素無いぞ。西生まれか?」

「西? 東じゃなかったっけ」

「……ん? オレらってか姉さん、生まれ何処だ?」

「……えへへ、分かんない」

 

 どこだっけ……日本だったのは覚えてるんだけど……ん? あれ? 

 

「ソラが同郷って言ってたしソラに聞く?」

「は? アイツが同郷?」

「やっぱり知らないの?」

「アイツが言ってたのか?」

「うん。覚えてないらしいけど」

「……クロノ、客観的にどう思う」

「どうも何も頭がどうかしてるんじゃないか?」

「だよな。まぁ頭がどうかしてるからオレがいるんだが。ま、生まれはどうでもいいな」

「海鳴じゃないのか?」

「それだけは絶対に無い」

「言い切れるのか?」

「……まぁな。それだけは絶対に無いことだけはな」

 

 海鳴なんて地名無いしねー。

 どうやら日本の首都圏あたりに存在してるらしいことくらいしか調べなかったよ結局。こんどロリコンに連絡ついたら聞いてみるか。

 ソラも私も覚えてない、頼みのシオンも知らない。じゃあもう知らないでアンサーにするしかない。

 

「じゃあ僕はもういい……いや、もう一つ」

「ん?」

「……なのはとは話したか?」

 

 クロノの少し責めるような視線と語気。

 聞いた話ではなのはの過労もシオンの油断も仕方ないこと。どっちも悪くない。悪いとしても両方。なのはが過労になるほど訓練しなければシオンは保護下に置き続けただろうし、シオンが油断してなければ過労だとしてもなのはを守り続けることは十分可能だったはずだ。

 キツく言うなら、シオンが他人を物同然に扱っていた以前なら……なのはが重傷を負うことはなかった。そうならなかったのは、なのはが物扱いを超えるほど成長してしまったせい。

 シオンは神妙な顔つきになり、低い声で返す。

 

「まだだ。この後……夜と言っていたから数時間空くだろうが……ちゃんと話す。最悪ならソラを押し切ってでも治す」

「なのはは万全だ。お前が気に病む必要はない」

「……病んでるわけではない。できたはずの過去の清算をするだけだ。人として、姉さんとの約束は破らない。あの場にいた誰であろうと、死ぬことを許さない」

「なんの話だ? ウタネ……シオンの言う約束はなんなんだ?」

「……」

「クロノ、時間取って悪かった。また埋め合わせる」

「ああ……何を企んでいるか知らないが、後悔しないようにな」

「何も企んでなどいない……この事件とて、ついでに過ぎない」

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