戦争と平和   作:スコティッシュ

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立場

「イデア様、離れてください。コイツは危険です」

 

顔は見えない。

だがエルフなのは間違いなさそうだ。

 

「先程から聞いていれば、薄汚い強欲にまみれた人間の話ばかり。イデア様を懐柔し戦果を立て様としている事が手に取るように分かる」

「まぁ、強欲って所は同意かな。けど、薄汚いって言うのは間違ってる」

「何だと?」

「ちゃんと毎日風呂に入ってる。少なくとも不潔じゃない」

「変な事に頭が回るな。だが、お前の運命はもう決まっている……残念だったな」

「自軍の戦略を暴露したのに殺されるの? 報告したら大金星じゃない?」

「それが本当の作戦だったらな!」

「エルフに寝返っちゃ駄目?」

「家族を殺された恨み、お前の家族にも味あわせてやる」

 

刃を少し動かすとチクリとした痛みが走り紅い筋が垂れた。

ヤバイ本気だ。

咄嗟にさっき教えてもらった構えを取ろうと思ったが、一部始終を見られているので効果は無いだろう。

 

「エルフの慈悲だ。最後に言い残す事はないか?」

「イデアさんに様付けてたけど、イデアさんって何者なの?」

「イデア様は族長のご息女だ」

「えっ!? マジで!?」

「イデア様と戯れた時間を冥土の土産に持って行け!!」

 

エルフが力を込め、俺の首を跳ね様とした瞬間

 

「止めなさい! スイカ!!」

 

エルフの腕は止まっていた。

 

「その人を放しなさい」

「イデア様!?」

「早く」

「しかし……」

「私の命の恩人の命を奪うつもりですか?」

「まさか……コイツが……?」

「前の戦場で逃げ延びた後、毒で倒れている所を解毒をしてくれた方です」

「な……なんと……」

 

スイカは慌てて刃を収め、深々と俺に頭を下げた。

 

「大変申し訳ないことをいたしました。戦争中とは言えイデア様を救ってくださった恩人に刃を向けてしまうとは……!」

「いえ、家族を奪われる痛みだって本物ですから……」

「お心遣い感謝いたします」

「誰も悪くないんです。悪いのは全て戦争……」

「その事なのですが、先程の戦略は本当なのですか?」

「うん、悲しいけど全部本当。どの場所に派遣されてるかは知らないけど、志願兵だけの捨て駒部隊は実在する」

「酷すぎる……! その者達だって家族が居るだろうに……!」

 

知らなかった。

エルフってこんなに優しいんだ。

敵の家族の為に、泣いてくれるんだ。

 

「えと、恩人の方……」

「あ、ソーマです」

「ソーマ様、大変恐縮なのですが、所属している部隊を教えていただけないでしょうか?」

「俺は戦争に参加していません。家の家事をやっていて、息抜きに散歩をしているだけです」

「左様でございましたか。もし参加されているとしたら、全部隊に通達をしなければと思っていたのですが、心配はなさそうですね」

 

戦争をしているはずなのに、何故こんな知り合いが出来てしまうのだろう。

世の中は不思議な事ばかりだ。

 

「ではソーマ様、お気を付けてお帰りください」

「イデアさんとスイカさんも敵襲に注意してください」

 

そして、別れようとした時スイカに呼び止められた。

 

「ソーマ様、これをお持ちください。もし此度のような事があった時、これを見せればエルフは安全を保障します」

 

そう言ってスイカは小太刀を渡してくれた。。

 

「ありがとうございます」

「いえ、恩人を亡き者にしたいエルフなど1人もおりません。どちらが勝つにしろやがて戦争は終わります。そしたら一度我が村へお越しください。改めて歓迎いたします」

 

俺は小太刀を懐に入れて、家事が待っている家へと帰った。

 

「ソーマ、お前最近毎日出掛けてるが何処に行ってるんだ?」

「近所の森だよ。散歩してるんだ」

「そうか、そういえば最近森の近くが戦場になったらしい。中途半端なお前じゃ直ぐに殺されるからな。暫く森に行くのは止めておけ」

「そうなんだ……分かったよ、父さん」

「捕まったりしたら一家の恥ですからね」

 

結局はそう言う事かよ。

俺が森で捕虜になったら志願兵であるビスクとマルスに影響が出ると考えてるのだろう。

一体何時からこんな家庭になってしまったんだろう。

まぁ、色々な意味で戦争は変わるだろう。

なんたって戦略バラしちゃったしな……

でも、これで少しは被害が抑えられるならそれで良い。

 

次の日から森に行く事は無くなった。

捕虜になる可能性は全く無いが、一応両親の言う事を聞いておくことにした。

何事も無く2週間程経った時、俺は城下町でとある噂を聞いた。

 

「おい、知ってるか? ついにエルフの部隊長を捕虜にしたらしいぞ」

「マジかよ! 拷問にかけて知ってる情報を吐き出させればもう戦争は俺達が勝った様なものじゃないか!」

「あぁ! あいつら生意気にもこの辺の近所まで出てきていたらしいぜ?」

 

この辺の近所と言う言葉に俺は嫌な予感が走った。

 

「ねぇ、その話詳しく教えてよ」

「ん? なんだ、ソーマじゃないか。お前も興味あるのか。いいぞ教えてやる」

 

こういう事があるから近所付き合いはしておく物だ。

 

「つい昨日の話だ。森の中に金髪のエルフを見かけて奴がいたらしい。そいつが王宮に連絡して捕まえたそうだ。報酬もたんまり貰ったそうだぞ」

「それは大手柄じゃないですか! いやぁ2週間位前なら森を散歩してたんだけど……惜しかったなぁ……」

「ははは! 確かにお前にもチャンスはあったかも知れないな。だが少し前に森の近くが戦場になったからな、お前は近づかないほうが良いだろう。巻き込まれたら大変だからな」

「そうですね、やっぱり行かなくて正解だったかも……じゃ、俺は買い物があるんで」

 

間違いない、捕まったのはイデアだろう。

推測でしかないが、森で全然俺を見かけなくなったので、更に城下町側に出てきた所を見つかったのだと思う。

 

俺の……せいなのか?

 

この懐にある小太刀がある限り俺はエルフの捕虜にはならない。

勿論王宮の兵士と出会った所で散歩だと言えば良い。

つまり、俺は森に行っても危険は無いのだ。

だが俺は森に行かなくなった。

……そのせいでイデアは捕まってしまった。

 

捕まった敵兵は拷問される。

それが女となるとそれ以上の事だってされる。

俺は買い物を済ませるととある場所に向かった。

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