ゴブスレTRPGが来年発売とのことで、病気には掛かりたくない今日この頃。
家でこもりっきりの正月になりそうですが、それはいつも通りのような気がしてきた。
もう、タイトルからお察しだと思いますが、どうかよろしくお願いします。
結局、遺跡の奥には財宝はなく、何匹かゴブリンがいるだけだった。
「残念だ」
そう呟いた闇女斥候。彼女は財宝目当てで遺跡に来た。
ガッカリと肩を落としている。
穴蔵から出てきた時には、日は落ちて、森は暗闇に包まれる。
月明かりは木々に遮られているものの、女神官が手に持っている松明とハンターの腰につけたランタン、導虫の光源が周りを照らす。
完全な暗闇ではないが、昼と比べれば心許ない。
「まぁ、こんなもんじゃろて。いつも
「分かる話だな。欲しいものがあって、何度も何度も挑戦しても手に入れることができない」
周回、物欲センサー。
悔しい。でも、欲しい。
だからこそ、手に入れた時、狂喜乱舞するのだ。
「現金よね。
「……
「やらないわよ。いろいろなことに必要なんだから。ま、土から生えてくればいいと思ってるけど」
「貨幣経済の概念が崩れるな」
妖精弓手の考えは農家であれば可能かもしれない。売る商品が生まれてくるのだから。
ただ、そう上手くいかないのが世界だ。
そして、冒険も一筋罠ではいかない。
「待って、何かいる」
いち早く何かに気づいたのは先頭の妖精弓手。
耳が上下にピコピコせわしなく揺れ、五感を研ぎ澄ましている。
話しながらも気は抜かない。
帰るまでが命がけだ。ましてや人外の暗い森を抜けるのに気が抜けようはずもない。
影が動いたような気がした。
茂みが揺れる音がする。
しかし、音の方に向いても何かがいる様子はなかった。
森人、鉱人、闇人、蜥蜴人と夜目が利くはずなのに発見することができない。
ハンターが気づけたのは、導虫と経験だった。
導虫が赤く光って怯える動き、そして、相手の視線を感じる。視線を辿れば相手の影が見えた。
「上だ!」
その言葉に反応して、全員が見上げる。
何か黒いのが襲いかかって来た。
反射的に飛び退き、全員が回避できた。
漆黒の体毛に金色の猫のような瞳をしているが黒いくちばしを持っている、猫と鳥のような顔。
前足に業物と思わせる巨大な刃が付いている。
ハンターには見覚えがあるモンスター。
迅竜、ナルガクルガ。
咆哮を上げ、威嚇してくる。飛び退いて距離を取っていたので咆哮で耳を塞ぐことはしなかった。
しかし、いきなり怪物に襲われたことに身を竦んでしまう女神官、表情を強張らせた闇女斥候、生唾を飲み込む蜥蜴僧侶。
「……ゴブリンではないな」
「違うに決まってるでしょ⁉︎」
ゴブリンスレイヤーは襲って来た姿を確認して、怪物判定に失敗する。
妖精弓手は怒鳴った。
前足の刃で切り裂くように、飛びかかってくるナルガクルガ。
全員が回避優先で、黒い風のように迫る刃を逃れる。
しかし、いつまでも逃れることはできない。
ハンターは前に出て太刀を抜き、頭を狙って斬りかかる。切れ味の良い太刀はナルガクルガの頭部から血飛沫を上げさせ、自分に敵愾心を向ける。
「何じゃい、こいつは⁉︎」
突如、現れた未知のモンスターに驚きの声を上げる鉱人道士。
「ナルガクルガ!速い!切るために発達した前足!尻尾の叩きつけ!尾のトゲを飛ばしてくる!飛竜種!えっと!以上!」
奇襲によって混乱しかかったパーティだったが、ハンターは知っているモンスターであったので復帰が早かった。
「竜殺し殿は、こやつめを知っているようですな!抑えてもらってもよろしいか!」
「分かった!できるかどうか分からないけどな!」
ナルガクルガは機動力が高く、ヒットアンドアウェイが多い。
ハンターの頭上を飛び越え、後方を襲う。一度、仕切り直すために離脱する。抑えるというにはハンターの腕力、脚力でも難しい。
だが、しなければならない。自身は前衛職なのだから。
ここでの戦い方を理解しつつあったハンターは、ナルガクルガを抑えるために駆け出す。ともかく、敵愾心を自分に向けることを考えた。
そんなハンターに狙いを定め、尻尾を回し、杭のような鋭く太いトゲを飛ばしてくる。
ハンターは攻撃に合わせ、前転して飛んで来た毛を回避し、反撃の一太刀を頭に叩き込む。
狙いは頭。肉質が柔らかく弱点であり、刃が通りやすい。
煩わしいと思ったのか、尻尾を振り、ハンターを追い払おうとする。
その尻尾の攻撃を見切り、身を反転させ躱し、反撃の大回転切り。
太刀に気が溜まり、更に鋭く刃が砥がれる。
続いて納刀し、高速の抜刀切りをお見舞いした。
しかし、一度後方に跳んで、力を溜め、鋭利な刃の翼を使い斬りかかるようにして、突撃してくる迅竜。
刃を掻い潜り回避するものの、そのままハンターへの後ろへと跳んで襲いかかる。強靭な脚力は助走もなしに跳躍し一気に距離を詰めた。
しまったとハンターが思うよりも早く、少女の声が発せられる。
「いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らを、どうか大地の御力でお守り下さい!」
女神官の祈祷が
奇跡によって出現した壁に勢いよく突撃した迅竜は、壁に弾かれ仰け反った。
仰け反った隙にハンターが斬りかかる。頭は狙えないが、
痛撃に反応し、跳び、距離を取る迅竜。
獲物を仕留められなかった苛立ちか、
ハンターはその咆哮という振動を見切り、身をひねって躱し切り裂いた。
他の者たちは
「
「お願い!」
「嘘でしょ⁉︎」
しかし、彼女の放たれた矢は先ほどよりも速く動くせいで外してしまう。
赤眼の眼光が暗い森の中で素早く動き、赤い軌跡を生む。
それは夜の狩人。
その赤い軌跡とハンターが持つ太刀の煌きが交わった。
素早く翻弄する動きをハンターはしっかりと捉え、斬撃を繰り出す。
肉を切る手応えと途端に溢れる血の匂い。
迅竜は力を溜め、体を高速で回転させ、長い尾で辺りをなぎ払う。しかし、今度は逆方向へと急回転し挽肉へ変えようとした。
力を溜める動作で危険を感じたハンターは1撃目を前転して潜り避け、再度転がり距離を取って2撃目を回避する。そして攻撃し終えた隙を狙い、斬撃を繰り出した。
そんな荒れ狂う戦いの中、呪文を唱えられる者たちは使う瞬間を見極める。
「火か、雷か」
目の前の光景に飲み込まれず頭を回し、どの魔法を使うか考える闇女斥候。
「当てられなければ無駄打ちでしょう」
ブルリと鱗肌が震えるのは武者震いか恐怖か。恐らく、前者の方だと思われる蜥蜴僧侶は大きな瞳で挙動を逃さない。
「じゃったら、動きを止める術が良かろう」
あの速さが厄介なのだ。故にそれを無くす。少なくとも鉱人道士はそう考えた。
「私が持っている。掛けたら呪文を維持しよう」
「あいよ」
使う呪文を決めた闇女斥候。そして、他の術使いたちも、それぞれ使う術を準備する。
呪文の種類にもよるが、範囲や射程がある。あれ程、速く動く対象に対して、呪文が避けられてしまう確率が高いのだ。数回しか使えない呪文が空撃ちになる事態は避けたい。
隙を逃さないよう、迅竜の一挙一動を観察する。
そして、なぜかハンターに背を向けて、即座に飛び上がった。
直後、一瞬にして地面に尾を叩き付ける。尾は伸縮するのか、かなりの長さとなっていった。
大地が割れるかというほどの振動があるが、そのような攻撃を喰らえばハンターも無傷ではすまない。
横に転がり、振り下ろされる尾を紙一重で躱し、即座にまた転がる。反撃はしない。なぜなら、すぐに2撃目がくることを知っているからだ。
ハンターの予想通り、もう一度、尾が地面に叩きつけられる。
だが、攻撃の反動からか、多少の硬直がナルガクルガに生まれ、伸びきった尾を切り裂くハンター。
隙を逃さなかったのはゴブリンスレイヤーも同じ。
ハンターと戦っている中、1つは外れ、もう1つは黒い胴にナイフが刺さる。痛痒にはならないが、麻痺の毒が蓄積された。
それでも、巨体には足らぬ毒の量なので、ナルガクルガの動きが鈍ることにはならない。
投げナイフの刺激に注意が向いたのか、首をゴブリンスレイヤーに向け、飛びかかってくる。
しかし、ゴブリンスレイヤーは
「
動きが鈍くなった迅竜にハンターの斬撃が強襲。
そして、ゴブリンスレイヤーも麻痺投げナイフを何本も投げつけ、ナルガクルガを麻痺へ追い込んだ。
畳み掛ける、とゴブリンスレイヤーの指示で、奇跡と呪文の継続を維持している女神官、闇女斥候以外が攻撃へと転じる。
ハンターは血飛沫を辺りに撒き散らしながら斬り裂き続け、気で刃を研ぎ澄ましていく。
ゴブリンスレイヤーは会心の刃薬を使い、威力を上げて斬りかかる。
妖精弓手が、矢を早撃ちして深々と刺した。
鉱人道士の
蜥蜴僧侶は「イヤァアアア!」と
血だらけになった迅竜。
しかし、総攻撃を受けても、まだナルガクルガは耐えて、後ろに跳び下がる。
そして、分が悪いと足を引きずり逃げようとした。
だが、闇女斥候の
「はぁああ!」
ハンターは逃すものかと、太刀で突きを放ちナルガクルガを怯ませ、続け様に宙高く飛び上がると落下の勢いと共に、気の練り上げられた太刀を振り下ろす。
一瞬の遅れの後、ドパッと大量の血が噴射し、辺りに血の雨が降った。
ハンターが意気揚々とナルガクルガを解体している最中、他の6人は焚き火をして休憩をとった。
「行きはよいよい、帰りは怖い、ったぁこのことだの」
深い息を吐き出し、どかっと地面に足を放り出して座る鉱人道士。
「いやはや、
返り血を気にせず、上機嫌な蜥蜴僧侶は大声で笑った。
「ゴブリンばっかじゃ飽きるけど、最後に知らないモンスターと戦うってのは冒険でも定番よね。グアサングは知ってたみたいだけど」
うんうんと目を閉じて、今日の出来事を振り返って冒険の評価を改める妖精弓手。
「財宝はない、帰りは
不満げな顔をして大字に地面に仰向けに寝そべっている闇女斥候。
「それよりも矢が外れたことが問題よ、私は」
「森人の矢も黒い陣風には敵わぬ、か」
「なんか文句でもあるの?」
「いやなに、私の呪文は役に立っただろ」
ニヤリと自分の功績を立てた彼女に、イーっと犬歯が見えるほど悔しがった妖精弓手。
「でも、なんとかなりましたし、良かったです」
疲労の色が濃い女神官。ちょこんと木に寄りかかって座っている。このまま数秒したら寝てしまいそうだ。
「……冒険とは」
独り言だったのだろう。ポツリとゴブリンスレイヤーは呟き、5人が彼に顔を向けたことがわかったので、そのまま続けた。
「こういうものなのか?」
全員が顔を見合わせ、コクリと頷く。
「そうか」
彼も頷き、少し間を置いて続けた。
「悪くない、と思う」
この執筆ブーストは年末休みのおかげです。
ただ、何時止まるかは気分次第。
正月休みまでに2巻終わらせたいなと思っていますが、難しいかも。