「昇格審査を始めさせていただきます」
始まりは受付嬢の言葉だった。
ハンターたちが倒したデーモン。
それを報告したら、疑われた。
なので、受付嬢にハンターが剥ぎ取った角を見せたら、ものすごく驚いていた。
後日、ギルドが調査隊を派遣し調べた。
遺跡の奥にあったあの岩を基点として、強大な魔法陣を構築し、強大な結界を大陸に展開。
デーモン、混沌の軍勢にとって有利な陣地にしたかったらしい。
それを阻止したので、貢献度が貯まり、ハンターは白磁等級から黒曜等級へ上がることになったらしい。
その手続きのために今、ハンターの前に受付嬢と監督官が座り、大柄な戦士が横に控えている部屋に居る。
「ハンターさんは、これまでのゴブリン討伐の活動から昇級しそうだったのですが、今回のデーモンの討伐によって黒曜等級への昇格が決まっています。他にも依頼の達成率も高く、評判、人格面……は、多少問題があるとしても、ギルドの信頼がなくなるほどではありません」
「はぁ」
受付嬢の言葉に曖昧な返事を返すハンター。
ハンターは、他人からどう思われているかというのは、正直どうでもいい。
数々の脅威的なモンスターを狩り続け、ギルドに貢献した挙げ句、頭がおかしい人物認定である。龍歴院の研究者には、ハンターの生態を研究対象にされかけたこともある。
なにせ、小遣い稼ぎで、竜をソロで討伐するような人物である。
哀れ、ATMのモンスターたち。
奴らを狩り続けたせいで、「ハンターのせいで生態系が壊れる!」「あれは人間じゃない。人の形をしたイビルジョーだ」とか言われる始末。
クエストの掲示板にいつも張り出すのが悪いのだ。
慣れてしまえば例え禁忌の龍でも、20分から30分でソロで討伐できる。
そういった経緯から、ハンターは周りの人からキチガイの目で見られるのには慣れた。
ハンターランクを上げるのだって、今までなら飛竜だの古龍だのを何匹も討伐すれば、自動的に上がった。
故に、こういった面接は初めてで、面倒くさい。
ギルド長との会話? 話が長いので、流し聞きで済ませた後、即座に次のランクから受注できる依頼を受けてました。
さっさと等級が上がったことだけ報告するか、上がるために特定のモンスターを討伐してこいと言われる方が、分かりやすいのでそちらにしてほしい。
そんなことを先程言ったのだが、受付嬢はやんわりと断った。
ハンターは、さっさとこの面接を終えたい。
なので、返事も生声だ。体勢も膝に肩肘付けて、頬杖をついている。
とても、人の話を聞く態度ではない。
「ちゃんと聞かないと、昇格させませんよ? 冒険者にとっては、人柄や信頼、依頼人と接する際の態度も大切なことなのですから。腕っぷしだけじゃ、上にはいけませんからね」
「はぁい」
ため息を吐きながらの肯定。
ハンターにとっては、ハンターズギルドの規律を守ってさえいれば、降格されることはなかった。
だが、ここでは態度も重要になる。
面倒くさいな冒険者ギルド。
住めば都、とも言うが、住まば都、でもある。
しかし、疑問も思った。
ゴブリンスレイヤーは愛想などない。あったら、逆に気持ち悪いが。
そんな彼も、銀等級になった冒険者だ。しかも、ゴブリン討伐のみで。
彼みたいな冒険者は好まれるのだろうか?
「ゴブリンスレイヤーを見習えと?」
「さすがに、彼をお手本にするのは、おすすめできませんが……。それでも、他人と接する際は、真摯に接してください。冒険者は、1人では冒険できないのですから」
ともかく、ハンターは黒曜等級へ昇格した。
それと同時に、ゴブリンスレイヤーとのパーティも解散した。
「ゴブリン討伐以外、受ける気はない」
「ですよね」
ハンターは冒険者ギルドに置かれている椅子に座り、ゴブリンスレイヤーと話している。
ハンターは黒曜等級への昇格をし、受けられる依頼の数が白磁よりも多くなった。
イノシシやオオカミの討伐といった、害獣駆除。
希少な植物の捜索といった、採取依頼。
報酬はゴブリン討伐より高くなり、貢献度も高い。
だが、そんな依頼はどうでもいいと、ゴブリンを殺し続けてきた彼には一切合切、興味がない。ゴブリン討伐が第一の彼。
だが、ハンターはゴブリン討伐だけ受ける気はない。
まぁ、ゴブリンは邪魔者なので、別のモンスターが討伐対象でも真っ先に処理する。ブルファンゴやランゴスタと同様だ。横槍を入れられたら、殺意が沸く。
金を稼いで、うまい飯を食い、農場を買って、拡張していくのだ。
それにハンターは依頼はコンプリートして勲章を獲りたいと思っている。ハンターはやりこみ派だ。
つまり、ゴブリン討伐だけを受注することはできない。
「お世話になりました」
頭を下げるハンター。
「そうか」
小鬼殺しの淡々とした返事はいつも通りだ。
そして、いつも通り掲示板には遅く向かい、彼はゴブリン討伐の依頼を受注する。
ハンターもそれに続くが、彼が受けたのはオオカミ討伐の依頼。
ゴブリンスレイヤーがゴブリンを殺す者であるように、ハンターはモンスターを狩る者だ。ハンターもゴブリンは殺すが、ゴブリンだけがモンスターではない。
ハンターはモンスターハンターなのだ。
依頼人に会い話を聞くと、草原に出ていた山羊飼娘のヤギがオオカミに襲われ、ヤギを置き去りにすることで逃れることができ、ギルドに依頼を出した。
ハンターも山羊飼娘が襲われた草原を歩き、痕跡を探すところから始めていたが、探索最中に襲ってきた。
オオカミ討伐だったはずなのだが、なぜかオオカミの上にゴブリンが乗っていた。
そういったゴブリンをゴブリンライダーということを、ゴブリンスレイヤーから聞いている。
閃光弾をスリンガーに装填し、ゴブリンライダーの群れに向かって、発射。
強烈な閃光は、ゴブリンとオオカミの目を焼き、一時的に使い物にならなくする。
「ギャッン⁉」
「Gobu⁉」
いきなりの閃光に驚いたオオカミは転倒、急停止してしまい、騎乗していたゴブリンは振り落とされる。
そこにハンターが近づき太刀で薙ぎ払う。
太刀の凄まじい切れ味の前には、オオカミの毛皮程度、大した阻みはない。
目が回復する前に、できるだけ数を減らす。
オオカミに乗って逃げられると面倒なので、オオカミを優先的に倒す。太刀の間合いにゴブリンがいれば、オオカミごと薙ぎ払う。
オオカミは全て片付けた。
しかし、数が多かった。ゴブリンライダーが10騎でも、オオカミを合わせれば20体。
一時的な失明から回復するゴブリンが現れる。
先程のオオカミからの転落からか、ゴブリンやオオカミが殺されたことか、ともかく怒りの叫びを上げながら襲ってくる。
飛びかかってきたゴブリンをハンターは空中で切り落とす。
それを見ていた他のゴブリンたちは、オオカミは全て倒されていること、生き残ったゴブリンは自分たち数匹だけという現状に勝ち目が無いことを理解したのか。それとも、単にハンターが怖かったのか。
ともかくハンターから一刻も早く逃げることを選ぶ。
ハンターが先程、左手の弩を操作していることから、目を閉じながら走る。
あの光をまた受けるのはたまったものではない。
だが、放たれたのは先程の閃光弾ではない。
空気が振動するほどの高周波が、ゴブリンたちの後ろから鳴った。
音爆弾。ゴブリンの声帯を剥ぎ取り、縫い合わせて、爆薬を調合した物だ。
本来は水中、地中に潜むモンスターを炙り出したり、耳の良いモンスターを行動不能にさせるアイテムだ。
しかし、空気が振動するほどの高周波だ。
至近距離ならば鼓膜が破れてしまう。
耳を手で塞がなかったゴブリンたちは、体の自由が失われ、地面に転がる。
そこにハンターの太刀でとどめを刺す。
ハンターはゴブリンライダーを掃討した後、耳に付いているリングとオオカミの毛皮を剥ぎ取り、依頼人の所に戻った。
オオカミの討伐だったが、ゴブリンライダーの討伐になったことを説明。
「本当にオオカミだけだったのか?」
「えっと、その、逃げるのに必死で、……良く見てませんでした。ごめんなさい。報酬はその……」
山羊飼娘は申し訳なさそうに頭を下げる。
ハンターも怒ってはいない。
山羊飼娘が危惧している報酬も、オオカミ討伐の分だけでいいと言う。吊り上げようとも思っていない。
ただ、ゴブリンの巣穴がこの辺にないか聞いておきたかった。
ゴブリンライダーなら、放浪するので備蓄の概念がない。殺したら、すぐさま餌にして食った後は、また移動する。
だが、巣から出てきたなら、ゴブリンの残党が居る可能性がある。
そして、オオカミを従えている巣ということは、ゴブリンに余裕がある、大勢いるということだ。
大量のゴブリンが、山羊飼娘の居る村を襲えばひとたまりもない。
そのことを伝えると、山羊飼娘は青い顔をしながらも、心当たりがないことを言った。
とりあえず、依頼は達成。
ハンターは辺境の街に戻り、受付嬢に報告した。
そこまでは良かった。
だが、受付嬢の次の言葉がハンターを苦しめる。
「お疲れ様です。ではアドベンチャーカードの提出、よろしくおねがいします」
ハンターズギルドにも、何を討伐したか記録して提出する書類はあったが、ハンターはまだこちらの地域の字が読めない、書けない。
今までは、ゴブリンスレイヤーがやってくれたことだが、これからはハンターがやらなければならないことだ。そして、これを提出しないと、報酬すらもらえない。
代理筆記してもらうことも可能だが、黒曜等級程度では足元を見られてしまう。
ハンターはここの地域の文字が学べる場を教えてもらった。
神殿というところでは、文字を教えてもらえるらしいが受講料が必要。必要経費と思い、受講料を払い、一刻も早く文字を覚えるようにした。
女魔術師、女魔法使い どっちがいい?
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女魔術師
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