ゴブリンスレイヤーとモンスターハンター   作:中二ばっか

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2-6 小鬼竜操師(ゴブリンドラグナー)

 冒険者たち4人の一党(パーティ)は険しい斜面を転げ落ちるように、逃げながら依頼内容を思い出していた。

 

 山の洞窟に飛竜(ワイバーン)が住み着いた。退治してくれ。

 テンプレートだ。

 前足が翼となった竜。知能は低く、ドラゴンと比べると見劣りする。

 しかし、それでも人では手の届かない空を羽ばたき、上からの強襲とブレスによる一方的な攻撃は脅威だ。

 中途半端な冒険者ならまたたく間に餌となり、熟練者でも気の抜けない相手だ。

 しかし、揃ったのは銀等級の冒険者たち。

 油断もしない。

 手も抜かない。

 実力もあり、飛竜(ワイバーン)の討伐の経験もある。

 飛竜(ワイバーン)に負ける要素はなかった。

 いや、飛竜(ワイバーン)だけ(・・)ならだ。

 飛行してくる飛竜(ワイバーン)が2匹。

 そして、その奥には若火竜(ヤングレッドドラゴン)が飛んで来ている。

 さらに、その上にはゴブリンが居た。

 

 誰が、ゴブリンごときが飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)の背に乗り、操ると思うのか。

 まぁ、なんか変な奴(ゴブリンスレイヤー)なら思うのかもしれない、と闇女斥候は思った。

 

 言うなれば、小鬼竜操師(ゴブリンドラグナー)

 

 若火竜(ヤングレッドドラゴン)の上に乗るゴブリンの手には、ゴブリンが持つには立派な杖がある。杖の補助で呪文を使い、飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)を操っていると思う。

 冒険者たちはゴブリンごときが、小癪なと苛立ったが、戦うときはもっと苛立った。

 ゴブリンが空を飛ぶ飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)の背に乗り、悪質な矢を放ち、スリングで石を投げてくる。

 ゴブリンからの攻撃など盾、鎧で、武器で切り払って防げる攻撃だが、打ち所が悪ければ戦闘行動ができなくなってしまうため、気が抜けない。

 それに、飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)がブレス、爪や牙で冒険者を襲ってくる。その攻撃を受ければ、深手の傷、もしくは死亡だ。

 それに気を取られれば、ゴブリン共が嫌がらせとばかりに石を投げ、矢を撃ってくる。鬱陶しくて仕方がない。

 

 そして、逃げている最中、岩の陰から普通のゴブリンが奇襲してくる。

 闇女斥候は気づいて、飛び掛かってきたゴブリンを小剣で切り裂く。

 飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)が印象的で、注意が空に向いてしまう。そして、地上の警戒が薄れたところを、他のゴブリンに後衛を奇襲されてしまった。

 前衛の1人が傷を負った後衛の冒険者を背負い、逃走している一党。

 このままではいずれ追いつかれるか、逃げ切ったとしても依頼を出した街まで飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)、ゴブリンを引き連れてきてしまう。

 見失うようにして逃げるにはどうすればいいか、闇女斥候は考える。

大地(テラ)……偏在(ユビキタス)……消去(レスティンギトゥル)!」

 流砂(クイックサンド)を発動し、後方の地面を砂に変える。

 本来は相手の足場を流砂にして、動きを封じる呪文だ。追ってきたゴブリンたちは、突然地面が砂に変わったことで、足を取られて転んだ。

 だが、空を飛んでいる飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)、そして、小鬼竜士(ゴブリンドラグナー)には意味のないこと。

 立て続けに闇女斥候は詠唱する。

(ウェントス)……成長(クレスクント)……発生(オリエンス)!」

 唱えたのは突風(ブラストウィンド)

 突風は、先程作った砂を巻き上げながら飛んでいる者たちに降りかかる。

 流砂(クイックサンド)突風(ブラストウィンド)の合わせ技は、砂嵐となり、追ってきた全員を巻き込む。

 目に砂が入って視力を失い、飛んでいるゴブリンたちは必死でしがみ付く。鞍なんてものはなく、鱗を掴んでも滑ってしまい、あっけなく吹き飛ばされる。

 どちらにしろ強風に煽られ、飛行を維持できず、飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)は、地面に落ちた。

 落下距離からして、乗っていたゴブリンはともかく飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)は生きていると予測した闇女斥候。

 墜落した飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)を攻撃するチャンス。だが、後衛が痛手を受け、前衛の1人が背負っている。闇女斥候と、もう一人の冒険者だけでは手数が足りない。

 今は逃げることを優先し、その場から逃走することに成功した。

 

 

 

「この依頼は降りる」

 逃げ切った一党は、冒険者ギルドで今後どうするかを話していた。

 後衛は痛手を受け治療中で、依頼を降りざる得ない。前衛の冒険者は依頼内容の違いに危険だと判断し、依頼達成を諦めた。

 残る冒険者も若火竜(ヤングレッドドラゴン)と戦うことに怯えている。

 若いとは言えドラゴンだ。銀等級とは言え、怯えるのは仕方がない。奮い立てと言っても無理だ。

 若火竜(ヤングレッドドラゴン)は外皮は固く、呪文の効力も低下する。炎は効かず、巨体から繰り出される尾のなぎ払いは、それだけで致命傷になりかねない脅威だ。

 そして、竜の代表的な攻撃手段、ブレス。

 若火竜(ヤングレッドドラゴン)の顎から吹き出された炎は、地面を焦がし、直撃すれば大火傷する。

 そんな相手に少数で立ち向かうなど、自殺志願者に違いない。

 ともかく、一党は依頼を諦め解散となった。

 

 竜殺しは栄誉であるが、若火竜(ヤングレッドドラゴン)が現れたことを知った他の冒険者は、その依頼を受注することはしなかった。

 竜退治など、駆け出しはまず死にに行くようなことなので受注しない。

 熟練の冒険者も若火竜(ヤングレッドドラゴン)だけではなく、飛竜(ワイバーン)も居ることから、難易度がかなり高いことを悟った。ゴブリンが周りにいる? そんなのは蹴散らせばいいと考えている。

 一部の中堅冒険者は受注しようか迷ったものの、銀等級4人が逃げ帰る事態という事実に、やめることにした。周りにいるゴブリン? そんなのは駆け出しがやることだ。

 

 実際に危険な目にあった4人の銀等級冒険者たちは、そのゴブリンが厄介だったのを理解している。

 空と地上からの攻撃に意識を割かなければならず、ゴブリンは数が多い。ゴブリンの攻撃程度、1、2回なら問題にならないが、10回も攻撃されれば鎧の隙間に粗悪な武器の刃で骨も断てる。

 子供程度の腕力とは言え、10匹も同時に飛び掛かってくれば、対処するのは困難だ。前衛と闇女斥候が組み付いたゴブリンを取り払わなければ、粗悪な武器でめった刺しで死んでいただろう後衛。

 すぐに取り払っても、毒が付着した武器で1回刺された。しかし、モンスターたちに対処するのに精一杯で、解毒剤(アンチドーテ)を自身で飲むことができなければ、そのまま後衛は死んでいただろう。

 注意を飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)に向けて、後ろの警戒をしていなかったことによる奇襲を受け、後衛の戦闘不可。

 

 ゴブリンごときが生意気な、と一党の全員が思う。だが、あの逃走でゴブリンを軽視することは、してはならなかったと反省した。

 だが、闇女斥候だけで再挑戦(リトライ)することは無理だ。

 数は足らず、質も揃えなければならない。

 竜退治とゴブリン退治。

 前者は実力がなければ餌になるだけ。後者はゴブリンなど駆け出しの仕事と、熟練の冒険者はやりたがらない。

 そこで闇女斥候は思い出した。

 ゴブリンスレイヤーなる銀等級と実力が等級にあっていない駆け出しを。

 

 

 

「ゴブリンスレイヤーさん、ハンターさんにお手紙です」

 ギルドでいつものように依頼を受けようとしたハンターだが、受付嬢にゴブリンスレイヤーと同時に呼び出される。

 受付嬢はゴブリンスレイヤーに手紙を渡し、次にハンターへ手紙を渡すしぐさをした。ハンターは手紙を受け取ろうとしたが、受付嬢は力強く摘んで抵抗し渡してくれない。

「ところでハンターさん。サイクロプスと吸血鬼の討伐に参加されたそうですね」

「した」

 ハンターは受付嬢の言葉を肯定し、にっこり微笑んでいる受付嬢を見た。

 

 眼に光が灯っていない。

 

 微笑んでいるまぶたの隙間から見えた眼は暗く、数々の龍を討伐してきたハンターは、一瞬固まった。まるで一昔前に龍に遭遇し、自然と身をすくませたように。

「報告では現地で依頼を受け、死霊師(ネクロマンサー)を倒した、としか、書かれていませんでしたよ」

「あ、あれは依頼じゃなかったし?」

「追加討伐だと思うんですけどねぇ? そういったことも報告してほしいんですけどねぇ?」

「つ、次から気をつけます」

「ええ、是非そうしてください。そうしないと報告書の矛盾点や裏取りに、時間を費やす職員が出てきますし、ギルドへの虚偽報告とみなされかねないので」

 受付嬢の威圧感は凄まじい。

 彼女ならば、ミラボレアスでさえ逃げてしまうと思う。

 

 ハンターはいそいそと手紙を開けた。

 王都からの名指しの依頼で、飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)が現れたので退治してほしいというもの。

 救援要請である。

 行くっきゃないハンター。

 ゴブリンスレイヤーの手紙は、差出人が闇女斥候。その竜にゴブリンが乗って現れ、討伐を手伝ってほしいとのこと。その際、ハンターにも同行を求めることが書いてあった。

「ゴブリンだ。お前も来いと書かれている」

「場所は、一緒のところだな」

「どうする」

「無論受ける」

 こうしてゴブリンスレイヤーとハンターは、狩場に向かうことになった。




王様「ゴブリン? そんなものより竜のほうがまずいだろ! 確か辺境の街に黒竜を倒したハンターが居たな。そいつに任せよう(ゴブリン軽視、ハンターに丸投げ)」

 本当はMH世界のクックあたりで良かったかもしれない。
 小鬼竜操師(ゴブリンドラグナー)は、他のMHSTゴブスレ二次を見ていて思いつきました。
 ゴブリンだって乗れなくはない!
 けど、絆とか仲間とかではなく、支配の魔法で操っているだけ。
 なんで、実物よりも弱かったりする。行動が2回から1回に減少。命令も大雑把。
 3匹同時に器用に操るなんて、ゴブリンじゃ無理に決まってる。所詮はゴブリン。(慢心)

女魔術師、女魔法使い どっちがいい?

  • 女魔術師
  • 女魔法使い

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