突然の砲撃によって爆発の余波を浴びたハンターは、ふっ飛ばされ地面をゴロゴロ転がった。黒龍が追撃してくると思い、急いで身を起こす。砲弾よりも、ミラボレアスの攻撃がよほど脅威だ。
横やりの腹いせか、黒龍は城壁への砲兵たちへと向かってブレスを放っている最中だ。
この隙に急いで砥石を取り出し、太刀を研ぐ。
戦闘中に武具の手入れをするなど、常識的に考えて頭がおかしいと思われるかもしれない。だが、ハンターはゴブリンスレイヤーのように武器をポイポイ捨て、相手から奪うこともできない。戦闘中なら相手から距離を取るか、安全地帯で研ぐ時間を稼ぐ。これまでよくやったことだ。
身に馴染んだ研ぎ方で、太刀を鋭く研ぐ。
太刀の切れ味を回復させた頃には、ミラボレアスの火炎竜巻は放ち終えており、城壁上の砲兵部隊は壊滅した。出来ることなら、あのまま砲撃を続けてほしかった。ハンターの攻撃はミラボレアスの体力を削っているが、どうしようもなく小さい
大砲の威力はわからないが、剣でちまちま攻撃を与え続けて倒そうとすると、長期戦になり集中力が切れてしまう。
ハンターは駆け出す。
ミラボレアスは城壁上の部隊を殲滅すれば、今度はハンターにとどめを刺しに来るだろう。グズグズはしていられない。
その手に太刀を握らず、その辺に転がっている破片、石ころをスリンガーにセット。
ポーチの中に手を突っ込み、達人の円筒を設置。
円筒から吹き出した煙は、ハンターの感覚を冴えさせる。
再度、ポーチの中からアイテムを取り出す。
大タル爆弾Gをできるだけミラボレアスまで近づいて、設置しようとする。
ミラボレアスがハンターに気づいたのか、振り返る動作を開始。
振り返る前に大タル爆弾Gを設置し終えることができた。
ミラボレアスがハンターを押しつぶそうとボディプレスを仕掛けてくる。
ハンターは一目散に逃げる。だが、飛び込む寸前にスリンガーにセットした石ころを投射し、大タル爆弾Gを起爆させる。
瞬間、落雷が落ちたような轟が空気を震わせる。
大タル爆弾Gの破壊力は途轍もない。
だが、これでもミラボレアスを倒すには不十分だ。
眠らせて、爆破し、眠らせて、爆破しての繰り返しならかなりの痛手を負わせる事ができるのだろうが、生憎ハンターはそこまで準備をしていない。
ここからは先程のように、太刀でミラボレアスの体力を削る戦いを再開する。
尻尾の薙ぎ払いを、ブレスを回避しては、太刀で一太刀、二太刀入れていく。相変わらず、黒鱗は硬く、出血の量は少ない。それでも太刀には鋭い気の刃が乗っているので、最初の頃よりは、与える傷は深くなっている。
これを繰り返していけばいつかは、倒せるとハンターは思った。
そうしていると、ハンターの頭の中で声がした。
『おい、生きているか!』
ハンターに聞き覚えのある声だった。確か、槍使いの声だったか。
正直、今は声をかけないで欲しい。戦闘に集中したい。そういったハンターの気持ちが、槍使いにも伝わったのか、早口になる。
『そうしたいのは分かるが、大丈夫なのか⁉ さっき砲撃に巻き込まれなかったか』
問題ない。むしろ、続けてほしいくらいだ。そう思ったとき、槍使いの声に呆れが混じる。
『頭いかれてるな、お前』
うるさい。ともかく、なにかするならひと声かけてくれるだけでいい。ともかく、集中を乱さないでくれ。と、ハンターは懇願し、戦闘へ意識を集中し直す。
ハンターはミラボレアスとの戦闘に集中し直し、駆け出していく。
スリンガーを使い、城壁の上に鉤爪を引っ掛け、ロープを高速で巻き取らせる。急速に上昇する途中で、鉤爪を外し、ミラボレアスに向かって跳躍。
飛び上がったハンターはそのまま、すれ違いざまに太刀で斬りつける。
狙ったのは頭だが、僅かに逸れた。
ハンターが地面に着地したところを、ミラボレアスはブレスで追撃。地面に転がり、間一髪のところで避ける。
一発大逆転を狙って、反撃を受けてしまうのは不味い。乗るチャンスもまだある。時間制限もないのだ。焦ることなく、僅かな傷を与え続ければいい。
ミラボレアスの動きを見切り、攻撃を重ね、倒すしかハンターに討てる手段は思いつかなかった。
「どうする?」
「どうするって言ってもな」
槍使いはハンターとの
「言っては何だが、囮としてハンターがやってくれている間に、有利な状況くらい作り出したい」
槍使いは考える。
ハンターが時間を稼いでくれているから、体制を整える、呪文、祈りを唱える時間は十分にある。
だが、下手な反撃は黒龍の意識が向いてしまい、先程の砲兵隊のような惨状になる。
やるとしたら、勝負を決めるようなことをするしかない。
そのような魔法や奇跡、道具がまだあるだろうか。
槍使いには、そんなものは思いつかなかった。
他の冒険者も思いつかず、どうすればいいか迷っている。
「あの、このままハンターさんが倒すってことはないんですか。下手に手を出さない方がいい気もするのですが」
躊躇いながらも、1人の冒険者が進言する。
槍使いはハンターがこのまま黒龍を倒せるのか、頭の中で考える。
ギリギリで黒龍の攻撃を躱し、チマチマと攻撃を与えていく。
断崖絶壁に繋がれた長く細いロープで、一歩ずつ慎重に綱渡りしているようなイメージが浮かんだ。
「……ハンターも余裕はない。何かあったら、すぐに殺られるぞ」
絶対に崖から落ちるのが目に見えているから、自分なら御免こうむる。
「なにか手助けができればいいのですが……」
半妖精の魔法使いが呟く。それに重戦士が答えた。
「やるとしても、俺たちの存在に気づかれずにだな。あの黒龍は攻撃したものに対して、反撃する傾向が強いように思うんだが、どうだ」
最初の全方位からの攻撃、ハンターとの戦闘、砲兵隊からの攻撃。
いずれも、こちらから仕掛けて、黒龍が応じる形になっている。
「同意見だな。あいつの視点からみれば、俺たちの存在も理解しているはずだ。なのに攻撃しているのは、攻撃しているハンターか、砲撃した奴らだ。巻き添えを食らいかねないが、俺たちの方に向かってくる様子はない」
黒龍にとっては、ハンターだけを最大の敵として見ているようで、他は鬱陶しい蝿を払う程度のことなのだ。
仕方がないと諦めそうになる。
相手は伝説のドラゴンで、対抗できるのは同じく伝説の勇者。
銀等級といっても、この程度。
くそったれ。
槍使いの胸に悔しさがこみ上げてくる。
短期間で黒曜等級に昇格した新人冒険者。
最初のうちは、あまりなんとも思っていなかった。いや、背負った大太刀と何かの鱗と甲羅で作られた鎧は目立っていたし、新人冒険者のように浮足立ったような奴でないことは知っていた。
傭兵のような戦闘に慣れている人物が冒険者になった。
そのぐらいだろうと思っていた。
だが、実際は自分が敵わない龍を相手に、1人で戦うことができる実力者であった。
あの場に自分ではいることができなくて、こうして後方で後輩に守られている。
悔しくて堪らない。
ハンターの力に嫉妬していると言ってもいい。
実際、
新人のくせに可愛くない。
ゴブリンスレイヤーと同類だ。
嫌な奴と重なって、文句を言いたくなる。
それをぐっと胸の奥に抑え、深呼吸して落ち着かせる。
状況を把握している槍使いは、ハンターのようには戦えない。
だが、冒険者としてこのままハンターに任せっきりは嫌だ。
「俺たちはできるだけ表立たず、ハンターを支援したほうがいいな」
槍使いの考えは全力でハンターを支援することだ。
これに他の冒険者も賛同する。
「ハンターの武器に
「他に、は、
女騎士と魔女が使う魔法や奇跡を考える。後、何回使えるか、あの黒龍に対して最も有効なのは何か。
「それも、半端な量じゃダメだ。さっきの
作戦をまとめていく重戦士。
「俺たちが眼中にないあいつらに一泡吹かせようや」
このまま終わって堪るものかと、全員が気力を取り戻し始めた。
すいません。
このシナリオは、ハンターがドラゴンスレイヤーとして名実ともに他人に認められるシナリオなだけです。
竜殺しの報酬は破格、これはゴブスレ世界でも常識でしょう。
でも、ゴブスレ世界なのにゴブリンが出てこない。
というわけで短い別セッション。
一方、黒龍討伐に参加しなかったゴブリンスレイヤーは、黒竜に怯えて逃げ出したゴブリンを討伐する依頼を受けた。
小規模な数のゴブリンたちは、怯えるように集団で行動し、大規模な難民となった。今は、天然にできた洞窟で、夜中にゴブリン全員が逃げてきた疲れを癒やすために寝ている。夜行性のゴブリンが夜に寝るほどの異常事態。
無論、見張りが居るものの、勤勉なゴブリンなど居るはずもなく、疲れから寝ていた。
ゴブリンスレイヤーは巣の前で腰掛けて寝ているゴブリンに、気付かれないように近づき、音を立てずに始末する。
次に、念には念を入れ、睡眠けむり玉を洞窟に向かって投げ込んだ。
睡眠ガスが充満した洞窟内を、無呼吸の指輪(呼吸をしなくても活動できる魔法の指輪)を身に着け、睡眠ガスを吸わないようにして荷台車を引いて駆け抜ける。
道中の睡眠ガスが途切れれば、再度投げ、ゴブリンたちを眠りに落とす。元々寝ていたゴブリンは、睡眠ガスによって更に深く沈むようにしてイビキをかいた。
この睡眠けむり玉、ゴブリンスレイヤーがハンターの毒けむり玉を参考にして、知り合いの錬金術師に作れないかと頼んだものである。
ハンターから毒けむり玉の調合の仕方は知っていたので、作成は簡単だろうと思った。素材もハンターからもらい、錬金術師に依頼。金はかかったが、素材はネムリ草と素材玉で作り出すことができた。
洞窟奥では、かなりの数のゴブリンが眠っている。他にもゴブリンでないやつが居たが、捕虜ではない。混沌の眷属とかいう奴だろう。全て眠り煙玉によって眠りにつき、ゴブリンスレイヤーへと攻撃を仕掛ける者はいない。
荷車に積んでいた大タル爆弾Gに信管を付け、導線を長くした小タル爆弾に火をつける。火花はジジジと導火線を伝わっていく。
ゴブリンスレイヤーは荷台車ごと大タル爆弾を置いて、すぐに洞窟の出口まで走った。
ゴブリンスレイヤーが洞窟から抜け出したとき、洞窟奥から爆発音が鳴る。
直後、洞窟が崩落した。
「ふむ」
途轍もない威力だ。
たった1個でこの火力。
空き地でどのくらいの爆発力があるか、威力検証で爆発させたことがある。
その時はゴブリンに見立てたカカシが木っ端微塵になり、大タル爆弾Gの周辺の土草は吹き飛ばされた。
通常、爆発という攻撃手段はあまり効率が良くない。
例えば、爆弾を相手に投げつけても高温で表面が焼けるだけに留まる。
それだけでも重症になるが、本当に怖いのは爆風によって吹き飛ばされた石の破片の方だ。これによって攻撃範囲はさらに広がる。
だが、この大タル爆弾Gは爆発自体の殺傷能力がとんでもなく高い。
これはいい。
巣の後処理として最適だ。
ハンターに追加注文することを決めたゴブリンスレイヤー。
洞窟内にいたゴブリンたち?
ゴブリンの体力-280×3倍ダメージ。
文字通り木っ端微塵である。
ちなみに、廃城を根城にしていた混沌の眷属の1体、バフォメットなのだが、無論、爆死している。最も、ゴブリンスレイヤーには知る由もなく無残に瓦礫に埋まった。
そして、ギルドの報告にはゴブリンが爆死したことだけが書かれるだけに終わる。
女魔術師、女魔法使い どっちがいい?
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女魔術師
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女魔法使い