ゴブリンスレイヤーとモンスターハンター   作:中二ばっか

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PS5 デモンズソウルがやりたかった。(挨拶)

歴戦王イヴェルカーナを中々狩れず、そこからずるずると遅い投稿になって申し訳ありません。

アンケートの女魔術師か女魔法使いかも、多かった女魔術師にすることにしました。
ご協力ありがとうございます。


4−2 練習試合

「たぁああ!」

 相手の意識をこちらに向かせるために声を張り上げ、木剣を叩きつけようとする青年剣士。

 その剣筋は、ついこの間まで素人だったにしては、良いものだ。気迫が乗り、力を入れすぎず、正確に相手に当てようとする。

 だが、相手となったハンターは切り払いながら、後ろへと下がる。当たらなければ、意味がない。

 いつもの剛力、速度で振るわれる。だが、手にはいつもの太刀ではなく、同じ長さの洗濯竿に布を巻いたものだ。

 青年剣士も、迫る洗濯竿に木剣で受け止めようとするが、強烈な一撃で木剣は弾き飛ばされ、体に当たってしまう。

 突き飛ばされただけで済んだが、いつもの太刀ならば青年剣士の体は輪切りにされていた。

 ただの竿であっても、かなりの痛打だ。

 何せ、布を巻いていて、革鎧の上からでも、当たった場所はアザになっている。

 だが、痛みでうずくまっている暇はない。

 そんなものは今更だ。

「せい!」

 と、女武闘家がハンターに追撃をかけている。

 彼女もハンターの竿を受け、あちらこちらアザになっているだろう。

 しかし、そんな様子など微塵も思わせない洗練された正拳突き。

 鍛錬や冒険での経験により、彼女の拳も鋭さを増している。

 このままなら、先程のように当たると思えた一撃。

 だが次の瞬間、ハンターが一瞬にして(ひるがえ)る。

 拳はあと僅かなところで、ハンターに届かず、一瞬にして攻守が逆転し、猛襲を受けた。

 拳を見切っての、見切り斬り。ハンターは体ごと回転して、なぎ払う竿は周りにいた自由騎士ごと吹き飛ばした。

 流石に地面に跳ね飛ばされたのは痛かったらしく、立ち上がるには時間が掛かる。

 その間に、新米剣士と青年剣士がハンターを抑えようと、左右に分かれて襲ってきた。

 ハンターは最初に、突きで青年剣士の胴を狙って穿つ。

「こぶっ⁉︎」

 肺の息が詰まったような悲鳴を上げて、後ろに倒れる青年剣士。

 背後から、迫る新米剣士は、犠牲の末にようやくの一撃。

 死角からの、攻撃後の隙を狙った一瞬に打ち込んだ全力の一撃。

 ハンターに攻撃は当たった。

 が、まるで効いていない。

 何せハンターの防具はいつも通りなのだ。

 竜の攻撃を受け、なお壊れない防具に、新人程度の筋力で振るわれた木剣が如何様な痛痒になろうか。

 ハンターが、お返しとばかりに竿を振り下ろそうとして、動きを止めた。

 新米剣士はヘナヘナと地面に膝をつける。

 冒険者ギルドの練習場は新人の死屍累々となった。

「いや、手加減しろよ」

 槍使いが、惨状を見て感想を述べる。

「寸止めなんてできないって最初に言った」

 なぜ、このようなことになっているのか。

 青年剣士のパーティが、ハンター相手に模擬訓練を申し出た。

 それを受けて、自由騎士も参加し、新米剣士も参戦。

 結果、新人たちは地に伏せている。

 周りで模擬戦を見ていた後衛の仲間たちは青い顔だ。

 彼らは手に回復薬Gを持って、仲間に駆け寄る。回復薬Gを飲み始めた彼らは、傷、痛みを癒していく。

「まぁ、敵討ちだ。辺境最強の実力を見せてやる」

「誰も死んでない。死んでないよな?」

 回復薬Gを飲んだ新人冒険者たちは、辿々しい足取りながらも、訓練所の端へと移動している。

 うん、死んではいない。

 

 相手に一撃を与えれば、勝ち。

 そう言った内容で、ハンターと槍使いの試合が始まる。

 槍使いは、木の長棒を構える。

 対峙するハンターも竿を背負い、柄に手を添える。

 先程の模擬戦から、槍使いは自身に多少の有利があると推察した。

 それは武器の差。槍と太刀。

 槍の突きは、素速く、どこが狙いか分かりづらい。そして、間合いがあり近づくのは難しい。

 太刀の斬撃は、広く、遠心力で威力が増す。そして、ハンターが持っている太刀は間合いも槍ぐらいありそうだ。

 つまり、速さでは槍使いが上。威力はハンターが勝る。

 先手を取ることができ、相手に一撃を入れられることが有利だ。

 ハンターを初撃で倒す。

 だが、よほど上手く致命傷でなければそうはならない。ハンターの鎧は強靭で硬い。いつも使っている槍でも、痛撃になるか怪しい。だが、これは相手に一撃当てれば勝ちだ。最初の一撃に全力を入れる。

 ハンターが槍使いの一撃を避け、反撃してくれば避け、距離を取り、仕切り直す。

 そう思っていた。

「シッ!」

「ハァッ!」

 槍使いが、ハンターより僅かに早く、長棒を突き出す。

 だが、ハンターの振った竿は、長棒の先を叩き落とす。

 速くとも、攻撃が届かなければ意味がない。

「チッ!」

 忌々しげに舌打ちした槍使い。それは攻撃を防がれたことにではなく、竿とぶつかり長棒から伝わる振動に手が痺れたことにだ。

 素早く、槍を構え直し、再度、刺突を繰り出す。

 ハンターはまた竿を切り上げ、弾く。

 そして、一歩踏み込み、竿を振り下ろしてくる。

 竿の先が、槍使いの頭上から迫る。

 咄嗟に長棒で受け流す。

 続く、ハンターの連撃に付き合う気の無い槍使いは、大きく飛び退いて太刀の攻撃から逃れた。

 それでも、ハンターから距離を取りたいのか逃げ走って槍を構えた。

 

「賭け、る?」

 魔女が三角帽子をとって、賭金の受け口にしている。賭けの内容は、槍使いとハンター、どちらが勝つか。

 帽子の中には、すでに金貨や銀貨が入っていた。

「いや、しない」

「そ」

 槍使いとハンターの試合を見ていたゴブリンスレイヤー。

 魔女に声を掛けられたが、断る。彼はダイスを極力振らない。

「今だ! やれ!」

「ぶった斬れ!」

 女騎士と闇女斥候は声を出して、試合の行く末を見ている。恐らく、ハンターの方に賭けている。

 彼女たちはいくら賭けただろうか。少なくとも新人のように、金を賭けずに試合結果を予想しているわけではないだろう。

「得物が違うとはいえ、見応えのある試合ですな。拙僧は手堅く、槍使い殿に賭けますが」

「生臭坊主め。まぁ、あれで得物がそのままだったら、槍ごと切ってたかもしれんけんども」

 言いながら蜥蜴僧侶、鉱人導師は槍使いに賭けた。

「寸止めはできないって言ってたからな。そういう意味じゃ、槍使いに分があるか」

 重戦士は槍使いに賭ける。

「どういう意味よ?」

「武器を振る勢いを自分で制御できていないってこった。筋力が高いってのも考えものじゃな」

「とはいえ、筋肉は何事も可能と言いますからな」

「ふーん。オルクボルグはどっちが勝つと思っているの?」

「わからん」

「もう、予想でいいから言いなさいよ! 私もわかんないけど!」

 妖精弓手の逆切れに、呆れたのか、困ったのか淡々と考えを言うことにしたゴブリンスレイヤー。

「まず、身体能力でハンターが上。冒険者の経験として槍使いが上。武器の性能としては互角、間合いも誤差。真っ向勝負で、策は殆どない」

「つまり互角?」

「いや」

 妖精弓手が出した答えに、すぐ、訂正を入れたゴブリンスレイヤー。

「槍使いは魔法を使える」

 

 

 

 何度も打ち合い、避けては手に持った得物を振る。

 だが、これの繰り返しでハンターの息は上がりつつ、槍使いは額に汗を流し始めた。

 そして、ハンターは果敢に攻め、槍使いを消耗させ追い込もうとする。

 互いに侮ってなどいない。

 槍使いは黒龍を討伐したのが目の前の相手だと分かっている。

 ハンターの方も、銀等級の先輩を相手にしていると気を張っている。

 故に、自分の得意なことで相手を追い詰め始めたハンター。

 ハンターの持久力(スタミナ)は人一倍強い。

 空腹時だろうが、瀕死だろうが、武器を振るえる体を駆使し、猛火や嵐を想像させるような激しい攻めに出た。

 剛力で振るわれる竿は、受け止めようとすれば押し切られ、弾けば更に強く打ち込まれる。

 槍使いは、そのような攻めに武器でいなし、回避し、防戦一方に追い込まれた。

 このままでは、すり潰される。少しでも間違えば、防御、回避しきれない。

 敢えて、槍使いは竿のなぎ払いを受け止め、反発を利用し、後ろへと跳躍。

 距離を取ることができたが、ハンターは走って距離をすぐさま詰めてくる。

 急いで、しかし焦らず、槍使いは呪文を紡ぐ。

アラーネア(蜘蛛)……ファキオ(生成)……リガートゥル(束縛)

 

 使用したのは粘糸。

 発動と同時に、ハンターの足元から白い糸が噴出した。逃げようと前転するものの、糸を操ってもいるのかハンターを捉えようと追い、捕まってしまう。一瞬にしてハンターの体に絡まった白い糸。

「このっ!」

 ハンターはもがき、拘束から抜け出そうとする。力任せに身をよじればブチブチと音を立てて、糸を千切っていく。

 だが、糸は太い。後、2秒あれば拘束から抜け出せるかといったところ。

 だが、その2秒を逃しはしない槍使い。

 何せ、成功率を上げるため全力を尽くし、2回使える呪文のリソースを使い、術を拡大させた。

 蜘蛛が糸で捕らえた獲物にトドメを刺すが如く、素早く近寄って長棒で突く。

 頭を突かれ、試合は終わった。

 

 

 

「まぁ、冒険者の年季が違うんだよ」

「そう、言って、も、かなり、苦戦、した、みたい、だけど?」

「……分かってるっての」

 槍使いが勝った。

 だが、浮かれた槍使いに、釘を差す魔女。

 彼からすれば、辺境最強の称号がハンターに奪われつつあるのだ。少しくらい、後輩を見返したっていいだろと思う。

「ま、儂らは稼がせてもらったから、高い酒が飲めっから嬉しいけんど」

「うむ。拙僧も良い試合を見れて、高いチーズを食べられる。良きこと良きこと」

 槍使いに賭けていた者たちは、儲けた金で高いものを胃に入れている。

「魔法は卑怯だ!」

「全く同感だ。戦士の試合で使ってどうする。男なら武器一つで成り上がらんか!」

 一方のテーブルでは賭けに負けた者たちが、安い酒で愚痴をこぼす。

「呪文と奇跡を使っている人が言っちゃいけないと思う」

 敗者となったハンターも賭けに負けた者たちと晩食している。ただ、呟いた言葉は愚痴をこぼし、やけ酒を飲む者たちには届かない。

「なんでもありなら、あれだ、スリンガーだの、閃光弾だの使えばいい! 今度はそれで勝て!」

 まぁ、次があったら勝つ気満々のハンター。

「おk。罠とか、閃光弾とか、いろいろ使う」

 槍使いは、冗談じゃねぇやとぼやいた。


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