【護廷十三隊】、
もっとも、最初期の護廷十三隊は治安部隊とは名ばかりのゴロツキ集団であり、現在の形に落ち着くまでには長い年月を要している。
そんな護廷十三隊もとある死神代行の登場によって更なる変革と動乱の時代が訪れることになるがそれはまだ先の話。
この物語は死神代行が力を手にするおおよそ100年以上前のこと。
四番隊の治療室にて
「いやぁ、いつ見ても素晴らしいですね」
治療室にいる一人の死神がつぶやく。
黒色の死覇装を纏う彼は四番隊所属の死神であり、第九席という立場から四番隊内では上位に位置する死神である。
そんな彼の視線の先にいるのは一人の女性。
同じ四番隊所属の死神であるが彼と彼女では異なる箇所がある。
一つは位。彼女の左腕には四の漢数字と竜胆の花が描かれた将棋の駒に似た物を巻きつけていることから彼女が四番隊内で上から二番目に偉い隊士、四番隊副隊長であることが窺われる。
「うちの山田三席も並外れた実力者だが、副隊長のあれはまさに神がかり的だわ」
もう一つは実力。彼も席官であることからそれ相応の回道、治療用の鬼道を行使することができるが、それをもってしても目の前の彼女の足元にも及ばないと彼らは確信している。
「・・・・・・ちょっとそこ! 無駄話している暇があるならさっさと次の患者もってきなさい!!」
「は、はい!」
彼は急ぎ彼女の目の前にいた患者を運んでいく。
10人という大人数であったが他の隊士と協力してすぐに移動は完了する。
愛護的に彼らを運び、その様子を診察して彼は心の底から感服した。
(あそこまで重症だった患者がこうも元通りになるとは、私の回道をもってしても副隊長の倍以上の時間はかかるというのに・・・・・・、そして)
そして何より、彼女が治療する人数が異常であった。
「
彼女はまた別の患者へ取り掛かり始めている。
彼女が開放した斬魄刀から八匹の赤と金の入り混じった美しい羽をもつ揚羽蝶が舞う。
赤い鱗粉を舞い散らしながら、それらは別々の重傷患者の上方へとたどり着く。そしてそのままぐるぐると患者の上で鱗粉を患者たちにふりかけ始めた。
通常ならば即座に排斥されて当然の行為であったが四番隊の人間はだれもそうすることはない。
なぜなら四番隊に所属する人間は彼女の斬魄刀の能力であるそれを熟知していたからだ。
鱗粉が降りかかった箇所から傷が癒えていく。
傷の度合いに応じて鱗粉をふり掛けることによって傷を治す治療系の斬魄刀であり、その能力により多人数の治療が可能になっていることを四番隊の隊士たちは知っていた。
だが、ただその能力だけで彼女が副隊長という立場になったわけではないことも理解していた。
揚羽蝶の操作には彼女の集中力が必要不可欠であり、また揚羽蝶とは別に二人の患者の治療を同時に行っていることを見れば彼女の実力が否が応でも理解するしかない。
隊長に迫る回道をもち、同時に多数の人数を治療できる四番隊の中の四番隊隊士。【十人前の三鼓】【治療の鬼】【揚羽蝶の三鼓】など多彩な異名をもつ彼女。
四番隊副隊長、
・・・・・・誰一人として、彼女の抱えている重大な秘密に気がつかないまま。
「ああああぁぁぁぁ……しんどい……」
彼女は自室で布団に倒れこむ。
死神らしく和で統一されたそこは彼女に与えられた一室であり、そこにはいくつもの写真や可愛らしい小物や戦術書であふれている。
「もうほんと無理、まじで無理、一歩も動けない、限界突破してる……」
いくら同時に治療ができるからと言って疲れを知らないというわけではなく。同時に治療する人数が増えれば増えるほど彼女にかかる負担が増えるのは道理であり、過去最高の治療人数を更新した今日の彼女の疲労はピークに達していた。
『お疲れさん、せやけど別にあんさんがそこまでせえへんでも、他の部下に任せたほうがよかったんとちゃうん?』
ふと、彼女の耳にそのような声が聞こえた。
「ああうん、そうなんだけどね、できる限りのことはやらなくちゃいけないからね、手を抜きたくないの」
『あんさんがそこまでいうなら別に止めへんけど、アレが起こるまでに体壊したら元も子もあらへんよ?』
「まー、そうなんだけどさぁ……」
彼女はそういて目を閉じる。
今は浦原喜助はまだ隊長になっておらず、曳舟桐生も現役。けれどローズが隊長になっているからもうそろそろかな、と彼女は考える。
彼女は知っている。これから何人もの死神や流魂街の人間が非道な実験の犠牲になることを。
彼女は知っている。その実験の結果として仮面の軍勢や破面と呼ばれる一団が誕生することを。
彼女は知っている。藍染が企てた計画から予想外の因子として黒崎一護が誕生することを。
彼女は知っている。藍染の反乱を、破面との戦いを、滅却師との大戦を。
故に彼女はこの世界に生れ落ちてから一度も警戒を怠ったことはない。
尸魂界に潜んだ滅却師や藍染惣右介たちから自身を守るため、この先の戦いを生き残るため。
彼女はできる限りの修練を自身に課し、その一環として驚異的な回道と同時多数治療術を身につけていた。
「まあ、なるようになるさ……」
そういって彼女は眠りにつく。
自身が知る最悪な未来が近づきつつあることを実感しながら。
・追記 10/10 6時
恐怖知らない間に投稿されている小説 ((((;゚Д゚))))ガクガク
いや、随分前に書いたっきりで忘れてただけなんですけど、感想が来て初めて気づくという驚きともうそんなに立ってたのかと更にびっくり。