YouTubeで効率的な周回方法がないか、検索をかけて見ると、散弾で2分半で歴戦激昂ラージャンをハチのする動画を見つけました。
できるだけ同じことをしようとしても、まぁ乙って倍以上の時間がかかりましたよ。
他にも10分切っている方々。
自分は底辺ハンターだと再自覚。
そして、出たのは挑戦者2とか各耐性3とか。
匠2、防音2なんて出なかったよ。
「これで、終わりだ!」
青年剣士が棍棒をゴブリンの頭に振り下ろす。
洞窟の中にいた最後のゴブリンは、頭を潰され倒れた後、ピクピクと手足を痙攣する。
肉が潰れ骨が砕ける嫌な手応えだが、死んだふりをしていたらと思い、もう一度ゴブリンの頭を棍棒で殴る青年剣士。
やり過ぎた感じがするが、これでゴブリンはピクリとも動かない。
息を整えるために「ふー」と息を吐く。
気分は冷えたエールをゴクゴク飲んで、ご飯を食べて寝たい気分だ。
それができるのは辺境の街に戻ってからなのだが、エールはいいところ水で、ご飯もそんなに食べられない。寝る場所も宿のベッドではなく馬小屋だ。
ゴブリン退治なのだ。報酬は金貨1枚。それをパーティーの人数で割り、次の冒険への準備金にもしなければならない。
命をかけて金貨1枚だ。
割りに合わないと常々思う。
そして、楽な仕事などない。
ゴブリン退治は2度目になるが、続けられる気がしない。
ドブさらいは日給としては問題ない。飯を食べて、馬小屋で寝て、多少の小銭も貯まる。だが、一生ドブさらいの冒険者にはなりたくない。
下水道のネズミ退治やG退治(奴の名を呼ぶのは憚られる)もやった。
楽な仕事などないと改めて思う。
ネズミと言っても野良犬より大きく、不衛生な牙で噛まれれば毒でなくともいずれは病気になる。
Gは何よりもあの見た目とカサカサと動くのが精神的に苦痛だ。
それでも退治しないことには報酬は得られない。例え、雀の涙だとしても金は金。
少しずつ溜めた金で装備を買った。
何度かやっているうちに、他のよりもでかいネズミにも遭遇した。暴食鼠と呼ぶらしい。
青年剣士と女武闘家で足止めし、暴食鼠にランタンに補給する油を投げつけて、女魔術師の火矢で撃破した。
それで下水道に区切りをつけ、ゴブリン退治をすることにした。
今度はゴブリンスレイヤーやハンターの手を借りずに、自分たちの腕でだ。
結果は勝利。
洞窟に棲み着いたと言っても、ゴブリンが10匹程度だった。
ホブもシャーマンもいない。
楽とも言えるかもしれないが、気を抜けば錆びた短剣や折れた槍で傷つく。
そして、それらには毒が塗ってある。
死んでもおかしくないのは、最初から変わらない。
「お疲れ様」
労いの言葉を言ってくる女武闘家。
ポタポタと両手から滴る血はゴブリンのものだ。
彼女が6匹、青年剣士が3匹。
残り1匹は女神官のスリングで怯んだところを、女魔術師が杖でぶん殴った。倒れたゴブリンの短剣を女魔術師が奪い、突き刺して終わりだ。
撃破数で競い合う気にはならないが、やはり負けた気がする青年剣士。
「怪我はしてない?」
「ああ、でも攻撃をもらった気はしないけど」
「ただの確認よ」
青年剣士と武闘家を松明で照らす女魔術師。
どちらも怪我をしている様子はない。
「そう言えば杖はいいのか?」
「大丈夫よ」
「怪我がなくてよかったです」
女神官はほっと胸を撫で下ろす。
彼女が入っているのは最初の新人だけのパーティーだ。
ただ、彼女の認識票は3人とは違い黒曜でできている。
「ゴブリンスレイヤーって意外とせっかち?」
彼女が急きょ青年剣士のパーティーに加わったのは、昇給審査があったためだ。
そのため、ゴブリンスレイヤーのゴブリン退治に加われず、置いてけぼりをくらったと言うわけだ。
「そ、そうじゃなくて、急ぎのゴブリン退治だったので」
ゴブリンスレイヤーも女神官の昇給審査が終わってから、ゴブリン退治に向かうつもりであった。ゴブリン退治の依頼は余るのだ。
だが、依頼内容から規模が大きいことが予測されるゴブリンの群れなので、できるだけ先手を打ちたいとのこと。
「でも、加わってくれて助かったよ」
青年剣士は心からそう思う。
「そ、そうですか?奇跡も使っていませんけど」
「そうだけど、ゴブリン退治って難易度が違うじゃないか。こう、最初の時みたいな」
最初のゴブリン退治の時、ゴブリンスレイヤーやハンターがいなかったら、少なくとも毒の短剣で刺された青年剣士はこの場にいなかった。
じゃあ、女武闘家は、女魔術師は、女神官は、どうなっていたか。
ゴブリンに拐われた女性がどうなるのかは、ゴブリン退治の最後に見た。
あれを思うと、負けるのが怖い。
そして、あの時はホブやシャーマンという上位種がいた。
依頼内容からでは、3人にはどれが
そこで、ギルドで昇給審査を受け終えた女神官に声をかけ、一緒に行くことになった。
ゴブリンスレイヤーと一緒にゴブリン退治をしているので、どの依頼がまずく、どの依頼が自分たちに適切かを知っていた。
女を拐ったとか、村人が襲われたなどの凶暴な行動は数が多く危険。
野菜を盗まれたという行動は、巣穴を失ったはぐれのゴブリンらしく、居ても数匹。
今回は、村人に被害はないものの、洞窟に棲み着いたので退治してほしいという依頼だった。
「とりあえず、依頼は達成っと」
そう言いながら、青年剣士はゴブリンたちが持っていた武器から比較的状態の良い槍と剣を拾う。研ぎ石で磨けば使える。
それをじっと見ていた女子3人。
「な、なんだよ。懐が寂しいんだからいいだろ」
「まぁ、いいんだけど」
「そうしているとゴブリンスレイヤーみたいね」
正直、青年剣士にとってゴブリンスレイヤーは苦手な人だ。
夜中に見れば
銀等級の冒険者で、最初に助けてもらったしいい人なのだろう。彼から見習うこともあるし、あった。
装備の面では、まだ青年剣士は兜も鎖帷子も揃えていないので羨ましい。
青年剣士たちは3人で毒消し、軟膏を購入した。
だが、目指すべき上位の冒険者としては、真っ先に否定する。
やはり槍使いや重戦士に憧れる。
ハンター?噂を聞くと規格外すぎてなんとも言えない。
ドラゴンを1人で倒した、ゴブリン退治の後でマンティコアを一刀両断したとか。
流石に嘘だろと思う話だが、女神官が関わった冒険でオーガをほぼ独力で倒していると聞いた。
女神官が嘘を言う人でもないので、真実なのだろう。
無論、そうなれたらいいが、なれるまでにどんな努力をすればいいか分からない。
「別にゴブリンスレイヤーさんが真似しやすいだけだ」
真似できないと分かっている人の真似をしてもどうにもならない。
物語で聞くドラゴンを倒す勇者、仲間の危機を救う騎士のように、自分はなれると思っていた。そして、最初のゴブリン退治はサクッと終わらせて、拐われた女の人を颯爽と助けられると信じていた。
実際は青年剣士の人生がサクッと終わりかけた。そして、その後も現実は頭の中で思い描いたようには進まない。
だから、自分ができることを確実にやっていく。
今は白磁なのだし、それでいいはずだ。
「じゃ、帰ろか」
「帰るって言っても村によ。宿泊代は浮くし、今からじゃ街の冒険者ギルドは開いていない時間よ」
女武闘家はそのまま辺境の街に帰るつもりだったらしく、女魔術師の言葉にギクリと体を一瞬固めた。それに苦笑いする女神官。
帰って報酬を得るまでが冒険なのだ。
それに馬小屋よりも、ベッドがあるのならそっちで寝たい青年剣士であった。
女魔術師、女魔法使い どっちがいい?
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女魔術師
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女魔法使い