「なんなのよ、もう・・・・・・。訳わからない」
泣きじゃくる妖精弓手。
白磁の頃にゴブリン退治の依頼を達成していたとしても、ここまで酷いゴブリンの悪意を見たことはなかったようだ。
蜥蜴人僧侶が竜牙兵を奇跡によって作り出し、近くのエルフの里へ送り届けた。
骨で出来た、スケルトンの親戚に見える竜牙兵は、傷ついた森人を抱え走って行った。
例え、秘薬や奇跡で体の傷が癒えたとしても、心まではどうしようもない。
1人で薬草を摘んでいるところを襲われたか、この遺跡を探索している間に捕まってしまったか。
ゴブリンスレイヤーが汚物溜めを漁って、彼女のカバンを見つける。中にはこの遺跡の地図が入っていた。とすると、彼女は冒険者だったのかもしれない。
ゴブリンスレイヤーは地図を見て、ゴブリンの寝床に見当を付ける。
その地図、カバンを妖精弓手の前に投げたゴブリンスレイヤー。
「お前が持て。いくぞ」
「ゴブリンスレイヤーさん!もう少し言い方が」
「いいの」
ぶっきらぼうな言い方に女神官は、さすがに配慮が足りないと思った。
しかし、妖精弓手は立ち上がって、カバンを拾い上げる。
「行かないと、いけないものね」
「ああ、ゴブリンは殺さねばならん」
ゴブリン退治はまだ始まったばかりだ。
道中の罠は妖精弓手やゴブリンスレイヤーが見つけ、闇女斥候が解除する。
巡回しているゴブリンも妖精弓手に射抜かれ、例え仕損じてもゴブリンスレイヤーが飛びかかって即座に倒す。
問題なく進んでいる中、いよいよゴブリンの寝床近くまで来た。
「あの」
小休憩を取り、使える呪文、奇跡の回数確認をする。
「飲みますか?」
「ありがと」
女神官が妖精弓手に水袋を渡す。
喉を潤すが飲み過ぎるとまずいと思ったのか、ゴブリンスレイヤーが忠告する。
「あまり腹に物を入れるな。血の巡りが悪くなる」
「それに動くと腹が痛くなる」
乗るようにしてハンターも忠告するが、女神官にはあまり良くなかったようだ。
「もう少し労ってあげてもっ!」
「誤魔化す必要がない」
ハンターはすまなそうに頭を掻くが、ゴブリンスレイヤーはいつも通り淡々として動じていない。
「行けるのならこい。無理なら戻れ。それだけだ」
「馬鹿言わないで。同胞があんな目にあって黙ってられないわよ。近くには私の故郷だって!」
「そうか。なら行くぞ」
と、妖精弓手の激昂や心情などどこ吹く風のゴブリンスレイヤー。
彼らしいと言えば彼らしい。
「落ち着け、耳長の。敵地で騒ぐもんじゃないわい」
「・・・・・・そうね」
落ち着くために呼吸を整えた妖精弓手。
「鉱人に従うのはシャクだけど、正しい意見ね」
「ほ、調子が戻ったようじゃの」
先程とは顔色が変わった彼女に続くように、他の者どもが歩き出す。
「ま、頑張ってくれるのなら、こっちは楽ができていい」
「あんたも前に来る!本職の斥候でしょうが!」
妖精弓手に叱られ、やれやれと前に出た闇女斥候。
「さ、いよいよ大詰めか?」とハンターも続く。
「でしょうな。拙僧も祈祷の準備をしなければ」
蜥蜴僧侶が奇妙な合掌をして、歩き出す。
「油断大敵じゃぞい」
鉱人導師が雑囊の中にある触媒を弄りながら進み、女神官は手に持った錫杖に力を込めて続いた。
回廊に突き当たり、吹き抜けた大広間が下にある。
大広間には沢山のゴブリンが床に寝ていた。少なくとも50はいる。
ハンターは双眼鏡を使い確認するが、ゴブリンの寝顔など見ていてもなんにもならない。
周囲を見るが、ハンターは夜目はいい方だが、さて森人や鉱人と比べるとどうだ。
少なくとも月もない真っ暗闇を見通すことはできない。
「ちょっとグアサング、それ貸して」
双眼鏡をしまおうとしたところで、妖精弓手が双眼鏡をねだってきた。
まぁ、暗視持ちの彼女ならなにか見えるかもしれない。
「……奥にも通路があるけど、やっぱ中までは見えないか」
どうやら、大広間に続いている通路がある。
ハンターにも通路があることしかわからない。
通路奥に他のゴブリンがいるのか。
ともかく、大広間のゴブリンを掃討するのが先だ。
鉱人導師が
女神官が
そして、下に降りたゴブリンスレイヤー、蜥蜴僧侶、妖精弓手、ハンターがゴブリンを殺す。
例え、初撃で殺しそこねても、騒ぎ立てる前にやれる。
呪文の効果が切れても、闇女斥候が上で
ハンターは音が出ないことをいいことに、ゴブリンを太刀で一刀両断する。
鬼人薬を飲み、力の上がった斬撃は、綺麗な断面となっており、一拍遅れて血が吹き出す。
それを続け、切れ味が鈍くなってくれば砥石を使い、太刀の切れ味を取り戻す。
寝ているゴブリンに太刀を振り下ろすだけの簡単な仕事である。
どうせなら爆弾を沢山置いて、一気に吹き飛ばしたい。だが、殺しきれずに衝撃で目を覚ましたゴブリンたちが、群れで襲い掛かってきたら堪ったものじゃない。
作業のようなものだが、ハンターにとってこのような作業、まぁ、つまらなさはあるものの、苦にはならない。
なにせ、目につくゴブリンをすべて殺せばクリアだ。
レア素材を得るために何度もクエストを周回する必要もない。
お守りを得るために、どれほどブラキディオスを殺ったか。
装飾品を得るために、どれほどジンオウガを殺したか。
そして、望んだ結果は得られない。
次こそは、次こそは、とクエストをやり、だが結果は残念。
それに比べれば、この程度の殺戮、楽だ。
ゴブリンが真っ二つになっていくさまは、ハンターにとって爽快感すらある。
そうしているうちに、大広間のゴブリンたちを殲滅し終えた。
殲滅を確認し、女神官、鉱人導師、闇女斥候が大広間に降りてくる。
それを確認したゴブリンスレイヤーは、大広間奥の通路へと剣で示す。
奥に生き残りがいれば、先程までと同じように殺るだけである。
ずかずかと無造作に歩き出したゴブリンスレイヤーに、他の者達も歩き出す。
その時、地面が震えた。
震源の先は、通路の奥からだろう。
誰もが立ち止まり、警戒する。
この感覚、ハンターには覚えがあり、即座にポーチからいろいろなアイテムを使用する。
ずん、ずん、と巨体が動く音だ。段々とこちらに近づいてくる。
つまり大型モンスターとの戦闘。
その前に、万全な状態にする。
怪力の種を食べ、鬼人の粉塵を撒く。
戦闘前のバフは、こっちでもあっちでも常識だ。
ついでとばかりに、閃光弾をスリンガーにセットする。
ハンターの様子を見て、ゴブリンスレイヤーも同じように赤い種と薬を兜の隙間から飲み込み、会心の刃薬を使う。一瞬燃え上がり、よくよく見れば淡く赤い光が灯っている。
そして、ついに通路の奥の暗闇から姿を現す。
頭に角が生えた灰色の巨体。軽くハンターの身長を2倍は超え、まさしく巨人だ。
手にはその巨体にあった長さの戦鎚。金色の瞳は闇の中でも分かりやすい。
そして、2体の巨人は口を開いた。
「ゴブリンどもがやけに静かだと思えば、雑兵の役にも立たんか」
「我ら兄弟の砦と知っての狼藉と見た」
4つの目からの殺気が突き刺さる。
冒険者たちに緊張が走り、頬に汗が流れた。
オーガ。人食い鬼とも呼ばれるモンスター。
強固な盾と鎧を身にまとった騎士が、オーガの一撃で盾と鎧ごと潰され圧死する。
優秀な魔術師の放った魔術が、オーガの魔術に敗れ死んだ。
そんな凶悪な奴が2体もいる。
普通に考えれば、銀等級が5人、鋼鉄が1人、白磁が1人の一党では、絶望的な状況。
そんな中、いつも通りの奴らがいた。
「……なんだ。ゴブリンではないのか」と、ゴブリンスレイヤーは淡々と言い。
「ゴブリン亜種とかじゃねぇの?」と、ハンターは疑問にした。
その疑問に律儀に、しかし、面倒臭そうに返答するゴブリンスレイヤー。
「あのようなゴブリンなどいてたまるか」
2人が話す中、全員が2人を見ていた。
「オーガよ!あなた達知らないの⁉」
妖精弓手が信じられないと叫びながら、しかし、2人の答えは冒険者としてはありえない返答をする。
「知らん」
「知らない」
その言葉に我慢ならなかったのか、オーガは怒鳴る。
「貴様ら!魔神将より軍を預かる我らを愚弄するか!」
「我らを見てゴブリンだと⁉貴様らは、我らをゴブリンごときと同じだとでも思っているのか‼」
彼らの望んだ答えは何だったのだろうか。
「貴様も、魔神将とやらも知らん」
「軍って……ゴブリンしか見なかったんだけど?」
少なくとも、2人の口から出た言葉ではない。
「「貴様らは殺す‼」」
頭に血が上っていたとしても、戦い方は忘れていない。
1体が前に出て前衛をして、後方のオーガは手を突き出し、呪文を唱えようとする。
だが、敵に呪文を使わせてやるほど、優しくはないハンター。
スリンガーに装填されている閃光弾を放ち、オーガたちの目を晦ます。
そして、その辺に落ちている石ころをスリンガーに装填し、鉤爪、クラッチクローを前衛オーガの頭を狙って放つ。
「ちぃ、ちょこざい――ながっ⁉」
強烈な光に目を焼かれ、視力を失った前衛のオーガは、頬に何かが張り付くのを感じる。その直後、強力な力で2回殴られた衝撃で体が後ろを向き、眼球に何かをねじ込み、撃たれた。
「ぐがぁああ、あが⁉」
「ぐぅお⁉」
あまりの痛みと衝撃をくらい、ぶっ飛ばされ、走り出した前衛のオーガ。
そして、後衛にいたオーガにぶつかる。
オーガたちは転倒し、起き上がろうとするも、頭をぶつけたのか上手く起き上がれない。
あまりの光景に一瞬ぽかんと呆けた冒険者達だが、2人は即座に倒れたオーガへと向かい、続いて動き出す冒険者たち。
ハンターは倒れたオーガの脳天に、先程ゴブリンたちを斬ったときに生まれた練気を使い、太刀に気を纏わせた気刃斬りで斬りまくる。
ゴブリンスレイヤーは後方のオーガに襲いかかる。硬い皮膚を持つはずのオーガに深々と剣で切り裂くことができるのは、先程摂取した種や薬品によるものだ。
蜥蜴僧侶、妖精弓手、闇女斥候も粉塵による恩恵を受けており、いつもよりも攻撃が強くなっているのを感じる。
「あ、に、じゃ……」
と、ハンターが斬りつけていたオーガは、そんな言葉を残し、絶命する。
すると同時に、転倒から復帰する後衛のオーガ。
「離れろ!雑兵ども…が」
起き上がり、手を振り払い、攻撃していたゴブリンスレイヤーと蜥蜴僧侶を遠ざける。
離れる際、ゴブリンスレイヤーは地面にシビレ罠を設置する。
そして、閃光弾による失明から回復し、見たのは弟オーガの死体。
「貴様ら!貴様ら‼許さん!殺してやる!殺してやるぞ‼」
ダメージによる怒り移行ではなく、弟を殺されたことに対する怒りがオーガを強くした。
が、注意力がなくなり、足元をお留守にした。
シビレ罠を踏んだオーガは、全身に電流が走り、動けなくなる。
そのチャンスは逃さない。
ハンターは、兜割りでオーガの頭上へと飛び上がり、動けないオーガの頭から地面に向けて太刀を振り下ろす。
一拍の後、滝のように流れ出した血。
ゆっくりと後ろに倒れるオーガ。
倒れたときに地面が揺れ、一瞬だけ静寂が辺りを包んだ。
物言わぬ死体となったオーガたち。
「まぁ、なんと言ったか」
死した者を貶めようとも、罵ろうとも思っていない。
ただ、自身にとって、思ったことを口にしているだけだ。
「お前らなんぞよりも」
倒したオーガにナイフを突き立て、角や爪、眼球、皮を剥ぎ取り、解体していくハンターを見ながらゴブリンスレイヤーは呟いた。
「奴の方がやばい」
女神官が引きつった顔で苦笑し、他の面々は頷いていた。
通路の奥も確認するが、オーガたちがいたと思われる一室には何もない。
見るものは見たと、遺跡の入り口へと戻った。
そこには森人の戦士が馬車を用意している。
「お疲れさまでした!中の様子、ゴブリンどもはどうなりましたか?」
「ゴブリンは倒した。オー……いや、すべて殺したと思うが、入るなら油断はするな」
「ええ、分かりました。どうぞ、街まではゆっくりお休みください」
森人の戦士はそう言って、遺跡の中へ。
冒険者たちが全員馬車に乗り、走り出す。
そんな中、妖精弓手は女神官に聞く。
「ねぇ、いつもこんなことばっかりやってるの?」
「えっと、まぁ、ゴブリンスレイヤーさんは……そうですね。ハンターさんも」
困った顔で笑う女神官。
「そっか」
これは冒険だったのだろうか、と考える妖精弓手。
遺跡の探索は、まぁ、冒険だ。
ゴブリンを眠らせて、寝込みを襲うのは……、うん、違う。少なくとも冒険とは思えない。
その後のオーガ2体には震え上がった。ただ、速攻で倒せたのはグアサングのおかげだ。
そして、遺跡の最奥には宝箱があるのが定番なのだが、何もなかった。
妖精弓手の冒険採点の結果が出る。
「冒険じゃないわよね。これは、うん」
だから、妖精弓手は、いつか、こいつらに冒険をさせてやろうと決めた。
自然 怪力の種+鬼人薬+鬼人の粉塵。
10+5+10=25
つまり攻撃点に25の加算だ! 会心の刃薬で更にダメージボーナス!
神々 ちょっと待てぇ‼
TRPGで25も加算されたら、人間やめてますよね。実際は2+1+2=5程度でしょうか。
女魔術師、女魔法使い どっちがいい?
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女魔術師
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女魔法使い