ハンターは依頼を終え、辺境の街に帰る途中で、ある村に立ち寄った。
「冒険者の方! 助けてくだせぇ!」
ハンターが村に泊まれるところ、宿か、小屋を探しているところで、村の人が駆け寄ってきた。
話を聞いてみるとゴブリンが村に近い砦に棲み着いてしまい、村娘が攫われた。助けてほしい。いつもの話だ。
そんなところにハンターが立ち寄った。
ハンターは依頼は受ける気でいたが、どうやら他にも依頼を受けたパーティが来たらしい。
どうするべきだろう、とハンターは考える。
彼女たちはハンターの参戦など予想していなかっただろう。
だが、リーダーである自由騎士は「私は構わない」と、言った。
周りの仲間も問題ないと頷く。
まぁ、救援要請のようなものだと、ハンターは思うことにした。
森の中を進み、見えてきた砦。
巨大な木の中をくり抜いた砦であり、森人たちが住んでいた所だ。
森人たちは今は去り、残った砦にゴブリンが棲み着いてしまった。
森人たちが砦に仕掛けた罠は、面倒なことにゴブリンに利用されている。
そこでハンターは、奴らの巣に殴り込むより、火でも付けて砦ごと燃やしてしまおうと提案。
「攫われた娘がいるんです。一緒に燃やす気ですか」
ハンターを睨みつける自由騎士。他のメンバーもハンターを見る目は厳しい。
だが、言っておくことはある。
「生きていればいいが、たぶん、もう時間がかかり過ぎて、亡くなっている可能性が高い」
「……だとしても、生死の確認、遺品の回収くらいはしなければなりません」
彼女たちも攫われた娘が五体満足で健康そのもの。暴行も受けていないとは思えない。
だが、生きているのならば、助けに向かうべき。そういう方針になった。
圃人野伏が砦の罠を解除し、ハンターたちが後を付いていく。
圃人野伏、ハンター、森人魔術師、自由騎士、女僧侶の順に奥へと進んでいく。
ゴブリンたちにとって昼間は夜。警戒が強く、見張りや巡回しているゴブリンもいる。
そういった起きているゴブリンは、ハンターが眠りナイフをスリンガーで発射し、眠らせ、悲鳴を上げることなく殺っていく。
そうして、ゴブリンの寝床へとたどり着いた。
ゴブリンはざっと30匹以上。
寝床の中央に娘が倒れている。
すぐに駆け寄ろうとした彼女たちだが、ハンターが首後ろを掴み押し留めた。
「ゴブリンを殺してから、確保だ。確保してからゴブリンたちが起きたら面倒だ。娘を守りながら戦うのはキツイだろ」
ハンターはゴブリンに気づかれないよう、小さな声で、だが、強い口調で言った。
「……ッ」
彼女たちはハンターを睨みつけたが、大量のゴブリンから娘を守りながら戦うことの難しさを考え、納得した。
森人魔術師が
コップ1杯の酒が霧となって、ゴブリンたちの寝床に漂う。
ゴブリンたちは寝ていたが、更に深い眠りへと落ちていき、刺激を与えない限りは目を覚まさないようになった。
なので永眠させてあげよう。
ハンターは双剣で、スパスパとゴブリンを斬っていく。
自由騎士は剣、圃人野伏は短剣でゴブリンを殺していった。
女僧侶が娘の無事を確認しようとしたところ、娘が息をしていないこと、娘が細い糸で繋がれていることに気付く。
女僧侶が首をふることで、娘の生存を否定した。
それが義憤に駆られ力加減を間違えてしまったのか、殺し続けたせいで武器が血糊で滑ってしまったのか、ゴブリンを殺し損ね、起きてしまった。
「GOBU⁉」
「このっ!」
なんとか、殺し損ねたゴブリンは殺すことができたが、まだ殺していなかったゴブリンたちが起きてしまった。
それからぞろぞろとゴブリンが起きて、次々押しかけてくる。
「ちっ。目を閉じろ!」
思わず舌打ちしたハンターは、スリンガーに閃光弾を装填し、地面に向けて発射する。
閃光はゴブリンたちの目を眩まし、おぼつかない体に太刀で斬りつけたハンター。
太刀の大きな刀身は、数匹のゴブリンをまとめて斬り飛ばし、絶命させる。
自由騎士、圃人野伏もそれぞれの武器でゴブリンと戦う。
しかし、いくらハンターが強くとも対処できる数には限りがある。
ぞろぞろと無限湧きにも思えるゴブリンは、ハンターがうんざりし、女冒険者達が顔を青くするくらいには多い。
「逃げるぞ!」
ハンターの言葉に、反対はない。
逃げる途中、ハンターは毒けむり玉を地面に投げつけ、毒煙が追うゴブリンの鼻や口から入り込み、体を蝕む。
ゴブリンの体は小さく、走って追いかけてきているので血の巡りも速い。体中に毒が回るのも速く、走っている途中で死ぬゴブリンが続々と出てくる。
かなりのゴブリンが毒煙を吸ったが、それでも生き残ったゴブリンたち。
ゴブリンは、他のゴブリンが何体死んだところで、悲しみなどない。むしろ、馬鹿だ、間抜けだと嘲笑う。もしくは、殺した相手をなんて酷い奴だと罵るくらいだろう。自分たちが娘にしたことなど棚に上げて。
そして、男は殺し、女は嬲る。
しかし、そんな妄想をするゴブリンたちには、少なくともハンターたちを追っていたゴブリンには無理だった。
「足止めの呪文か奇跡って何かあるか⁉」
「私が、
女僧侶が祝詞を唱え、透明な壁が生まれる。
通路に生まれた透明な壁が、ゴブリンたちの追走を阻止した。
「火をつけろ! ランタンでも、松明でも、よく燃えるだろうよ!」
火を付けた松明でハンターは、木製の砦に振り回す。自由騎士はランタンを、火が着いたところに投げ、ランタンの中にある油に引火し、燃える勢いが強くなる。
枯木のような砦は、すぐに火が付き、燃え上がり、火が回る。
ハンターたちは通路が火で塞いだ後にすぐに逃げる。
前にいたゴブリンたちは、燃え移った火で焼かれる。もしくは、火に怯え後ろに下がろうとする。
追って来ていたゴブリンも、前にいるゴブリンが邪魔で立ち止まってしまい、次々と後ろからゴブリンが走って来たので戻ることも難しい。
大声でゴブリンが叫ぶものの、後方のゴブリンたちは男を殺そうと、女を嬲ろうと興奮気味している。速く速く! 進めよ! と言っているのに進まず、興奮が苛立ちに変わる。
そして、苛立ちが火の驚きに変わったときは、もう手遅れ。
煙で息は苦しくなり、ついには息ができなくなる。
火事のときのおかし。
押さない。駆けない。喋らない。
守らないとこうなる。
砦の出口付近まで来たハンターたち。
しかし、騒ぎを聞きつけて、先回りしたゴブリンたちが待ち構えているはずだ。
「目を閉じろよ!」
ハンターは装填していた閃光弾を出口外に向けて発射。
弾けた閃光の後に、目を焼かれたゴブリンたちのギャーギャーと騒ぎ声が出る。
目が眩んでいるゴブリンたちを、前衛の自由騎士、圃人野伏、ハンターはそれぞれの武器で倒していく。
後ろは燃え盛る砦。
周りはゴブリンの死体と血で溢れかえっている。
疲労が溜まった彼女たちは座り込み、返り血を拭ったり、休憩したりする。
ハンターはゴブリンの残党狩りのために、携帯食料を食べてスタミナを回復した。
「私も……っと」
立ち上がろうとしたときに、足に力が入らなかったのかふらついてしまう自由騎士。
「リーダー休んでいてください。私が行きます」
森人魔術師がハンターについてくる。女僧侶はこの場に残り、ゴブリンがこちらに来ても対処できるようにした。
ハンターと森人魔術師は砦の周りを調べ、潜んでいるゴブリンを探す。
森人魔術師の耳は良く、潜むゴブリンの息遣いを聞き取る。
「あそこだ!」
森人魔術師が指示した場所に潜んでいたゴブリンが、気づかれたと自暴自棄気味に襲いかかってくる。
ハンターへは向かわず、与し易そうな森人魔術師へと3匹がかりで。
3匹、密集して襲いかかったのは、ハンターからすればありがたい。
奴らは密集して襲えば、例え1匹は死んでも、森人魔術師を組み伏せ、人質にし、ハンターを脅すなり、手を出し辛くするなり考えたのかもしれない。そして、ゴブリンは殺される1匹が自分自身だとは思わない。
だが、太刀の間合いに入ったゴブリンたちは、横薙ぎで3匹とも真っ二つだ。
その後も森人魔術師が索敵、ハンターが殲滅で、残党も片付く。
依頼を終え、辺境の街に帰るハンター。
自由騎士たちも依頼の報告をする。
「助かった。礼を言う。私達になにかできることがあるのなら何でも言ってくれ」
「スケベなことはリーダーに頼むよ」
「なっ⁉」
圃人野伏のチャチャに、一瞬にして顔を赤くした自由騎士。
ハンターは早速、彼女たちに農園の手伝いをしてもらうことにした。
タイトルの「も」ですが、火事でしてはいけないことに「おかし」と学校では教えられてました。
お、押さない。
か、駆けない。
し、喋らない。
でも、最近では「おかしも」となり、も、戻らないが追加されたらしいです。
女魔術師、女魔法使い どっちがいい?
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女魔術師
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女魔法使い