ゴブリンスレイヤーとモンスターハンター   作:中二ばっか

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3-8 こいつも参戦

「やぁああ!」

 長い赤毛の少女。輝く鎧を身に着け、太陽の聖剣を手に見事な一太刀を敵に浴びせる。

「くっ、勇者がこれほどとは……」

 勇者に襲われた魔神将のアークデーモン。

 手下のモンスターは剣聖と賢者によって全滅した。

 自身も聖剣で斬りかかられ、深手を負うものの、逃げようとする。

 背中のコウモリの形をした翼を広げ、空へと逃げようとした。幸い、勇者は人間。術で攻撃されても、一回くらいは耐えられる。

「ニャー!」

 飛び出てきた小さな戦士。

 圃人よりも小さい猫が、魔神将の逃亡を阻止しようとする。

 その猫はブーメランを投げた。

 魔神将はその攻撃を侮った。その程度の攻撃、何もせずとも防げると思っていた。

「ぐっ⁉」

 だが、そのブーメランは、魔神将の頭に易々と突き刺さる。

 小さな刃と侮り、想定外のダメージによろめいた魔神将。

 空中で姿勢を崩し、落下する。

「この、畜生、風情……が‼」

 それが、魔神将の最期の言葉だった。

 頭から落ち、首を折る。

 

「弱らせた獲物を横から掻っ攫う。これこそニャンターの醍醐味ニャ!」

「それは手柄を横取りしているだけでしょう」

 胸を張って言うニャンターに剣聖はため息を吐く。

「まぁ、いいじゃん!悪党は成敗!」

 ガッツポーズする勇者に合わせ、ニャンターも合わせてドヤッと胸を張る。

「……ともかく、報告しに帰る」

 賢者の意見に「はーい」と返す勇者。

 トテトテ付いて行くニャンター。

 

 ニャンターが、どこかから取り出す野菜や肉を、トトトンとまな板の上で切り分けていく。

 焚き火の鍋にはスープがあり、切り分けた具材を中に入れていく。

 他には焚き火の周りに、串で刺した魚を置いて炙っている。

 美味い匂いを出しつつあるスープは、腹の減らした者たちの喉をごくりと唸らす。

「ねぇ、まだぁ~?」

「もうちょいニャ」

 勇者のねだりに、ニャンターはスープをかき混ぜ、おにぎりを握りながら答えた。

 うー、と悲しげな勇者。視線はスープを凝視し、手に持ったスプーン、手を置いている膝は小刻みに振動している。

「……はしたないですよ」

「だって、おなかが減ったのと美味しそうなご飯が悪い」

「嬉しいけど、風評被害ニャ」

 おにぎりを炙り、焦げ目を付けたところで「完成ニャ」と皿に盛り付ける。

「いただきま~す!」

 と、元気よくかぶりつく勇者。

 賢者も剣聖もニャンターも食べはじめた。

「おいしー!」

「ん」

「ええ、身にしみます」

 ニャンターが作った料理を、勇者が絶賛し、賢者が賛同する。

 剣聖もコクコクと頷き、上品に食べていく。

 夜も更けてきた。

 食べ終われば、寝袋を敷く勇者と賢者、ニャンター。

 剣聖は火と見張り番をする。

 それでも、寝つくには少し早い。

「そう言えば、ニャンターって別の人とパーティ組んでたんだよね」

「そうニャ。ハンターさんと色々な所を回って、いろんなモンスターを倒してたニャ」

「そのハンターさんとボク、どっちが強い?」

 ニャンターの話は聞いていてワクワクする。

 山のように強大な龍から砦を守った。

 建物や廃材を材料に強大になる大きな虫と戦った。

 そんな人なのに、フィールドに入った瞬間にモンスターにぶっ飛ばされる。

 壁に追い詰められて、ボコボコにされる。

 地図があっても森で迷子になってしまう話など、笑い事ではない失敗談を面白く話すのでついつい聞きたくなる。

「難しいニャー」

「どちらかが上か下かなんて比べてみるまでわからない。それに強さなどは不変的で、話に聞く限りどっちもどっち」

 色々と人間やめているハンターとバグってんじゃねーのと言いたくなる勇者。ニャンターは頭の中で戦わせてみる。結果は勇者の方が若干有利じゃないかニャーと思った。だって魔法とか使えるし。

 どっちが強いかなど、不毛な争いであると賢者は言う。

「だって、お話に出てくるような人だよ。気になるじゃないか」

「そうですね。一度、腕くらべしたいものです」

 勇者は話に出てきたから、単に会ってみたいと思っているだけなのだが、剣聖は出会った瞬間に立ち会いを要求しそうだ。

「じゃあさ、雷の狼と戦った時のこと教えてよ」

「何十体も討伐したニャ。ボウガンとか、スラッシュアックスとか、本当に色々な武器でニャ。でも、雷で目眩を起こしている間にお手付き、体を叩きつけたりでぶっ飛ばされて、力尽きてキャンプに運ばれることが最初は多かったニャ」

「普通、力尽きたら死ぬと思うんですが」

「ハンターたちは3回まで力尽きることができるニャ」

 まっとうな疑問に思った剣聖に、よくわからない答えで返すニャンター。

「ともかく、もっとお話聞かせてよ」

 子供が母親にねだるように、勇者は話を催促した。

 勇者も年頃の少女なのだ。冒険譚に目を輝かす。

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