ゴブリンスレイヤーとモンスターハンター   作:中二ばっか

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2-7 役割

 依頼を受注したゴブリンスレイヤー、ハンター、闇女斥候は山を登っている。

 山は岩肌だらけで、樹林帯はなく見晴らしが良い。

 闇女斥候から依頼内容を聞いた。

 ゴブリンがドラゴンに乗って、かなり厄介な敵になったらしい。

「しかし、どうやって戦う?」

「手はある」

「どんなだ?」

「言わん。ゴブリンに漏れるかもしれん」

「……」

 闇女斥候はゴブリンスレイヤーの態度に声を上げようとするが、ぐっと堪えた。

 こんな所で声を上げれば、敵に気付かれる。

「ふん、作戦があるのならばいい」

 渋々と納得することにした闇女斥候。

 しかし、ゴブリンどもは鼻が良い。特に女の匂いを嗅ぎ分けられる。

「GYAGYAA‼」

 すぐに山に居る闇女斥候の匂いを嗅いで、気付いている。

 飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)に乗ったゴブリンたち。前のように吹き飛ばされないように、体に石を紐で縛って重りにしている。

 しかし、石を持ったことで飛行の速度、高度が落ちている。

 

「やるか」

 ゴブリンが乗った飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)を見つけたゴブリンスレイヤーは巻物(スクロール)を広げた。

 そこから天気の様子がおかしくなる。

 空に黒雲が突如生まれ、強い風と雨が降る。そして、ゴゴゴと鳴り響き出す。

 雷雲が生まれた。

 そんな雷雲の中を飛んでいるゴブリン、飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)は水に濡れ、氷にぶつかり、雷が走る。

 濡れた体に強力な雷が焼く。

 呪文の稲妻(ライトニング)を遥かに上回る雷は、一瞬にして命を奪う。

「雲の中は水や氷、雷の嵐だ。その中をゴブリンは無傷でいられない」

巻物(スクロール)はかなり高額だが」

「前のサイ――、なんだったか」

「サイクロプスだ。それと吸血鬼」

「その討伐報酬で買った」

「ゴブリンを倒すために?」

「ああ」

 闇女斥候の記憶では、あのときの報酬はかなりの高額。そして、その金で強力な剣なり、堅牢な鎧を買うのが普通の冒険者だ。

 巻物(スクロール)は確かに利便性があるが、消耗品だ。

 これほどの効力がある巻物(スクロール)ならば、他の場面にも使える。

 なのにゴブリンに使うために巻物(スクロール)を購入する奴を、闇女斥候は驚きと呆れた眼で見た。

 

 ギャギャと騒ぎ出すゴブリン。

 ゴブリンたちは馬鹿な奴らが死んだと大騒ぎ。

 雷に驚いた後は、雷に打たれ墜落した小鬼竜操師(ゴブリンドラグナー)飛竜(ワイバーン)若火竜(ヤングレッドドラゴン)を笑っていたが、ムクリと動く1つの巨体を見てぎょっとする。

 確かに自然の脅威は若火竜(ヤングレッドドラゴン)の命を脅かした。

 だが、若くとも竜だ。

 自然の脅威に、力の象徴たる竜は安々と倒れはしない。

「GUOOOOO‼」

 咆哮を上げる若火竜(ヤングレッドドラゴン)

 それは小鬼竜操師(ゴブリンドラグナー)の洗脳が解けた合図。

 怒りに満ちた若い竜は、ブレスでゴブリンたちを蹴散らす。

 一瞬で炎に身を包んだゴブリンは、黒焦げとなり即死。

 ブレスの範囲に居なかったゴブリンたちは逃げ出した。

「逃がすか」

 若火竜(ヤングレッドドラゴン)のことは気にもせず、ゴブリンたちを追うゴブリンスレイヤー。

 彼は決して若火竜(ヤングレッドドラゴン)のことを軽視していたわけではない。

 

「奴は任せた」

 若火竜(ヤングレッドドラゴン)はハンターに任せ、自分の役割を果たすだけである。

 

「任された」

 ハンターは若火竜(ヤングレッドドラゴン)に向かって駆け出す。

 向かってきたハンターに怒りをぶつけるように、若火竜(ヤングレッドドラゴン)はブレスを吐き出す。

 高熱の炎をひらりと横に避けて、太刀を抜き放つハンター。

 鎧よりも硬い鱗をいとも簡単に切り裂く。

 傷口から血が吹き出し、若火竜(ヤングレッドドラゴン)が悲鳴を上げる。

 与えられた傷からボタボタと流れる血は、今の一撃で相手が格上であることを否が応でも理解させられた。

 若火竜(ヤングレッドドラゴン)は勝ち目がないことを悟る。

 そして、逃亡を図ろうとするが、続く太刀の斬撃で翼の付根を切られる。痛みで怯んだ若火竜(ヤングレッドドラゴン)。続けてハンターは足を切り裂いて転倒させる。

 巨体が硬い地面に横たわり、小さく揺れる。

 小鬼竜操師(ゴブリンドラグナー)に操られ疲労した体に、雷の威力、今の出血量。竜の生命力が強くとも、息は荒々しく、徐々に弱々しくなっていき、もうじき命絶える。

 そんな若火竜(ヤングレッドドラゴン)の命を、太刀を振り下ろし刈り取る。

 眼から光を失い、息を引き取った若き竜。

 ハンターは、その骸を剥ぎ取りナイフで解体していく。

 初めて解体するモンスターだが、その動きには躊躇がない。

 

 その様子を岩陰から見ていたゴブリン。

 馬鹿な奴、と剥ぎ取りをしているハンターに忍び寄る。解体に夢中で自分(ゴブリン)のことを忘れていると思っている。

 だが、獲物に夢中になる故に背後に気づかない。

 自分が獲物になっていることを。

 ゴブリンが岩陰から飛び出すと同時に、闇女斥候が声を上げる。そして、ゴブリンの上から襲いかかる人影。

 いつの間にか持っていた中途半端な剣は、粗末な槍に換わっている。だが、ゴブリンを殺すのには問題ない。

 脳天から釘刺しになったゴブリンは、ハンターに一撃を与えることもできなかった。

「12、気を抜くな」

「抜いてない」

 ハンターは倒したモンスターの解体中に、小型モンスターに群がられることなど多々あることだ。気など抜いていない、抜けるはずもない。

 次々と小型モンスターが噛みつき、突進し、解体できずに村に帰らなければならなかったことは、今でも怒りとともに思い出せる。

 無論、ゴブリンが襲いかかってきたら、即座に振り向いて太刀を振り抜いた。

 剥ぎ取りを邪魔するものなど、同じハンターであろうとしてはならぬこと。

 もしすれば、ハンターとハンターが武器を手に、限界時間まで殴り合うこと間違いない、というかなった。そして最終的に、町や村に戻るまで仲間と殴り合うことが遊びになる。

「それでゴブリンは全部か?」

「いや、山に巣穴があるはずだ」

「乗り込むか」

「当たり前だ。ゴブリンは皆殺しだ」

 そう言ってゴブリンスレイヤーはゴブリンの死体にナイフを突き刺し、臓物を捻り出す。そして、ひねり出した臓物を布で包み、絞る。

「……何をしている?」

「臭い消しだ。奴らは鼻が良い」

「……なぜ私に近づく」

「女、特に子供、森人(エルフ)の匂いに奴らは敏感だ」

「わ、私は、森人(エルフ)でなく、闇人(ダークエルフ)だっ!」

「そうか。だが、女だ」

 闇女斥候に迫るゴブリンスレイヤー。

「助けろ!ハンター!」

 ハンターは死んだ飛竜(ワイバーン)から素材を剥ぎ取っていた。

 助けはない。

 

 

 

 結果、闇女斥候の軽鎧は赤黒く汚された。

 さすが、ゴブリン。ひどい匂いが闇女斥候の鼻を殺している。

 嫌なら帰ればいいとゴブリンスレイヤーが言ったが、闇女斥候は拒否した。

 何一つやっていない闇女斥候。このまま帰ってしまえば、それこそただの寄生だ。

 これもそれも、ゴブリンが悪い。

 ゴブリンなど滅びてしまえ。

 そして、ゴブリンスレイヤーは変な奴ではない。大嫌いな奴だ。

「……っ」

 闇女斥候は親の仇を見るような眼でゴブリンスレイヤーを見ている。

「剣で斬りつければ返り血は浴びるんじゃないのか?」

「浴びたくて浴びたいものではない!」

 ハンターの疑問に、我慢できず闇女斥候が叫ぶ。

「静かにしろ、気づかれる」

「ッ‼ッ‼」

 顔が赤く染まるほどに闇女斥候は憤慨した。

 ハンターは血の匂いなど嗅ぎ慣れている。確かに嫌な匂いだが、我慢できないほどではないはずだ。それに、モンスターの返り血なんて、近接攻撃をすれば頭から浴びたって、戦闘中に気にしない。

 気にすればモンスターから攻撃をもらう可能性は高くなる。

 まぁ、返り血をそのままにすることはしないが、基本的にモンスターと戦えば血生臭くなる。

 臭いと言えばババコンガのオナラだ。

 正面を避け、背後に回ったハンターに怒りで興奮し、ババコンガが噴出する茶色の悪臭。それの近くに居れば吹き飛ばされ、まともに物が口に入らなくなるくらいの酷い匂い。更に糞を投げつけるという下品な攻撃。

 そこでふとハンターは思い出した。

「消臭玉といって、体に取り付いた臭いを消すアイテムなんだが」

「くれ!」

 ハンターがポーチから取り出し、手に持っていた水色の玉を即座に受け取った闇女斥候。

 地面に叩きつけると水色の煙が吹き出し、闇女斥候に取り付いていたゴブリンの悪臭を消し去った。

 スンスンと自身の匂いを嗅ぐ闇女斥候。

「凄いな。確かに消えた。どこで売っている?」

「俺が調合した」

「ほう」

 全く匂いがなくなったのか。清々しい顔をする闇女斥候。

 だが、今から巣の中のゴブリンを倒しに行く。

「でも、今から臭いを消してどうするんだ?」

「あ」

「ああ、これではゴブリンに気付かれる」

 再度、ゴブリンスレイヤーが持った血糊で汚される闇女斥候であった。

 

 巣には子供ゴブリンが息を潜めていただけで、見つけ出したゴブリンスレイヤーと憂さ晴らしとばかりに闇女斥候が殲滅した。

 

 

 

 手に入った戦利品、若火竜(ヤングレッドドラゴン)飛竜(ワイバーン)の素材。そして、小鬼竜操師(ゴブリンドラグナー)が持っていた強力な力を持つ杖。

 どれも売れば高額になるものだ。

 普通は全て売って報酬に加算し、一党(パーティ)で均等に金額を振り分ける。

 だが、この一党(パーティ)では違った。

「この杖は破壊する」

「はぁああ⁉ふざけるな⁉」

 ゴブリンスレイヤーの発言に闇女斥候は反対する。

 理解ができない闇女斥候にゴブリンスレイヤーは語る。

「今後もゴブリンに利用されるかもしれん」

「むぅ」

 唸る闇女斥候。

 確かにその杖をゴブリンが利用し、追い込まれてしまった。

 故にゴブリンスレイヤーが言うことも理解できなくはないが、もったいないという気持ちが心に渦巻く。ハンターも思うことだ。

「しかし、次もゴブリンに利用されるということになるのか?」

「あの杖は元々冒険者の物だ。売って、それを他の冒険者が使い、また奪われることになりかねん」

 ゴブリンの巣には翠玉、青玉の認識票が無造作に放置されていた。そして小鬼竜操師(ゴブリンドラグナー)が着たローブ。他にもゴブリンの何体かは防具を装備していた。

 強力な装備をゴブリンが奪い、面倒になる嫌な例だ。

 今後もそんなことがあるかもしれない。

「……仕方がない」

 闇女斥候は渋々納得する。

 ハンターが太刀を抜き、立派な杖を切り裂く。

 すぱっと真っ二つにされた杖は、もう使い物にならない。

 それでも報酬と若火竜(ヤングレッドドラゴン)飛竜(ワイバーン)の素材を売ったので、かなりの高額になった。

 金貨が詰められた袋を見て、ほくほく顔になった闇女斥候だった。




 3DS MHXXを久しぶりにやってみた。
 かなり討伐に手間取った。
 と言うか、回復役Gの使用量が半端ない。

女魔術師、女魔法使い どっちがいい?

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