ゴブリンの生息地はどこでも。
巣は洞窟が多いが、誰もいない空き家、神殿、遺跡などなど、多数。
今回の依頼は、ゴブリンが遺跡を根城にして近隣の村が被害にあっているので、根絶やしにしてきてくれ、といった内容。
女性が何人か拐われており、討伐に他の冒険者のパーティも向かったが帰ってきていない。
辺境の街からは遠く、依頼が届くのに時間がかかった。
「人質だが、可能性は低い」とゴブリンスレイヤーは、言った。
ただ、人質が生きていないとしても、岩でできた広い遺跡だ。
遺跡ごと爆発で破壊する、といった手段はできない。
大規模な巣らしく、2匹のゴブリンの見張りがいる。
ハンターがゴブリンスレイヤーに麻痺投げナイフを何本か渡す。
ゴブリンスレイヤーは投擲で、ハンターはスリンガーで麻痺投げナイフを命中させる。
大型モンスターですら、数回当たると麻痺させて動きを奪う代物だ。
ゴブリンなら1回で痺れて動けなくなる。
声を上げることも、反撃することもできず、近づいてきた二人が止めを刺す。
石、岩で作られた遺跡は、苔や蔦が生えて、時間が経っていることがわかる。
中の老朽化も注意したほうが良さそうだ。
こういったときは、中に入らず、できるだけ燻り出してから入るのが上策。
遺跡の入り口から、毒けむり玉を中に向かって投げる。
大量に噴出した紫色の煙は、見るからに体に悪い。
本来は、甲虫モンスターの脆い体を破壊しないように倒す用途で、使われるアイテムだ。また、主婦層が虫を追っ払うためにも使われる。
慌てて出てきたゴブリンたちの動きは悪い。
紫色に染まった唾液をダラダラ流し、ゴブリンの生命力程度では、毒で数秒後死ぬ。
が、そのようなことでゴブリンスレイヤーたちが、止めを刺さない理由にはならない。
ゴブリンスレイヤーは確実に殺すために。
ハンターは依頼通り、根絶やしにするために。
ゴブリンスレイヤーとハンターは、片手剣で動きの悪いゴブリンに止めを刺す。
遺跡は広い。
遺跡にいるゴブリンが、この数だとは二人は思っていない。
ここからは、遺跡に乗り込んでの掃討だ。
「遺跡ね。話じゃ罠はないんだっけ」
ゴブリンスレイヤーは、斥候ではない。
ハンターも罠の発見や解除などできない。
だが二人とも、探索能力に長け、この遺跡の罠はないと情報で聞いていた。
もし、遺跡に罠があるのならば、斥候がほしいところだ。
「ああ、だがゴブリンが罠を張っているかもしれん。気をつけろ」
ゴブリンスレイヤーは、ゴブリンが持っていた槍を奪い、手前の地面に突き立て進む。
シャーマンがいれば、他のゴブリンに入れ知恵し、罠を張ると彼は言っていた。
「どんな罠を張るか、わかるか?」
ハンターが興味本位で聞いたとき、槍先が糸に触れ、バッシュっと風の音がした。
「伏せろ!」
「うぉ⁉」
前方から音に反応した二人は、飛んできた矢を避ける。
「こんな罠だ」
「ワザと発動させたんじゃないだろうな⁉」
「そんなことはせん」
彼はそのようなことをする人物ではないことを、ハンターは知っている。今のも軽口だ。
だが、フルフェイスの兜で表情が見えないので、何を考えているかわからない。いや、ゴブリンを殺すことしか、考えていないように思えてしまう。
それから、遺跡を警戒しながら進む。
徘徊しているゴブリンに背後から斬りかかる。
上からゴブリンの頭に突き立てるように飛びかかる。
そうやって、ゴブリンを殺して行き、遺跡の掃除をしている。
トラップに気づけば、解除か、発動させて無力化する。
「変だ」
「なにが?」
「トーテムがない」
ゴブリンシャーマンの領域を主張するかのように立てられる、木や骨で作られる旗。それがないということは、ここの遺跡にはゴブリンシャーマンがいない。
「知恵者がいない、なのに罠が作られた?」
「ああ」
ゴブリンも学習すれば罠を張り、毒を作り出す。
だが、ゴブリンに何かを作り出す知恵はない。
作り出すとしても、学習した個体だけだ。
学習とは経験すること。
ゴブリンスレイヤーが言うには「お優しい冒険者が子供だから見逃そうと言う。生き残ったゴブリンが、村から家畜や女を攫うとも殺すとも考えずにな」とのこと。
そして、見逃したゴブリンがホブゴブリンやゴブリンシャーマン、それ以上の脅威を持つゴブリンチャンピオンやゴブリンロードとなる。
しかし、シャーマンではない知恵者がいる。
そうなると、それ以上の脅威のゴブリンがいる可能性が高い。
「気を引き締めろ」
「分かってる」
ゴブリンが奇襲してこないように、念入りに遺跡を探っていく。
この遺跡には扉はなく、部屋の入口があるだけで、通路も直線的で左右に分かれるか、階段があるか。
部屋にゴブリンがいないか探る方法として、ゴブリンスレイヤーが火炎瓶を投げ入れる。
驚いたゴブリンがいれば斬りかかり、いなければ火の灯りで部屋の周囲を探る。
火炎瓶でなければ、ハンターが閃光弾を部屋に放ち、目眩を起こしているゴブリンを叩く。
こう派手に暴れていると、ゴブリンたちが気付いて襲ってくることもある。
そんなときは、毒けむり玉をゴブリンの集団に向けて投げ入れ、動きが悪くなったところを殺る。
そうしながら探索していると、臭い匂いが漏れ出す部屋があった。
ねっとりとした、変な酸味の匂いのする空気が鼻孔を突いてくる。
ゴブリンたちのひどい匂いとは違う。
最近、嗅ぎ分けを覚えてきたハンターは、奥歯を噛み締め怒りを、焦りを抑える。
中に入り、様子を確かめる。
松明の光が照らし出したのは、ゴブリンの食べ滓と思われる骨、垂れ流しにされた糞尿、そして、横たわる女性の体。
そして、ここまで暴れて、冒険者の存在に気づかないゴブリンもいない。
ゴブリンが臆病で、隠れ潜むヤツであることを、二人は知っている。
当然、女性の影に隠れ、助けに駆けつけた冒険者を、手に持った毒ナイフで突き刺そうとしていることも。
それを理解しながらも、ハンターは即座に女性に駆け寄る。
手に片手剣を持ったまま。
女性を抱き上げようと、油断している馬鹿な冒険者だとゴブリンには見えるだろう。
ゴブリンは女性の影から飛び出し、走ってきたハンターを突き刺そうとした。
だが、ナイフを持っていた手はハンターが片手剣で切り落とした。
ハンターの攻撃に反応できなかったゴブリンは、連撃で振られた片手剣で斬り伏せられる。
一応、導虫を見て、光が緑色に変わっていることを確認する。
「この人たちはどうする」
「今はどうもしない。後でだ」
もうすでに、彼女たちは事切れていた。
暗くては死体の状態が良くわからないので、生きているとも勘違いする。
その隙を前に突かれたことがある。
大型モンスターなら、食われて生きてはいない。
だが、ゴブリンならまだ生きている、と期待してしまった。
ハンターは、ゴブリンが思った通りの馬鹿な冒険者なのだ。
「分かった。後でだ」
まぁ、それでいい。
馬鹿な冒険者は、馬鹿なりに殺るだけだ。
だいたい馬鹿でないのなら、古龍や禁忌の龍にソロで、連戦で挑んだりしない。
誰に何を思われていようが、いまさら生き方は変えられない。
変える気もない。
これからも、ハンターは人質を見たときは多少だが動揺してしまうだろう。
早く、助けたいとも思う。
だが、動揺している間に殺されるような間抜けにはならない。
焦って、失敗だけはしないようにしなければならない。
それだけは、意識するようにした。
遺跡を虱潰しに探索していくと、奥の大広間にたどり着いた彼ら。
大広間にはゴブリンが居ないが、ここに大勢いた様子で、寝床にしていたようだ。
実際に足跡や糞尿などの痕跡が大量に残っている。
「この量なら、40あたりか。今まで遭遇したゴブリンの数が43。まだ、奥の方で隠れている奴がいるやもしれん」
大広間の奥に入口が1つ。
そこにゴブリンの親玉やゴブリンの子供が、潜んでいる可能性が高い。
ゴブリンが物陰に隠れていないか、確認し、居ないことを確かめる。
それから、進もうとした矢先、ズンズンと地面が振動するほどの足音が近づいてくる。
入り口から現れた巨体。
まず、目に入ったのは山羊の頭。
巨大なコウモリの翼を背中に生やし、広間にはいったときに威嚇するようにして大きく広げる。
腕は4本持っており、太く強靭な筋肉が付いていそうだ。
体つきも腹筋が割れており、足はヤギの蹄で器用に立っている。
「ゴブリン共に迎撃させたが、ゴブリンでは雑兵にすらならんか。貴様ら冒険者だな。この魔将軍、デーモンの贄となるがいい」
堂々と出てきたデーモン。
かなりの自信があることが窺える、その立ち姿。
凡庸な冒険者なら、その驚異を即座に理解し、顔が体が強張ってしまうだろう。
恐怖のあまり、絶叫を上げる者、逃亡しようとする者、立ちすくんでしまう者もいるかも知れない。
「ゴブリンではないのか」
「亜種のゴブリンじゃないか?」
だが、その姿を見た二人の反応は、頭に疑問符を浮かべただけだった。
「いや、違う。あんなゴブリンはいない」
「まぁ、何にせよ大型モンスターだよな」
残念ながら、ここに来た冒険者は凡庸な冒険者ではない。
1人はゴブリン討伐しか請け負わない、偏屈な冒険者。
ゴブリンにしか興味がなく、それ以外のモンスターの知識は殆どない。
なので、デーモンについて知らないので、脅威のほどがわからない。
せいぜい、腕が4本あるから注意しておこう、と思うぐらいだ。
もう1人は、デーモン以上の大型モンスターを倒してきた狩人。
未だにこの地域の言葉を理解していないハンターは、馬車での移動中に文字を学んでいる最中。モンスターのことが書かれた本などは、まだ読めるほどではない。
この地域の情勢も理解していない。
ゆえに、魔将軍と言われても何のことだがわからない。
ハンターの頭にあるのは、頭の角は破壊できるだろう、他に部位破壊できそうなところはあるか、とデーモンの姿を観察し、どのように料理するかといった内容だ。
「貴様ら! 俺をゴブリン風情と侮った報いを受けろ!」
二人の言葉を理解できるデーモンは、侮られていると怒る。
「死ねぇ! アエテルニターティス《永遠の》……アルゲオ《凍える》……ウェントス《風》――バシュッ――ぎゃぁああ!?」
激昂し魔法の詠唱を始めようとするデーモンに、ハンターが閃光弾を使い、目眩を起こさせる。
詠唱は中断され、術は不発。
ゴブリンシャーマンとの戦闘では、魔法の詠唱をいかに防ぐかが課題となる。
解決策としては石でもぶつけて、詠唱を中断するのが上策だ。
ただ、周りにいるゴブリンを盾にするので、なかなか近づくことができない。ゴブリンスレイヤーは投擲で、ハンターはスリンガーで遠距離攻撃し、詠唱を中断させるのが常套手段になっている。
そんなゴブリンすら居ないのに、魔法を発動させようとしたこいつは馬鹿じゃないだろうか? と、ハンターは思った。
魔法の詠唱、完成させる前に殴れ、だ。
そこに、ゴブリンもデーモンも大差はない。
デーモンが目眩を起こしている間に、シビレ罠をセット。
大型モンスター、中型モンスターにも効く罠で、設置したところを踏むと一定時間痺れさせて、行動不能にする。重量がある程度ないと、踏んだ時にスイッチが起動しないので、小型のゴブリンには使えない。ただ、ホブゴブリンぐらい重量があれば別だ。
デーモンも巨体なのでシビレ罠が効くだろう。古龍でもないのだし。
設置の時間も早く終わり、動きがほぼ完全に止まるので、頭や尻尾などの部位を攻撃しやすい便利な罠だ。
デーモンは暴れて、4本ある腕を我武者羅に動かして、敵を近づけさせないようにしている。近くの壁に腕が当たるが、崩落の危険性を考えていないのか。
やはり馬鹿なんだろう。
「こっちだ馬鹿」
「そこかぁぁあああ!」
ハンターが声をかけてやれば、デーモンは迷わずこちらに暴れながら向かってきた。
馬鹿である。
「アババババ!?」
先程、仕掛けたシビレ罠を踏んだデーモンは、全身に電気が奔って、動きが止まる。
そして、そんな状態になった獲物にハンターがとるべき行動は1つ。
痺れているデーモンに向かって駆け出し、太刀を抜刀切り。
続く連撃。切り下ろし、突き、切り上げ、切り下ろしで気を溜める。
溜めた気を開放し気刃斬りを5回繰り出し、大回転気刃斬りで気の刃を太刀に付与し、切れ味を強化。
狙うは頭。
角は破壊して、部位破壊を狙う。
本来は3段階に切れ味を強化できるのだが、気を十分に練っていないので、切り下ろし、突き、切り上げ、切り下ろしのループ攻撃を繰り返し気を溜める。
ゴブリンスレイヤーは、背後に回り、足の腱を斬っている。なかなかに固い表皮で、スパッと切れない。ゴブリンから奪った切れ味の悪い武器なので当然だ。
そして、武器が壊れれば、ハンターからもらった麻痺投げナイフを、手に持って突き刺す。切れ味が凄く、硬い表皮でもグサッと手元まで刺さる。
デーモンの足は酷く損傷し、同時に痺れ毒が蓄積される。
効力が切れ、シビレ罠が壊れたときには、ゴブリンスレイヤーが蓄積した痺れ毒で麻痺った。
麻痺れば何をするか。
先程のループである。
ハンターは大回転気刃斬りを繰り出し、切れ味を強化し、また気を溜めるためにデーモンの頭を切りつける。
ゴブリンスレイヤーは麻痺投げナイフがなくなってしまった。
しかし、すでにデーモンは先程からピクリとも動かなくなっている。
なにせ先程から、ハンターの凄まじい切れ味を持つ太刀で、何度も頭部を切断されているのだ。
幾ら生命力が高いデーモンでも、脳を損傷すれば死亡する。
確かに、頭は生物にとっての弱点だ。
だが、これがハンターの知る大型モンスターなら、数度切りつけたくらいでは、脳には届いていない。
鱗、筋肉、骨に阻まれ、凄まじい生命力で傷を回復させる。
しかし、傷を付けることによるダメージは蓄積されていくので、大型モンスターの生命力を削り切って討伐するのだ。
デーモンは大型モンスター。
しかも、話せることから知恵がある。
なら、ゲリョスのように死んだふりをするかもしれない。
そもそも、大型モンスターは何度も何度も攻撃してやっと倒せる強敵。
そんな考えから、何度も執拗に頭に向かって攻撃を繰り返す。
決して角がまだ壊れていないからとか、そういった理由ではない。
この地域では、剥ぎ取り回数や依頼終了での待機時間がなかったりする。死体切りで気を溜めておくのも戦術の一つだ。
そして、太刀の刃が3段階の強化し終えた所で、一度攻撃を中断する。
すでに、デーモンは首から先が、滅多切りによっておびただしい血と脳漿をぶちまけていた。
結局、角の破壊はできなかったが、剥ぎ取りナイフでデーモンの角を手に入れることができたので、ハンターとしてはなかなかに満足いく結果となった。
その様子を見ていたゴブリンスレイヤーは、少し離れた場所で待機していた。
ゴブリンスレイヤーとハンターは砥石で武器の切れ味を回復させて、デーモンが来た奥に入る。
そこには岩があった。
その岩の下には円と文字、図形が血で描かれており、あのデーモンはこの岩で何かをしていたのだろう。
ハンターは警戒しながら、岩に向けて松明を投げてみる。
カツンと軽快な音を立てて、地面に落ちる松明。罠の類はなさそうだ。
近づいて指で触れてみるが、全く反応がない。
「なにこれ」
「わからん」
ここは専門家にお願いするべき案件だろう。
二人はギルドに戻り、報告することに決めた。
その帰り道。
「デーモンって言ってたっけ? これ」
「ああ」
ハンターはデーモンから剥ぎ取った角を手に持ち、角度や位置を変えて見ている。
「一式デーモン装備作るとしたら、後何体狩ればいいんだろうな」
今回、手に入れたデーモンの死体から丸ごと剥ぎ取った素材は、とても装備を一式作ることはできない量だ。
ハンターギルドでモンスターを丸ごと剥ぎ取ったら、御法度者になってしまい、ギルドハンターが来てしまう。
だが、冒険者ギルドなら丸ごと剥ぎ取っても怒られることはない。
なんて良い地域なんだ。
「知らん。だが、今回のようにゴブリン以外の大型モンスターが、ゴブリンの頭目になっていることもあるやもしれん。先程の、地面に設置した、なんだったか?」
「シビレ罠か」
「ああ、それの作り方を教えてくれ。あれはホブでも有効なのだろう?」
街に戻るまでの間、ハンターはシビレ罠の調合方法について説明する(ついでに落とし穴や大タル爆弾、閃光弾など他の調合の仕方も教えた)。後日、ゴブリンスレイヤーも鍛冶屋にトラップツールの制作を依頼する。
その時に、デーモンの素材で武具を作れないか聞いたが、そんなことはしていないと断られた。
ハンターはうなだれた。
オーガだと傷は付くけど、再生して無効化。
だけど、ウォーターカッターで大ダメージだと再生が間に合わない。
つまり、麻痺か睡眠の状態異常にさせて大タル爆弾G起爆すれば、それで終わり。
デーモン「はめ殺しとかヒドス」
女魔術師、女魔法使い どっちがいい?
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女魔術師
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女魔法使い