『戦闘機人、映像出ます!』
「「「!!!」」」
アースラの管制室、その場の全員が息を呑む。
いくつかに分かれている戦闘機人の進行、その内の一つ。
「……」
「ギンガ……?」
なのはが呆然としたまま呟く。
紫の髪をたなびかせ、無表情で走るギンガさんの姿がモニターにはしっかりと映されていた。その両隣には他の戦闘機人が二人。
感情は見えない。ただただ目的地に向かっているという風だ。
「これ、スバルには……?」
「まだや。この場にいる人しか見てへん」
「……ギンガは私が」
「ダメだ。お前はヴィヴィオに行け。そしてフォワードを全員呼べ、もう十分に動けるはずだ」
なのはの申し出をシオンが即座に却下、呼び出しを命令する。
「シオン! ギンガの事は大丈夫って言ったんでしょ⁉︎なら!」
「どうにでもなる、とは言ったがな。その妹がやりたい事とは別の事だ。アイツがやりたいのは自分で姉を救う事。オレが手を出すのはそれが失敗してからでいい」
「でも! そんなの酷だよ! 洗脳されたまま姉妹と戦うなんて……!」
「いいえ! 大丈夫です!」
「っ、スバル⁉︎」
なのはが食い下がっていると、スバルを先頭にフォワードが合流した。
「私に行かせてください。ギン姉は、私が止めます! 絶対!」
強い意志を込め、スバルが宣言する。
「……だそうだぞ? 家族の窮地の時くらい誰でも必死になるモンだ」
「シオンかて必死になるもんな?」
「ふん、窮地になぞなればな」
「本当に……大丈夫なの?」
「はい! 私はなのはさんの後釜になる魔導師ですよ! 身内の一人くらい……守らせて下さい!」
「スバル……」
「迷ってる時間も無い。スバルはギンガに当てる。フォワードは纏めてそこ行けばいいだろ。フォワードはそれでいいか?」
「「「はい!」」」
「じゃあそれだ。あとは言った通り行けよ」
「……分かった」
「機動六課、出動準備!」
「「「はい!」」」
フォワードが走ってく……デバイスルームかな?
シオンと八神さんが考案していた配置から少し変えて……元々シオンが独自で考えていた配置に押し込んだ。これもシオンの計算の内。
そして、それぞれが僅かな時間の準備に向かった。
「さて……ツヴァイ、タカマチ式カートリッジは持ったか?」
「です!」
「何その名前⁉︎」
「ん? いや、どうせ出てくんのお前のスターライトブレイカーだし分かりやすいかと思って」
「それでもなんか……納得いかない!」
「いいだろ別に。お前がシューターとバインドを基調とした理詰めスタイルだとしてもシメのブレイカーが目立ち過ぎるんだよ。社長の強力なカードに頼った愚かなデュエルがいかに脆いかみたいなセリフと同じなんだよ。バーストストリームのイメージが強すぎんだよ。反論したけりゃ『あの人、たまに凄いブレイカー撃つよね』って思われるくらいにブレイカーの頻度落とせ。代名詞ってのは本人のイメージに直結すんだよ」
「です!」
「むぅ〜〜〜!」
「やー、でも私もそんなイメージやで、なのはちゃん」
「そんな⁉︎」
「……実は、私も」
「フェイトちゃん⁉︎」
逃れられないブレイカー厨のイメージ。
なのははシオンの言う通り実際は圧倒的数量のシューターの牽制とバリアジャケットの圧倒的防御力、タカマチ式箭疾歩による驚異的速度の回避力、シオン仕込みの始点潰しで相手の戦略をしっかり分析しながら相手のコンビネーションないし決め技の相手が一番高まった瞬間にバインドを合わせ、シューターで弾幕を作りながら距離を取りブレイカーを叩き込むスタイルだ。
長くなったけどブレイカーは相手を追い込んだ末の決定打、と言うだけで戦術的にはバスターでも何ら問題は無い。だけどブレイカーが安心安定ということでなのははその戦略を延々と繰り返し永遠に勝ち続けてきた。その破壊がもたらすイメージはもう……空戦引退しても拭えないものじゃないかな、と私は思う。
高速移動式超防御固定砲台。やっぱりタカマチは禁止カード。
「ん……そろそろか」
『さぁ……いよいよ復活の時だ。私のスポンサー諸氏、そして、こんな世界を作り出した管理局の諸君。偽善の平和を謳う聖王協会の諸君……』
突然モニターに映された、狂気の演説。
『これこそが! 君たちが危惧しながらも求めていた絶対の力!』
大地が揺れ、山が軋み、その船は姿を現した。金と紫の飛行艇? みたいな? 形として正しいのかすら分からないのが宙に。
場所は分からないけど八神さんたちが驚かないことからシオンが示したアジトの地形と一致するに違いない。私は知らないが。都心部を拡散したようなミッドのどこにあんな大自然が……?
『旧暦の時代、一度は世界を設計し、そして破壊した……』
『古代ベルカの悪魔の叡智……!』
『見えるかい? 待ち望んだ主を得て、古代の技術と叡智の結晶は、今その力を発揮する!』
『っ……! 痛い、怖いよ……! ママ……! うっ……うあああああああああああああああああああ!』
「っ……ヴィヴィオ……!」
映し出されたのはなんか大きな……それこそ玉座? に座らされ、謎管を繋がれたヴィヴィオ。
苦しむ声はそのまま響き、六課……なのはを最上に据えて怒りを昂らせる。
『ふははははははは……! さぁ! ここから!』
「シオン! お願い! もう何でもいいからヴィヴィオを助けて!」
『なんて言うのだったかな……まぁいい! 今日が一番の祭りだ!』
「シオン! 解説! スカリエッティを殺すのはその後でいいの!」
「……はぁ、演技も貫けんのか、求道者は」
「ですぅ……」
「なんや⁉︎なんて言うんやったかやて⁉︎台本でもあったんか⁉︎」
「あぁ……まぁ、秘密? だったんだがな。格好つかねぇから。アイツはオレの能力をコピペする中で……本編を垣間見る技術を開発した」
「ボクソラえもん! シオンコロス!」
「まーて待て待て。話す、話すから落ち着け……もうオレオは無い。アイツはオレの能力を戦闘機人に組み込む内、限定的な並行世界の自分を見る技術を手にした」
「あかんやん⁉︎」
「全然大丈夫だ。オレと違ってこっちに連れてくることもできんし見る世界は一つだけだ。ただそのせいで……まぁ、何故か? オレにもサッパリ理解できんが? 好奇心が大幅に拡大された」
「……なんで? 私やシオンだと対策を練るよね? というか普通は?」
並行世界、特に本編……自身のオリジナルとも言えるシナリオ。それが見えるのだとしたらそれが敗北した原因から対策を練る。物語的に負けると分かっているなら尚更だ。
「……オレにもサッパリ分からん。心を読んでみたが『楽しい』しか出て来なかった。生まれが狂ってるとああなるんだろうか? アンリミテッドデザイアだからか? マジで分からんが……いや、ホントに分からんが……とにかくヤツの好奇心を刺激した以上の事は起こってない。なんとも不思議な事だが」
未来を視る事で全てを変えていこうとしたシオンにはサッパリ理解が及ばない思考回路をしているらしいスカリエッティ。
なんと私もその思考に理解が及ばないので、スカリエッティは私とシオンの万能感にヒビを入れる存在となっていた。いや、これで傷付いたりはしないけど。
「だーもうええわ! 分からん敵には分からん味方や! 行ってこい!」
「……はぁ、お前も行くんだぞ。マジでガジェットは頼む。手が回らん」
「分かっとるわ! アインス、行くで!」
「はい」
八神さんとアインスが先に出る。
普通総大将は最後だと思うんだけども。まぁカルデアもそんな感じだし良い……のか?
「なのフェイはフォワードに指示しとけな。姉さんとソラはそれぞれ当たってくれ」
「「了解」」
「「おっけー」」
それぞれがそれぞれの……まぁ、立ち位置? 想定相手に向けた最終調整。
私達は別段何も準備する事なくただ相手を選ぶだけなんだけどもね……
「オレ達はナンバーズ、スカリエッティの排除がメインだ。フェイトが失敗したら即スカリエッティを殺してもらうぞ」
「大丈夫。私がやる。必ずこの事件に……プロジェクトFに決着をつける」
「……ま、それなりに期待しといてやる。スカリエッティを殺さずに済むとしたら、お前が確保するしかない」
「分かってる。だから、戦闘機人は任せるよ」
「当たり前だ。オレも姉さんも自分からした約束を破ることは無い」
「お願いね。私は少し、エリオとキャロと話してくる」
「ああ。はやてが先に出たからな、長く話すなよ」
「うん」
「私も、スバルたちと」
「ああ」
なのフェイが退室。
管制室には私とシオン、ソラの他には動けるバックスタッフだけが残された。
「……そういや、お前か」
「はい?」
「いいや、グリフィス、だったよな。なのフェイどっちかは口説けたか?」
「なっ! こんな時に何を言うんですか⁉︎」
「オーケー。やはりオレだったみたいだな」
「……?」
「姉さんの事だ。オレの代わりとして遜色なくやってくれてたってことだ」
「そういえば……あの時はまだウタネさんでしたね。知りませんでしたが」
「ま、それだけだ。他意はない。仕事に戻ってくれ。あ、別に口説くのも勝手にしてくれ」
「はい。口説きませんが」
八神さんの副官的な人と何やら話し、納得した風なシオン。
会話内容がまるで意味不明なんだども。なんの確認だったんだろ。
「じゃあ行くぞ。取り敢えず負けることだけはするな」
部屋を出て三人で歩く。
「それ、あなたが一番危険だよ? 私やウタネは能力すらそんな明かしてないよね?」
「それなら安心しろ。オレが負けることは絶対無い」
「じゃー私もだよ。固有結界とかも無いんでしょ」
「多分な。ま、あってもお前なら大丈夫だろ」
「ん! 当たり前だよね!」
「オレ達がそもそも負けるようならオレが退かせるしな」
「退かせる? どうやって?」
「はは……コレ」
悲壮感漂う右手に生成された折り畳み式の携帯電話。
あはは……まさかね〜……
「電話? え……まさか……ウタネを呼び出す時みたいな……」
「ああ、ロリコンに強制退去させてもらう。別にこの電話じゃなくてもいいしスマホでもいいし公衆電話でもいいし糸電話でもいい。電話の概念を持つものなら繋げられるんだなこれが……」
「おほぉ……アイツんなことできるんだ」
「一応神には違いないからな。お前も姉さんも手が出なかったならどうしようも無い」
「まぁねぇ。あの空間自体が権能なんだと信じたいけどあそこもただの部屋っぽいんだよね。今のシオンでも無理そう?」
「無理だろうな。レクイエム程の能力も根源から見れば子供のオモチャだ。何しても無理だろ」
『だー! 何のんびり余裕ぶっこいとんねーん! はよーしてよー! 戦闘機人がこっち来そうなんよー!』
「……行くぞ!」
「「おー」」
神のことは置いておいて、私たちの今のところのやるべきことをしよう。
シオンにそれぞれ目的地までの地図をもらい、分かれて走ることにした。
この辺りを雑にするのはなんかダメだと思うけど生きてる時間が足りないのでこんな感じ。次は年越しやもしれません。