「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
互いに素の力で何度もぶつかる剣と槍。互いにそうか?と疑問を持つ余地はあるが、基本は剣と槍だ。
「なぁシオン。アンタ、ホントに覚えてないの?」
「ルーテシアとの約束か。困ったことに全くだ」
ゼストとシグナムの熱い熱いバトルをボーッと眺めながら、絞り出す様にそれっぽい会話を始めたオレとアギト。
「約束した時と今のアンタが別人って線は?そっくりの姉がいるんだろ?」
「無い。オレの代わりができるのはウタネだけで、そのウタネは管理局でオレの代わりをしていて、今あそこにいる。どちらも本物だ。オレが……信じ難いがその約束を忘れてしまっていた」
「そっか……でもアタシはそれを責めないよ。ウソじゃないってのは分かるつもりだ」
「そうか……ゼストの望みはシグナム次第だが、ルーテシアの方はまた別に考える。レリック以外でもオレの能力で何とかできるやもしれん」
「ホントか⁉︎」
「ああ。だが、この事はルーテシアには言うな。母親の命に関わることで忘れられただとか、必死にしてきたことが簡単なものだなんて言われるのは酷だろうからな」
「うん……そうだよな。分かった」
本当に……困ったものだ。
ゼストを止めるのは本来ならオレの役割だったのだが……先約だったとなるとまた変わってくる。コイツらがオレを騙そうなんてことするとも思えん。アギトもゼストも本心だ。オレがここに来たのはレリックを渡すためだったと本気で思ってた。
ま……どうでもいいか。そんなもの。管理局が第一だ。
シグナムとゼストは若干ゼスト押しだが機体の限界か時折できる隙をシグナムが見逃さず突いてパッと見まだ互角ってとこ。
「で、お前はオレの隣に平然といるがオレが攻撃するとは思わないのか?」
「んぇ⁉︎なんだよ!結局管理局に行くのかよ!」
「元々管理局なんだがな。お前らは利用される側だったってことだ。まぁ、専属嘱託ってのも中々イイモンだぞ。直属上官以外には別段権限を持たれるわけじゃないからな、割と自由だ。お前もこの事件が終わったらクロノかはやてにそうしてもらうと良い。古代ベルカに理解ある奴らだ」
「……」
「まぁ、今んとこ敵同士だ、判断を急ぎはしねぇよ。気が向けば言えばいい」
「あぁ……」
「あ、そうだ。姉さんに指示しねぇと」
「……アイツ、何してんだ?」
「いや、オレがオレだって証明のために取り敢えず誰の目にも止まるようにいてもらっただけだ。ナンバーズが釣れればそれもいいと思ったが」
ゆりかご内部がアレだからなぁ……姉さん無しじゃヴィヴィオにたどり着く前になのはが墜ちる。二回も同じ事をするのは本当嫌だからな。
モニター通信でとりあえずの指示を出す。
「姉さん、わりぃ、今なのはとヴィータが突入口に向かってる。それに着いてって中のガジェット処理してやってくれ。戦闘機人いたらそれの相手だ」
『うぇぇぇぇ……眠たい……しかも遠いし。なのはにモニター開くように言ってくれる?とぶ』
「へいへい。じゃ、頑張ってくれな」
♢♢♢
「ふぅ……」
「お前のソレ、何回か見たけど慣れねぇよ」
「あはは……ウタネちゃんらしいけどね」
「失敬な、私だって好きでモニターを這いながらくぐってる訳じゃないんだよ。飛べないからさ、空中歩いたりするくらいならモニター通るほうが楽だし速いじゃん。私、一回休憩モード入るとスイッチ入るまで長いのよ?」
はぁぁぁぁ、とため息を撒きながらモニターからゆりかご内部の通路に這い出ると若干引かれているような距離を感じる。
シオンの指示直前くらいまで完全に睡眠時間に入りかかってたのに……やる気どころか正気かすら怪しい。眠たい……
「知らねーよ!決戦だってのに休憩モード入んなよ!」
「だよねー……はぁ、めんど」
「なのは、コイツぶっ叩いていいか?キレそうだ」
「いいけどアイゼンに負荷がかかるだけだと思うの」
「そうだよー、今の私に傷一つでもつけられたら勲章ものだねー。シオン超えかもよ」
「お前らマジで何なんだよ……問い詰めたくなってきたぞ」
「んー、それはダメだ。私もシオンもソラも素性を話すと面倒になる。まぁ、ここ数年のことで信用されてないならそこまでってことかな」
「信用はしてる。ただ興味があるだけだ」
「ふふ。私叩く前に後ろのガジェット叩いた方が良いと思うよ」
「えっ……っとぉ⁉︎てりゃぁぁぁぁ!」
ヴィータが振り向いて反応より速く反射でガジェットを潰す。
「おー、流石」
「ンなこと言ってる場合かよ!いつの間にか囲まれてんじゃねぇか!」
「やー、あのシオンが私無しじゃ無理とか言うレベルだよ?」
通路を埋め尽くすガジェット群。密度で言うなら外より酷い。壁というか、波というか。球体のやつがメインで細長いのがその隙間を埋めてる感じ。
……そこまでする?逆に弱くなってない?大丈夫?その布陣。
「AMF下でこれは流石にキツそうだね。ウタネちゃん、私とヴィータちゃんで前をやるから、後ろお願いしていい?」
「しょーがないね。やるしかなさそう」
2%、とはいってもあくまで範囲の話。今は二人のペースに合わせて撃ち漏らさないよう一つずつ潰していく。
大きいの、小さいの、大きいの、大きいの、小さい、大きい、小さい……
10……30……50……
「うん!キリがない!」
「喋んな!イラつく!」
「いーよ、潰すから離れてて!」
取り敢えず目に届く分だけ一斉に潰す。
「で!どっち⁉︎」
「イラついてんなぁ……玉座か駆動路、どっち行くかだな」
「……じゃ、まず玉座行こう。そこまでなのは連れてったら私とヴィータは駆動路に。いい?」
「うん、ありがとう」
適宜能力でガジェットを殲滅しつつ、なのはを先頭にゆりかごを進むことに。
♢♢♢
「「デアボリック・エミッション!」」
そろそろ三万は数えたいほどには撃破しているが、やはり数は減らない。
いくらはやてとはいえ魔力量も有限だ、どこかしらで私が能力を使うことになるのは必然。先のメタリカもそうだが、単純な機械相手ならいくらかはやりようもある。私が力尽きる前にウタネ様かソラが仕事を終えればこちらにも余裕ができる。それまで待てば良い。
「く……あかんな、このままじゃ持たへん」
「ですね。機動六課以外にもAMF下で戦闘可能な魔導師が頑張ってくれてはいますが……正直、焼け石に水です」
「ツヴァイ、まだいけるか⁉︎」
「です!」
「はやて、少し時間を下さい。もう一度メタリカを」
「分かった──ッ⁉︎リインフォース⁉︎」
「……これは」
撃たれた。
より広範囲をカバーするため先程より大きく身体をバラした瞬間を狙って……これは、ヘリを撃った狙撃手か……
「ですぅ!」
ツヴァイが氷の足場を作り落下を防いでくれた。
多少冷えるが、地面とハグするよりは大分マシだな。
「ヴィーナス、一人目。クアットロ、ナイスタイミング」
「いえいえ♪ガジェット相手に手こずるようなレベルですし?まぁ、私たち相手には仕方ないと言いますか?」
「戦闘機人⁉︎二人も!」
「こんにちは〜♪夜天の主さん?頼りの融合機が残念でしたね〜。ツヴァイちゃんも、そっちにいるなら容赦しませんよ。使えない……一人じゃ何もできない役立たずを抱えて、無駄な足掻きをご苦労様」
「クアットロ、あんまり煽るな」
「……」
はやては喋らない。ただ沸点を越えようとしているだけだ。
「大丈夫♪どうせもう死ぬだけですから」
「絶対に許さん」
「はい?」
「私の前で家族をバカにする奴は──絶対に許さん!」
「そうですか。ならどうします?」
「──『一人じゃ何もできない役立たず』──ユニゾン・イン」
……うん?
「役立たず!ユニゾンイン!」
「はっ!はい!ユニゾン・イン!」
治癒魔法で即席の治癒の後ユニゾン。
支配権を完全にはやてが持ちユニゾンしたため、もうここからは話すくらいしかできないな。
「──宝具解放。裁きや。『天地乖離す開闢の星』──!」
『はやて⁉︎それは負荷が⁉︎』
「うるさい!家族バカにしてタダで済むなんて思わせへん!」
『過度な能力使用はしないと言ったのは嘘ですか⁉︎この状態だとはやてに負荷が入る!」
「……っ!ああもう!刺し穿ち!」
虚無から手に現れた深紅の槍。
それは本来の持ち主同様の魔力量を持ち、現在のはやてとは関係無く威力を発揮する。その分、負荷も大きくなるが。
それを驚異的な速度で接近、無造作に刺す。
『はやて……』
「突き穿つ!」
『……それも大概なんだけどな』
一発目が眼鏡の腹部を貫通し、その隙に二発目を投擲、その胸を貫通、背中や肩、腹部から無数の棘が飛び出し破壊する。
「ゲイボルク・オルタナティブ!」
「ガハッ!」
流石の戦闘機人とはいえどその破壊は致命的。
上半身のほとんどは死棘の傷と毒で修復すら不可能なはずだ。
「なんやその目は?なんやその目はぁぁぁぁぁ!」
完全に光を失った眼鏡がまだ気に食わないのか、落下するその首を掴み上げるはやて。
「──二の秘剣『紅蓮腕』ァ!」
左手で首、右手のシュベルトクロイツを左手に添え、一気に引き抜く。
左手を中心に爆発し、更に眼鏡にダメージを与える。私の目からはもう意識すら無いように見えるが。
『はやて、もういいでしょう。負荷もあります。一気にくるとキツイですよ』
「あかん!私の家族をバカにする奴は許せん!」
忠告も一切聞く耳を持たず、落下する眼鏡を追い地上にまできてしまった。
「オラ!どや!あぁ⁉︎お前らアレか⁉︎人を煽ってないと死ぬ体質かぁ⁉︎さっさと立てやぁ!いつまでそうやっとるつもりや!言うとくけどな!気絶してるからって攻撃止めるとか思わん方がええで⁉︎2発目行くか⁉︎『無限関節マッハ突き』ィィィィィィィィィィィィィィ!」
……そんなキレキャラだったか?はやては。
負荷もそこそこになりそうだ。もう抜けておくか……ユニゾン・アウト。
「えぇコラ!ええ加減にせぇよ!私の大切な家族をバカにしよってからに!何なんやホンマぁ!ミッドや管理局なんか滅ぼしたかったら滅ぼしとけや!スカリエッティがナンボのモンや!やれるモンならやってみぃ!あぁぁ⁉︎」
「は、はやて!それ以上はダメです!そもそも!ナンバーズがハー○リ⚪︎ナでは収まらないことになってます!あぁ!蹴らないで!あぁ!肉片が!あぁ!機械部品が!四肢欠損、内臓流出などと言う生温いものでは無いほどに⁉︎」
もう動かなくなってしばらくしたであろうソレを何度も踏み抜き、まさかのシュベルトクロイツで殴打する暴挙を見せるはやて。
少年誌どころか成人向けでも掲載不可能かもしれん。大丈夫か?色々と。
「……⁉︎どこや⁉︎」
「消えた……?」
柱の男でも再生不能だろうというほどにミンチになった眼鏡はゆっくりと透過し存在を消した。
「あらあら?幻影相手にヤケに必死ですわね?」
「「ッ⁉︎」」
声に振り向けば眼鏡は元の位置……狙撃手の隣で変な笑い方をしたまま私たちを見下ろしていた。
幻影……そんな気配では無かった。とすればプライム。幻影系の上位能力を手にしているか。それにしても……
「戦闘機人がここに来るのは想定外だが……」
「そーですよ〜シオンが急に裏切ってくれたもので。計画を練り直さなくてはなりませんでしたし?」
「シオンが……?裏切ったやて……?」
「あら。ご存知なかったですかぁ?シオンはそこの融合機の処理とレリック強奪を目的にそちらに帰ったはずでしたのに」
「シオンが……アインスを⁉︎」
「裏切った、か。シオンの名誉のため教えておこう。裏切ったのではなく、私が裏切らせたんだ」
「……?いくらあなた方と言えど、そう簡単にコトが済むとは思えませんが?他の局員が知らないうちに説得など、不可能です」
「できるんだな、コレが。うちはシスイ万華鏡写輪眼最強幻術『
シオンはソラの介入すら計算に入れ、同じ能力という共通点を持ち出して個室で二人きりという暗殺の条件をアッサリと実現させた。
計算外だったのは私が写輪眼を選別できる程度に冷静だったことだろう。無限月読を警戒するあまり他に気が向いていなかったと見える。もしくは本当に、私がそうするとは思っていないほど信用していたか……まぁいい。
「そこで、素晴らしい提案をしよう。お前も嘱託にならないか?」
「なりませ〜ん。反吐が出ます」
「見ればわかる。その能力、プライムだな?質量、気配、挙動、本体の秘匿。数ある幻術の中でも上位の力だ。使いこなせば、私達さえ欺ける能力だろう」
「使い、こなせば?」
「そうだ。眼鏡、何故使いこなせていないか教えてやろう。ウタネの敵だからだ。脅威になるかもしれないからだ。強くなるかもしれないからだ。嘱託になろう。そうすれば、今の何倍も力を発揮できる。何年も何倍も強い機体を維持出来る。永遠でいられる。スカリエッティの妄言で動いたところで、この世界では全て無駄なんだよ。お前たちが得た素晴らしい力も私達の誰一人に敵わない。何をしても私達には敵わないんだ。どこまで食い下がろうと最後の結末は決まっている」
「で、ですぅ?」
「アインスー、また壊れてんでー」
「先の見えない戦いで命を落とすことは無い。その先にあるのは死と敗北だけだ。だが嘱託はどうだ。シオンの指示以外はほぼ自由で好きなことができる。メンテナンスや能力強化も専門のスタッフがいる。自分たちのコストなど気にすることもない。嘱託になろう。望むなら半永久的にシオンの元で自由がある。姉妹たちといつまでも一緒にいられる」
「お断りです」
「私も」
「……待遇は応相談だが」
「「くどい!」」
「……」
何故だ……何故……
「永遠が欲しくないのか?自分の先を見たくないのか?望むまま、思うままの未来を見たくないのか?」
「それを今からすると言ってるんですけどねぇ?アタマ、大丈夫ですかぁ?」
「それが間違いだ。お前たちの言うそれは、全員が同じ未来を見ているか?」
「夜天の融合機。一つ」
「ディエチちゃん⁉︎」
「お前は、夜天の主の方針に異議を唱えたことがあるか?違う未来を、見たことがあるか?」
「あぁ、そういう……裏切りかと思いました〜」
「ある。私達は全員が別の未来、別の理想を持つ。その手段も別だ。主だからと何が違う訳でもない」
「……そう。なら、終わり。クアットロ、やるよ」
「喋り過ぎましたね。では、行きます!」
ディエチか、幾分更生の見込みはあるな。
……まぁ、殺すが。
「ツヴァイ!はやてを連れて逃げろ!」
「です⁉︎」
「なんでや⁉︎」
「プライムが二人、抑えられるかは分からない!幻影は実体を伴っていた。それを防ぐ自信は無い!すまん!
わずか九秒。しかし、それだけは確かな時間。
その隙にはやてだけでもどこかへ……!
「あら〜?まさか、私たちが静止時間を動けないとでも思ってます?」
「なに……⁉︎」
停止時間中、ウタネ様とシオン以外は一切が動けないと踏んでの時間停止……はやてを抱えようと無防備に振り向いた瞬間起きた出来事は、能力解除を無意識にしてしまうほどだった。
「が……ッ⁉︎」
「はやてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ですぅぅぅ⁉︎」
逃がそうと振り向いたはやての右胸を魔力弾が貫通する。
はやての騎士甲冑も伊達ではない。大抵の攻撃であれば……ただの剣で斬りかかる程度なら、寝ていても一才の傷を負うことは無いだろう。
そして、はやて自身の防御魔法。間に合えば、それも傷を負うことは無かっただろう。
はやてが傷を負ったのは、私が時間停止を、はやてが動けない時間を作ったからだ。私が、みすみすはやての隙を作るような愚行を犯したんだ。
「夜天の主、終わり。考え無しで助かった」
狙撃手が淡々と呟く。
正しい現状把握だ。便宜上夜天の主といっても私とはやてにはなんの繋がりも無い。ただユニゾン適性をいじっているだけ……胴体の貫通は致命的にすらなり得る。
考えが足りなかったのは私だ……シオンはこの10年、能力を研鑽していたというが……私はどうだ?魔力量と能力に溺れ、こんな場面を想定したか?まさか自分が、はやての窮地を作り出すなどと考えたことはあるか?想像したことがあるか?自分より先に、はやてが致命打を受けるなど、少しでも警戒したことがあったか?
……いずれも無い。私がいればはやては安全だと……完璧に守り切れると……慢心していた。
間違いだった。一人でどのような犯罪組織を潰しても、この世の全てを超える力を持っても……大切な、主の一人を傷付けることは……あってはならない……
確かに、私自身は負けないだろう。だが、周囲の仲間を、家族を守れるか?その点について考えなかった私はバカだ。
そんな、自分の未熟への怒り。自分の失態からはやてを傷つけた戦闘機人への怒り。その原因を作り出したスカリエッティへの怒り。
どれ一つとして看過できるものでは無い。
「だが!お前たちだけは絶対に許さん!」