アースラの調整が完了し、移ったはいいものの未だ局員の半数が現場に復帰できないでいる状況、動こうにも気軽に動けるわけもなく。
今はただただ、この面倒な状況に追い込んだ忌まわしい船の通路の窓にもたれかかって虚無を見ていた。
「はー……」
「虚無みたいな目してどしたの。まだ気が乗らない?」
ゲンヤさんの話から数日、八神さんたち機動六課とシオンが色々作戦だったりを話している。私とソラはシオンに戦力として投入されるまではお役御免。そもそも話分かんないしソラは未来干渉がーとかで逃げた。
「乗るわけないでしょ。私は今回せっかくなら普通の暮らしってのをしたかったんだ。それがジュエルシード、闇の書と巻き込まれて今がコレだ。そんな事件起こしても意味なんてないのに」
ジュエルシード、闇の書、レリック、戦闘機人。
この十年で私の力量など変わってはいない。しかしどれも私達の一人にすら及ばない出来事。ソラがいなければ私とシオンで軽々解決できるし、私がいなければソラが単独で終わらせてる。両方がいないなら、それは元の正しい物語通り解決するんだろう。
あのロリコン以外に転生されたんだったらよかったな……と思ってたけどどの神もあんな感じらしいし……
「意味はあるよー、どれも個人や世界の水準の成長に必要だったでしょ。ジュエルシード無かったらなのははあんなになってないよ?」
「ならなくてよかったよ。タカマチが本当に恐ろしいのはその身体能力と剣術だから」
「まるで高町がトラウマのようじゃん」
「……私の箭疾歩を物理で解決したり直感でやっとガードが間に合うパワーとスピードだったり。生身の人間相手に困るとは思わなかったよ、全く」
私の力量は変わってないが向こうはタカマチだ。なのは以上の驚異的成長率で進化を遂げていることだろう。お兄さんは竹刀の突きで人体貫通してそうだな今頃な。
「高町家、私あんまり知らないんだよねー、この事件終わって帰る前にちょっとお邪魔しようかな」
「ん、帰るの? カルデア?」
「うん。私がいた時間までいるのはなんか違うし、あれはそんな事件とか起こらないし。えっちゃんに会いたいし」
「令呪あるなら喚べばいいのに」
「うんー、それもいいけどね。触媒足りないしこの世界にセイバーいないからもしかしたらえっちゃんが怪我するかもだし」
「触媒なんてあったっけ」
「無限の和菓子」
「むりでわ……?」
「やー、一応部屋に魔法陣描いて埋め尽くすくらい和菓子押し込んだら喚べるよ。ま、今となっては声かけるだけで来てくれるかもだし!」
「それはちょっと聖杯戦争のシステムから外れてない?」
「や……カルデア自体が聖杯戦争とは言い難い召喚システムだし」
「ふーん……」
確かぐだのサーヴァント? だっけ。あの子の盾から召喚するんだよね。
まぁあそこのは戦争って縛りでも無いしアリっちゃアリ、かな……?
「ま、いいじゃん! 別に事件の結末とかが変わんないならガイア的にはいいんだからさ!」
「その割に過程の修正をちょくちょくするよね」
「アラヤ的にはそれも役割だし……」
「あなた、私達の中でも特筆してクレイジーね」
「四象の人に言われたかないけど……」
「師匠?」
「四象! 両儀の次に根源に近いの!」
「……両儀ってシオンが憧れてるアレだよね、そんな近いものとは……」
「あ……知らないのも無理ないか。双神詩音じゃないしな……」
「だからさ、それダレなの」
「あなた。正確に言うと私と同郷のあなた」
「……知らない」
「でしょうね、起きてたのはあなたからしたら未来だし。見たところよっぽど条件が無いと起きないよ。チンク達がこの世界でどれほどかは知らないけど」
起きない……っていうのは……私が起きてる限り出ないってことかな?
ソラは若干諦めてる風だし、その未来とやらは私をかなり追い込んだようだ。
「おい、暇つぶしにオレ達の話すんのやめろよな。誰かに聞かれたらどうする」
「シオン」
「ホラ、お前らも一応コレ持っとけ」
「ん……カートリッジ?」
話は終わったのか部屋から出てきたシオンがカートリッジをマガジンごと投げて寄越す。
「作ったのは一応姉さんだからな。オレが選んだカートリッジだけ入ってる」
「選んだ……って、カートリッジは全部一緒じゃないの?」
「いいや。数が少ないのもあって今まで奇跡的に使われて無かったが……そのカートリッジを使うとスターライトブレイカーが撃てる」
「ん……もう一回」
「そのカートリッジをロードすると即スターライトブレイカーが撃てる」
「……もう一度」
「カートリッジロードと同時に収束が終わり自由意志で即全力全壊」
「……ナニソレ」
「姉さんの作ったカートリッジだぞ。技術的なレベルはロストロギアと同等だ」
シオンの説明を聞いた瞬間から手に持つソレが知っているモノでは無くなってしまった。
スターライトブレイカー。全力全開手加減無し。才能で殴るような力技の終着点。そんなシロモノをこのカートリッジがそれぞれロードだけで撃てる……? そんなものどう作ったんだ……皇帝特権か? いやでも……モンブラン作れるならギリいけるか?
さしずめモンブランカートリッジ……いや、なんか緊張感が崩れるな。特製カートリッジ?
「あとコレ」
次にシオンが寄越したのは謎の機械部品。
形状的にはマガジンの上? に……挿入するデバイス側の部分だけの様なもの。そんなに重くない。
「ソレをマガジンに付けてマガジン握って、ソレのボタン押せばロードできる。当然デバイスじゃねぇから魔力保持は無理だが、そのカートリッジだとそれもまぁ気にならんだろ」
「それはいいんだけど。言っちゃ悪いけど私達がスターライトブレイカーなんかに頼る場面来る? 私パーセント次第で全くいらないよ?」
「お前は遠距離無いだろ」
「あるよ?」
「聖剣とか無しだぞ」
「カマイタチ」
「……一応聞いとく。何%から?」
「んー、頑張れば60でもいけるけど基本80かな」
「……そうかよ。ま、たしかに頼る部分は無いと思うが。狼煙的な使い方もできるからな。結界破りにもなる。お前らが対応できない部分の穴埋めってトコだ」
「お前ら、ってことはみんなにも?」
「ああ。六課の戦闘部隊……ま、主要キャラには渡した。原作のマッチングじゃどうあっても勝てん」
「原作かー、今さらだけどこれ、どうなの?」
「どうって何だよ……言っとくが修正は無理だぞ。やるなら10年戻ってアインス殺すとこからだな」
「えー、せっかく助けたのに」
「だから無理だってのに。10年も時間干渉しようもんならオレがどうなるか分からんしな」
「じゃあ今のこと聞くよ? どうなの?」
「原作とは大きくもないがかなり外れてる。が、六課がダメージを受けアースラに手を出すこと、ギンガとヴィヴィオが回収されるのは正解だ。後の始末……最も大きな相違点であるスカリエッティと戦闘機人ナンバーズ。アイツらはオレ達が始末する」
「ねぇねぇ? そういえばどこまでやるかって話どうしたっけ」
「お前は60まで、姉さんは……どうする? 2?」
そういえば制限の話してなかった……どうしよ。
「2……でもいいけど、どうなの? 闇の書が確か……3? だったかな」
「オレの能力を使いこなせない前提の予想だったしな。まぁ、戦闘機人相手に2は十分だろ。場合によっては3もいいかもな」
「おっけー、2までで。シオンは?」
「オレなぁ……お前らと違ってパーセントじゃねぇから難しい。そうだな、戦闘機人一機あたり二つまで、にするか。二対一なら四つ」
「能力名とかは?」
「出してもいいが……対面してどうするか決める気だからな……全てを終わらせるならキンクリ神威だけでいいが」
「時間跳ばしとすり抜けだっけ」
「正確には時空間。ま、どうでもいい。神威で自空間に引き込んで終わらせるか」
「それは許されないかもー」
「だよな。だから正面から潰す」
「じゃーどうするの? 能力ー」
「適度な加減でいいだろ。アインスとオレは比較的規模が小さいからな」
「お、なんや。ヴィーナスもカートリッジ持つん?」
丁度? 魔法関連ないし管理局に話せる話題の時に八神さんとリインフォース二人(?)が来た。
「……アインスにもさっき渡したろ。分かれよ」
「あ……いや、アインスってほら、私ん家の子って感じ強くてヴィーナスって感じやなかってん。ごめんな」
「いや、それでいいんだが。アインス、スターズ二人にも渡したか?」
「ああ……一発ずつ、マガジンとは別で用意した……が、本当に良かったのか? スバルもティアナも……あのクロックアップの奴と同じレベルと戦うには……正直……」
「ヤツらの望みだ。好きにさせてやれ。それに、お前なら助けようと思えばできるだろ」
「身体的にはな。精神的ダメージは私では無理だ」
「それこそ知ったこっちゃねぇだろ。洗脳でもすんのか?」
「しない。そういう相手の自由意志を変えるのはよほど切羽詰まった時だけだ。フォワードがどうなろうと私に直接影響があるわけではないからな」
切羽詰まるとやっちゃうのか……あ、闇の書を私に移す時そういうのしたらしいし……そういう系統かな。
「だろ。だからお前ははやての心配だけしてろ。お前らでガジェットの大半を抑えてもらうつもりだからな」
「10万ずつおんねやろ……私らだけでいけるかなぁ?」
「いくらAMFでも限界はある。お前とアインスの魔力量なら潰せるし、お前がダメならアインスが能力を使えばいい」
「やから! 能力使うんがダメや言うてんのに」
「ならそうならないようお前が踏ん張れ。管理局の敵はどんな手段を使っても潰す……クロノならそう言うぞ」
「かなぁ……クロノくんはシオンと違うて人情派やと思うで?」
「そうか? 闇の書解決の為にはお前も殺そうとしてたくらいだが」
「そうなん? んー、まぁでも、解決するんならええかなぁ。転生させるんなら止めるけど」
シオンは同一視しているけど、クロノの法の番人としての意識はシオンの私を守るという意識とは全く別だ。
クロノが多くの、本当に多数の一般人を守るためにただ一人、ただ数人の者を逮捕、殺害しようとするのに対し、シオンは私という個人のためだけに巨大な組織を、群衆を、世界すべてを殺しても良いと考えている。私のこともあって殺害では無く調和という方針ではあるものの、必要とあれば殺す……まったく、全くの別物。
他人から見れば、特にこう言った事件でしかその思想は見られない。そしてそれはクロノもシオンもスカリエッティを殺す、と言う点で一致している。だから、他人には見えない。そうやって信用を置く人物が、常に殺意を隠そうと必死になっているのを。
「さて。はやて。そろそろ動かないとな」
「ん?」
「アインヘリアルがそれぞれ破壊されたようだ。現在地上本部へ向かっている」
「えぇ⁉︎感知は⁉︎」
「さぁ。ロングアーチもバックヤードも半数以上がまだ動けない。できていたとて、何ができるかもわからない」
「……! とにかく動ける人員を集めて! シオン! 部隊編成お願い! 今日でええんやろ⁉︎」
「ああ。今日は長くなるぞ」
はやてにシオンがついて走り、その後をソラが追う。
私も追おうとしたけど、アインスに止められる。
「何? 急ぐんじゃ……」
「急ぎますが。一つだけ」
「ん」
「シオンについては大丈夫です。今は管理局に牙を剥くことはありません」
「……それって」
「今言えるのはそれだけです。一言謝っておきたくて。すみません」
「……いいよ。私もその方がいい」
「では、行きましょう。管理局の敵は、倒さねばなりません」
ソラの抑止とナンバーズの火力強化の不釣り合いで機動六課の後方部隊をほぼ封殺してました。思わぬところで影響が……